中小製造業DXは、現場の「見える化」から始まりやすい/507件のデータから見る中堅・中小製造業の取り組み例【ものづくり新聞製造業DX事例分析vol.08】
約4,000件の製造業DX事例データベースから、中堅・中小製造業が現場起点で始めやすいDXテーマを公開。
株式会社パブリカが運営しているものづくり新聞(代表:伊藤宗寿)は、世界の製造業DX事例を継続的に収集・分類している「製造業DX事例データベース」をもとに、リアルな課題と解決策を紐解くレポートを配信しています。このデータベースは、ものづくり新聞が日本と世界のニュース記事やプレスリリースなどを毎日自動取得しデータベースに蓄積する仕組みで、製造業向け情報発信を目的として構築した仕組みです。
今回の分析では、データベースに登録された4,506件の製造業DX関連事例のうち、企業規模が「中小」または「中堅」と分類されている事例507件を対象に、業種、地域、DX領域、導入テーマの傾向を整理しました。内訳は中小企業事例が380件、中堅企業事例が127件です。
分析の結果、中堅・中小製造業DXでは、見える化・BI、IoT・センサー、生産管理・工程管理、AI・画像検査、クラウド・SaaSなどが主要テーマとして確認されました。大規模な全社システム刷新よりも、現場データの可視化、紙帳票・Excel業務の見直し、工程管理のデジタル化、検査・品質管理の自動化など、現場課題に直結した取り組みが多い傾向が見られます。
調査の背景:中堅中小企業が知りたい、DX事例とは
製造業DXという言葉は広く使われるようになりましたが、中堅・中小製造業にとっては、大企業の大規模なスマートファクトリー事例やグローバルERP刷新事例だけでは、自社で何から始めればよいか分かりにくいという課題があります。
中堅・中小製造業では、限られた人員・予算の中で、紙帳票、Excel管理、手作業の転記、設備稼働状況の把握、検査・品質管理、受発注・見積、技能継承など、日々の現場課題に直結するテーマからDXを進めるケースが多く見られます。
ものづくり新聞では、日々更新している製造業DX事例データベースをもとに、中堅・中小製造業に分類される事例を抽出し、取り組みやすいDXテーマと傾向を整理しました。
中堅・中小製造業DX事例507件の概要

|
項目 |
件数 |
構成比 |
|
中小企業事例 |
380 |
75.0% |
|
中堅企業事例 |
127 |
25.0% |
|
合計 |
507 |
100.0% |
DX領域別では、生産DXが271件でもっとも多い
次いで品質DX、経営DX、保全DXが続きました。中堅・中小製造業では、製造現場の可視化、工程管理、設備稼働、検査・品質、保全など、現場業務に近い領域からDXに取り組む傾向が見られます。

|
DX領域 |
件数 |
構成比 |
|
生産DX |
271 |
53.5% |
|
品質DX |
72 |
14.2% |
|
経営DX |
61 |
12.0% |
|
保全DX |
26 |
5.1% |
|
設計DX |
15 |
3.0% |
|
SCM |
12 |
2.4% |
|
営業DX |
11 |
2.2% |
取り組みテーマでは、見える化・IoT・生産管理・AI検査が上位
キーワードベースで取り組みテーマを分類すると、見える化・BI、IoT・センサー、生産管理・工程管理、AI・画像検査、クラウド・SaaSが上位となりました。中堅・中小製造業DXでは、まず現場の状況を把握し、データを集め、工程や品質を管理するための基盤づくりが重要なテーマになっていると考えられます。

|
テーマ |
件数 |
主な内容 |
|
見える化・BI |
257 |
稼働状況、工程進捗、経営・現場データの可視化 |
|
IoT・センサー |
229 |
設備データ収集、稼働監視、遠隔監視 |
|
生産管理・工程管理 |
198 |
作業指示、進捗管理、製造実績、MES連携 |
|
AI・画像検査 |
194 |
外観検査、不良検知、異常検知、品質判定 |
|
クラウド・SaaS |
182 |
クラウド生産管理、業務アプリ、データ共有 |
|
補助金・地域支援 |
115 |
補助金活用、自治体・支援機関によるDX支援 |
|
受発注・営業DX |
109 |
見積、受発注、販売管理、営業支援 |
|
人材育成・技能継承 |
98 |
作業支援、動画マニュアル、教育・研修 |
中でも、機械関連の事例が多い
業種別では、機械分野が247件でもっとも多く、事例全体の約半分を占めていました。次いで、電機、自動車、食品、化学などの事例も確認されました。中堅・中小製造業では、受注生産、部品加工、装置製造、金型、金属加工など、工程管理や個別案件管理が重要になる業種でDX事例が多く見られます。
分析から見えた3つの傾向
1. 中堅・中小製造業DXは、現場の「見える化」から始まりやすい
もっとも多く確認されたテーマは、稼働状況、工程進捗、品質状況、経営データなどの見える化です。大規模なシステム刷新よりも、まず現場で何が起きているかを把握し、改善活動につなげる取り組みが多く見られます。
2. IoT・生産管理・クラウドは、現場データ活用の入口になっている
設備データの収集、工程管理、作業指示、製造実績収集、クラウド型の生産管理システムなどは、中堅・中小製造業にとって実務上の効果を説明しやすいテーマです。人手不足や属人化への対応としても導入が進みやすい領域です。
3. AI・画像検査やロボットは、品質・省人化課題に直結するテーマとして広がる
AI・画像検査、異常検知、協働ロボット、自動搬送などは、品質安定化、省人化、人手不足対策と結びつきやすいテーマです。中堅・中小製造業においても、特定工程や検査工程から段階的に導入する事例が増えています。
中堅・中小製造業がDXを進める際の示唆

今回の分析から、中堅・中小製造業DXでは、最初から大規模な全社変革を目指すよりも、現場の困りごとを起点に、見える化、データ収集、工程管理、品質管理、紙帳票・Excel脱却などから始めることが有効であると考えられます。
また、補助金や地域支援、クラウドサービス、ローコード・ノーコードツールを活用することで、限られた人員・予算でも取り組みを始めやすくなります。一方で、個別ツールの導入だけで終わらせず、現場で継続的に使い、改善活動につなげる体制づくりが重要です。
本分析は、公開されているニュース記事、プレスリリース、企業発信情報をもとにしたものであり、国内中堅・中小製造業全体のDX導入件数や市場規模を示すものではありません。公開事例として確認できる情報の傾向を分析したものです。
株式会社パブリカ
製造業を中心としたコンサルティングサービス(プロジェクトマネージメント、DXコンサルティング)を軸に、製造業向けウェブメディア事業(ものづくり新聞)、製造業向けDX人材育成プログラム(Innovation Maker Academy)などを手掛けています。私たちの夢は、ものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現です。目には見えない「作る人の想い」と変革の力を掛け合わせ、ものづくり企業と共に心躍る未来をつくり続けます。
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この活動の一環として、国内外の製造業DX事例を継続的に収集し、業種、地域、技術、業務領域、活用テーマごとに分類・分析することで、製造業の実務者が自社の取り組みに活用できる情報提供を目指しています。
ウェブサイトはこちらから⇨makingthingsnews.com
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