メガネのいらない世界をつくる「クボタメガネ」プロトタイプの開発進捗状況と今後の開発計画に関するお知らせ
近視の治療・抑制を目的に開発しているウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」は、2020年5月に卓上デバイス、2020年8月にはウェアラブルデバイスを用いた臨床試験において、被験者の網膜に 1日数時間の網膜周辺部へのぼかした像の投影(myopic defocus stimulation)で眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が対象眼と比較して短縮するという結果が得られ、POC(Proof of Concept:概念実証)が確認されております。
この結果を踏まえ、当社グループでは「クボタメガネ」の商業化に向けてプロトタイプの開発を進めておりますが、この度その初期型のプロトタイプが完成いたしました。
今後の開発計画につきましては、人工的な光刺激を網膜に与える時間や期間を変更することにより、「クボタメガネ」が眼軸長に与える影響を中長期的に検証すると共に、製品デザインの改良、医療機器としての製造販売認証申請のための臨床試験等を行う予定です。
なお、本件による当社の2020年12月期連結業績予想への影響はありません。
本件について、当社の代表執行役会長、社長兼最高経営責任者の窪田良博士は次のようにコメントしています。
「一般的に、大型のデバイスで得られた効果を超小型化したデバイスで再現することは簡単なことではありませんが、我々のチームには世界中から集めた優秀な開発者がいます。PBOS(超⼩型モバイルOCT)の開発でアメリカ航空宇宙局NASAにも認められた開発力を活かし、いち早く、このデバイスを世界に届けることができるように開発を推進してまいります。」
クボタメガネテクノロジーについて
クボタメガネテクノロジーは、網膜に人工的な光刺激を与えて近視の進行の抑制、治療を目指す当社独自のアクティブスティミュレーション技術です。網膜に光刺激を与えて近視の進行の抑制、治療を目指す技術は既に実用化されており、米国ではCooperVision社の「MiSight 1 Day」という製品が近視抑制効果があるとして米国食品医薬品局(FDA)より認可を受け、販売されています。これらの製品は、多焦点コンタクトレンズの仕組みを応用し、自然光をぼかして網膜周辺部に刺激を与えることで、単焦点コンタクトレンズと比較して、近視の進行を抑制することを証明したコンタクトレンズです。一方、当社グループの「クボタメガネテクノロジー」は、この理論的根拠をもとにナノテクノロジーを駆使してメガネに投影装置を組み込むことで、自然光をぼかすことなく、直接一番効果的な映像を網膜周辺部に投影することを実現し、先行品よりも短時間の使用でより自然な見え方を維持しながら、高い近視抑制効果を実現することを目指しています。
近視について
近視は、2050年には、世界の約半数の人が陥ると予測されている疾患です(*1)。特に、日本を含む、中国、香港、台湾、韓国、シンガポールといったアジア諸国で近視が急激に増加しており、ソウルでは、19歳の男性の96.5%が近視というデータも示されています(*2)。また、2019年3月に文部科学省が発表した学校保健統計調査に よると、小学生〜高校生の裸眼視力における1.0以上の割合が過去最低になったと発表されています(*3)。近視の進行によ り、緑内障視野障害、白内障、網膜剥離、黄斑変性などの疾患を合併するリスクが高まることも知られており(*4)、 強度近視患者の増加は、大きな社会課題の一つですが、未だ本邦で薬事承認を受けた治療法はありません。近視は、屈折性近視、軸性近視、偽近視、核性近視などに区分されますが、その多くは軸性近視と診断され、眼軸が伸展することによりおこるとされています。眼軸長が伸びると、眼球の中で焦点が網膜より手前に位置づけられるために、遠くが見えにくくなります。
*1 Holden BA,etal.Ophthalmology.(2016)
*2 Elie Dolgin(2015)『The Myopia Boom』(Nature)
*3 文部科学省平成30年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)の公表について
*4 Flitcroft D.I. The complex interactions of retinal, optical and environmental factors in myopia aetiology. Progress in Retinal and Eye Research 31 (2012) 622660
窪田製薬ホールディングス株式会社について
当社は、世界中で眼疾患に悩む皆さまの視力維持と回復に貢献することを目的に、イノベーションをさまざまな医薬品・医療機器の開発及び実用化に繋げる眼科医療ソリューション・カンパニーです。当社100%子会社のクボタビジョン・インク(米国)が研究開発の拠点となり、革新的な治療薬・医療技術の探索及び開発に取り組んでいます。当社独自の視覚サイクルモジュレーション技術に基づく「エミクススタト塩酸塩」においては、糖尿病網膜症およびスターガルト病への適応を目指し研究を進めております。また、網膜色素変性における視機能再生を目指す遺伝子療法の開発や、在宅・遠隔医療分野(モバイルヘルス)における医療モニタリングデバイス(PBOS)、ウェアラブル近視デバイスの研究開発も手掛けております。
(ホームページアドレス:http://www.kubotaholdings.co.jp)
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