教職員アンケート記事公開!指導要録の「行動の記録」、どう思う?

「明快な評価ができていない」の回答が96%。絶対評価としての運用の難しさとともに、在り方のついて必要性を問う声も。

全国の小中学校の指導要録や通知表に記載される、「行動の記録」。

文部科学省が下記の通りに定めた10の評価項目について、児童生徒が「各項目ごとにその趣旨に照らして十分満足できる状況にあると判断される場合」に「◯」を付ける、とされています。

引用:行動の記録の評価項目及びその趣旨(文部科学省)
   児童生徒の学習評価の在り方について(報告)(文部科学省)

評価にまつわる大きな関心事の一つとして、入試への影響度が挙げられますが、「行動の記録」が審議の対象となることを明文化している学校も存在します。

例えば千葉県では、
「〇が1つもない場合は、審議の対象とする。」
「〇が2つ以下の場合は、審議の対象とする。」
といった文言が、公立学校の一般入学者選抜に関する資料に記載されています。

参考:令和7年度 一般入学者選抜の選抜・評価方法(千葉県立千葉北高等学校 )

通知表に記載されることも多く、入試にも影響する「行動の記録」ですが、「児童生徒の行動内容と項目の関連が明確でない」「各学校により運用ルールが異なっている」といった疑問の声もあがっています。

そういった「行動の記録」の評価の実態について、全国の先生方に聞いてみました。

※「行動の記録」ではなく、文章で記す「総合所見」についての意見であると思われる回答については、本記事では掲載を割愛しました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年9月27日(金)〜2024年11月5日(火)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :54件

アンケート結果

Q1.「基本的な生活習慣」「自主・自律」「創意工夫」といった内容に関して児童・生徒を評価し指導要録に記載する「行動の記録」について、現状として明快な評価ができていると思いますか?

「行動の記録」に関して「明快な評価ができている」と答えたのは、回答者54名中2名のみ、全体の4%でした。

その他の回答者は「明快な評価ができていない」と答え、その状況について様々な報告や意見が寄せられました。

<「明快な評価ができている」と回答した方の主な意見>

・完全とはいえないが基準を設けて評価している【小学校・副校長】

<「明快な評価ができていない」と回答した方の主な意見>

・主観的にしか評価できないため。【小学校・教員】

・そもそも人によって判断基準が違うから。また、◯をつけたくても、数の制限があるから。【小学校・教員】

・クラスの中での相対的な評価になってしまっていると思うから。つまりクラス替えをすると評価が変わる可能性が高いと思う。【小学校・教員】

・生徒の個別の活動について、教員に見えていたり、教員が知っていたりすることのみ評価ができ、見えていない部分は評価できない。【中学校・教員】

・指導要録の項目では何をもってどのように評価しているのかが見えないが、要録をつけることは義務なので仕方ないと思っている。【小学校・教員】

Q2. 「行動の記録」の評価にあたって、「◯をつける数は1人4~6個」というような運用ルールが学校等で定められていますか?

「定められている」「定められていない」の回答がちょうど同数の結果となりました。

校種別の傾向として、小学校で「運用ルールが定められている」が47%だったのに対し、中学校では「運用ルールが定められている」が73%となり、小学校より厳密にルールを定めている状況が伺えました。

Q2-2. 運用ルールの詳細を教えてください。

<「運用ルールが定められている」の回答より>

・学級全体の◯の数を集計し、学年内で多すぎる/少なすぎる学級がないか確認し、大体同じ数になるように調整することになっています。△はつけてはいけないことになっています。【小学校・教員】

・だいたい1学期は何個程度、2学期3学期と少しずつ増やしていく、という暗黙の了解がある。よほどのことがない限り、○の数が横並びになるようにしている。【中学校・教員】

<「運用ルールが定められていない」の回答より>

・明文化されてはいないが、口頭ではアドバイスされる。【小学校・教員】

・ルールは定められていないが、若手の頃に際立った1つか多くて2つと教えられたことがある。【小学校・教員】

Q3. 上記の内容に関連して、あなたが思っていることや考えていることを教えてください。

<「行動の記録」は不要>

・行動の記録は、誰が得をするのか分からない。マイナスなことを伝えるツールとしては機能していたかもしれないが、今は三角はつけないので、役割は終えたのではないだろうか。【小学校/中学校・教員】

・通知票は必ず作成しなければならないものではない。中学校では内申書作成のための評価結果を、本人と保護者にサービスとして公表しているにすぎない。行動の記録も、そのサービスの一環なのだろう。不要である。【中学校・教員】

<評価の仕方の見直しが必要>

・多様性を尊重する時代に、評価の意味合いが薄れているにもかかわらず、大きな労力を注いでいる状況は続いている。評価の在り方、必要性等を見直していく時だと思う。【小学校・校長】

・指導要録の書き方、内容も見直す必要があると思う。作成が学年末になることがほとんどで、異動と重なれば大変になる。書き方も地域や学校によってバラバラで困る。【小学校・教員】

<その他の意見>

・(勤務校は◯と△で評価する形式)支援を必要とする児童をはじめ、特に△をつけることに疑問あり。適切な支援がされないまま「不適切な問題行動」とされているケースも。問題行動ほど単純化できない。【小学校・教員】

▼まとめ

そもそもの「行動の記録」は、文科省資料に「十分満足できる状況にあると判断される場合」と書かれているように、絶対評価として○を付けることが念頭に置かれていますが、実際の運用にあたっては「クラスの中での相対的な評価になってしまっていると思う」といった声や、「最低でも1つ」「進級とともに○の数を増やす」といったルールを設けているという声があがるなど、絶対評価としての運用に難しさがあることが伺えました。

そのような評価の難しさの解消に向けて、いくつかの自治体では「行動の記録」における「十分満足できる」状況や、校種・学年ごとの評価表を例示しています。地域内や学校内で評価方法や基準を揃える際には、このような資料を参考にするのもよいかもしれません。

参考:
学習評価及び指導要録の 改善等に関する指導資料(愛媛県教育委員会)
「学校に求められるこれからの児童・生徒指導」 -発達課題の視点から見た児童・生徒指導の評価について-(栃木県教育委員会)

ただ、アンケートには「行動の記録」の在り方そのものについての否定的な意見も多く、「道徳では行動を評価しないということに決まったはずなのに、これで評価するというように一貫していません」といった意見や「多様性を尊重する時代に、評価の意味合いが薄れているにもかかわらず、大きな労力を注いでいる」という意見のように、他の教育活動・理念との一貫性の観点からそもそもの必要性を疑う声も多くあがりました。

School Voice Projectでは、今後も引き続き皆さんと一緒に、適切な評価の在り方について考えていきたいと思います。

※WEBメディア「メガホン」の記事( https://megaphone.school-voice-pj.org/2024/12/post-5671/ )より、より多くお自由記述の内容がご覧いただけます。また全回答がデータもDLしていただけます。

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会社概要

URL
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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都港区浜松町2丁目2番15号 浜松町ダイヤビル2F
電話番号
-
代表者名
大野睦仁
上場
未上場
資本金
-
設立
2022年08月