April Dream Project

ポストWeb3:神話から実存と統治の媒体として

当社の夢は、Bitcoinに続く、より広く利用される分散台帳を設計・開発することである。この設計がどのように導出されるかを暗号・分散技術の政治的な価値評価の方法論としてのポストWeb3を用いて論じる。

このプレスリリースは、April Dreamプロジェクトに共感し、4月1日を夢があふれる日にしようとする事業者が、やがて叶えるために発信した夢です。

インバース

当社は、4月1日を夢を発信する日にしようとするApril Dreamに賛同しています。このプレスリリースは株式会社インバースの夢です。

Post Web3

本稿では、Bitcoin以後の、より多くの人に利用されうる分散制度の設計に向けて、暗号・分散技術の政治的価値を再評価し、その意義と再設計の方向性を実存と統治の観点から示す。暗号・分散技術を単なる理念や技術的性質としてではなく、主体を媒介し、関係を再構成する制度的媒体として捉えようとする試みである。一部の論証に実験的・思弁的な要素も含む(詳しくは「議論」にて)。

本稿では、まずポストWeb3の必要性とその定義を示す。そのうえで、この方法論から導かれる3つの論点を検討する。

第1に、暗号制度技術を既存制度と比較した際の政治的価値を、ローレンス・レッシグの「Code is Law」の限定を通じて論じる。第2に、暗号・分散技術が政治利用された背景から、その設計思想と、抵抗の媒体の転換を論じる。第3に、それらが統治と抵抗運動にどのような変化をもたらすかを論じる。あわせて、その背景にある統治理性の矛盾を、マルクスが『資本論』で論じた資本主義の矛盾との対比から検討する。

ポストWeb3

従来のWeb3をめぐる議論は、自由、分散、個人主権といった理念、あるいは検閲耐性や改ざん耐性といった技術的特性が価値の中心として語られてきた。その結果、イデオロギーの過大評価や技術改善の自己目的化を招き、それらの言説を支える技術群が、具体的にどのような経済的・政治的価値を持つのかは見えにくくなった。さらにその価値は、しばしば投機的な利益への期待によって上書きされ、政治的利用という本来の論点は後景へ退いてきた。

これらの問題に対して、ポストWeb3という方法論を導入する。ポストWeb3とは、新たな技術潮流の名称ではない。それは、暗号・分散技術をその理念や特性からではなく、既存制度との比較のなかで経済的・政治的価値から評価するための制度論的枠組みである。

国家等の単位ではなく制度単位で分析する理由は、国家や政府は物理的強制力を含むが、暗号・分散技術はその全体を代替せず、一部のデジタル領域に限定されるためである。ここで制度とは、ダグラス・ノースに従えば、インフォーマルな制約、フォーマルなルール、執行からなるものとして捉えられる。本稿はこの定義に基づき、暗号・分散技術による制度を他の制度との比較のもとで評価する。

分析対象としての暗号制度技術

この枠組みにおいて重要なのは、分散台帳単体ではなく、政治利用のために設計された技術の組み合わせの総体を分析対象とする点にある。

PGPやTorのような匿名性、Mix Netのような権威の最小化を支える技術から、Bitcoinに代表される分散台帳までを含む広い意味での暗号・分散技術を視野に入れる。ただし、その中心的な対象は、政治利用を目的とした技術であり、それ以外の主として投機等を目的とする分散台帳一般は、中心的な対象ではない。

本稿ではこれらをまとめて暗号制度技術と呼ぶ。簡単にまとめると暗号制度技術とは、従来は人間の判断・信頼・権威に依存していた制度の一部を、ソフトウェアによる検証・合意へと移し替えることで、擬似的な代替を可能にする技術である。

この枠組みの具体的な応用として、次章では暗号制度技術の制度としての政治的価値を示す。

コードの無精神

本章では、ポストWeb3を用いて、ローレンス・レッシグの「Code is Law」をこの領域において制度論的・法哲学的に限定し、暗号制度技術におけるコードが法の代替ではなく、法とは異なる原理を持つ制度的媒体であることを論じる。

法とコードの作動原理

シャルル・ド・モンテスキューによると、法は明文化されたルールとしてだけでなく、それを支える政体・慣習・宗教・商業などとの関係の総体である「法の精神」との関係において理解される。現代の法秩序においても、法は孤立して作動するのではなく、正当化・解釈・適用・責任帰属の回路を通じてはじめて制度として機能する。

これに対し、分散台帳では、取引や契約が人間による解釈や裁量ではなく、事前に定義された検証条件への適合として処理・執行される。ここでは、ルールの形式化と執行が強く接続される一方で、正当化、解釈、責任帰属といった回路は制度の内部に十分には組み込まれない。

そのため法とその制度が前提としてきた法の精神と執行の連動は、必ずしも必要ではない。もちろん、フォークやコミュニティの合意による巻き戻しのような例外は存在するが、それは法における法の精神と執行の連動とは異なる水準の介入である。

したがって、暗号制度技術におけるコードは、法の代替というよりも、法とは異なる作動原理をもつ制度的媒体である。それは、法のように正当化と解釈の回路を内在化した制度ではなく、検証可能性と実行可能性を優先して機能する制度である。この意味で、コードによる制度は「法の精神」を十分には伴わないという点で無精神的である。

政治的価値

制度執行が人間的な解釈ではなく、検証条件への適合として処理されるという特性から執行コストの削減、恣意的裁量やレントの抑制、退出可能性の増大、越境環境での制度提供可能性、プライバシーや主体化の選択可能性といった政治的価値が生じる。こうした価値を政治経済学の観点から捉え直すと、主に以下の3つの領域において制度の代替として機能する。

第1に、国家による制度供給が十分でない領域において、財産権、仲裁・執行、通貨制度といった市場が十分に機能するための条件を部分的に提供する点にある。第2に、複数の国家が交差する越境領域や、少額取引・電子仲裁のように既存制度では費用対効果が悪い領域において、低コストな制度利用を可能にする点にある。第3に、レント化した国家の収奪的制度に対して、参加者に退出可能性、参加条件の明示性、制度運用の透明性を与えることで、既存制度に対する代替可能性と競争圧力を生み出す点にある。

よって暗号制度技術の意義は、政治や法を全面的に不要にすることではなく、特定領域において制度依存を再編し、より健全な制度均衡を形成する条件を開く点にある。

次章では、このような技術が開発された背景とその特性の具体的な利用を論じる。

サイファーパンクの倫理と暗号無政府主義の精神

本章では、暗号制度技術の政治利用の成り立ちに関わる2つの背景をたどりつつ、それらを支えたサイファーパンクの倫理が、いかにして抵抗の媒体としてのコードへ接続されたかを論じる。

サイファーパンクの倫理

暗号制度技術の多くは、エリック・ヒューズ、ティモシー・メイらを初期の中心とするサイファーパンク・メーリングリストで議論・構想された。そこではヒューズの言う「Cypherpunks write code」という倫理のもと、政治的要求は単なる主張ではなく、実際に作動する技術として提示されるべきものとされた。

この倫理は、フィル・ジマーマンによるPGPの公開とそれをめぐる暗号戦争において象徴的に現れ、政府規制に対して実装によって対抗する運動形式を可視化した。さらにこの系譜は、ニック・スサボのような制度設計論者を含みつつ、のちにBitcoinにつながる重要な要素概念を生み出す。

以下では、プライバシー保護と第三者への信頼の最小化という2つの問題に沿って、これらの倫理と設計思想がどのように交差し、技術の政治的利用へと接続されたかを論じる。

プライバシー保護

暗号制度技術の成立の重要な背景の一つは、米ソ冷戦のデタントの中で行われたインターネットの研究機関・民間解放である。インターネットの利用者の拡大とともに一元管理されている取引の履歴や個人情報が、通信の監視とプライバシーの観点から問題化された。

この問題に対してデヴィッド・チャウムは、暗号技術を用いた匿名通信の基盤としてMix Netを提案し、さらに匿名的な取引システムを個人情報の統制喪失や監視に対抗する手段として構想した。そこでは、監視が民主主義そのものに及ぼしうる影響までが示唆されており、技術を政治的に利用するという発想の基礎が築かれた。

この流れをより急進的な政治構想へと押し進めたのが、メイの暗号無政府主義である。メイは、暗号技術によって政府規制の及びにくい空間を構想し、匿名的な通信や取引を通じて国家の干渉を迂回しようとした。こうした問題意識は、ジマーマンによるPGPの公開と、それをめぐる政府との対立を通じていっそう先鋭化し、いわゆる暗号戦争へとつながっていく。

第三者の信頼性の最小化

もう一つの重要な背景は、ブレトンウッズ体制の崩壊による通貨体制の変化である。不換紙幣への移行によって、通貨発行権という新たな政府の権限が強く意識されるようになり、制度の管理者への信頼に依存する通貨制度が問題化された。

また、オーストリア学派による政府の通貨発行権の独占への批判は、通貨発行や資産移転の権限を誰がどのように管理すべきかという問題を再び前景化させた。スサボは、こうした制度の管理者への依存を避けるため予め規定された通信規則によって貨幣発行の振る舞いを拘束し、政府や民間管理者への信頼に伴う不安定性を技術による制度で代替しようと構想した。

これらの匿名通信や匿名取引、そして信頼できる第三者への依存の縮減という複数の言説や実践は、やがてBitcoinに代表される分散的な貨幣制度へと接続されていく。

抵抗の媒体としてのコード

以上の2つの問題から分かるように、暗号制度技術は、政府や特定の管理者への過剰な依存を問題化し、それを迂回する実践として設計・利用されてきた。匿名性や検閲耐性を備えた技術は、メッセージの秘匿によるプライバシー保護、個人情報を集中管理する権威の分散、恣意的な通貨管理の抑制といった政治的価値を担ってきた。

さらに、コードを書くという倫理のもとで行われたこれらの実践は、政治的要求を単なる主張ではなく、代替的な仕組みの実装として提示するものでもあった。近代における抵抗は、しばしば自然言語による批判・表白・告発として現れてきた。しかし、自然言語は、解釈と制度的媒介を経てはじめて事物に作用するため抵抗の表現と現実の再構成とのあいだには距離があった。

これに対し、暗号制度技術は、一定の条件のもとで表現をそのまま統治に接続しうる。つまりそれは、統治への抵抗を単なる批判の言葉にとどめず、実際に作動する仕組みの設計へと移し替える媒体である。この点で暗号制度技術は、運動の実効性を高めるだけでなく政府の統治によって形成される主体化の回路に対して、その外部から別様の仕組みを差し込む契機ともなる。ゆえにコードは、抵抗の媒体であると同時に自己統治の媒体としても位置づけられる。

昨日までの実存

本章では、前章までの議論を踏まえ、暗号制度技術を統治合理性の変容の内部から生じた制度的媒体として捉える。あわせて、それが革命概念と実存の理解にどのような再編をもたらすかを、マルクスとの対比を通じて論じる。

統治合理性の転換

政府の統治という文脈においてミシェル・フーコーが『The Birth of Biopolitics』で示した歴史的転換とは、政府を制限する原理が、公法における権利の外的限界から、政治経済学が示す内在的合理性へと重心移動したことであった。政府は統治を臣民の権利による不可侵領域を外部から制限されるのではなく、市場や人口に内在する自然メカニズムを読み取り、それに従って自己を制限するものとして構想された。

その後、この統治合理性は規律と安全の技術を組み合わせながら精巧化し、ジル・ドゥルーズが『Postscript on the Societies of Control』で示した通信技術による管理のもとで連続的追跡と変調を行う管理社会へと展開した。しかし、ここで重要なのは、その変調のために用いられた通信技術が、同時に別方向の変化をもたらしたことである。

計算機科学や暗号学、さらには国家的秩序ではなく自生秩序を重視した政治経済学の一部が接続されることで、政府が市場の指標を読み取り政策を行う統治とは異なる様式が現れた。そこでは、実行環境が事前に仕様化された条件に従ってデータを検証し、状態遷移や権限行使の可否を判定し、そのまま執行する。ここで生じているのは、市場の自然メカニズムを読み取る合理性から、制度執行の条件そのものを形式的に構成し実行する合理性への転換である。

したがって暗号制度技術は、管理社会の外部に突然出現した異物ではない。むしろ、それを可能にした統治の合理化の過程において同じ通信技術が今度は統治そのものを再設計し、抵抗と自己統治を可能にする条件を開いた歴史的な転換点として理解される。

暗号制度技術は、これまでの統治の正統性や合理性の問題を消去するのではない。むしろ、それらを統治者の人格・判断・代表性の問題としてではなく、参加条件の明示性、ルールの検証可能性、執行の予見可能性、退出可能性といった制度設計の問題として再配置する。

政治的支配の再編

この統治理性の転換と制度の再配置は、マルクスが問題化した生産手段の配分とは異なる制度手段の配分という別種の問題へと接続される。ここで制度手段とは、判断・裁定・執行といった意思決定を実効化する手段を指す。

マルクスが、生産手段の私的所有と賃労働の関係が生む経済的収奪と疎外を問題化したのに対し、暗号制度技術は、制度手段を独占する特権主体が生む政治的支配と疎外を問題化する。暗号制度技術の特異性は、この制度手段を分散化し、代替可能にし、部分的に共有可能にする点にある。

マルクス以後、知識や設計の共有という可能性は、公開された論文やオープンソース・ソフトウェアの発展を通じて一定程度まで具体化された。しかし、暗号制度技術が切り開いたのは、知識や設計の共有にとどまらず、意思決定の一部を、公開されたルールのもとで作動可能なかたちで共有可能にした点にある。

分散台帳、公開プロトコル、オープンな検証、退出可能性を備えた暗号制度技術は、貨幣・記録・執行、さらには意思決定の一部を、特定主体の独占的裁量から切り離す。そこでは、単一の管理主体が制度を独占するのではなく、多数の参加者が記録、検証、維持のための資源を持ち寄ることで、その作動を共同で支える。

このとき作動するのは、単一制度への従属ではなく、制度間の代替可能性と退出可能性によって、特権的な制度供給者の独占的地位と超過利得を圧縮する力学である。したがって暗号制度技術は、経済的収奪とは異なる仕方で作用する政治的支配と疎外を低減し、新たな実存の制度的媒体として理解される。

神話の記述から実存と統治の記述へ

暗号制度技術の登場によって、抵抗は単なる批判の言葉ではなく、制度設計を通じて現実に接続しうるものとなった。

マルクスの『資本論』において権力の中心問題は、生産手段の私的所有に支えられた階級支配と経済的収奪の構造にあった。そのため革命は、そうした矛盾を担う主体による解放として構想されやすかった。他方でフーコーは、権力を単なる抑圧ではなく主体を生成し、社会の網の目に浸透するものとして捉えた。この権力論の転換によって、革命を大きな物語として語る神話的言説はもはや維持しがたくなった。

しかし、同時に、新たな媒体の登場によって抵抗を単なる言説にとどめず、制度の設計と利用を通じて現実に接続する可能性も開かれた。そこでは自由とは、支配や疎外への抵抗を言葉の表明にとどめず作動する制度として実装しうる政治的選択の可能性として捉え直される。

したがって革命とは、もはや遠い未来の神話ではなく、実存と統治のあいだに持続的な差異を作り出していく制度的実践として理解されるのではないか。

議論

本稿では、暗号・分散技術の政治的価値を論じるための方法論としてポストWeb3を提示し、それを用いて法との原理の違いから暗号・分散技術による制度の特異性とその一般的価値、これらの技術を支えた背景や設計思想の条件、さらにそれらがいかに統治への抵抗の媒体として実存へ接続されうるかを論じた。

もっとも、本稿で提示した議論は、各論に十分立ち入るには紙幅が限られていたため全体として抽象度の高い理論的整理にとどまっている。とりわけポストWeb3の方法論については、政治と経済の双方からより厳密な検討を進める必要があり、その意味で本稿は完成形というよりも今後の研究と設計のための足場の提示である。

また、「コードの無精神」という概念も法とコードの差異を示すための表現として導入したが、法哲学的に見ればなお粗さを残している。さらに、技術史の記述についてもサイファーパンク、プライバシー保護技術、第三者への信頼性の最小化、分散台帳の成立を一つの流れとして描いたが、実際にはより多面的で複線的な経路が存在しているはずである。最終章においても、実験的・思弁的な概念を多く導入したため、議論には飛躍や混線が残っている。

しかし、本稿で示したかったのは、暗号・分散技術が単なる投機の対象でも抽象的な理想の記号でもなく、統治や主体化の条件を書き換えうる技術であるという点である。Bitcoinやそれに連なる技術群が切り開いた政治利用の可能性は、いまだ十分に掘り下げられていない。今後は、本稿で提示したフレームワークをより具体的な事例へ接続しながら、実存と統治の媒体としての技術を研究開発の対象として深めていきたい。

以上

株式会社インバースについて

株式会社インバースは、「Beyond Bitcoin」をミッションに、暗号制度技術を活用した事業を展開。国内外の企業様に自社サービスを提供しています。また、Web3財団からプライバシーとスケーリング分野の助成金を世界最多で獲得、Microsoft、Ethereum、Zcash、Polkadot、Astar等のオープンソースプロジェクトへの貢献、東京大学との共同研究により暗号理論の学術論文の発表実績があります。

本社所在地:〒111-0056 東京都台東区小島2丁目20-11 LIGビル
HP:https://invers.tech/

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会社概要

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URL
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業種
情報通信
本社所在地
東京都台東区小島2丁目20−11 LIGビル
電話番号
090-2219-4390
代表者名
芦沢晋作
上場
未上場
資本金
980万円
設立
2022年11月