未分化型早期胃がんに対する内視鏡治療(ESD)の有効性を10年間の長期にわたる経過観察で検証~未分化型も内視鏡治療で胃の温存が可能~

国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 従来は外科的に胃の切除が行われていた未分化型早期胃がんに対し、胃を残せる内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD)の有効性を10年間の長期経過観察によって確認しました。

  • 過去の検討から、未分化型早期胃がんでは、治療後5年以降の転移や再発の可能性が懸念されていましたが、ESDでがんを完全に取り切り、追加の手術が不要と判断された患者さんの5年以降の転移や再発は極めてまれであることが確認されました。

  • また、定期的な内視鏡検査によって、新たに胃がんが発生した場合にも、多くは再度のESDによって、胃を温存することが可能であることが証明されました。

  • 胃の切除後には、胃切除後症候群と呼ばれる様々な後遺症が生じるため、胃を残せるESDの長期的な有効性が示されたことは、多くの患者さんの生活の質に貢献する研究成果です。

  • 本研究の成果は、未分化型早期胃がんに対するESDの長期の治療成績を示した世界初の報告として、消化器分野を代表する国際的学術誌「Gastroenterology」に掲載されました。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:間野 博行、東京都中央区)中央病院(病院長:瀬戸 泰之)が中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG(ジェイコグ):Japan Clinical Oncology Group)では、科学的証拠に基づいて患者さんに第一選択として推奨すべき治療である標準治療や診断方法等の最善の医療を確立するため、専門別研究グループで全国規模の多施設共同臨床試験を実施しています。


胃がんは、早期であっても悪性度が高いと考えられている未分化型という組織型では、外科的な胃の切除が行われてきました。しかし、胃を切除すると胃切除後症候群と呼ばれる様々な後遺症が生じるため、JCOG消化器内視鏡グループおよび胃がんグループでは未分化型早期胃がんに対して、胃を温存できる内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術、以下ESD)の有効性を評価する臨床試験を進めてきました(JCOG1009 /1010試験)。その結果、一定条件を満たす未分化型早期胃がんに対するESDの5年全生存割合は99.3%という治療成績を示し、2021年改訂の日本の胃がん治療ガイドラインで標準治療とされました。一方で、未分化型早期胃がんは生物学的に悪性度が高いことから、治療後5年を超えた時期に転移や再発が生じる可能性があり、5年の検証では不十分ではないかという指摘があったため、本試験の観察期間を延長し、10年でのESDの治療成績を評価しました。


その結果、ESD後の10年全生存割合は96.2%、無再発生存割合は95.7%と、胃を切除する外科手術に劣らない治療成績が示されました。また特に懸念されていた5年以降の転移や再発は、治癒切除(ESDでがんを完全に取り切り、追加の手術が不要と判断された状態)が得られた患者さん195名のうち10年間でわずか1名でした。また、ESD後は定期的に内視鏡検査を行うことにより新たに発生した胃がん(異時性胃がん)を発見した場合も、多くは再度のESDで治療が可能であり、10年後も胃を温存したまま生活できていることが証明されました。


本研究は、未分化型早期胃がんに対するESDの10年全生存割合を、世界で初めて前向きコホートで評価した報告です。本報告は、日本の胃がん治療ガイドラインで推奨されているESDの妥当性を強固に裏付けるとともに、未分化型早期胃がんに対するESDに慎重な海外のガイドラインにおいても、ESDが新たな治療選択肢として位置づけられることや世界中の患者さんの生活の質(QOL)の向上への貢献が期待されます。


本研究成果は、消化器分野の国際的学術誌である「Gastroenterology」に米国東部時間2026年8月6日(日本時間2026年8月7日)に掲載されました。

展望

本研究成果により、一定の条件を満たす未分化型早期胃がんに対するESDの長期的な有効性が確立され、今後は世界的にも標準治療として普及が進むことが期待されます。
ただし、本治療の良好な成績は、「腫瘍が粘膜内にとどまり、潰瘍がなく2 cm以下」という厳密な条件を満たしたがんを正確に診断・切除し、さらに治療後も定期的な内視鏡検査による適切な経過観察を継続することによって初めて成り立つものです。今後は、より精緻な術前診断技術の向上を目指すとともに、異時性胃がんの早期発見・再治療体制の構築に取り組み、患者さんの手術による負担を抑えながら、胃を温存した質の高いがん医療の普及を目指します。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

詳細情報

本研究の詳細などはこちらのページでご確認ください。

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会社概要

URL
https://www.ncc.go.jp/jp/index.html
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都中央区築地5-1-1
電話番号
03-3542-2511
代表者名
間野 博行
上場
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資本金
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設立
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