元デジタル大臣・河野太郎氏「オンライン広告詐欺、議員立法で1ヶ月施行を」——T4IS2026『デジタル・パブリック・スクエア』にてSmartNews共同創業者・鈴木健 氏と対談

〜世界80兆円のオンライン広告詐欺産業、台湾は本人確認義務化と共同賠償責任で詐欺広告が法施行前の30分の1に減少。日本は議員立法のスピード感がカギ〜

ソーシャス

開催概要

ソーシャス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:尹世羅)は、2026年4月26日(日)、東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井カンファレンスにて開催した SusHi Tech Tokyo 2026 公式パートナーイベント・招待制エグゼクティブサミット「Tech for Impact Summit 2026」(以下、T4IS2026)のメインステージにて、河野太郎 衆議院議員(元デジタル大臣、自由民主党)と 鈴木健 氏(SmartNews 共同創業者、東京大学 特任研究員)によるファイヤーサイドチャット『Digital Public Square(デジタル・パブリック・スクエア)』を実施いたしました。

過去のサミットには、オードリー・タン氏(元台湾デジタル担当大臣)、平井初代デジタル大臣、チャールズ・ホスキンソン氏(Cardano創設者)、キャシー松井 氏(MPower Partners 共同創業者・元ゴールドマン・サックス副会長)らが登壇しており、本年で3回目の開催です。

両氏は、(1)オンライン広告詐欺対策と日本の規制の遅れ、(2)SNS実名制と日本のコンテンツ文化、(3)AI時代の行政と「ブロードリスニング」、(4)2021年のワクチン接種ダッシュボード共同開発の原体験——という4つのテーマを横断して、率直に議論しました。

① オンライン広告詐欺対策——「世界で80兆円産業、台湾は施行後30分の1に」

鈴木氏は、現在主導するオンライン広告詐欺対策プロジェクトの背景を説明し、規制の必要性を強調しました。

「エコノミストの報道によると、世界全体でオンライン広告詐欺は約80兆円産業。」(鈴木氏)

「メタの収益のうち10%、売上の10%が不正広告・詐欺広告だという社内文書を、ロイターが昨年末に報道した。」(鈴木氏)

「台湾では2024年に法律が通り、2025年に施行され、オンライン広告を通じた詐欺広告が法施行前と比べて30分の1まで下がった。これはオードリー・タン氏が頑張ってやった。」(鈴木氏)

台湾モデルの核心として鈴木氏は、(a)警察が運用する詐欺通報サイト「フラウドバスター」、(b)通知から24時間以内の削除義務、(c)違反した広告プラットフォームへの共同賠償責任の3点を挙げ、東南アジアで一大産業化している特殊詐欺コンパウンド(KKパーク、プリンスグループなど国境沿いの1万人規模の町)と組み合わせた構造的問題であると指摘しました。

これに対して河野氏は、日本での議員立法によるスピード対応を提言しました:

「議員立法を国会でちゃんと、これは優先事項だから、とにかく今週衆議院でやったら、来週参議院でやって、もう1ヶ月後には施行するぞぐらいのペースで動いていかないと。今の役所のペースでこのままいったら、じゃあ2年後かなみたいな、では詐欺は止められないし、被害に遭っている人たちも、結局声を上げても何も動かないじゃないかという最初のところに戻ってしまう。」(河野氏)

両氏は、(i)マネタイズするアカウントの本人確認義務化、(ii)被害発生時の損害賠償ルールの明確化(侮辱罪・名誉毀損の保証額の引き上げを含む)、(iii)プラットフォームに対する24時間削除義務と共同賠償責任、を日本における入り口として議論。鈴木氏は「プラットフォーマーの自主規制で勝手にビジネスモデルをやってください、というのが、もう許されないところまで来てしまっている」と語りました。

② SNS実名制と日本のコンテンツ文化——「韓国は2012年に違憲判決」

「マネタイズするアカウントは絶対に実名制をやった方がいい。儲けている以上、誰がやっているのかという責任は明確にして、被害が起きているのなら当然に損害賠償の対象にならなければならない。物やサービスをリアルの世界で売っているのをそのままネットへ持ち込んでいるだけなので、議論の余地はあまりない。」(河野氏)

一方、鈴木氏は、韓国が2007年頃から実名制を導入し2012年に最高裁で違憲判決となった事例を引きながら、純粋実名制への懸念を共有しました。

「日本の豊かなコンテンツ文化は、非実名文化から来ている。日本のクリエイターのXアカウントはほとんどがアニメや漫画のアイコンで、実名ではない名前でやっている。これは江戸時代の俳句や歌舞伎の『俳号』、つまりペンネームでコミュニケーションすることで、身分社会を超えて創作活動ができたネットワーク文化に連なっている。実名化されると、それが全部潰れてしまうのではないか——これは大きな文化的損失になりかねない。」(鈴木氏)

両氏は折衷案として、「プラットフォーム側は本人確認を行うが、SNS上ではニックネーム・ペンネームでも活動できる。法律違反の発言があれば速やかに同定でき、司法手続きに乗せられる」というKYC+仮名活動モデルの可能性を議論。開示請求の敷居をどこに設定するかが最大の論点であると整理しました。

③ AI時代の行政と「ブロードリスニング」——河野氏は10年で10回、X上で市民課題収集

鈴木氏は、河野氏の X上での10年にわたる市民フィードバック活動を「一人ブロードリスニング」と紹介。約230万人のフォロワーから、これまで以下のような行政課題の収集・改善サイクルを10回繰り返してきたことを共有しました:

  • 科研費の申請手続き(約10年前、文科省と連携し国立・公立大学はほぼ解決)

  • JR特急券の精算ルール(学会出張時に切符の持ち帰りが必要だった運用)

  • eGov 申請フォーム:47都道府県の名前を入力する際に、カタカナ振り仮名の入力までリクワイアドになっていた問題(デジタル庁が対応中)

河野氏は、AIによる行政の業務変革に強い期待を表明しました:

「国会答弁などは、役所の人が徹夜に近く答弁を書いていたりするのが、もうAIで多分一瞬でできるようになる。」(河野氏)

「1,741の自治体が、それぞれ自分のやり方でやっているのを、一つに統合した方がよい。政策をやるかやらないかは地方分権だが、プロセスは中央集権で、AIにプロセスを作ってもらって、それをみんなでやった方がいい。AIを入れることで、本当に人間がやらなければいけないところに、役所も自治体も人を張ることができるようになる。」(河野氏)

鈴木氏は、AIによる市民フィードバックの仕組み化への展望を語り、クロージング発言として次のメッセージで締めました:

「市民・シンクタンク・学者が、内閣法制局の見解も含めて、AIで法律を提案できるようになる時代が来ている。問題を感じている人が、直接、問題解決のアイデアを出して解決できる——『声を上げたら、この社会は変わっていけるんだ』と信じられる社会を、ぜひ一緒に作っていきたい。」(鈴木氏)

④ 2021年・ワクチン接種ダッシュボード共同開発——「テック・フォー・インパクトの原体験」

両氏の対話の出発点として共有されたのが、2021年1月のワクチン接種ダッシュボード共同開発プロジェクトです。

  • 2021年1月18日:河野氏、新型コロナワクチン接種推進担当大臣に就任

  • 2021年1月19日 夜:鈴木氏が河野氏とオンラインで初会合し、「市民の力で何か手伝えることはないか」と申し出

  • 2021年2月19日:鈴木氏が組成した有志エンジニアリングチームが、不眠不休で約4週間かけて開発したワクチン接種ダッシュボードがローンチ(医療従事者への接種開始の2日後)

  • 当時はデジタル庁発足(同年9月)以前であり、政府内に開発の手を動かす人員がなかった状況下での市民・政府協働プロジェクト

「市民が自主的に何かを取り組むことによって、共同することによって非常に大きなインパクトを出すことができる——まさに『テック・フォー・インパクト』の、僕の中の原体験になった。」(鈴木氏)

河野氏は、デジタル大臣としての2年間で、明治元年まで遡って「アナログでやれ」と書かれている法律・法令を約1万件抽出し、全廃して「デジタルでやれるならデジタルでやっていい」という法令に置き換えた経緯も紹介。明治4年に制定された「雪倒れ人を見つけたら高札(縦看板)を立てよ」という条文が現行法として生きていたエピソードも共有されました。

ハンコ廃止については「今ほぼゼロに近い状況になっているが、時々地方でまだハンコを使っているという話があって、そこの市長に電話して条例を変えてくださいと頼むことがまだある」と語りました。

米国大統領選挙視察から見えた、日本の「分断のカウントダウン」——背景認識として共有

鈴木氏は2016年から3回にわたる米国大統領選挙視察(約30州を訪問)から、ワシントンDCのエスタブリッシュメントへの絶望を背景に、Wisconsin州の若者が予備選挙でバーニー・サンダース候補に、本選挙でトランプ候補に投票した事例を共有しました。

「アメリカの感情的分断(affective polarization)は、共和党支持者と民主党支持者が互いを『嫌い』『憎い』と答える割合が70%まで上がっている。日本でも、5年・10年で深刻な分断が始まるのではないか、という危機感がある。」(鈴木氏)

河野氏も同様の現状認識を示しました:

「もう実は起き始めていて、かなり極端な発言というのが選挙であったり、選挙の前であったりというのが起きている。極端なことを言えば言うほどアピールが強いと思っている。ネットで匿名で罵声を書き込んでいた人たちが、リアルな場に行って罵声を浴びせる。これが一歩間違えると、安倍さんの事件のようなところまで行かないか心配する。」(河野氏)

両氏は、2年前の兵庫県知事選で、対立候補の支持者同士に明確な相互嫌悪のデータが現れたことを、日米共通の警戒すべきパターンとして指摘しました。

登壇者プロフィール

河野 太郎 氏(こうの たろう)

衆議院議員(自由民主党、神奈川15区)。元デジタル大臣(第4代)、元防衛大臣、元外務大臣、元行政改革担当大臣、元規制改革担当大臣、元国家公務員制度担当大臣を歴任。日本のデジタル化、行政改革、安全保障政策の中心人物。X(旧Twitter)フォロワー数は約230万人で、政治家として日本国内最多級。ジョージタウン大学卒。2021年新型コロナワクチン接種推進担当大臣として、紙ベースの予診票管理から国全体のワクチン接種ダッシュボードへの転換を主導。

鈴木 健 氏(すずき けん)

東京大学 特任研究員。SmartNews 共同創業者。博士(学術)。1975年長野県生まれ。慶應義塾大学理工学部物理学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主任研究員、東京財団仮想制度研究所フェローを経て、2012年にスマートニュース株式会社を共同創業。専門は複雑系科学、自然哲学。著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房)、共訳書に『現れる存在』(NTT出版)など。現在、オンライン広告詐欺対策プロジェクトを主導し、自民党プロジェクトチームとも連携。2021年のワクチン接種ダッシュボード開発では、有志エンジニアリングチームを組成して政府と協働した。

セッション映像

ファイヤーサイドチャット『Digital Public Square——Who Governs the Digital Public Square?』全編は、Tech for Impact Summit 公式YouTubeチャンネルにて公開しています。

メディア各社の取材・登壇者への取材取次ぎについて

本セッションのテキスト・写真・引用、および河野議員事務所・鈴木健 氏への個別取材のお取次ぎについては、Tech for Impact Summit 運営事務局(summit@socious.io)までお問い合わせください。対応可能な範囲でお繋ぎいたします。

引用にあたっては、本リリースに掲載した発言を出典「Tech for Impact Summit 2026『Digital Public Square』(2026年4月26日、東京・紀尾井カンファレンス)」明記の上、そのままご利用いただけます。

Tech for Impact Summit について

Tech for Impact Summit(T4IS)は、ソーシャス株式会社が主催する招待制エグゼクティブサミットです。ビジネス・政策・テクノロジー・文化の各領域を代表する経営者、機関投資家、政策立案者らが一堂に会し、人類が直面する最も切迫した課題に対して、高インパクトのテクノロジーをどう投入していくかを議論します。次回は2027年5月18-19日(火・水)、東京にて開催予定。

お問い合わせ先

ソーシャス株式会社Tech for Impact Summit 運営事務局

会社概要

ソーシャス株式会社

  • URL:https://socious.io/ja

  • 業種:情報通信

  • 本社所在地:東京都中央区日本橋3丁目2番14号1階

  • 代表者名:尹世羅

  • 設立:2021年07月


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業種
情報通信
本社所在地
東京都中央区日本橋3丁目2番14号1階
電話番号
070-7490-6558
代表者名
尹世羅
上場
未上場
資本金
300万円
設立
2021年07月