【解説】船舶を担保にした世界初のオンチェーン融資 ― Galactica「Pegasus」3案件の経過
Kaiaが目指す、実物資産とオンチェーン金融の接続

Kaia DLT Foundation(以下、Kaia)がGalactica Pte. Ltd.(以下、Galactica)と共同で展開する船舶金融トークン化商品「Pegasus」の第3号案件が、2026年10月にクローズしました。本稿では、Galacticaの事業内容と、RWA(リアルワールドアセット)市場および船舶金融の現状について解説します。
Galacticaは、KaiaとインドネシアのKorindoグループの海運会社PT Pelayaran Korindoがシンガポールに共同で設立したRWA発行体です。船舶金融の案件発掘から組成、発行、配分、償還管理までを自社で行っており、船舶金融のプライベートクレジットをRWAの一分野として定着させることを目指しています。
-
オンチェーンRWA市場は約340億米ドル規模で、その半分以上を債券・MMFが占めています。アジアの実物資産を担保とするプライベートクレジットは、まだ少ない状況です。
-
Galacticaは、Pegasus 1号・2号の全額償還と、3号の自社プラットフォームでのクローズを終えています。
-
事業の背景には、インドネシアの海運会社が抱える船舶金融の不足があります。
RWA市場の現状と、船舶を担保とする理由
現在、RWAトークン化の中心は米国債で、BlackRockやFranklin Templetonなどのトークン化ファンドが大きな割合を占めています。Binance Researchによると、2026年9月15日時点のオンチェーンRWAは341.8億米ドルで、このうち債券・MMFが182.9億米ドルです。オンチェーンで最も活発に活用されているカテゴリーはプライベートクレジットですが、その裏付け資産は北米の消費者ローンや住宅担保などが中心です。
Galacticaが担保とするのは、パーム油や合板、肥料を積んでインドネシアの島々を結ぶ船舶です。
インドネシアは17,000以上の島々から成る群島国家で、業界推計によると自国籍船は12,000隻を超えます。国内輸送を自国籍船に限るカボタージュ規制の下、これらの船舶は島間物流を支えていますが、同じく業界推計では半数以上が船齢25年を超えており、船舶の更新需要が続いています。
一方、インドネシアでの船舶取得は銀行融資への依存度が高く、国際的な船舶金融銀行の多くは過去の海運不況以降、アジアの中小規模案件から距離を置いています。90〜180日程度で100万〜500万米ドルのブリッジ資金を必要とする船主にとって、従来の融資は審査期間が長く、条件が合わないことも少なくありません。こうした背景には、案件規模が小さくても審査や契約組成に一定のコストがかかるため、中小規模の案件では金融機関にとって採算が合いにくいという構造的な課題があります。
Korindoグループは1969年からインドネシアで事業を行ってきた海運・産業グループで、原木・合板・パーム油の輸送から始まり、鉄鋼・精製・化学・肥料の荷主へとサービスを広げてきました。Galacticaは、グループが実際に直面してきた資金調達の課題を、オンチェーンの資金で補えるかを検証するために設立されました。
「多くのトークン化プロジェクトは、技術から出発し、その技術を適用する対象資産を探します。私たちは、よく知るインドネシアの海運・物流から始めました。実物資産のトークン化プロセスにおいて、どの工程で最も競争優位性を発揮できるかを分析した結果、資産の発掘からストラクチャリング、トークン化までを担うオリジネーターの領域に注力することにしました。」(Galactica CEO Bill Byeon)
Galacticaの役割
Galacticaは、第三者の案件を掲載するマーケットプレイスではなく、自ら案件を組成するオリジネーターとして事業を行っています。Korindoグループのネットワークを通じて船舶金融の需要を見つけ、特定の船舶またはフリートを担保とするリングフェンス型のクレジットとして組成し、Kaiaチェーン上でトークンとして発行して適格投資家に配分し、償還まで管理します。
【段階/Galacticaの役割】
-
案件発掘:Korindoグループや域内の海運会社から船舶金融の需要を発掘
-
組成:特定の船舶・フリートを担保とするクレジットを設計。独立鑑定に基づき担保カバレッジを設定
-
発行:Kaiaチェーン上でプライベートクレジット・ノートをトークンとして発行
-
配分:認可プラットフォーム(InvestaX)を通じて配分
-
運用・償還:申込・KYC・割当・決済・償還までを管理
Pegasus 2号・3号の借り手であるPT Pelayaran Maritim Prima(以下、PT PMP)は、この仕組みで資金を調達するため、Korindoグループ内の運営子会社としてジャカルタに設立されました。外航船16隻とタグボート・バージ9ユニットを含む計26隻を運航するグループの中で、信用範囲を区分する役割を持っています。

これまでの3案件
【案件/裏付け資産/規模・発行基盤/ステータス】
-
Pegasus 1:145,000CBM級LNG運搬船/2,500万米ドル・InvestaX/全額償還
-
Pegasus 2:PT PMPのフリート拡張/150万米ドル・InvestaX(MAS規制下)/全額償還
-
Pegasus 3:一般貨物船「MV Sun Ocean」(7,107DWT、鑑定額310万米ドル)/160万米ドル・Galactica自社プラットフォーム(Kaia Kairosテストネット)/クローズ・全額調達

Pegasus 1では、大型LNG運搬船のような高額資産でも、トークン化の仕組みで資金を調達できることを確認しました。2026年3月にMAS(シンガポール金融管理局)の規制下で運営されるInvestaX上でローンチしたPegasus 2では、規制に準拠したプラットフォームを通じて、フリート単位の小規模なクレジットを配分しました。今月クローズしたPegasus 3では、申込と資金払込をGalactica自社の投資プラットフォームで行い、トークンはメインネット移行前の段階としてKaia Kairosテストネット上で発行しました。
Galacticaによると、船舶金融のトークン化で、発行から満期償還までを実際の資金と船舶で完了した事例は、同社が確認した範囲では他に見当たらないとしています。
「Galacticaを通じて柔軟な資金調達手段を得たことで、銀行の手続きに左右されずにフリートの配置を最適化できるようになりました。運航会社にとって、120日の融資が数週間でまとまるか、銀行の与信枠に数四半期かかるかは、用船契約を取れるかどうかに関わります。」(PT PMP CEO Pilsup Shim)
船舶金融とトークン化の相性
船舶は登記・抵当権設定ができる資産で、中古船市場と独立鑑定によって価値を確認できます。インドネシア運輸省の船舶登記・抵当記録は公開閲覧が可能で、発行体を通さずに担保の状況を確認できます。用船収入は契約に基づくハードカレンシー建てで、ブリッジファイナンスの期間も短いため、長期資産で起こりやすい期間のミスマッチを避けやすいという特徴があります。
市場環境としては、Binance Researchによると、オンチェーンで実際に活用されている資本の比率はRWA全体で約12%ですが、プライベートクレジットでは49.67%となっています。利回りは、トークン化国債が3%台、プライベートクレジットが8〜12%程度とされています。投資家の関心が、国債トークンで資金を保持するだけでなく、利回りを生むクレジット・トークンにも広がっていることがうかがえます。また、アジアの貿易インフラを担保とするクレジットは、現在の供給の中心である米国の消費者信用とは異なる特性を持つ資産です。
「Galacticaは、Kaiaのオンチェーン金融インフラと資本市場を築くうえで重要な役割を担っています。Pegasusで重要なのは個々の案件の規模ではなく、域内の海運グループ、シンガポールの発行体、パブリックブロックチェーンが連携して、調達から償還までを繰り返し行えるかどうかです。」(Kaia DLT Foundation 議長 Dr. Sam Seo)

自社プラットフォームと今後の取り組み
配分の一部を自社プラットフォームに移したのは、段階的な計画に基づくものです。InvestaXのような認可プラットフォームは、投資家のオンボーディングやカストディ、コンプライアンスの仕組みを備えており、新しい発行体が同じ体制をすぐに整えるのは容易ではありません。Galacticaは、規制対応が必要な案件では今後も認可プラットフォームとの連携を続ける方針です。一方、自社プラットフォームでは、申込から償還までを一貫して管理でき、借り手の資金需要から調達までの期間を短くできます。
なお、自社プラットフォームは現在テスト段階で、Pegasus 3はメインネットではなくKairosテストネット上で発行されています。Byeon CEOは、テストプラットフォームでの社内クローズについて「パイプラインを広げる前に、実際の資金と実際の借り手で仕組みが機能することを技術的に確認するためのものだった」と説明しています。
Galacticaは今後、次の2点に取り組むとしています。
・借り手を、Korindoグループ以外の域内海運会社やインフラ企業に広げること
・投資家を、シンガポール・韓国・域内の機関投資家および適格投資家に広げること
船舶金融のプライベートクレジットがRWAの一分野として定着するかどうかは、この仕組みが借り手や船種、市況の変化を越えて続けられるかにかかっています。
企業概要
Galactica
Galacticaは、Kaiaエコシステムのリアルワールドアセット(RWA)トークン化プロジェクトです。CEOのBill Byeon氏は、Samsung Securitiesでの勤務を経て、2017年にBithumbに入社し、デジタル資産のカストディやブロックチェーン関連事業に携わった経験を持ちます。シンガポールに本社を置く資産発行体で、KaiaとインドネシアのPT Pelayaran Korindoが共同で設立しました。船舶金融プログラム「Pegasus」を通じて、インドネシアの船主とグローバルな投資家をつなぐ資金調達の仕組みづくりに取り組んでいます。詳細は www.galacticarwa.com をご覧ください。
Kaia
Kaiaは、アジアにおけるステーブルコイン決済およびオンチェーン金融を目的として設計されたEVM互換のレイヤー1ブロックチェーンです。送金、決済、外国為替(FX)、利回り運用、トークン化資産などの金融機能を提供しています。KlaytnとFinschiaの統合により誕生し、KakaoおよびLINEのエコシステムを基盤として、韓国、日本、台湾、タイ、インドネシアなどで事業を展開しています。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
