「Japan CDO of The Year 2025」受賞者決定
~AIを軸に産業DXと顧客中心のデータ経営を牽引する2氏を選出~
奥山 博史 氏(ヤンマーホールディングス株式会社 取締役 DX担当(CDO))
西畑 智博 氏(株式会社JALカード 代表取締役社長 CEO)

企業のデジタル変革を牽引したリーダーを表彰する「Japan CDO of The Year 2025」で、ヤンマーホールディングス株式会社取締役の奥山博史氏と、株式会社JALカード代表取締役社長の西畑智博氏が選ばれた。一般社団法人CDO Club Japanが、2025年12月11日に都内で開催した「CDO Summit Tokyo 2025 Winter」で発表し、表彰式を実施した。
「Japan CDO of The Year」は、データ・デジタル・AIを経営の中核に据え、企業や産業の変革を実装してきた最高デジタル責任者、最高データ責任者(CDO)を表彰するアワードである。2025年は、AIを前提に事業構造や顧客価値の再設計に踏み込み、日本企業のDXを次の段階へと押し上げた取り組みを評価し2名を選出した。
昨年は金融機関(SMBC)の磯和氏が受賞したのに対し、今年は製造業および顧客接点を持つ企業で、産業DXとデータ経営の実装を進める2氏が受賞した。CDO Club Japanでは、こうした結果を国内企業におけるDXの広がりを示すものと捉えている。
奥山博史氏(ヤンマーホールディングス株式会社)受賞理由
奥山氏は、ヤンマーグループにおいて、現場主体のボトムアップの改革と、全社的なデータ基盤整備を両輪で推進。データ経営およびAI活用を経営課題として明確に位置付け、グループ全体のDXを推進した。
また、「SAVE THE FARMS by YANMAR」に象徴される一次産業DXへの挑戦では、DXを単なる業務効率化にとどめず、企業のパーパスに基づき事業定義そのものを再設計する取り組みを推進しており、その活動は産業構造の変革に踏み込んだデジタル変革として高く評価された。
西畑智博氏(株式会社JALカード)受賞理由
西畑氏は、JALカードにおいて顧客データを活用した経営改革を主導。元JALのCDOとしての基幹システム刷新の経験を踏まえ、顧客接点を起点とするデータ経営を推進している。
また、約360万人の会員データを活用したクラスタリングやペルソナ設計に加え、AIバーチャル顧客同士によるディスカッションなど、AIが人間社会や意思形成に介在する時代を見据えた実証的な取り組みにも挑戦しており、AI時代の顧客価値創出モデルを実践的に示した点が評価された。
CDO Club Japanの評価コメント
CDO Club Japanは、両氏の活動は、AIを前提に産業と顧客の双方で変革を実装している点について、日本企業のDXが次の段階へ進んだことを象徴する事例であり、両者は、その推進リーダーとして極めて模範的な存在であると位置づけている。
Japan CDO of The Yearについて
CDO of The Year(グローバル)
CDO Club(米国)では、2013年より、毎年CDO of The Yearを開催。2013年は、オバマ氏の大統領就任に当たり、「WhiteHouse.gov」の作成を担当したTeddy Goff氏。2015年は、スターバックスのCDOのAdam Brotman氏、2017年は、IBMのGlobal Chief Data OfficerのInderpal Bhandari博士などが受賞しています。また、オーストラリアのナショナルラグビーリーグのCDOや英国政府のCDO、ニューヨーク市のCDOなど様々な組織のCDOが受賞しています。
Japan CDO of The Year
「Japan CDO of The Year」は、データ・デジタル・AIを経営の中核に据え、
企業や産業の変革を実装してきた最高デジタル責任者(CDO)を表彰するアワードです。
日本企業におけるCDOの役割と価値の社会的認知向上を目的に、毎年実施しています
Japan CDO of The Year選考委員について(敬称略)
神岡 太郎(一橋大学 名誉教授 / 一般社団法人CDO Club Japan顧問)
加茂 純 (一般社団法人CDO Club Japan 代表理事)
一般社団法人CDO Club Japan 理事会
CDO Club global CDO of The Year committee
Japan CDO of The Year 2025 受賞者ならびに受賞理由
Japan Chief Digital Officer of The Year 2025(最高デジタル責任者賞)
ヤンマーホールディングス株式会社
取締役チーフデジタルオフィサー(CDO)
奥山 博史 氏

プロフィール
1998年東京大学大学院理学部修士課程修了後、住友商事㈱入社、化学品部門でマーケティングを担当。2004年コロンビア大学経営大学院留学(MBA取得)をはさみ、在スイスのInteracid Trading S.A.社へCFOとして出向。2008年ボストンコンサルティンググループ入社、戦略立案・実行、ガバナンス、マーケティングなど幅広い領域で企業を支援。2015年ヤンマーホールディングス入社、経営企画部長、マーケティング部長などを務める。 2018年ヤンマー建機㈱専務就任、翌年同社長就任。 2022年6月よりヤンマーホールディングス㈱取締役 CDO就任 ヤンマーグループ全体のデジタル化の推進を通じたお客様への新たな価値の提供に繋げるべく、推進中。
受賞理由
奥山氏のDX推進で評価されたのは、日本の製造業が持つ組織文化や現場特性を踏まえ、実効性と持続性を両立したDXの進め方を構築した点である。
同氏は、トップダウン一辺倒では浸透しにくい製造業の特性を踏まえ、ボトムアップによる自発的な改善活動を起点とする「草の根DX」を推進した。現場の納得感と主体性を引き出す仕組みを構築すると同時に、全社横断のデータ基盤整備を経営施策として進め、経営の意思決定に直結するデータ経営を実装してきた。
現場主導の変革と、全社的な基盤・仕組みづくりを両輪で進める同氏のアプローチは、DXを一過性の取り組みに終わらせないモデルとして評価されている。個別最適や短期的な改善に留まりがちな製造業DXに対し、持続性のある推進モデルを示した点は、業界全体にとって重要な示唆を与えるものである。
AI領域においても、早期に明確な責任体制を構築し、自らが推進責任を担うことで、AIを実験的な取り組みにとどめず、経営アジェンダとして実装を進めてきた。AIを前提とした意思決定と業務変革を進めた点は、AIシフトが進む時代における経営のあり方を示している。
さらに、「SAVE THE FARMS by YANMAR」に象徴される一次産業DXへの取り組みでは、DXを既存事業の効率化にとどめず、企業のパーパスに基づき事業定義そのものを再設計してきた。一次産業という社会的基盤をDXの対象とし、持続可能な農業の未来を構想・実装している点は、CDO Clubが提唱する「DXとは、企業の存在意義と社会価値を再設計する営みである」という考え方を体現した象徴的な実践例といえる。
これらの取り組みを総合的に評価し、CDO Club Japanは、産業DXを構想段階にとどめず、持続的に回し続ける経営モデルを提示した点、ならびにCDOという役割の社会的認知と価値向上に貢献した点を評価し、「Japan Chief Digital Officer of The Year 2025」に選出した。

Japan Chief Data Officer of The Year 2025(最高データ責任者賞)
株式会社JALカード
代表取締役社長 CEO
西畑 智博 氏

プロフィール
1984年東京大学工学部卒業、日本航空入社。以来「ITとビジネスの融合」がテーマ。 IT部門等を経て1995年より国内営業部、商品開発部eビジネス推進チーム・マネージャーとしてJALのeビジネスを立ち上げ、推進。 2009年より国内営業部長、Web販売部長を経て、2014年より執行役員として、旅客基幹システムを50年ぶりに刷新する SAKURAプロジェクトを担当し、2017年にサービスイン。 2018年よりイノベーション推進本部長、2019年常務執行役員 デジタルイノベーション本部長として 「JAL Innovation Lab」や「JAL Innovation Fund(CVC)」等を構築し、JALのDXとエアモビリティ等の新規事業創造を推進。 これらのJALの取り組みは、2018年 IT Japan Award 「グランプリ受賞」、2019年 IT協会「IT最優秀賞受賞」、2021年 経産省・東証「DX銘柄2021」に選定。 2022年6月より現職に就任、DX経営に挑戦中。
受賞理由
西畑氏は、JALにおける史上最大規模の旅客基幹システム刷新「SAKURAプロジェクト」を主導した実績を持ち、その経験を現在のDX推進に一貫して活かしてきた。
同氏は、DXを「基盤(下半身)」「デジタル顧客接点(上半身)」「データ・AI活用(頭脳)」の三層構造で整理するフレームワークを提示し、AIと従来技術の役割分担や進化の関係性を明確化した。DXとAIが不可分であることを、経営と現場の双方にとって理解しやすい形で示した点は、日本企業がAI時代にDXを再定義する上で重要な示唆を与えている。
JALカードにおいては、同社を単なるクレジットカード会社から「データ・ビジネス・カンパニー」へと転換するビジネスモデル変革を推進した。さらに、その取り組みをJALグループ全体の変革メカニズムの中核に位置付け、旅行サービス企業から、CXを軸に生活体験を創出する企業への進化を支える役割を果たしている。データを起点に事業構造そのものを変えていく思想を、実装として体現した点が評価された。
具体的なデータ活用においては、約360万人のJALカード会員データを基にクラスタリングを行い、ペルソナ設計を実施した。さらに、AIバーチャル顧客同士によるディスカッションなど、AIを分析ツールにとどめない実証的な取り組みを進めている。AIが意思形成や価値創出に関与する可能性を検証した点は、AI時代のデータ活用の新たな可能性を示している。
また、元JALのCDOとしての経験を踏まえ、CDOからCEOへと進化するキャリアを体現している点も特徴である。JALカードのCEOとして、トップ自らが変革を主導し、ビジネス部門・IT部門・現場を一体化する「One Boat」体制を構築した。また同氏は、DXは「人」と「テクノロジー」の両輪で成立するとの考えのもと、組織や人事制度の見直しにも取り組んでいる。
これらの取り組みは、2025年単年の成果にとどまらず、同氏が一貫してデジタル、ビジネス、人の関係性を追求してきたキャリアの集大成といえる。
デジタルの専門性を起点に経営変革を実装するリーダー像を示してきた点について、CDO Club Japanは、今後デジタルを志すビジネスパーソンにとって示唆に富むロールモデルであると評価し、「Japan CDO of The Year 2025」に選出された。

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