日本のスポーツ界のDE&I調査報告を発表。通報窓口の有無や女性役員の割合、サステナ分野、スポンサー協賛条件など国内の各スポーツ競技団体、スポーツリーグ・クラブを対象に実施

~文部科学省で記者説明会を実施~

NPO法人プライドハウス東京は、国内のスポーツ組織におけるLGBTQ+やDE&I、サステナビリティに関する取り組みの現状を把握するための調査結果を発表します。また、2025年5月29日に文部科学省にて本調査に関する記者説明会を実施しました。

【 調査の背景 】

日本スポーツ協会によると2024年のハラスメントに関する相談件数が、過去最多の536件にのぼるなど、国内のスポーツ現場における人権分野のサステナビリティの重要性が増しています。日本ではスポーツ競技団体やクラブとしての人権・差別に対する組織的な対応窓口や全体指針が設定されていないケースが多く、特にジェンダー・LGBTQ+分野への対応が遅れている状況です。一方、DE&I(多様性、公平性、包括性)への取り組みが進む海外では、女子チームや発達障害者のチームの発足、プライドマッチの開催など、組織的に対応することで企業がスポンサードしやすい環境やファンの多様化などが促進され、持続的にスポーツ組織が発展する仕組みができあがっています。

このような状況の中、プライドハウス東京はスポーツ庁の事業支援やプロスポーツ団体にコンサルティングサービスを提供するEY Japanとの協働事業の一環として、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)及び一般社団法人work with Prideと協力して、スポーツ業界の新たなDEI指標として「スポーツ版PRIDE指標(仮称)」を開発する実行委員会を運営しています。この度、同委員会でスポーツ組織のLGBTQ+やDE&I、サステナビリティに関する取り組みの現状を把握するための予備調査を実施しました。本調査では、通報窓口の有無や女性役員の割合、サステナビリティ分野、スポンサー協賛条件のほか、LGBTQ+に対する様々な取り組み状況について、JOC加盟団体やスポーツリーグ・クラブ、各競技団体を対象に実施しました。この度、調査結果の報告を発表します。

【調査名:「スポーツ版PRIDE指標のための国内スポーツ関連組織のDE&I及びLGBTQ+/SOGIEに関する取り組み調査」】

◆方法:インターネット調査/期間:2025年3月24日~2025年4月4日

◆対象:国内のスポーツ関連組織(競技団体、プロスポーツリーグ、プロスポーツクラブ、その他の全国規模のリーグに参加しているスポーツクラブ)

◆有効回答数:31名

◆回答者が所属する団体の競技:サッカー、野球、ラグビー、陸上、水泳、バドミントン、バスケットボール、ソフトボール、アメリカンフットボール、アーチェリー

◆本調査の限界:

※スポーツ版PRIDE指標(仮称)の開発に向けた現状把握を主目的としたものであり、統計的な一般化を目的とした調査ではありません。そのため、回答数には限りがあり、調査結果はあくまで参考資料としてご活用いただくものです。

※プライドハウス東京とEY Japanによる協働プロジェクトとして実施されたものであり、回答団体にはプライドハウス東京やLGBTQ+の取り組みに関心を持つ団体が多く含まれています。こうした背景が、回答傾向に一定の影響を与えている可能性がある点もご留意ください。

【DE&I推進に関する取り組み】

1)女性役員の割合について、スポーツ庁ガバナンスコードの達成を満たしている組織は16%。

組織における女性役員の割合に関して、女性役員の割合が10%未満の組織は全体の50%を占めており、スポーツ庁ガバナンスコードの基準である40%を達成している組織は16%のみでした。また女性職員の割合については、80%の組織が女性職員の比率が50%未満であり、20%未満は全体のうち24%という結果でした。

2)DE&I専任の部署又は担当者がいる組織はわずか10%。部署も担当も存在しない組織が過半数を占める。

DE&Iを推進する部署または担当者の有無について、DE&Iを推進する部署または専任担当者のいる組織は全体の10%でした。DE&Iの部署はないが、専任又は兼任している組織は23%という結果に。また過半数の組織はDE&Iについて推進する部署が存在しておらず、担当者もいないことが明らかになりました。

3)60%の組織が多様性の尊重、差別や不平等をしないといった人権に関する方針や宣言を制定。整備されていない組織は40%。

多様性を尊重し、差別や不平等をしないといった人権に関する方針や宣言の有無について、60%の組織が差別を禁止するポリシーを組織内で制定していると回答しましたが、40%の組織はポリシーの整備をしていないことが明らかになりました。

4)約30%の組織で明文化された通報ルート・相談窓口がない又は機能してない。

組織内の活動で多様性の尊重が損なわれた時や、差別や不平等が発生した際に相談できる窓口や通報ルートがあるかについて、64%の団体が明文化された通報ルートや相談窓口があると回答しましたが、そのうち10%は通報ルートや相談窓口が機能していないと回答しました。また、全体のうち20%は「ない」と回答し、そのうち7%は設置の必要性を感じていないことが明らかになりました。

5)組織内のDE&Iを推進する上で、スポーツ庁「ガバナンスコード」やパワハラ防止法といった政策やポリシーを参考としている組織が多数。

組織内のDE&Iを推進する上で参考にしている政策やポリシーについて、スポーツ庁の「ガバナンスコード」が最も多く、次いで国内の法律である「パワハラ防止法」や、統括団体の指針、母体企業のポリシー及び戦略なども参考にしている組織が多い結果となりました。

6)DE&Iの取り組みがスポンサー企業やクラブの母体企業の協賛条件に含まれている組織はわずか13%。

DE&Iの取り組みを実施することは、スポンサー企業やクラブの母体企業の協賛条件または支援条件に含まれているかについて、13%の組織は「条件に含まれている」ことがわかりました。また40%の組織は、今後含めることを検討していると回答しました。

7)サステナビリティに関する取り組みとして「子どもの運動機械の創出」が、DE&Iに関しては「障がい者のインクルージョン」が最多。

各組織におけるサステナビリティに関する活動として、最も多かったのは子どもの運動機会の創出でした。次いで、ゴミ拾いなどの環境整備に関わる取り組みが多い結果となりました。DE&Iに関する取り組みとしては、障がい者のインクルージョンが多い結果となりました。

【LGBTQ+やSOGIEに関する取り組み】

8)66%の組織が LGBTQ+やSOGIEに関する取り組みの必要性があると回答。

組織におけるLGBTQ+やSOGIEに関する取り組みの必要性について、66%の組織が「必要がある」と回答しました。これらの背景には「安全、安心で排除しないルール作りが必要」「社会と関わる団体として、知識を得ること、アップデートを常にすることは大変重要だから」といったコメントが寄せられました。一方で、26%は「どちらともいえない」と回答しました。回答の理由として「種目特性により特にカテゴリー分けの部分が難しく踏み込めない」といった積極的な推進をためらう見解もありました。

9)LGBTQ+やSOGIEの差別禁止等に関する方針がある組織はわずか20%。

LGBTQ+やSOGIEの差別禁止等に関する方針の有無について、63%の組織がないと回答しました。また20%の組織は方針があると回答し、10%の組織はLGBTQ+やSOGIEについて実際に言及されていることが明らかになりました。

10)70%以上の組織が、職員、指導者、選手(ユース・アカデミー含む)保護者等がLGBTQ+やSOGIEに関して相談ができる窓口を未設置。

職員、指導者、選手(ユース・アカデミー含む)保護者等がLGBTQ+やSOGIEに関して相談ができる窓口を設置しているかどうかについて、73%の団体が設置していないことが明らかになりました。相談窓口がある団体は全体の20%のであることがわかりました。

11)過半数の組織はLGBTQ+やSOGIEへの理解を促進するための取り組みを未実施。

過半数の組織でLGBTQ+やSOGIEへの理解を促す取り組みは未実施であることがわかりました。いくつかの組織では、役員や管理職、従業員、指導者に対する研修を実施しています。

12)8割以上の組織では同性パートナーがいる従業員や選手、指導者向けの人事制度が整備されていない。

同性パートナーがいる従業員や選手、指導者向けの人事制度の有無について、8割以上の組織では整備されていないことが明らかになりました。人事制度を整備している組織においては、各種休暇制度や支給金、赴任手当等の制度が整備されています。

13)7割以上の組織でトランスジェンダーやノンバイナリーの従業員・選手・指導者向けの制度が未整備。

トランスジェンダーやノンバイナリーの従業員・選手・指導者向けの制度の有無について、7割以上の組織で整備されていないことが明らかになりました。制度が整備されている組織においては、「自認する性に基づく通称名の使用を認めている」や「性別で分けられるサービスや施設等(健康診断、更衣室など)」にて本人が希望する性を選択し利用できる」といった取り組みが挙げられました。

14)統括団体やスポンサー企業、母体企業からのサポートを求める組織が多数。

今後、組織内でLGBTQ+やSOGIEに関する取り組みを進めていくときにどのようなものがあるとよいかについて、リーグや日本スポーツ協会といった統括団体からのサポートを求める声が最多でした。特に、横断的な研修の実施や、スポーツ関連組織側が企業に対してより価値を提供できる可能性を示さなければいけないといった意見が上がりました。

調査の詳細:https://pridehouse.jp/wp/wp-content/uploads/2025/05/The_sports_version_of_the_PRIDE_index.pdf

尚、本調査の公表にあたり5月29日(木)に文部科学省にて記者説明会を実施しました。当日は、プライドハウス東京理事の村上愛梨と成城大学 スポーツとジェンダー平等国際研究センター 副センター長 野口亜弥氏から、調査の解説及び来年予定される第20回アジア競技大会 愛知名古屋2026を契機としたLGBTQ+に関する取り組みについて紹介しました。

また、EY Japan DE&Iリーダーで筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局 客員教授 梅田惠氏からは、経済界で先行して普及が進むPRIDE指標が企業に与えた影響について説明したほか、2016年のPRIDE指標の策定・立ち上げにも関わった経験を踏まえ「調査結果を見たときに、ダイバーシティの相談・通報窓口がない状況から20年前のビジネス界と状況と似ている」「このような組織の健全性の可視化が進むことでスポンサーがクラブ選定する際のいい指標になり得る」とのコメントがありました。

スポーツ版PRIDE指標(仮称)の詳細・構想

これまで企業とスポーツクラブ・リーグ・協会の連携は、企業の「マーケティング部」とスポーツ組織の「企業連携分野」、企業の「ダイバーシティ&インクルージョン」とスポーツ組織の「社会連携分野」といったように、ビジネスとソーシャル担当でそれぞれが分断されていました。これによりプライドマッチ等の啓発イベントやキャンペーン、DE&I研修等を実施しても一過性で終わってしまい、組織全体への浸透や事業・収益への影響が限定されていました。

しかし、スポーツ業界のDEI指標となるスポーツ版PRIDE指標(仮称)が目指す新しい連携の在り方では、企業とスポーツ組織の双方が、組織全体・横断的に連携することで、より包括的で持続的な取り組みに変わる可能性があります。この構想を通じて、スポーツ業界のDE&Iが可視化され、クラブと企業DE&Iの連携が促進することで、ファンやスポンサーの多様化・スタジアム集客だけでなく、協賛先のリスク管理や行政と連携した新規事業開発にも資する指標になることが見込まれます。

詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000120117.html

【NPO法人プライドハウス東京について】

LGBTQ+やソーシャル関連の活動を行うNPOや個人、企業とともに、「教育・多様性発信」「文化・歴史・アーカイブ」「ウェルネス・サポート」「アスリート発信」「祝祭・スポーツイベント・ボランティア」「居場所づくり」「仕組みづくり」「レガシー運営チーム」という個別テーマを掲げた8つのチームにわかれ、協働プログラムを企画・実施しています。

https://pridehouse.jp

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会社概要

URL
https://pridehouse.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都新宿区新宿 1-2-9 JF新宿御苑ビル2階
電話番号
-
代表者名
五十嵐ゆり、小野アンリ、野口亜弥
上場
未上場
資本金
-
設立
2023年02月