ITチームだけが理解していても製造現場には浸透しない/DX教育事例1322件から見る製造業のDX教育の視点【ものづくり新聞製造業DX事例分析vol.07】
DXはシステム導入だけでは進まない。現場技能の継承、デジタル人材育成、内製化、組織変革が製造業DXの重要テーマに
株式会社パブリカが運営しているものづくり新聞(代表:伊藤宗寿)は、世界の製造業DX事例を継続的に収集・分類している「製造業DX事例データベース」をもとに、リアルな課題と解決策を紐解くレポートを配信しています。このデータベースは、ものづくり新聞が日本と世界のニュース記事やプレスリリースなどを毎日自動取得しデータベースに蓄積する仕組みで、製造業向け情報発信を目的として構築した仕組みです。
今回の分析では、教育、育成、研修、訓練、リスキリング、デジタル人材、DX人材、技能継承、技術継承、作業支援、内製化、市民開発、チェンジマネジメント、データ人材、AI人材、VR/AR/XR教育などに関連する事例を抽出しました。抽出された関連事例は1,322件(2026年6月末現在)でした。分析の結果、製造業DXは、単にシステムやデジタルツールを導入する段階から、現場の作業者、技術者、管理者、DX推進担当者がデジタルを使いこなし、業務変革につなげる段階へ移行しつつあることが見えてきました。
調査の背景:本当の意味でDXの成果を出すには
製造業では、スマートファクトリー、AI、IoT、MES、PLM、ERP、デジタルツイン、生成AIなどの導入が進んでいます。一方で、DXの成果を出すためには、技術導入だけでなく、現場が新しい仕組みを理解し、使いこなし、改善活動に結びつけることが不可欠です。
現場の安全・品質・納期を守りながら新しい仕組みを導入する必要がある製造業では、教育・人材育成・現場浸透の設計がDXの成否を左右します。
「DXツールを導入したが、現場で十分に使われていない」
「データを活用できる人材が不足している」
「ベテランの技能やノウハウを若手に継承できていない」
「IT部門任せではなく、現場主導でDXを進めたい」
こうした課題に対応するため、ものづくり新聞では、日々更新している製造業DX事例データベースをもとに、関連事例を分野別に整理しました。
DX教育・人材育成・現場浸透関連事例1,322件の分類
今回の分析では、関連事例を以下の8分野に分類しました。

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分類 |
件数 |
主な内容 |
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現場技能・作業者教育/技術継承 |
347件 |
熟練技能の形式知化、作業支援、標準作業、ナレッジ継承、遠隔支援 |
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DX教育・リテラシー/全社研修 |
274件 |
全社員向けDX教育、デジタルリテラシー、DX人材育成、研修プログラム |
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組織変革・チェンジマネジメント |
134件 |
DX推進体制、企業文化変革、現場巻き込み、変革人材の育成 |
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市民開発・内製化/ローコード活用 |
102件 |
現場主導のアプリ開発、ローコード活用、IT内製化、改善活動のデジタル化 |
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AI・データ活用人材育成 |
68件 |
データ人材、AI人材、データリテラシー、シチズンデータサイエンティスト |
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VR/AR/XR・シミュレーション教育 |
32件 |
仮想空間での作業訓練、AR作業支援、シミュレーター教育 |
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産学連携・地域/教育機関連携 |
29件 |
大学・高専・教育機関との連携、地域DX人材育成、リカレント教育 |
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その他・横断的な人材育成 |
336件 |
複数領域にまたがる教育・人材育成・現場浸透施策 |
もっとも多いのは「現場技能・作業者教育/技術継承」で347件
この分野では、熟練者のノウハウをデジタル化する取り組み、作業手順の標準化、動画やセンサーを活用した作業支援、遠隔支援、ナレッジ継承、AIによる作業確認などが含まれます。暗黙知も多いと言われるベテランの思考や判断を、見える形にしたいというニーズは非常に高まっています。
人手不足や世代交代が進むなかで、技能継承は多くの企業にとって重要な経営課題です。DXは単なる自動化ではなく、人の技能を補完し、次世代に継承するための仕組みとしても活用され始めています。
全社的なDX教育・リテラシー向上も重要テーマに
2番目に多かったのは「DX教育・リテラシー/全社研修」で、274件でした。全社員向けのDX教育、デジタルリテラシー向上、DX人材育成プログラム、社内アカデミー、階層別研修、部門別研修などが含まれます。製造業DXでは、専門部門だけがデジタルを理解していても、現場への浸透は進みません。各部門が自分たちの業務課題とデジタル活用を結びつける必要があります。
分析から見えた3つの傾向
1. DXは「導入」から「使いこなし」の段階へ進んでいる
製造業DXは、システムやデジタルツールを導入するだけでは成果につながりません。導入したツールを現場が理解し、日々の業務や改善活動に使いこなすことが重要です。
2. 熟練技能の継承がDXの重要テーマになっている
動画、画像、センサー、作業記録、生成AI、ナレッジ検索、AR支援などを活用し、暗黙知を形式知化する取り組みが広がっています。DXは人を置き換えるだけでなく、人の技能を支援し、継承し、次世代に引き継ぐための基盤としても活用されています。
3. 現場主導の内製化が、DX浸透の鍵になる
ローコード・ノーコード、市民開発、データ活用人材、AI活用人材の育成は、現場主導DXを進めるうえで重要な取り組みです。一方で、教育、ルール、ガバナンス、IT部門の支援を組み合わせた仕組みづくりが求められます。

製造業DXを現場に浸透させるために必要なこと
今回の事例分析から、製造業が取り組みを検討する際には、以下の観点が重要であると考えられます。
・経営層がDXの目的を明確に示すこと
・現場課題を起点にDXテーマを設定すること
・全社員向けの基礎教育と、実践人材向けの高度教育を分けて設計すること
・熟練技能や現場ノウハウをデジタル化し、教育に活用すること
・IT部門と現場部門が協働する体制をつくること
・AIや生成AIを使う人材に、業務理解とデータ理解の両方を持たせること
株式会社パブリカ
製造業を中心としたコンサルティングサービス(プロジェクトマネージメント、DXコンサルティング)を軸に、製造業向けウェブメディア事業(ものづくり新聞)、製造業向けDX人材育成プログラム(Innovation Maker Academy)などを手掛けています。私たちの夢は、ものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現です。目には見えない「作る人の想い」と変革の力を掛け合わせ、ものづくり企業と共に心躍る未来をつくり続けます。
HP:株式会社パブリカ
ものづくり新聞について
ものづくり新聞は、「ものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現」を目指すウェブメディアです。中小製造業や工芸職人のインタビュー記事や、製造業のDX・業務改革に関する情報を発信するメディアです。
この活動の一環として、国内外の製造業DX事例を継続的に収集し、業種、地域、技術、業務領域、活用テーマごとに分類・分析することで、製造業の実務者が自社の取り組みに活用できる情報提供を目指しています。
ウェブサイトはこちらから⇨makingthingsnews.com
製造業向けDX人材育成プログラム「Innovation Maker Academy」
ものづくり新聞による取材やコンサルティング活動により得た知見をもとに、製造業向けDX教育事業「Innovation Maker Academy」を展開しています。デジタル活用やDX推進課題に対して専門講師が講義やワークショップを実施いたします。「ものをつくる人から、変革を動かす人へ」をコンセプトに掲げ、ツール導入ありきではない教育プログラムをご提供しています。
ホームページはこちらから⇨imacademy.jp
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本件に関するお問い合わせ
ものづくり新聞 編集部(製造DX担当)
お問い合わせ先:dx@publica-inc.com
Webサイト:makingthingsnews.com
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