ALSに対する水素吸入療法の新たな可能性
― 低濃度水素吸入による安全設計と水素医療の社会実装に関する論文を公開 ―
MiZ株式会社(本社:神奈川県鎌倉市)は、慶應義塾大学等との共著により、2024年に国際学術誌 Medical Gas Researchに公開した筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する分子状水素療法の可能性を示した論文 (2024 Sep 1;14(3):149-150.)を踏まえ、水素医療を安全かつ責任ある形で社会実装するために不可欠な条件について、最新の科学的知見に基づきお知らせいたします。
ALSは、運動神経が進行性に障害される難治性の神経変性疾患であり、いまだ根本的な治療法は確立されていません。近年では、ALSの病態進行に酸化ストレスや慢性炎症が深く関与していることが明らかになり、これらを標的とした新たな治療戦略が国際的に模索されています。
この論文では、ALS発症の作用機構に基づき、分子状水素が病態に及ぼし得る影響について考察するとともに、水素ガス吸入を行った症例において、症状進行の進行遅延の可能性が観察された事例を報告しました。本症例は、治療選択肢が限られているALSにおいて、症状進行の変化が示された初期的な報告の一つです。
一方で、MiZ株式会社と慶應義塾大学は、高濃度水素吸入器の使用により、鼻腔や肺などの呼吸器内が可燃濃度に達し、人体内で水素爆発が生じた事故について、その発生要因を科学的に検討した論文を、査読付き国際医学誌 International Journal of Risk & Safety in Medicine に2026年1月に公開しました。
本プレスリリースでは、こうした知見を踏まえ、ALSの患者様が家庭や医療現場において、水素爆発の危険にさらされることなく水素吸入を行うために重要となる、低濃度水素吸入療法の安全性と意義についてご紹介します。
2024年公開論文が示した分子状水素の医学的可能性
2024年に公開された水素吸入によるALS改善の可能性に関する論文は、その後の社会的関心の高まりを受け、改めてその意義が注目されています。本論文では、分子状水素(H₂)が生体内で最も細胞障害性の高いヒドロキシルラジカルを選択的に消去するという特性に着目し、ALSを含む神経変性疾患に対する治療可能性を報告しています。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、脳や脊髄の中で神経細胞が少しずつ傷ついていくことが知られています。その背景には、体の中で発生するヒドロキシルラジカルによる酸化ストレスや、脳内にたまった鉄が引き金となって生じる強いダメージ物質が関わっています(図1)。これらは神経細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアを壊し、筋力低下や動作のしづらさを徐々に進めてしまいます。ALSは進行性の病気であり、「進行を少しでもゆるやかにできるか」が非常に重要な課題です。

分子状水素(H₂)は、こうした神経細胞を傷つける原因の中でも、特に生体分子を攻撃するヒドロキシルラジカルだけを選択的に水分子に変換して無害化するという特徴を持っています。水素は体のすみずみまで素早く行き渡り、脳中の深部にも細胞膜透過性によって届きます。そして、神経を壊す原因となる物質であるヒドロキシルラジカルを無害な水分子に変換して、細胞が本来持っている回復力や働きを支える役割を果たします。水素は脳神経細胞の必要な働きを妨げることはないため、長く使い続けやすい点も大きな特徴です(図2)。
これらの作用によって、水素吸入療法は、ALSの進行スピードを緩やかにし、動く力や日常生活の自立をできるだけ長く保つことにつながる可能性が期待されています。劇的な変化をもたらす治療ではありませんが、「悪化を少しでも遅らせる」「今できていることを少しでも長く続ける」という点で、患者さんとご家族の時間を支える新しい選択肢となり得ます。分子状水素は、体に過度な負担をかけず、日々の生活に寄り添いながら、ALSと向き合うための穏やかなサポート手段として注目されています。

水素医療の普及に伴う看過できない「高濃度水素吸入」による人体内水素爆発の危険性
近年、水素吸入は医療・ヘルスケア分野において急速に普及しつつあります。こうした流れの中で、高濃度水素ガス吸入器の危険性、とりわけ爆発リスクに関する科学的検証が十分に共有されていない現状が見受けられます。
MiZ株式会社と慶應義塾大学が取りまとめた「高濃度水素吸入の危険性と安全設計」に関する論文は、国際医学誌 International Journal of Risk & Safety in Medicine において査読を経て受理され、2026年1月に公開されました。本研究は、水素吸入療法の安全性を根本から再検討することを目的としています。
本論文において我々は、水素爆発のリスクが存在しない低濃度域(10体積%以下)であっても、医療効果は十分に発揮され得ることを示しました。すなわち、水素濃度は治療効果を示す指標ではなく、むしろ爆発危険性を評価するための安全指標として扱うべきであるという点を明確にしています。
一方で、高濃度水素吸入は、吸入器本体の爆発リスクにとどまらず、使用者の人体内で水素爆発が生じ得るという極めて重大な安全上の問題を内包しており、社会的・医療的リスクを不必要に増幅させる行為であることを科学的に示しました。
特にALSのような慢性かつ進行性の疾患においては、水素吸入療法は長期間かつ反復的に使用される介入となります。そのため、水素吸入器には、長期使用を前提とした本質的な安全設計が不可欠です。
しかし近年、市場には水素爆発に関する工学的安全設計が十分に検証されていないまま、水素濃度67%や100%といった高濃度を謳う水素吸入器が流通しています。水素は周知のとおり爆発性を有する気体であり、爆発濃度の水素を吸入する行為は、機器本体だけでなく、呼吸器系という人体内部の閉鎖空間においても爆発条件を成立させ得ます。
実際に、高濃度水素の吸入中に鼻腔内や肺内といった人体内部で水素爆発が生じ、顔面複雑骨折、肺焼損、気管支裂傷などの重篤な障害を引き起こしています。高濃度水素吸入器の医療機関等における普及により、将来的に人体内水素爆発により死亡事故に至る可能性すら否定できません。
MiZ株式会社と慶應義塾大学は、高濃度水素吸入において想定される事故メカニズムとして、以下の要因が存在することを明らかにしました。
・呼吸器内において水素濃度が爆発濃度に達する可能性
・静電気や微小な着火源による、人体内での水素爆発リスク
・高濃度水素吸入器を医療用途として用いることに対する、安全設計思想および倫理的配慮の不備
さらに重要な点として、高濃度水素を吸入することが治療効果を特別に高めるという科学的根拠は存在しません。基礎研究および臨床研究の蓄積から、爆発の危険性がない低濃度水素ガスの吸入であっても、十分な医療効果が得られることはすでに明確になっています。
水素医療の健全な発展のためには、「より高濃度であれば良い」という誤った価値観を改め、科学的根拠と安全性を最優先にした設計思想へと転換することが不可欠です。本研究は、そのための問題提起として位置づけられるものです。
社会実装に必要なのは水素爆発の危険性を完全に排除した低濃度水素ガス吸入の技術
水素医療に求められるべきは、高濃度化ではなく、非爆発域に制御された低濃度水素を、継続的・安定的に供給する設計思想です。
MiZ株式会社の低濃度水素吸入に関する特許発明は、生成した水素を直ちに10体積%以下の安全濃度まで希釈するため、吸入器の水素爆発も人体内水素爆発も発生させることはなく、安心して安全に長時間吸入できます。万が一、爆発濃度に至っても安全装置が作動して稼働を停止します。
低濃度水素吸入であっても、動物実験や臨床試験において酸化ストレスを起因とする多くの疾病の改善効果が確認されています。したがって、わざわざ爆発のリスクを負ってまで高濃度水素を吸入する必要も理由もありません。
特にALSのような慢性疾患領域においては、安全性が十分に担保されない医療介入は継続使用に適しません。家庭および医療現場での使用を想定した場合、事故リスクは決して許容されないという観点からも、高濃度水素吸入器は社会実装に適さないと考えられます。
MiZ株式会社は、水素の安全への希釈技術について日本(特許第5091364号、特許第5100911号)の他、世界9か国で特許を取得しています(2026年1月現在)。
安全性が最優先されるべき水素医療
MiZ株式会社は、分子状水素を用いた研究や応用が注目を集める一方で、水素爆発の危険性を伴う高濃度水素吸入が、水素医療分野全体に対する社会的信頼を損なう可能性があることを強く懸念しています。
当社は、基礎医学・臨床医学・工学・安全科学の知見を統合し、水素を扱う医療関連技術においては、何よりも安全性を最優先に考えるべきであるとの立場を堅持しています。今後も、生命倫理に配慮した責任ある情報発信を行いながら、持続可能で社会に受け入れられる水素医療のあり方について、科学的かつ客観的な検討に貢献してまいります。
論文等資料
ALSに関する2024年公開論文
ジャーナル:Medical Gas Research. 2024 Sep 1;14(3):149-150.
邦文タイトル:水素吸入療法による筋萎縮性側索硬化症(ALS)改善の可能性
英文タイトル:Hydrogen inhalation therapy may ameliorate amyotrophic lateral sclerosis.
URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC466993/
著者:市川祐介 博士(理学)1、佐藤文平1、平野伸一 博士(獣医学)1、武藤佳恭 博士(工学)2,3、佐藤文武1
所属:1 MiZ株式会社 研究開発部 2 慶應義塾大学 3 武蔵野大学 データサイエンス部
高濃度水素吸入による人体内水素爆発に関する2026年公開論文
ジャーナル: The International Journal of Risk and Safety in Medicine. 2026 DOI: 10.1177/09246479251414573
英文タイトル:Preventable In-Body Hydrogen Explosions from High-Concentration H₂ Inhalers in Japan —Switch to Safe, Low-Concentration Hydrogen Therapy—
邦文タイトル:日本における高濃度水素吸入器による人体内水素爆発とその防止策-低濃度水素療法への転換の必要性-
URL: https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/09246479251414573
水素吸入についてのガイドブック配布(一般向け)
https://e-miz.co.jp/pressrelease/pressrelease15.html
論文に関しての問い合わせ先
MiZ株式会社
神奈川県鎌倉市大船2-19-15
infoAe-miz.co.jp (Aをアットマークに置き換えてください)
会社HP: https://www.e-miz.co.jp/index.html
すべての画像
