シスメックスとJINGS、製造現場の「暗黙知」を次世代の生産基盤へAIを活用した生産計画の高度化・標準化に向けた取り組みを実施
熟練者が担ってきた複雑な設備利用計画の判断を可視化・体系化。生産性向上と技術伝承を見据え、自動化に必要な業務要件を構築

株式会社JINGS(以下、JINGS)は、シスメックス株式会社の診断薬製品の製造現場において、熟練者の経験や知識に支えられてきた生産設備の利用計画を対象に、AIを活用した自動作成に向けた検証を実施しました。
2025年8月から2026年2月までの約半年間、JINGSが現場担当者と継続的に議論を重ねながら、日々の業務で行われている判断や手順を整理・言語化し、AIで扱える要件へと落とし込む取り組みを進めました。
対象となったのは、診断薬の製造工程において複数のタンク設備を「いつ・どの順番で使用するか」を決める生産設備の利用計画です。業界では「タンク回し表」とも呼ばれています。
熟練者の経験に支えられてきた、複雑な生産設備の利用計画
体外診断用医薬品の製造では、製品を調製するタンクと、その後の充填設備をどのような順序で使用するかという段取りが、生産を円滑に進めるうえで重要になります。
また、製造現場では、設備を効率的に活用して高い生産性を実現するための計画を、熟練者の経験に基づいて構築してきた背景があります。
こうした設備をフル稼働し、生産性を最大限まで高めるための利用計画を「タンク回し表」として整理しています。
タンク回し表を作成するためには、設備ごとの制約や製造工程上の条件など、複数の要素を踏まえながら、「どの設備を、いつ、どの順番で使用するか」を判断する必要があります。
こうした判断は、単純なルールだけで決められるものではなく、長年業務を担ってきた担当者の経験や知識に支えられてきました。
一方、自動化を進めるためには、担当者が頭の中で行っている判断を明らかにし、「何を見て、どのような順序で、どのような基準に基づいて判断しているのか」を整理する必要があります。
システムを作る前に、現場の「判断・暗黙知」を一つずつ紐解く
今回の取り組みでは、初めからAIツールやシステムを導入するのではなく、まず現場担当者が実際にどのように業務を行っているのかを理解するところから着手しました。
JINGSは現場担当者とともに、実際の立案手順や業務で使用するマスター情報を確認しながら、タンク回し表を作成する際に考慮している条件や判断の順序を一つずつ整理しました。
たとえば、
・どのような条件を確認して設備の利用順序を決めているのか
・複数の条件が重なった場合に、何を優先しているのか
・明確なルールとして定義できる判断は何か
・人による判断を残す必要がある部分はどこか
といった点について、現場で実際に行われている判断をもとに検討を進めました。
その結果、これまで担当者の経験の中に蓄積されていた考え方を、自動化を検討できる「業務要件」として整理していきました。
「AIを導入する」のではなく、「AIが使える業務」に変えていく
企業のAI活用では、AIツールを導入すること自体が目的になりがちです。
しかし、実際の業務にAIを適用するためには、その前段階として「人がどのような情報を見て、なぜその判断をしているのか」を明確にする必要があります。
特に、熟練者の経験に依存している業務では、判断基準そのものが明文化されていないケースも少なくありません。
今回の取り組みでは、JINGSが現場に伴走しながら、こうした暗黙的な判断を整理し、第三者にも説明できる形へと言語化しました。
AIに業務を合わせるのではなく、まず業務そのものを紐解き、AIで扱える状態にしていくことを重視しています。
約半年間の現場伴走を通じ、自動作成に向けた要件を整理
約半年間の取り組みを通じて、これまで担当者の経験の中に蓄積されていたタンク回し表作成時の考え方や判断条件が整理され、自動作成の実現に向けた具体的な検討を進められる段階まで要件を明確化しました。
今回の取り組みで得られた成果は、単に一つの業務を自動化するための条件を整理したことだけではありません。
これまで個人の経験の中にあった判断を言葉にすることで、業務そのものを客観的に見直し、自動化や標準化を検討するための土台をつくることにもつながりました。

製造現場の暗黙知を、AI活用につながる「要件」へ
製造現場には、長年の経験によって培われた判断やノウハウが数多く存在します。
一方で、それらすべてがマニュアルやシステム上のルールとして明文化されているとは限りません。
担当者が日々の業務の中で自然に行っている判断ほど、本人にとっては当たり前であり、言語化されていないケースもあります。
JINGSは、こうした現場の暗黙知を一方的にシステムへ置き換えるのではなく、現場担当者との対話を通じて一つずつ整理し、AIやシステムで扱える業務要件へと変換していきます。
今後も、AIそのものの導入を目的とするのではなく、企業や現場に蓄積された知識・判断・ノウハウを紐解き、現場の実務に根ざしたAI活用と業務変革を支援してまいります。
ご担当者コメント
シスメックス株式会社 ご担当チームの皆様より
高効率生産を実現する「タンク回し表」の作成は、多くの制約条件を踏まえた高度な判断が求められる業務であり、作成に多くの時間を要することや、特定の担当者への依存度が高いことも課題となっていました。
こうした課題に対し、製造現場のメンバー自らがAI活用を学びながら解決に取り組んできましたが、実際にはAIを活用する前段階として、担当者の頭の中にある判断基準やノウハウを整理し、言語化することが不可欠でした。
今回、JINGS様には単なる技術支援に留まらず、現場に深く入り込みながら私たちと同じ目線で議論を重ね、複雑な判断ロジックの整理や要件化を粘り強く支援いただきました。その伴走があったからこそ、これまで属人的で難しいと考えられていた領域に対し、AI活用による突破口を見出すことができたと感じています。
当社には海外にも複数の診断薬工場があり、同様の課題を抱える拠点は少なくありません。今回得られた知見はグローバルにも展開可能なものと考えており、AIを上手く自動化・標準化に取り込みグループ全体の生産性向上と技術伝承に貢献していきたいと考えています。
株式会社JINGS 代表取締役 三上春香より
今回、シスメックス様の製造現場における重要なテーマにご一緒させていただけたことを、大変光栄に思っています。
今回の取り組みで特に印象的だったのは、現場の皆さまが長年培ってこられた知見の深さと、より良い業務のあり方に向けて、一つひとつの判断を丁寧に紐解いていく姿勢です。
生産計画の策定には、単純なルールだけでは表現できない、現場ならではの判断や工夫が数多く蓄積されていました。シスメックス様の皆さまと対話を重ねることで、そうした知見が少しずつ言語化され、AIを活用した自動化に向けて「何をどのように扱うべきか」が具体的になっていきました。
今回ここまで検討を進めることができたのも、現場の皆さまが日々の業務や判断を惜しみなく共有し、私たちと一緒に試行錯誤してくださったからこそだと感じています。
JINGSとして、シスメックス様が大切にされてきた現場の知見を活かしながら、これからの業務のあり方を一緒に考える機会をいただけたことに、改めて感謝しております。今後も、実際の現場で価値につながる形を目指し、ご一緒に取り組んでいければと考えています。
JINGSの現場伴走型AI活用支援について
JINGSは、AIツールやシステムの導入だけではなく、実際の業務現場に入り込み、課題整理、業務プロセスの可視化、暗黙知の言語化、AI活用に向けた要件整理、検証までを一貫して支援しています。
特に、熟練者の経験や判断に依存している業務では、技術導入の前に「現場では何が起きているのか」「人は何を判断しているのか」を整理することを重視しています。
現場担当者とともに業務を紐解きながら、AIを実際の業務で活用できる状態をつくり、継続的な業務改善や自動化につなげていきます。
株式会社JINGSについて
株式会社JINGSは、AIを活用した企業の業務変革を支援しています。
現場業務の理解や課題整理、暗黙知の言語化、AI活用のための要件整理から検証・実装まで、企業の現場に伴走しながら支援を行っています。
AIを導入すること自体ではなく、現場で実際に使われ、業務の変化につながることを重視し、企業が持つ知識やノウハウをAI活用につなげる取り組みを進めています。
すべての画像
- 種類
- 商品サービス
- ビジネスカテゴリ
- システム・Webサイト・アプリ開発経営・コンサルティング
- ダウンロード
