喪失と記憶の巡回を描く画家 石神 雄介 個展「Echoes / エコーズ」を開催(2026年5月16日(土)~5月31日(日) Quadrivium Ostium)
人である限り常に心の奥底で揺れ動く喪失の情動を油彩に描く石神雄介。深い思索にもとづく作品は2022年FACE展で優秀賞を受賞するなど、いま注目を浴びている作家の個展です。
ギャラリーQuadrivium Ostium(株式会社Quadrivium、神奈川県鎌倉市、代表:黒田幸代)は、2026年5月16日(土)から5月31日(日)まで、石神雄介の個展「Echoes / エコーズ」を開催いたします。
【ギャラリーWebページ】 https://quadriviumostium.com

【Message】Echoes/エコーズ (Quadrivium Ostiumでの個展に寄せて) 石神 雄介
月明かりの中、波打ち際を歩いた。
何か大切なものをなくしてきた。
心の片隅でそっと赦しを乞うた。
私たちはただ、あてどなく彷徨った。
微かな光が水面に散らばっていた。
夜空の星を眺めるときには
絵画の持つ引力、絵画の持つ斥力を考える。
絵画同士が持つ磁場のようなもの
無意識が孕む巨大な力と、意志の持つ強くて弱い力について考える。
どんなに大きな単位の力も、どんなに小さな単位の力も、この均衡を形作るために必要なのだろう。
深い森を歩く、誰かの夢の入り口に出会して。
不思議な光、怪しい出来事、獣たちの気配、懐かしい匂い、遠くの水源、ふとした瞬間によぎる面影、夜空に充満する怖いくらいの星明かり。
僕はひとより少し夜目が効く。
一枚の絵が生まれるとき、過去の記憶と現在の観察と未来のイメージが、結ばれたり重なったりしながら、描画材と支持体によって現像されてゆく。
いくつかの絵が集まり、ひとつの展示を形作る。イメージが空間の震えを呼び、人は反響や共鳴を起こしながら振動を飲み込み、経験してゆく。
絵も私たちも引き合い、反発して、響き合う。
過去現在未来も重なり、繋がり、共鳴している。
いま、私たちが希望と共に引く一本の線は、過去も未来も変えてしまうような、大きな、大きな力を蓄 えている。
ああ、誰かに会いたい。
いつか肉体を手放した彼らは、今頃どうしているだろうか。
今の姿の彼らに、今の姿の僕が会って、果たして分かるだろうか?
過ぎ去ったあの日々には、答え合わせが訪れることはない。
ときに絵画制作はまるで時間を遡る作業のように感じる。
生成と崩壊は裏表の関係で、互いに映像の再生と逆再生の関係のように思える。
「既に頭の中にある、未来に存在している絵」のイメージに向かって、画面の中で必要な部分が描き集められていく。
未来のイメージが、描かれた過去へと置き換わってゆきながら、絵画は常に現在という完成へ向かい続け、そう在り続けようとする。
それはさながらプラモデルのように、この世界にバラバラに散逸した部品を集めて、定められたあるべき形に組み上げられていくような感覚だった。
そして今の私には、この先に大きな展示が待っていて、その成立のために必要なものを少しづつ集めている感覚がある。
この場所は蒐集品の停留所のようだった。
すべてのものが次の状態へ移行する途中であるように感じた。
きっと絵画も人も社会も、完成など無く、次の状態へ移っていく。
その時々に美しい様を見せて、その光景は目に焼きつき、次の状態へ影響を与えている。
私たちには本来分節された時制はなく、ゆるやかに溶け合う過去と未来のグラデーションを生きる。
だからこの目は何世紀も過去を見はり、この手は何世代も未来に触れ得る。
絵画も人も、分節された意味を越境するための「記憶とイメージの器」のように思える。
目を凝らす。
暗闇の中に二ツ(ふたつ)の光が浮かんでいる(ような気がする)。
透き通るガラスのような眼の奥底には、人間のような迷いは無かった。
野性の選択をする言葉が、鼓膜を突き抜けて脳みそを震わせている。
私は展示のたびにいくつか言葉を選び、制作が持つ意味を、少しだけ触れられる状態にしたいと試みる。
けれども誠実であろうとする程に、それはスルスルと手の中から滑り落ちてゆくような、ありきたりで曖昧な言葉になろうとする。
きっとまだ私は、正確な「その言葉」を知らないのだと思う。
果たして世界のどこかに「その言葉」は存在するのだろうか?
もしかしたらそれこそが私たちの祖先からの智慧で、言い表せないその領域の存在こそが、私たちたり得るために必要なのかもしれない。
絵画はその領域を示しながら、判然としないままに語られ続けるように在ろうとしている。
それは目前の絵画から
背後の記憶から
私からあなたへ
(あなたから私へ)
或る時空から、別の或る時空へ
果てしなく呼応するこだま
Echoes(エコーズ)
見どころ ① 絵画と言葉 Concept —「Echoes /エコーズ」の 概念と文脈
『月明かりの中、波打ち際を歩いた。何か大切なものをなくしてきた』石神雄介(以下『』=石神)
喪失の情動はいつの時代も、どの土地においても、人が人であるかぎり消えることのない普遍のものです。石神雄介は、わたしたちの心の奥底でひそかに揺れ動くこの情動を、油彩に定着させながら、記憶をモチーフに、時間、土地と移動、無意識と意志の交差点を描き続ける画家です。石神の特長は、言葉と絵画がともに響き合うことで作品が成立していることです。
『絵も私たちも引き合い、反発して、響き合う。過去現在未来も重なり、繋がり、共鳴している。』
「Echoes / エコーズ」=「こだま」という現象が、音が山や谷に反響しながら変容してゆくように、ひとつの記憶のイメージとそこから引き起こされる感情は、時間と空間を超えて呼応し、やがて別の誰かの内部で新たな形として現れます。
石神の作品における「記憶のイメージ」体験としてわたしの印象に残るのは、彼の曽祖父がバナナ畑で佇む小さな作品です。古いフィルムを見ているような、おぼろげな記憶の残照のようにぼんやりとした輪郭の人物のシルエットは、得も言われぬ記憶の深層心理へと導くものでした。作品と鑑賞者、過去と現在、自己と他者のあいだに働く見えない磁場こそ、石神の芸術が生まれる場所なのです。

見どころ ② 思索の旅 ―ユング、バルト― へと誘う絵画芸術
画面に繰り返し現れる水、光を携えた人物、闇の中に蠢く者は、カール・グスタフ・ユング(精神科医・心理学者1875-1961)が唱えた、人類が文化や時代を超えて共有する元型(アーキタイプ)-影、アニマ、自己-の普遍的なイメージの現代的変奏として読むことができます。そして、今展のテーマ「Echoes / エコーズ」は、ユング的な「共時性」(シンクロニシティ)-因果関係を超えた意味ある一致-の感覚とも響き合っています。
一方で、『言い表せないその領域の存在こそが、私たちたり得るために必要なのかもしれない』石神のこの言葉は、ロラン・バルト(哲学者1915-1980)が問いかけた「白いエクリチュール」―言語が意味に回収される手前のある種の沈黙の地帯-という感覚と深く共鳴します。また、『目前の絵画から、背後の記憶から、私からあなたへ、果てしなく呼応するこだま』という絵画観は、バルトが「作者の死」で述べている「エクリチュールの空間は巡回するもの」-「あらゆる折り返し、あらゆる層を通じて連続する」という考えと重なります。
絵が完成した瞬間に作者の意図から離れ、観る者の記憶や無意識と結びついて新たな「Echoes / エコーズ」=「こだま」を生み出し続けるという構造は、まさにバルト的なテキストの開放性そのものといえるでしょう。


見どころ③ 生の痕跡から生まれる普遍的な問い
このように、石神作品には豊かな思索の海原へと誘う力があります。しかし、意図的に思想を援用して描いているというより、個人的な記憶が生み出す磁場が、論理的な語りに抵抗し、直接的に鑑賞者の内部へ届けようとする「土台としての重力」を与えているようにも感じます。
私的な歴史の実存との結びつきが、彼の作品を概念的な夢想絵画に陥らせないのです。
「刺さってくる細部」(プンクトゥム)は常に生の痕跡から生まれます。普遍へと開かれると同時に深く私的であること—その矛盾を矛盾のまま抱えていられることが、石神作品の魅力と言えるでしょう。言い換えれば、石神の作品は、普遍的な問いを生きるのが「今在る」ことである、と語りかけてくるのです。(文責:黒田幸代)

石神 雄介 / いしがみ・ゆうすけ Yusuke Ishigami

1988年 千葉県生まれ
2012年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2022年 FACE 展 2022 優秀賞
2022年 Idemitsu Art Award 2022 入選
[グループ展]
2025年 「絵画のゆくえ 2025」SOMPO 美術館(東京)
2024年 「Dalston group exhibition -part6-」Gallery Dalston(東京)
「shades」REIJINSHA GALLERY(東京)
2023年 「Prologue ⅩⅣ2023」GALLERY ART POINT(東京)
「DUTCH AUCTION ART NOW VOL.3」銀座 蔦屋書店(東京)
「境界としての、ひと、情景」gallery green&garden(京都)
「たいせつなもの展-HERO-」靖山画廊(東京)
2022年 「FACE 展 2022」SOMPO 美術館(東京)
「FACE 展 選抜作家小品展 2022」REIJINSHA GALLERY(東京)
「Idemitsu Art Award 2022」国立新美術館(東京)
2021年 「ふなばし現代アート展 第 8 回 アラカルト」船橋市民ギャラリー(千葉)
2012年 「九人展」Kitchen Bar ノラや(東京)
2009年 「地獄絵図」船橋市民ギャラリー(千葉)
[個展]
2026年 「記憶のヴェール」日本橋三越本店 美術サロン(東京)
2025年 「深い森-星の旋律-」銀座 蔦屋書店(東京)
「追憶の宮殿」靖山画廊(東京)
2024年 「Play in the depths(深層の戯び)」Gallery Dalston(東京)
2023年 「A place named me」オープンスタジオ(千葉)
「SEIZAN GALLERY TOKYO 凸 石神雄介 - Call -」SEIZAN GALLERY TOKYO 凸
「INNER DRIVE」gallery blue 3143(東京)
2022年 「透明な日」 オープンスタジオ(千葉)
「Call」スタジオ 35 分(東京)
2021年 「画家の模型(眩暈と剥離)」オープンスタジオ(千葉)
2020年 「光景の背後」EFAG East Factory Art Gallery(現:葛西 A 倉庫)(東京)
2015年 「頂上への沈降」船橋市民ギャラリー(千葉)
[その他]
2024年 スペース短歌 /初谷むい(著)、寺井龍哉(著)、千葉聡(著) 時事通信社 装画
アーティスト ステートメント
身体的な経験を通じた記憶や、イメージの残滓を手がかりにして、 絵画を中心とした制作をしています。 その中で、人とは何であるか? 「私がある」とはどういうことか?を問い続けています。 場所や出来事との繋がりの中で、どのように私個人と社会が形成され、 関係していくのか。 時間や空間は「私」という感覚を通じてどのように規定されるのか。 そして、それらはどの程度の可塑性を持つのか。 私はこのような認識の問題を読み解き・書き換えることができる媒体として、 絵画と言葉、それらによって作られる空間の可能性を探求しています。 石神 雄介 2026
展覧会概要
名称:石神 雄介 個展「Echoes / エコーズ」
展示内容:絵画作品、書籍など / 作品は販売いたします
開催期間:2026年5月16日(土)~5月31日(日)
営業時間:11:00~17:00
休み:火・水・木 / 5月19日(火)、20日(水)、21日(木)、26日(火)、27日(水)、28日(木)
予約:不要
入館料:無料
会場:Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)
住所:〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
アクセス:鎌倉駅(JR横須賀線、江の島電鉄)東口4番バス乗り場より京浜急行バス(鎌倉霊園正門太刀洗/金沢八景駅/ハイランド循環)に乗車「泉水橋」バス停下車 徒歩5分
URL:https://quadriviumostium.com
ギャラリーQuadrivium Ostiumについて
デザイン建築空間で堪能するアート体験
Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)は、鎌倉にあるアートギャラリーです。店名はラテン語で「十字路の入口」を意味し「様々な時代や場所で作られた芸術品が、縁があり此処に集まり次に引き継がれていく」という思いが込められています。
「美術館のような空間に住まう」をテーマに設計されたオーナーの自邸の1階スペースを使い、ヨーロッパのアンティーク家具や民藝家具を設えた空間で、主に若手アーティストの企画展を開催しています。建築デザインは国内外のAWARDで受賞しています(※)。
※2023年 A’DESIGN AWARD 受賞(イタリア) / 2022年 神奈川県建築コンクール優秀賞 受賞


店舗概要
店名:Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)
所在地:〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
営業日・営業時間:展覧会開催中のみ開廊 (予約不要) / 不定休 / 11:00~17:00
代表者:黒田 幸代
開設日:2021年10月9日
事業内容:アート作品販売 / 古美術販売 / アート空間プロデュース / 文化イベント企画
電話:080-5430-6641
E-Mail:s.kuroda@quadriviumostium.com
古物商許可:神奈川県公安委員会許可 第 452640003484 号
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
