【徳島大学】多様なウイルスに対する紫外線LEDの「最適波長」を解明~A型インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなど多種類のウイルスで作用スペクトルを比較~
令和8年7月28日
国立大学法人徳島大学
https://www.tokushima-u.ac.jp/
■ポイント
・ 紫外線LEDの波長別殺菌効果(作用スペクトル)を、多種類の病原微生物を対象として初めて体系的に解明。
・ 徳島大学と日亜化学工業株式会社が共同で標準評価装置を開発し、Purdue大学との共同研究により性能検証・最適化を実施。
・ 250~365 nmの13種類の紫外線LEDを搭載し、同一条件下での比較・評価を実現。
・ 多くのウイルスで、263~270 nm付近の紫外線LEDが、従来の低圧水銀ランプの主波長(254nm)よりも高い不活化※1効果を示すことを確認。
・ 紫外線LEDを利用した殺菌・除菌システムの設計や性能評価の科学的基盤となることが期待。
■概要
大学院医歯薬学研究部医学域栄養科学部門予防環境栄養学分野の馬渡一諭准教授、髙橋章教授、上番増喬助教、石川寧子博士、大学院社会産業理工学研究部理工学域電気電子システム分野の榎本崇宏教授、日亜化学工業株式会社、Purdue大学のErnest R. BlatchleyⅢ教授の共同研究グループは、紫外線発光ダイオード(LED)の波長ごとの殺菌効果(作用スペクトル)を多種類の病原微生物を対象として初めて体系的に明らかにしました。
感染症対策として、空気や水、環境表面を紫外線で除菌する技術への期待が高まっています。近年は、水銀を使用する従来の殺菌ランプに代わり、省エネルギーで長寿命、小型化が可能な紫外線LEDの実用化が進んでいます。しかし、「どの波長の紫外線LEDが、どの病原微生物を不活化するために最も効果的なのか」を同一条件下で比較したデータは限られており、紫外線LEDを用いた除菌機器の設計や性能評価の基盤となる科学的根拠が求められていました。
今回、本研究グループは、250~365 nmの13種類の紫外線LEDを高精度に照射できる標準評価装置を日亜化学工業株式会社と共同開発し、A型インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスを含むコロナウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、ネコカリシウイルス、大腸菌ファージなど、多種類の病原微生物に対する紫外線LEDの波長別殺菌効果(作用スペクトル)を同一条件下で評価しました。その結果、多くのウイルスでは263~270 nm付近の紫外線LEDが最も高い不活化効果を示すことを明らかにしました。
本成果は、紫外線LEDを利用した空気清浄機、空調設備、水処理装置、医療機関、食品製造施設などにおける殺菌・除菌システムの設計や性能評価の科学的根拠として活用されることが期待されます。
本研究成果は国際学術誌『Viruses』(2025年7月30日)及び『Microorganisms』(2025年12月9日)のオンライン版に掲載されました。また、2026年7月28日に本研究成果に関する記者発表が行われました。
■研究内容と成果
感染症対策として、空気や水、環境表面を紫外線で殺菌・除菌する技術への期待が高まっています。近年では、水銀を使用する従来の紫外線殺菌ランプに代わり、省エネルギー、長寿命、小型化が可能な紫外線LEDの実用化が進んでおり、医療機関、食品製造施設、公共施設、空気清浄機、水処理装置など幅広い分野への応用が期待されています。
一方で、紫外線LEDにはさまざまな発光波長が存在することから、「どの波長の紫外線LEDが病原微生物を不活化するために最も効果的なのか」「必要な照射量はどの程度か」という基本的な課題が十分に解決されていませんでした。特に、紫外線の波長別殺菌効果(作用スペクトル)については、詳細な科学的根拠が不足しており、研究ごとに使用するLEDの波長や照射装置、評価対象となる病原微生物が異なるため、結果を直接比較することが困難でした。そのため、紫外線LEDを利用した殺菌・除菌機器の設計や性能評価に必要な統一的なデータが求められていました。
これらの課題を解決するため、光デバイス開発で世界をリードする日亜化学工業株式会社と、紫外線による微生物制御の研究を進めてきた徳島大学大学院医歯薬学研究部医学域栄養科学部門予防環境栄養学分野を中心として、大学院医歯薬学研究部に共同研究講座「微生物防除研究分野」を設置しました。本共同研究講座では、高精度かつ再現性の高い標準化紫外線照射評価システムを共同で開発しました(図1)。
本システムには、主波長250~365 nmの13種類の紫外線LEDを搭載しており、異なる波長の紫外線LEDを同一の照射条件下で比較・評価することができます。また、本システムは、紫外線殺菌工学の世界的専門家であり、国際紫外線協会(International Ultraviolet Association:IUVA)会長を務める米国Purdue大学のErnest R. BlatchleyⅢ教授のもとで性能評価を実施し、さらなる最適化を行いました。

本研究では、A型インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスを含むコロナウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、ネコカリシウイルス、大腸菌ファージなど、現在の感染症対策において重要な病原微生物を日米のバイオリソースセンターなどから分譲を受け、本評価システムを用いて同一条件下で紫外線LEDによる不活化効果を評価しました(図2)。

また、A型インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスを含むコロナウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、ネコカリシウイルスなどのウイルスに加え、大腸菌ファージを対象として、紫外線LEDによる波長別殺菌効果(作用スペクトル)を解析しました。その結果、多くのウイルスでは263~270 nm付近の紫外線LEDが高い不活化効果を示すことを明らかにしました。この波長域は、これまで殺菌光源として広く用いられてきた低圧水銀ランプの主波長(254 nm)よりも長波長側に位置しており、不活化効果も254 nmより有意に高いことが確認されました(図3)。このことから、紫外線LEDを用いた殺菌システムでは、254 nmではなく263~270 nm付近を選択することが、より効率的な殺菌につながる可能性が示されました。これらの結果は、従来254 nmを基準としてきた紫外線殺菌の考え方を見直し、紫外線LEDの特性を活かした最適な波長設計が重要であることを示しています。

■今後の展望
本研究では、多種類の病原微生物に対する紫外線LEDの波長別殺菌効果(作用スペクトル)を同一条件下で評価し、紫外線LEDを用いた殺菌技術の設計や性能評価の基盤となるデータを整備しました。これらの成果は、空気清浄機、空調設備、水処理装置、医療・食品分野などで利用される紫外線LED殺菌・除菌システムにおいて、適切な波長を選択するための科学的根拠として活用されるとともに、性能評価や標準化の推進にも貢献することが期待されます。今後は、本研究で得られた作用スペクトルを活用し、用途に応じた最適波長の選定や紫外線LED殺菌機器の高性能化・省エネルギー化を進めることで、医療、食品、公共施設、水処理など幅広い分野における感染症対策への貢献を目指します。
■研究プロジェクトについて
本研究は、日本学術振興会の科学研究費補助金(課題番号23K18578及び25K00743)の支援を受けて実施されました。
■用語解説
※1)不活化
ウイルスなどの感染力(活性)をなくすこと。
※2)プラーク形成単位(PFU:Plaque-Forming Unit)
感染力(感染力価)を表す単位。ウイルスが宿主細胞に感染すると、細胞が変性し、プラークを形成します。
■論文情報
雑誌名:Viruses 第17巻・第8号・1065ページ
論文名:Viral Inactivation by Light-Emitting Diodes: Action Spectra Reveal Genomic Damage
as the Primary Mechanism
著者名:Kazuaki Mawatari, Yasuko Kadomura-Ishikawa, Takahiro Emoto, Yushi Onoda,
Kai Ishida, Sae Toda, Takashi Uebanso, Toshihiko Aizawa, Shigeharu Yamauchi,
Yasuo Fujikawa, Tomotake Tanaka, Xing Li, Eduardo Suarez-Lopez,
Richard J Kuhn, Ernest R Blatchley 3rd, Akira Takahashi.
公開日時:2025年7月30日にオンライン版に掲載
DOI:http://dx.doi.org/10.1109/ACCESS.2025.3561147
雑誌名:Microorganisms 第13巻・第12号・2798ページ
論文名:Evaluation and Comparison of the UV-LED Action Spectra for Photochemical
Disinfection of Coliphages and Human Pathogenic Viruses
著者名:Kazuaki Mawatari, Yushi Onoda, Yasuko Kadomura-Ishikawa, Takahiro Emoto,
Momoka Yamaguchi, Nozomi Hirano, Sae Toda, Mina Matsubara,
Takashi Uebanso, Toshihiko Aizawa, Shigeharu Yamauchi, Yasuo Fujikawa,
Tomotake Tanaka, Xing Li, Eduardo Suarez-Lopez, Richard J Kuhn,
Ernest R Blatchley 3rd, Akira Takahashi.
公開日時:2025年12月9日にオンライン版に掲載
DOI:https://doi.org/10.3390/microorganisms13122798
■関連リンク
・徳島大学×J-PEAKS
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
