高圧ねじり合成法を通じて高温銅酸化物超伝導体の合成に成功!

~従来の超伝導転移温度を約40K更新~

国立大学法人九州工業大学

九州工業大学大学院工学研究院の美藤正樹教授が研究代表者を務める九州工業大学と福岡大学の研究グループは、高圧下でせん断ひずみを注入することで新物質を合成する方法(高圧ねじり合成法)を用いて、イットリウム系銅酸化物超伝導体の超伝導転移温度を従来の約90Kから約40K高い130Kに上昇させることに成功しました。せん断ひずみを新規物質合成に活用できる好事例と言えます。

ポイント

高圧ねじり合成法によってイットリウム系銅酸化物超伝導体の合成に成功。

・イットリウム系銅酸化物超伝導体の超伝導転移温度を従来より40K上昇させることに成功。

研究の背景

常圧下で超伝導を示す物質の中で、液体窒素温度以上の超伝導転移温度を発現する物質群に銅酸化物超伝導体があります。銅酸化物超伝導体の中でも一番高い超伝導転移温度を発現する物質は水銀元素を含む銅酸化物超伝導体ですが、誰しもが簡単に合成できる物質ではありません。中学校や高等学校で、磁気浮上等のデモ実験でよく目にするのは、93Kに超伝導転移温度を有するイットリウム元素を含む銅酸化物超伝導体YBa2Cu3O7-δですが、原料である3種類の酸化物を所定の割合で混ぜ、空気中で900℃の高温で10時間程度焼成するか、電子レンジの中で電磁波加熱することで合成されます。YBa2Cu3O7-δ合成時の加熱溶融合成は非常に容易であることと、YBa2Cu3O7-δが磁場への耐性を有し、また大きな電流密度を有することから、送電材や超伝導磁石の線材として使われようとしています。

研究の内容

我々のグループでは、熱エネルギーではなく仕事由来のエネルギーを用いて、物質の構造を変化させたり、原料から新しい物質を創製する研究を展開しています。その物質創製法を我々は高圧ひずみ合成法と呼んでいます。そこでの仕事由来のエネルギーは、高圧縮場でせん断応力を加えることで極限的なひずみを与えた際のエネルギーであり、それを用いて超伝導性、磁性、誘電性などの電子に起因する機能性を向上・制御することを目指しています。本研究では、高圧ひずみ合成法を用いてこれまでにない構造を有するYBa2Cu3O7-δを合成することに成功しました。具体的には、高圧ひずみ合成のあと、低温で熱処理をし、YBa2Cu3O7-δ相の拡大とともに、酸素量を変化させ、130K級の超伝導転移温度を実現することに成功しました。この発見は、高圧ひずみ合成法の潜在性をアピールするものであり、社会実装が成功した暁にはその波及効果は大きなものがあります。

本研究成果を発表した論文は米国応用物理学会誌「Journal of Applied Physics」において、2026年8月17日にオンラインで公開されました(https://doi.org/10.1063/5.0333729)。

今後の展開

液体窒素温度77Kを50K以上も上回る超伝導転移温度を発現できており、その潜在性の高さに着目し、 JST大学発新産業創出基金事業スタートアップ・エコシステム共創プログラム PARKS スタートアップ創出プログラムの援助を受けて社会実装化を進めています。超伝導になっている体積を増やすことができれば、社会実装が加速化されます。

 

■用語解説 

高圧ねじり合成法

高圧縮場でせん断応力を加えることで、ひずみテンソルにおいて対角成分だけではなく非対角成分を優位に発現し、応力解放後も非対角ひずみ成分を優位に有する強ひずみ状態を大気圧下に取り出すことを可能にする物質合成方法。材料工学の分野では、高圧ねじり加工(High Pressure Torsion; HPT)として知られてきた手法であり、高硬度・高強度の材料開発で実績がある方法である。図1に示すように、今回この方法が、イットリウム元素を含む銅酸化物超伝導体での合成に展開され、93Kを上回る超伝導転移温度を有するYBa2Cu3O7-dを目指した。実際、新たな超伝導物質の開発や、元々超伝導を示す物質において超伝導転移温度を上昇させることや、元々強磁性を示さない物質が強磁性を示すように変質させることに成功している。

図1. 高圧ねじり加工(HPT)によって、高い超伝導転移温度を有する準安定相の発現に成功した。

発表雑誌

タイトル

Synthesis of high-Tc Y-based cuprate superconductors with Tc = 130 K using high-pressure synthesis method accompanied with shear stress

著者名

Masaki Mito, Ryouchi Masusaki, Goshi Nakamura,  Fumika Katayama, Wataru Nagai,   Narimichi Mokutani, Takayuki Tajiri, Takahiro Masuda, Hiroki Hanate,  and Zenji Horita

雑誌

Journal of Applied Physics

DOI

10.1063/5.0333729

※ 本研究は、JSPS科研費(JP17H03379, JP19KK0070)ならびに九州工業大学研究力強化事業の支援を受けたものです。

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会社概要

国立大学法人九州工業大学

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URL
https://www.kyutech.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
福岡県北九州市戸畑区仙水町1-1
電話番号
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代表者名
安永 卓生
上場
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資本金
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設立
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