戦後の12年間だけ存在した売春街「赤線」を舞台にしたアンソロジー『赤線本』刊行
文芸、ルポ・報道、紀行、対談、詩歌、マンガ、歌謡曲…多様な執筆陣・クリエイターらによる単行本未収録を含む貴重な26篇を収録
株式会社イースト・プレスは、2020年11月15日に『赤線本』(監修・解説:渡辺豪)を刊行しました。
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781619224
都市空間の片隅にこぼれ落ちた、宝石のような珠玉集──
売春防止法によって〝その街〟が消えて60年余
そこに生きる娼婦と買う男、取り巻く街・時代を見つめる作品群
太平洋戦争で敗戦を迎えた翌年の昭和21(1946)年から、同法が売春を禁じた昭和33(1958)年までを通じて、“赤線”と俗称された売春街が、数え切れないほど日本には存在した。
いつしか赤線と呼ばれたその街は、混乱のさなか無数に散らばり、こぼれ落ちた宝石のように原色のネオンが都市空間の片隅を彩った。
赤線は、わずか12年間だけ存在し、そして幻のように消えた。
赤線があった当時の作品群を丁寧に掬い集めてみると、直接に赤線と関わりを持った人物によって、多岐に渡る視点・視野・視座から、多様な形態をとって、質的にも量的にも充実して、書き(描き)残されていることが分かる。
が、実は意外なほど流通は少ない。絶版であったり、そもそも単行化されず、掲載誌に一度載ったきりで埋もれていたりする。
しかし、見過ごしにされてきた。これは惜しい。
失って久しい過去を懐かしむ現代の声ではなく、過去に生きていた現代の声へ耳を傾けたい。(編者・渡辺 豪)
【収録作家・クリエイター】
永井荷風・濱本浩・井伏鱒二・川崎長太郎・舟橋聖一・大林清・田村泰次郎・田中英光・芝木好子・水上勉・吉行淳之介・田中小実昌・富永一朗・小島功・小沢昭一・野坂昭如・竹中労・高倉健・五木寛之・小林亜星・ちあきなおみ
【目次】
はじめに
吉行淳之介『驟雨』
川崎長太郎『抹香町』
川崎長太郎×吉行淳之介『灯火は消えても』
報道写真に見る赤線
濱本 浩『「赤線地帯」のセットで』
高倉 健『赤いガラス玉』エッセイ
野坂昭如『娼婦焼身』
田中英光『曙町』
舟橋聖一『赤線風流抄』
井伏鱒二『消えたオチヨロ船』
田村泰次郎『鳩の街草話』
水上勉×田中小実昌『女郎たちの中にいい女をみた』
ちあきなおみ『ねえ あんた』
小島 功『赤線最后の日3,31事件』
富永一朗『売り手のない買手(買春夫)』
喜代美(吉原娼婦)『悲シクハアリマセン』
京一 路子(吉原娼婦)『えらい人』
五木寛之『赤線の街のニンフたち』
野坂昭如『ああ寂寥、飛田〝遊廓〟の奥二階』
川崎長太郎『消える抹香町』
大林 清『洲崎の女』
永井荷風『吾妻橋』
小沢昭一『「濹東綺譚」と私』
竹中 労『「赤線」とは何であったか?』
小林亜星『花江』
芝木好子『洲崎の女』作品解説
おわりに
【著者プロフィール】
渡辺豪(わたなべ・ごう)遊廓家・カストリ出版代表
戦後の売春史が主テーマ。遊廓跡・赤線跡を全国およそ500箇所にわたって撮影。2015年、遊廓専門の出版社「カストリ出版」を創業、主に遊廓関連の復刻を行う。翌16年、吉原遊廓跡に遊廓専門の書店「カストリ書房」を開店。著書に『戦後のあだ花 カストリ雑誌』(三才ブックス)、『遊廓』(新潮社)などがある。
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