レポート「ポスト・コロナ社会におけるニューノーマルな働き方」を発表

「WorkTech×フリーランス」普及による労働力不足解消の可能性と経済効果を検証

一般社団法人 日本パブリックアフェアーズ協会理事である岩本隆(慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授)は、レポート『ポスト・コロナ社会におけるニューノーマルな働き方~「WorkTech×フリーランス」がもたらす潜在的労働力活用と経済成長~』を発表いたしました。
【サマリー】
・ポスト・コロナ社会における「ニューノーマルな働き方」として期待される「WorkTech×フリーランス」について、潜在的労働力活用と経済成長の観点からその可能性を検討
・フリーランスは昨今、多様な働き方の一つとして注目され、2020年7月の未来投資会議や財政諮問会議でも議論されている
・一方、米国ではフリーランス人口が約5,700万人(労働人口全体の約35%)であるのに対し、日本では約462万人(同約7%)に留まっている
・レポートでは、日本におけるフリーランス潜在層についての可能性や課題を明らかにした上で、必要な政策を提言

《分析内容》
【1】潜在的フリーランス人口とその経済効果
・約2,149万人がフリーランス潜在層と推計された。また、この潜在層が労働力として活用された場合の経済効果として、国民総所得(GNI)が約69兆円の増加が見込めることがわかった。2022年度の政府目標の未達分である約85兆円を大きくカバーする数値である。

【2】WorkTech活用によるシナジー効果(「WorkTech×フリーランス」の可能性)
・フリーランス潜在層を活用する鍵となる「WorkTech(ワークテック)」は国内外で徐々に浸透してきている。
・WorkTechの活用により、フリーランスの特徴である場所や時間の制約を受けない働き方の実現や、実績のデータ化によるマッチング精度やスピードの向上、仲介サービスを介した不特定多数のフリーランスへの業務委託など多くのシナジー効果が期待される。

【3】「WorkTech×フリーランス」普及を妨げる諸課題
・フリーランスと特にシナジー効果の高いWorkTechであるクラウドソーシング関連サービスは近年増加傾向にあるものの、世界市場に比較すると桁が小さく、WorkTechの認知度不足が課題として挙げられる。
・その他にも、発注スキル不足や品質への不安、フリーランス保護のセーフティネット不足等が課題である。

《提言》
【1】優良事業者認証制度を創設する
【2】フリーランス向け総合プラットフォームを創設する




《分析内容》
【1】潜在的フリーランス人口とその経済効果
①  フリーランスに関する政策的議論
日本における深刻な労働力不足への対応として注目される「雇用関係によらないフリーランス等の働き方」については、2020年7月17日に公表された未来投資会議の「成長戦略実行計画案」や、同日に経済財政諮問会議において閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針~危機の克服、そして新しい未来へ~」(骨太方針2020)において重要な柱とされており、フリーランスという働き方の浸透やその環境整備は重要政策として位置づけられています

② フリーランス人口(日米比較)
米国ではフリーランス人口が約5,700万人(労働人口全体の約35%)であるのに対し、日本では約462万人(同約7%)に留まっており、日本においても活用されていないフリーランス(潜在層)が多く存在することが示唆されます。


③ 潜在的フリーランス人口推計
日本におけるフリーランス潜在層は、約2,149万人(労働人口全体の約32%)に上ると推計されました。

④ 経済効果試算
約2,149万人の潜在層が労働力として活用された場合の経済的インパクトとして、国全体で約69兆円のGNI(国民総所得)増加が見込まれることを試算しました。
GNIの政府目標としては、2013年6月14日成長戦略『日本再興戦略-JAPAN is BACK-』において、「1人当たり名目国民総所得(GNI)を10年後には150万円以上増加」と掲げられていますが、現在の予測では目標年である2022年時点で約85兆円が未達となるとされ、フリーランス潜在層の活用は目標達成へ大きく貢献することが期待されます。


【2】WorkTech活用によるシナジー効果(「WorkTech×フリーランス」の可能性)
フリーランス潜在層の活用にあたり、「WorkTech(ワークテック)」に着目し、特にWorkTechの中でもフリーランスとの相性がよいクラウドソーシング関連サービス等を活用した好事例を基に、「WorkTech×フリーランス」によるシナジー効果を考察しました。

① 「WorkTech(ワークテック)とは
「Work Tech」とは、企業等における従業員の就労環境(働き方)のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するテクノロジー全般の総称です。人事部門のDXを推進する「HRテクノロジー」を含みうるが、企業の管理部門が従来管理を担ってきた事業所(物理的物理的なオフィス)、「働く場(ワークプレイス)」)に関連するあらゆるテクノロジーを包含します。



②「WorkTech×フリーランス」の好事例
事例1|クラウドワークス/シニアワークス(株式会社クラウドワークス)
クラウドワークスはインターネット上のサービスサイトを介し受発注を仲介する国内最大級のマッチングプラットフォーム。クラウドワークスを利用することは、中小企業にとってコスト削減及び人材開拓のメリット等をもたらしている。また、同社は、シニアワークスという中高年受注者向けのマッチングプラットフォームも手掛けており、空いた時間に在宅で実施可能な簡易的なタスクの掲載が多く、物理的にフルタイムで外出して働くことが難しくなった中高年層でも仕事を受注できるため新しい労働層の開拓につながっている。

事例2|クラウド通訳(株式会社オプテージ)
株式会社オプテージは、在宅で働く通訳による通訳サービスをスマホやタブレットのアプリで利用できる「クラウド通訳」のサービスを提供している。本サービスにおけるテクノロジー活用の代表的な利点は、在宅勤務で好きな時間を選択できるという柔軟性であり、これによりオフィス通勤が難しい主婦や海外在住の日本人でも登録が可能となっている。また、専門用語を必要とする通訳業務の補助機能として、頻繁に使用される用語が通訳場所に合わせて通訳者の画面へ表示される仕組みを搭載しており、通訳レベルの品質担保、働き手の負担軽減になっている。さらに、在宅勤務により孤立しがちなクラウドワーカーの不安を払拭するため、チーム制と相談窓口を導入しており、 通訳業務以外の労務管理も含め、気軽にチャットツールで相談できる体制が整っており、離職率低下に繋がっている。

 好事例より抽出される「WorkTech×フリーランス」シナジー効果
前述の事例を踏まえ、「WorkTech×フリーランス」により、ア)場所や時間の制約を受けない働き方の実現、イ)実績のデータ化によるマッチング精度やスピードの向上、ウ)仲介サービスを介した不特定多数のフリーランスへの業務委託のシナジー効果がうまれ、「WorkTech×フリーランス」を活用することは、受注者及び発注者の双方にとって様々なメリットが得られると考えられます。



【3】「WorkTech×フリーランス」普及を妨げる諸課題
発注者側の課題として「認知・理解不足」、「技術的課題」、「品質保証」等が挙げられ、受注者側の課題として、「認知・理解不足」、「働く環境整備」等が存在しています。



《提言》
「WorkTech×フリーランス」による潜在的労働力活用と経済成長を実現するため、以下2つの施策提言を行います。

【1】優良事業者認証制度を創設する
発注者もしくは仲介事業者を対象とし、適正な取引に関する既存のガイドライン等を活用した取引改善を目的とした優良事業者認証制度を創設し、業界全体の健全化と活性化を促す。


【2】フリーランス向け総合プラットフォームを創設する
受注者にフォーカスしたフリーランス向けの総合プラットフォームを創設し、フリーランスや潜在層への教育機会の拡充や啓発を促す。
 




■執筆者プロフィール

岩本 隆 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授
https://www.tiwamoto.jp
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。
日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータを経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。「技術」「戦略」「政策」を融合させた「産業プロデュース論」を専門領域として、様々な分野の新産業創出に携わる。(一社)日本パブリックアフェアーズ協会理事。


※本レポートの全文はこちら(https://www.j-paa.or.jp/policyproposal/401)からご覧いただけます。

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会社概要

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業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都港区南青山一丁目15番18号 リーラ乃木坂6階
電話番号
03-6821-7869
代表者名
増田寛也
上場
未上場
資本金
-
設立
2019年02月