東京観光財団と株式会社JTB総合研究所が旅行・観光業における「脱炭素ロードマップ」をテーマに共同研究を実施
旅行・観光業が脱炭素を進めるために
【研究目的・概要】
今年8月、欧州連合(EU)の気象情報機関は、7月は世界的に観測史上最も暑い月だったことを確認した、と発表しました。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える目標を掲げていますが、厳しい挑戦が続いています。東京都も2030年までに2000年比で温室効果ガス排出量50%減とする「カーボンハーフ」を目標としていますが、最新の報告によれば、2021年の排出量は、2.3%減に留まっているのが現状です。
国内でも、エネルギー、製造・輸送産業等を中心に、気候変動対策が加速しています。では旅行・観光業においては、何を、どのように取り組めばよいのでしょうか。
その答えを探るため、私たちは2021年11月にWorld Travel & Tourism Council(以下「WTTC」という)が発表した調査レポート「A NET ZERO ROADMAP FOR TRAVEL & TOURISM」を国内で初めて翻訳しました。
当レポートには、世界の旅行・観光業によるCO2排出量の現状とその割合や、航空、宿泊、ツアーオペレーターを含む主要な5業種のための脱炭素ロードマップや必要な具体的アクションが示されています。
共同研究報告書においては、当レポートをもとに、特にCO2排出量算定が難しいと言われる「旅行会社」にフォーカスし、脱炭素の取組への課題やステップを考察し、国内外の最新事例等も踏まえて必要な取組をまとめました。
【調査レポート概要】
当レポートは、WTTCが国連環境計画(UNEP)及びアクセンチュアと協力し、業界に対して現状を明らかにした上で、有意義な気候変動対策と削減に向けた道しるべ及び方法を示すことを目的に、2021年11月に公表されました。また、世界の約250社の旅行・観光事業者が分析対象となっており、他に類のない包括的な調査となっています。
【なぜ旅行会社は脱炭素の取組が進まないのか:本研究で分かったこと】
● 旅行・観光業でもいわゆる「旅行会社」については、異なるビジネスモデルの混在とそのサプライチェーン
の広さから、CO2排出量の測定に課題が多く、海外においても取組が進んでいない。
● 取組を進めるカギは、「オフィスの操業や社員の出張等自社の活動に係る排出量」と、「顧客の旅行におけ
る排出量」の2種類を、算定可能な範囲から算出し、目標を定めてモニタリングしながら削減すること。
● 旅行・観光業全体で気候変動に取り組むには、業界団体によるイニシアティブが重要。
まず、旅行会社には、ツアーオペレーター、旅行代理店、オンライン旅行代理店等、ビジネスモデルが異なる事業体が混在しています。ツアーオペレーターの中には、自社でホテルや航空機等を所有している場合もあります。旅行代理店も、店舗を持つ業態とオンラインの業態に分かれています。そのような状況が、一元的なCO2排出量の算定や推定値の取得を困難なものにしています。また、訪日インバウンドの場合を例にした上記の図からも分かるように、旅行会社はサプライチェーンが広く、どこまでを自社のCO2とするかについても明確にしにくいことがネックとなっています。
次に、旅行会社の脱炭素推進のためには、「オフィスの操業や社員の出張等自社の活動に係る排出量」と、「顧客の旅行に係る排出量」の2種類について、算定できる範囲を見える化し、目標を掲げてモニタリング・削減していくことが必要です。なお、そうした自助努力では削減が難しい場合は、カーボンオフセットも活用しながら、ステップを進めることも取組の一助となります。
最後に、業界団体によるイニシアティブも非常に重要です。業界団体等は、気候変動対策や脱炭素経営等について、より多くの教育・ナレッジシェアリングや、積極的に活用できる関係省庁の支援メニューの紹介等の機会を提供する必要があります。
【旅行・観光業が脱炭素に取り組む意義】
2008年のUNWTO等の調査では、旅行観光業に関連する温室効果ガス排出量は、世界の排出量の約5%を占めていると推定され、特に輸送は業界全体の排出量の75%を締め、宿泊は21%を占めていると言われていました。
当レポートによれば、現在旅行・観光業が占める世界の地球温暖化ガス排出量の割合は<8%~11%>と推定されており、世界の温暖化ガス排出量の約10分の1は旅行・観光業が排出していることが分かります。旅行・観光産業による世界のGDPへの貢献度は10%を超えており、そのバリューチェーンの広さからも、旅行・観光業が脱炭素に取り組む責任と可能性は大きいと訴えています。
今回翻訳した「A NET ZERO ROADMAP FOR TRAVEL & TOURISM」には、旅行・観光業がどのように脱炭素を推進するべきか、業種ごとのロードマップが示されています。また、共同研究報告書では、WTTCの当レポート内容をもとに「旅行会社」の脱炭素推進にフォーカスし、国内外の企業の具体例も示しながら、旅行会社の脱炭素に向けた取り組みの「何を、どうやって」に答えていきます。詳しくは、公表資料をお読みいただければ幸いです。
<共同研究報告書>
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/dc294bc21fc7e655ff96b403ce4af051_2.pdf
<翻訳版「旅行・観光業のためのネットゼロ・ロードマップ 旅行・観光業界に向けた新たなターゲットフレームワークの提案」>
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/e80d17dcca72e87701a95b86706ffa31_1.pdf
TCVB共同研究詳細はこちら:https://www.tcvb.or.jp/jp/project/research/theme/
JTB総合研究所のリリースはこちら:https://www.tourism.jp/news/2023/11/carbon-neutral-research/
東京観光財団について
東京の観光振興に関する各種事業を推進する東京都の政策連携団体。「世界から選ばれ続けるTOKYOへ。」を組織理念に掲げ、様々なパートナーと連携しながら、旅行者やビジネスイベンツを誘致するとともに、地域の観光振興や受入環境を向上するための取組を幅広く展開。
団体名:公益財団法人 東京観光財団
理事長:金子眞吾
所在地:〒162-0801 東京都新宿区山吹町346番地6 日新ビル
設立: 2003年10月15日
URL:https://www.tcvb.or.jp/jp/
株式会社 JTB 総合研究所について
株式会社 JTB 総合研究所は、2012 年、株式会社JTBの創立100周年を機に、ツーリズムを通じ社会や地域の課題解決へ の貢献を目指してスタートしました。調査研究、コンサルティング、観光教育の事業を柱に、ツーリズムの枠組みにとらわれない新しい時代のシンクタンクとして、地域や企業の発展に貢献すべく、取り組みを進めています。
社名 :株式会社 JTB 総合研究所
代表取締役社長執行役員 風間欣人
所在地:〒140 -0002 東京都品川区東品川 2-3-14 東京フロントテラス7F
設立 : 2001 年 6 月 21 日 (2012 年 6 月 1 日より、JTB 総合研究所に社名変更)
URL : www.tourism.jp
【本件に関する問合せ先】
■公益財団法人東京観光財団 担当:総務部総務課(企画調査)山村・工藤
電話:03-5579-2680 メールアドレス:sanjyokaiin@tcvb.or.jp
■株式会社JTB総合研究所 担当:熊田
メールアドレス:pr@tourism.jp
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