2023年版国内クリエイターエコノミー調査結果を発表

市場規模は1兆6,552億円で前年比21.9%増/生成AIをはじめとした最新技術や環境変化への対応はクリエイター自身のリテラシー向上と、社会全体のサポートが必要

一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(以下、MURC)と共同で、国内のクリエイターエコノミーに関する調査を実施しました。本調査は2022年に初めて実施し、今年で2回目の発表となります。結果を一部抜粋してお届けします。

【調査結果ダイジェスト】

  • 国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆6,552億円で、前年比21.9%増

  • ファンコミュニティなど、ユーザーとクリエイターのつながりを強化するサービスが増加。クリエイター個人への課金を促進

  • VTuber関連や音声配信サービスなどの新興サービスが浸透。市場の成長をけん引

  • 生成AIをはじめとした新技術や、各種規制などの急激な社会環境の変化は、懸念事項がありつつも、クリエイターの創作活動の開始や支援サービスの需要拡大につながる可能性


【調査実施の背景】

近年では、動画や文章、イラストなどデジタルコンテンツの提供や、自身で制作したグッズやスキルの販売など、クリエイターの活躍の場が大きく広がっています。また、クリエイターのマネジメントや、事務手続きをサポートするサービスなど、クリエイターの活動をさまざまな側面で支援するサービスも登場し、クリエイターを中心としたこれらの経済圏、“クリエイターエコノミー”が拡大しています。

2022年に当協会とMURCは国内初となる「国内クリエイターエコノミーに関する調査」を共同で実施。日本のクリエイターエコノミー市場が今後も堅調な拡大を見込んでいることが分かった一方で、誹謗中傷への対応や創作活動以外の手間の削減など、市場拡大を妨げかねない課題も存在していることが明らかになりました。

今回の「国内クリエイターエコノミーに関する調査(2023年)」は2023年6月〜9月に実施。前年との比較も踏まえたクリエイターエコノミーの市場規模の推計に加えて、技術的・社会的な動向や変化がクリエイターエコノミーに及ぼす影響について、エンタメや著作権法などを専門とし、当協会の監事を務める福井健策弁護士にインタビューを行いました。


【調査結果詳細】

  •   国内クリエイターエコノミーの分類と主なサービス

クリエイターエコノミーに関連する企業・サービスについて、クリエイター活動を行う場としての「プラットフォーム」と、クリエイターの活動を支援する「支援サービス」の2つに大きく分類しています。なお、イラスト作成やデザイン、作曲、写真・動画の編集など、クリエイティブな用途に使いやすく設計されたクリエイター向けPCもクリエイター活動を支えている実態に鑑み、今回の2023年調査から支援サービスのひとつとして追加しました【図表1】。


<図表1 各プラットフォーム・サービスの代表的な企業・サービス例>

各プラットフォーム・サービスの代表的な企業・サービス例各プラットフォーム・サービスの代表的な企業・サービス例

(出所)MURC作成


  • 国内クリエイターエコノミーの市場規模と拡大要因

国内クリエイターエコノミーの市場規模は前年比21.9%増の1兆6,552億円

2022年の国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆6,552億円と推計され、前年の1兆3,574億円に対して21.9%の成長を遂げています【図表2】。
2021年同様に、モノ/グッズ販売や動画投稿に関連した広告、スキルシェアの市場による寄与が大きく、市場全体の約7割を占めました。


<図表2 国内クリエイターエコノミーの市場規模推移(イメージ)>

国内クリエイターエコノミーの市場規模推移(イメージ)国内クリエイターエコノミーの市場規模推移(イメージ)

(出所)MURC作成


なお、定義や実施年の差異には留意する必要があるものの、2021年に実施された海外の調査(※1)では、海外クリエイターエコノミーの市場規模は1,042億ドル(1ドル=145円とすると15.1兆円)と推計されています。

(※1出所)NeoReach Social Intelligence APIとInfluencer Marketing Hubの共同調査(2021年5月)


<図表3 クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方>


クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方

(出所)MURC作成


ユーザーとクリエイターのつながりを強化するサービスが増加。クリエイター個人への課金を促進

2021年から 2022 年にかけて、市場が急速に拡大した背景には複数の要因が考えられます。
まず、クリエイターエコノミーの認知が広がった結果、他業界からの新規参入が起きました。例えば、新たな技術を活用したデジタルプラットフォームを大手企業が提供するケースも増えています。
それに加えて、既存のプラットフォームが新たなサービスや機能を提供したことで、クリエイターとユーザー(クリエイターの創作物の視聴や購入などを行う人々)の裾野が拡大しました。クリエイターへの注目度が高まったことで、企業が自社の広告にクリエイターを起用するなど、法人からの資金流入も増加しました。


次に、プラットフォームがユーザーとクリエイターのつながりを強化するサービスを提供するようになったことで、クリエイター個人への「ファン化」が進展しました。例えば、クリエイターの創作物の売買に注力していたプラットフォームが、ファンコミュニティや投げ銭でクリエイターを支援できるサービスを新たに提供するケースが挙げられます。また、人気クリエイターが複数のプラットフォームで活動することで、ファンの間でプラットフォームの垣根を越えた消費が増加。クリエイターとファンとのつながりをより一層強固なものにし、クリエイター個人への課金の拡大を後押ししています。


VTuber関連や音声配信サービスなどの新興サービスが浸透。市場の成長をけん引

また、これまでは、動画・画像関連のサービスと比較すると、VTuber関連や音声配信サービスは利用者や関連プラットフォーム・サービス数が限定的でした。しかし、これらの領域の活動を支援する新興サービスが普及したことで、市場拡大を押し上げています。
さらに、社会のデジタル化も寄与しています。各種行政手続きのデジタル化が推進されて、これに関連する会計システムなどのクリエイター支援サービスが拡充したことなどが挙げられます。同時に、クリエイターエコノミーの拡大に伴い、AIなどの技術を使ってクリエイターの創作活動や商品販売をサポートするサービスが広がっています。これによって、エージェントや支援サービスを利用するクリエイターが増加。直近ではインボイス制度への対応など、デジタルサービスを中心にクリエイターを支援するサービスの需要が拡大しています。


  • 国内クリエイターエコノミーにおけるトレンド

メタバースやNFTなど、さまざまな技術の誕生や変化が注目を集める中、直近では新しいコンテンツやアイデアを生成する「生成AI」などが社会的な注目を集め、クリエイターエコノミーにも影響を与えています。


生成AIはクリエイターにとって活用の可能性が幅広く、創作活動の支援だけでなく、それ以外の場面でも役立つケースがあります。創作活動の支援では作品のアイデア出しや推敲などの作業効率化、創作活動以外ではマーケティング活動の支援、多言語対応、調査・リサーチなど、多岐にわたる利用が考えられます。このように、生成AIによって創作活動をはじめるハードルが下がることは、クリエイターの裾野を広げて、クリエイターエコノミーの拡大に寄与する可能性があるといえます。


一方で、AIが作風を学習することで、自身の作風が模倣されるリスクなど、クリエイターにマイナスの影響をもたらす側面も想定されます。こうした生成AIをはじめとした技術的な変化の中、「クリエイターが技術的な変化や自身への影響を認識し、留意することが重要だ」と福井弁護士は指摘しています。


  • 社会的な動向とその影響

新たな法律や規制の動きも、クリエイターエコノミーに影響を及ぼす可能性があります。例えば、2023年4月に法案が可決されたフリーランス新法(※2)では、クリエイター自身が受注者である場合だけでなく、自身がフリーランスに業務を依頼する場合も対応が求められます。また、2023年10月1日にはステルスマーケティングに対する規制も始まりました。このような状況で、福井弁護士は「クリエイターが自身の活動に関わる規制についてリテラシーを高めることが重要になる」と指摘しています。


しかし、クリエイター個人がすべてのルール変更を理解するのは現実的ではありません。そのため、新たな法律や規制への対応が必要になった際には、クリエイターエコノミー関連事業者が勉強会の実施や、サービス上の機能面などでクリエイターをサポートする需要の増加が見込まれます。


さらに、行政機関や業界団体などがクリエイターをサポートする動きもすでにみられます。福井弁護士は、「クリエイターがリテラシーを高めると同時に、社会全体としてもクリエイターに対して、情報を提供・サポートし、安心してクリエイター活動に取り組むことができる環境を整えることが重要だ」と述べています。

技術的・社会的な変化は、新たなクリエイターの創作活動や支援サービスの需要拡大につながる可能性がある一方、懸念事項も存在します。クリエイターはこれらの業界を取りまく変化を認識し、理解する必要があります。一方、社会全体としては、クリエイターが安心して活動できる環境を提供するために、教育や法制度の整備など、適切なサポートが求められます。


(※2)「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)のこと。2023年4月に可決成立し、5月12日に公布。フリーランスの取引を適正化し、フリーランスが安心して働くことができる就業環境の提供を目的に、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備などが義務付けられることになる。


  • おわりに

本調査は、2022年のデータをもとに、前年からの国内クリエイターエコノミーの変化と2023年の状況について考察しました。市場は2021年から2022年にかけて大きく成長し、2022年の市場規模は前年比で21.9%増の1兆6,552億円と推定されました。この成長には、クリエイターエコノミーの認知拡大と、サービスの拡充や拡大、ユーザーとクリエイターの結びつきが強化されたことや、新興サービス・新ジャンルの普及、デジタル化によるクリエイターの支援サービスに対するニーズ拡大なども寄与しました。


また、クリエイターエコノミーを取り巻く最近の動向では、生成AIをはじめとした技術的な進化だけでなく、新たな規制などの社会的な変化が影響を与える可能性があることが、みえてきました。これらの要素はクリエイターエコノミーの成長に寄与する可能性がある一方で、成長を妨げる要因ともなり得ます。クリエイター個人だけでこれらの変化に適切に対処するのは容易ではないため、クリエイターエコノミーのさらなる発展には、クリエイターへのサポートが必要です。具体的には、新たな技術の導入や規制の変更など、クリエイターが直面する実態を踏まえて柔軟に検討していくことが求められます。


レポートの全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.murc.jp/library/report/cr_231031/


  • 【調査概要】

調査期間:2023年6月〜9月

調査方法:

・国内・海外のクリエイターエコノミーに関する文献調査

・有識者に対するインタビュー

  • クリエイターエコノミー協会について

「クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進する」をミッションに、クリエイターエコノミーの普及・促進とその活性化に向けた様々なアクションを実施しています。

代表理事(アルファベット順):BASE株式会社/note株式会社/UUUM株式会社
監事:骨董通り法律事務所 代表パートナー 弁護士 福井 健策
会員企業一覧:https://creator-economy.jp/n/n5e67eb0210cf
アドバイザー:国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター 山口 真一 准教授

入会について:現在は法人会員のみ入会を受け付けています。https://creator-economy.jp/n/n5e67eb0210cf


  • 協会概要

名称:一般社団法人クリエイターエコノミー協会(Creator Economy Association)

所在地:〒106-8007 東京都港区六本木三丁目2番1号

公式サイト:https://creator-economy.jp/

問い合わせ先:info@creator-economy.jp

公式Twitter:https://twitter.com/CEA_Japan

公式Facebook:https://www.facebook.com/CreatorEconomy.jp

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会社概要

URL
https://creator-economy.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区六本木三丁目2番1号
電話番号
-
代表者名
UUUM株式会社/note株式会社/BASE株式会社
上場
未上場
資本金
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設立
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