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アイドルWEBマガジン『ガラスガール』の7月・8月カバーガールを彩る齋藤飛鳥。実写化の【推しの子】でアイを演じる彼女は、どんなアイドルだったのか?

アイドルWEBマガジン『ガラスガール』にて7月・8月のカバーガールを務めている齋藤飛鳥。8月9日より、新たなカバービジュアルが公開された。そんな彼女を考察する。

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アイドルWEBマガジン『ガラスガール』にて7月・8月のカバーガールを務めている齋藤飛鳥。8月9日より、新たなカバービジュアルが公開された。

今年の11月から配信予定のAmazon Prime Videoの配信ドラマ『【推しの子】』で伝説のアイドル・アイを演じる齋藤飛鳥は、本人も乃木坂46という、日本のトップアイドルグループのセンターに立った“伝説のアイドル”。そんな彼女がアイを演じるということで大きな話題となっている。

ガラスガールでは、8月10日に26歳の誕生日を迎えた彼女を、考察している。齋藤飛鳥は、いったいどんなアイドルだったのか。そして彼女の凄さとは、いったい何だったのか。

◾️13歳。黒歴史からのスタート

2011年8月に結成された乃木坂46は、「AKB48の公式ライバル」として産声を上げた。

そのオリジナルメンバーの中で、最年少だったのが齋藤飛鳥。当時13歳。最終オーディションに合格した少女たちが壇上に並ぶ中、彼女の立ち位置は最後列の右から4番目だった。

デビュー当初の彼女は、少女時代に好きだったAKB48やハロプロといった“正統派”のアイドルを目指した。

「いちごみるくが大好き、“あしゅりん”こと齋藤飛鳥です」といった、今では「黒歴史」と本人も公言するキャラからのスタートだった。

小さくて幼さない顔、可愛らしい最年少の妹キャラは、当初そこまでファンに刺さらなかった。それは「子供っぽさ」が目立ちすぎてしまったのかもしれない。事実、1枚目~10枚目まで乃木坂46のシングルで、3度しか選抜に選ばれていない。完全にアンダー常連組となっていた。

それでも、2013年発売の『ガールズルール』のCDに収録されているアンダー曲『扇風機』のセンターに立つ。少しずつではあるが、グループ内で彼女の評価は上がっていった。

その後、彼女は可愛らしいキャラからギャップのある、毒舌キャラ、クールキャラへとキャラ変。試行錯誤を重ねていく。

そして2015年。

齋藤飛鳥が17歳になる年。風向きが変わり始める。

歴史ある女性ファッション誌『CUTiE』の専属モデルに抜擢されたのだ。それは1989年に『CUTiE』が創刊されて以来、初の専属モデルという衝撃の出来事だった。

さらに、世界的ファッションブランド・ANNA SUI(アナ スイ)のアジア圏ビジュアルモデルにも選ばれ、そのビジュアル面の強さも注目されていく。

そして乃木坂46内でも2015年から選抜に定着。翌年の15枚目シングル『裸足でsummer』で、センターへと上り詰めた。

その後は、卒業するまでのシングルの全てに選抜され、計5回のセンターを経験。名実ともに乃木坂46のエースとなった。

オリジナルメンバーが次々卒業していく中、最後の1期生センターとしてグループを牽引し続け、卒業を迎える最後の数年は、新しい時代の乃木坂46を指し示すため、後輩メンバーをサポートしていった。

そして迎えた、2023年5月17日、18日。

東京ドームで行われたコンサートで、齋藤飛鳥は乃木坂46の活動を終了。アイドル人生に幕を閉じたのだった。

◾️自分にしか齋藤飛鳥のこの一面は引き出せない!

そんな彼女のアイドル人生を振り返ったとき、2015年から2016年に印象深い出来事があった。

筆者は当時、週刊プレイボーイ(集英社)で、グラビア編集とインタビューを担当していたのだが、仕事をしていた何人ものグラビアカメラマンによくこんな質問をしていた。

「今、撮りたいアイドルっていますか?」

すると、多くの一流カメラマンが口を揃えて言った。

「齋藤飛鳥さんを撮りたい」と。

やたら彼女の名前が上がってくるのだ。

実際、彼女の名前をあげたカメラマンたちは、さまざまな雑誌や写真集で彼女を撮った。

あるカメラマンは、齋藤飛鳥の少女性と、心を簡単には開かない、マイペースさを内包した青春を切り取り写真集に封じ込めた。

また、別のカメラマンは、彼女の年齢に寄り添った等身大の表情を切り取った。

さらに別のカメラマンは、彼女の中にある“闇”を映し出した。

それは、カメラマンだけではなかった。映像作家やファッションデザイナー、広告などのアートディレクターといった数多くのクリエイターたちが「齋藤飛鳥のこの一面を、自分はこう写したい」「自分にしか、齋藤飛鳥のこの一面は引き出せない!」と手を挙げていき、それぞれの齋藤飛鳥を表現していった。

そして、それら全てが、見事な作品となっていく。

もちろん、その作品の素晴らしさは、超一流のクリエイターたちの手腕によるものだ。しかし、それと同時に齋藤飛鳥というアイドルは、クリエイターが渇望する思いを、これも見事に表現して返すのだ。「クリエイターにコンセプトを想起させる能力」と「それをハイクオリティに打ち返す能力」。この両輪を、ここまでハイレベルで持っていたアイドルを筆者は他に知らない。

とくに2021年に東京国立博物館で行われた『春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46』。日本美術のド真ん中に飾られた、この展覧会のメインビジュアルとなった齋藤飛鳥の写真を見た時には「現代アートの真ん中にすら、ここまで美しく立てるのか!」と度肝を抜かれた。展覧会のコンセプトは「古来からの日本美術と、現代のポップカルチャーの象徴の融合」であり、あくまで現代を表す記号としての乃木坂46だったのかもしれない。だが、単純に齋藤飛鳥の美術的な美しさに目を奪われてしまったことを強烈に覚えている。

彼女のこの能力は、他のアイドルと比べても圧倒的なものだ。

自然体で、心をなかなか開いてくれないように見えて、そばにいることを許してくれる。

クリエイター、アーティストが求めるさまざまな切り口に対応し、切らせてくれる優しさを持っている。

しかし、それと同時に「美しく愛おしいのに、得体の知れない一面」も持っている。

筆者は以前、『乃木坂46物語』(集英社)という、乃木坂46のドキュメンタリー本を上梓したのだが、その本の中で「生駒里奈が真っすぐ“正義”を目指す少年マンガの主人公ならば、繊細で自分に自信のない西野七瀬は少女マンガのヒロインのような存在」と書いた。

生駒里奈が『少年ジャンプ』で、西野七瀬が『別冊マーガレット』だとしたら、齋藤飛鳥は『アフタヌーン』だ。唯一無二の世界観を持ち、『ああっ女神さまっ』と『寄生獣』が同時に掲載されているような得体の知れなさ。

そんな稀有な存在感に、作り手は狂わされてしまうのだ。心の中にあるザワザワとしたものを呼び起こされるのだ。

◾️アイドル界最大の下剋上を成し遂げた

また、彼女を語る上で、この一面は外せない。

齋藤飛鳥は、「アイドル界最大の下剋上」を成し遂げたアイドルだった。

彼女のアイドルのスタートは、乃木坂46の最後尾。一番後ろから、ごぼう抜きでセンターになったのだ。

そして、彼女が乃木坂のトップに君臨していた時代は、名実共に乃木坂46が日本のアイドルの頂点に立っていた。まさに“日本のセンター”まで駆け上がったのだ。

そんな「最下位からトップまで下剋上を成し遂げた天才」は、近代アイドル史において齋藤飛鳥と指原莉乃以外に存在しない。(「強烈なキャラクターと類まれな自己プロデュース能力」を持つ指原莉乃という天才も、とんでもない存在だが)

今年の11月に実写化ドラマの配信がスタートする、ビッグコンテンツ『【推しの子】』のアイは、施設育ちの地下アイドルから東京ドームまで駆け上がった下剋上アイドルだ。

アイは、一番星のように輝くスター性を持ちながら、心に闇を宿していた。

卒業写真集『ミュージアム』(講談社)のインタビューで齋藤飛鳥は「小学校高学年の頃は、学校の友達と温度が合わないことが多くなって不登校になった」と発言している。心から大事に思っている乃木坂メンバーの中にいながらも、壁を向いてひとり本を読んでいた彼女の心にも、仄暗いものがあったと想像する。だからこそ、「【推しの子】のアイを齋藤飛鳥が演じる」というニュースを聞いたとき、彼女とアイの共通点に胸が騒いだ。「ハイクオリティに打ち返す能力」を持つ彼女の能力を想像して胸が躍った。

彼女がアイドルとして戻ってくる。

美しくて、愛おしくて、ちょっと邪悪で、いたずら心があって、作り手を狂わせる。それでいて誰よりも“プロ”でハイクォリティ。

自由で自然体に見えるけど、実はバランス感覚とサービス精神があって、心の柔らかい部分に触れるとすぐに泣いてしまって。誰よりも人のために泣いてしまう優しい人で。

単なる「乃木坂46の元センター」ではなく、「唯一無二の伝説のアイドル」である彼女の帰還。

今、心がザワザワして仕方がない。

※齋藤飛鳥のグラビア、インタビューも公開中

https://glassgirl.info/

文/篠本634・撮影/武田敏将 スタイリング/安藤真由美(Super Continental) ヘア&メイク/田村直子(GiGGLE) フラワーデザイン/桑原佳代

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2006年03月
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