オーティコン インテント、聞き取りのストレスと労力に関する研究を実施
騒音下での「聞き取りのストレス」を最大40%、「持続的な聞き取りの労力」を最大31%軽減(当社、前世代製品との比較)
デマントの旗艦ブランドである、120年の歴史をもつオーティコン補聴器(神奈川県川崎市、プレジデント:齋藤 徹、 以下 オーティコン)は、先進補聴器「Oticon Intent™(オーティコン インテント)」(以下 インテント)と当社の前世代補聴器「Oticon Real™ (オーティコン リアル)」(以下、リアル)との比較において、騒音下での聞き取りにおけるストレス(リスニング・ストレス)と持続的な聞き取りの労力(リスニング・エフォート)に関する新たなエビデンスを発表しました。
難聴者や補聴器ユーザーの最大の課題は、騒がしい環境下での音声理解です。実際、騒音下の聞き取りには認知的努力が必要なことはよく知られています。脳は騒音の中から音声を抽出し、その音声から意味を見出そうと懸命に働きます。 しかし、私たちの認知能力には限りがあります。全ての力を聞くことに使い果たしてしまうと、他の作業に使える力が不足します。この課題に対してオーティコン補聴器は長年、会話の後でユーザーが疲れてしまうことなく日常を送ることに力を注げるように、脳の働きを最適にサポートし聞き取りの労力を軽減する補聴器技術の開発に取り組んできました。先進の4Dセンサー技術(通称:じぶんセンサー)を搭載したインテントはまさにこの課題に着目した補聴器です。インテントは4Dセンサーにより、音環境と合わせてその人の頭や体の動きから、個々人の意図(何を聞きたいのか、何を行いたいのか)を汲み取る補聴器です。ユーザーの聴取意図の変化を認識し、それに即応して聞こえのサポート量を最適化させることで会話音と環境音をバランスよく届けます。インテントの4Dセンサー技術は、これまでさまざまな音環境での大幅な音質向上などのメリットが実証されています。
今回、オーティコンはさらに臨床試験を進め、騒音下での聞き取りのストレス(リスニング・ストレス)や持続的な聞き取りの労力(リスニング・エフォート)に対するインテントのメリットを実証するために、デンマーク工科大学およびエリクスホルム研究センター(デンマーク)と連携し、研究プロジェクトを実施しました。左右対称の軽度から中等度の感音難聴のある補聴器経験者(瞳孔測定:25例、心拍数:20例)に対して、実際の生活環境を反映するため、VR(仮想現実)と室内音響シミュレーションを用いた新しい試験手法を採用しました。聞き取り におけるストレス(リスニング・ストレス)は心拍数で、聞き取りの労力(リスニング・エフォート)は瞳孔径を測定しています。その結果、インテントはオーティコンの前世代補聴器、リアルと比較して、聞き取りのストレスを最大40%軽減、聞き取りの労力を最大31%軽減することが示されました。
聞き取りのストレス(リスニング・ストレス)を最大40%軽減(前世代、リアルとの比較)
大きな騒音に対処したり、騒がしい環境下で会話を追うことに苦労すると、心拍数が僅かに増加することがあり、これを聞き取りのストレス(リスニング・ストレス)と呼んでいます。このことは、聴取環境の変化に伴う心拍数の変化によって評価され[1]、多くの場合、聞き取りの労力と関連しています。心拍数の上昇は、ストレスレベルが高いことを示し、短時間のストレスであっても、認知能力に悪影響を及ぼし、会話に参加する能力を低下させる可能性があります[2]。また、ストレスが長く続くと、心血管系疾患のリスクが高まる可能性があることが報告されています[3]。これに対し効果的な補聴によって不要な騒音の影響が軽減されると、聞こえのストレス(リスニング・ストレス)が軽減できます。難しい聞こえの環境においても、ユーザーがより会話に集中しやすくなるようサポートできるからです。心拍数モニタリングによる評価を行った本試験により、インテントはリアルと比較して心拍数を平均して最大40%軽減させることが示されました[4]。
騒音下での持続的な聞き取りの労力 (リスニング・エフォート)を最大31%軽減(前世代、リアルとの比較)
持続的な聞き取りの労力(リスニングエフォート)とは、長時間会話を続ける際など、会話に注意を払い、関心を持ち続けるために必要な長時間の心的な労力を指しています[5]。客観的に聞き取りの労力を測る尺度として一般的に瞳孔径測定が使用され、オーティコン補聴器においても、瞳孔径測定を採用しています。これは、聴取課題に取り組んでいる時の瞳孔径の変化を継続的に記録する方法で、負荷の高い課題に取り組む際、労力の増加は瞳孔の大きさの変化に反映されます[6]。瞳孔拡大が大きいほど、より多くの持続的な聞き取りの労力(リスニング・エフォート)が必要であることが考えられます。本試験により、この実験における最も複雑な条件下で、被験者の平均瞳孔サイズを最大で31%縮小させることが示されました[7]。これは、インテントが補聴器ユーザーのニーズを感知し、即座に対応することで、会話の聞き取りに最適なレベルのサポートを提供していることを示唆しています。ユーザーは聞き取りが困難な環境でも周囲の環境を把握しつつ、より少ない労力で長時間、複数名での会話や1対1の親密な会話などに集中し続けることができることを示しています。
■VR(仮想現実)と室内音響シミュレーションを用いた試験について
<リサーチブリーフ>
臨床試験に関する詳細情報については、当社プレスリリースページ内の、リサーチブリーフ
リンクより、アクセスください。
https://www.oticon.co.jp/about/press/center/press-releases/2024/20241028
<関連動画>
■オーティコン補聴器について
オーティコン(Oticon)は、1904年にデンマークで創設された補聴器業界におけるパイオニアです。企業理念として「Life-changing technology(ライフチェンジング テクノロジー)」を掲げ、難聴による制限のない世界の実現を目指し、製品開発と聴覚ケアの普及に取り組んでいます。オーティコンは補聴器業界で唯一、聞こえと脳に関する基礎研究所を擁するメーカーであり、そこに在籍する聴覚学、脳神経科学、電子工学など様々な分野の研究者と、13,000人以上のテストユーザーによって、常に先進的で革新的な補聴器テクノロジーが生み出されています。オーティコン製品の最大の特長は、脳から聞こえを考える「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」というアプローチです。「耳に音をどう届けるか」だけではなく、「脳が理解しやすい音を届けるにはどうするか」に着目した製品群は、第三者機関による確かなエビデンスに支えられ、世界100ヵ国以上で使用されています。日本でも1973年より補聴器の製造・販売を行っています。
■デマントグループについて
デマントは、1904年にデンマークのオーデンセで補聴器の輸入商から始まり、のちに補聴器の製造や診断機器、人工内耳事業へと参入していきました。現在、世界130か国以上でビジネスを展開しています。デマントは2つの点で世界唯一の企業です。第一に聴覚ヘルスケアにおける全ての分野をカバーしていること、第二に慈善財団(ウィリアム・デマント財団)が所有する聴覚ヘルスケア企業であることです。全デマントグループ21,000人強の従業員とともに、聴覚ヘルスケアや聞こえの改善の研究、製品開発を行っています。
▼オーティコン補聴器ホームページ
[1] Christensen et al. (2021). The everyday acoustic environment and its association with human heart rate: evidence from real-world data logging with hearing aids and wearables.
[2] Qin et al (2009). Acute psychological stress reduces working memory-related activity in the dorsolateral prefrontal cortex.
[3] Steptoe & Kivimäki (2012). Stress and cardiovascular disease.
[4] Zapata-Rodríguez, V. & Santurette, S. (2024).新たなクリニカルエビデンス -Oticon Intentによる持続的な聞き取りの労力(リスニング・エフォート)と聞き取りのストレス(リスニング・ストレス)
[5] Nielsen, R. M., & Ng, E. H. N., (2022). Oticon More™ new evidence – Reducing sustained listening effort. Oticon whitepaper
[6] Fiedler, L., Ala, T. S., Graversen, C., Alickovic, E., Lunner, T., & Wendt, D. (2021). Hearing Aid Noise Reduction Lowers the Sustained Listening Effort During Continuous Speech in Noise—A Combined Pupillometry and EEG Study. Ear and hearing, 42(6), 1590-1601
[7] Zapata-Rodríguez, V. & Santurette, S. (2024).新たなクリニカルエビデンス -Oticon Intentによる持続的な聞き取りの労力(リスニング・エフォート)と聞き取りのストレス(リスニング・ストレス)
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