3,815件の製造業DX事例を分析 日本と海外のDX傾向はどう違う?【ものづくり新聞製造業DX事例分析vol.09】

日本は現場改善・品質・人材育成、海外はAI・クラウド・デジタルツイン活用が目立つ傾向

株式会社パブリカ

株式会社パブリカが運営しているものづくり新聞(代表:伊藤宗寿)は、世界の製造業DX事例を継続的に収集・分類している「製造業DX事例データベース」をもとに、リアルな課題と解決策を紐解くレポートを配信しています。このデータベースは、ものづくり新聞が日本と世界のニュース記事やプレスリリースなどを毎日自動取得しデータベースに蓄積する仕組みで、製造業向け情報発信を目的として構築した仕組みです。

2026年7月現在、同データベースには4,000件近くの製造業DX関連事例を蓄積しています。今回の分析では、そのうち国・業種・DX領域などの分類情報を確認できる3,815件を対象に、日本2,127件、海外1,688件の公開事例を比較しました。

分析の結果、日本の製造業DX事例では、現場改善、品質管理、DX人材育成、市民開発、業務定着に関する取り組みが目立ちました。一方、海外の製造業DX事例では、AI、クラウド、デジタルツイン、シミュレーション、ロボット、データ基盤などの技術活用を前面に出した事例が目立つ傾向が見られました。

調査の背景

製造業では、生成AI、AI検査、スマートファクトリー、IoT、ロボット、PLM、ERP、MES、デジタルツイン、予兆保全、サプライチェーン改革、市民開発、DX人材育成など、さまざまなDXテーマが同時に進んでいます。

一方で、製造業の実務担当者からは、次のような声も多く聞かれます。

•日本企業と海外企業では、DXの重点領域に違いがあるのか

•同業他社や海外企業は、どのような技術を活用しているのか

•日本の製造業DXの特徴を客観的に把握したい

•海外の先進事例から、自社のDX施策検討に使える示唆を得たい

•経営層や現場に説明するための具体的な比較材料がほしい

こうした課題に対応するため、ものづくり新聞では、日々更新している製造業DX事例データベースをもとに、日本と海外の公開DX事例を比較し、業種、DX領域、技術テーマ、地域の違いを整理しました。

なお、本分析は、公開されているニュース記事、プレスリリース、企業発信情報をもとにしたものであり、各国・各地域における実際のDX導入件数や市場規模を示すものではありません。公開事例として確認できる情報の傾向を分析したものです。

地域別の事例分布

地域別では、日本が2,127件でもっとも多く、海外では欧州、アジア(日本除く)、北米の事例が多く見られました。地域別の上位は、日本2127件,、欧州506件、 アジア(日本除く) 506件、北米470件、その地域161件です。

地域

件数

構成比

日本

2127

55.8%

欧州

506

13.3%

アジア(日本除く)

506

13.3%

北米

470

12.3%

その他地域

161

4.2%

グローバル/複数地域

43

1.1%

DX領域別:日本は業務定着系、海外は技術活用が多い

DX領域別に見ると、日本・海外ともに「生産・製造」に関する事例が中心ですが、公開事例の打ち出し方には違いが見られます。日本では、現場改善、品質、保全、人材育成、業務定着に関する文脈が目立ち、海外では、AI、クラウド、デジタルツイン、ロボット、データ基盤などの技術活用を前面に出した事例が目立ちます。

DX領域

日本件数

海外件数

日本構成比

海外構成比

生産DX

625

590

29.4%

35.0%

経営DX

412

106

19.4%

6.3%

設計DX

121

62

5.7%

3.7%

品質DX

119

57

5.6%

3.4%

営業DX

126

39

5.9%

2.3%

保全DX

117

39

5.5%

2.3%

業種別では、電機・機械・自動車が中心

業種別では、日本・海外ともに、電機、機械、自動車、素材・プロセス系などの事例が多く見られました。製品構成が複雑で、設計・製造・品質・サプライチェーンの連携が重要な業種ほど、DX事例として公開されやすい傾向があります。

業種

日本件数

海外件数

日本構成比

海外構成比

電機

437

364

20.5%

21.6%

機械

499

142

23.5%

8.4%

その他

260

206

12.2%

12.2%

自動車

192

266

9.0%

15.8%

科学

174

131

8.2%

7.8%

医薬

128

167

6.0%

9.9%

技術テーマ別では、海外はAI・クラウド・デジタルツイン、日本は現場実装・品質・人材育成が目立つ

技術テーマ別に見ると、日本と海外では出現率に差が見られました。海外事例では、AI、クラウド、デジタルツイン、ロボット、自動化などの技術活用が比較的目立ちます。一方、日本事例では、品質、保全、現場改善、市民開発、DX教育・人材育成など、現場への定着や業務改善に近いテーマが目立ちます。

テーマ

日本件数

海外件数

日本出現率

海外出現率

AI・機械学習

1442

1431

67.8%

84.8%

クラウド・データ基盤/BI

925

732

43.5%

43.4%

デジタルツイン・シミュレーション

695

784

32.7%

46.4%

ロボット・自動化

608

807

28.6%

47.8%

IoT・センサー/エッジ

621

619

29.2%

36.7%

品質・検査DX

574

591

27.0%

35.0%

SCM・調達・物流

477

494

22.4%

29.3%

生成AI・LLM

419

315

19.7%

18.7%

分析から見えた3つの傾向

1. 日本は「現場定着型」のDX事例が目立つ

日本の製造業DX事例では、紙帳票の電子化、現場データの可視化、品質管理、保全、作業支援、DX人材育成、市民開発など、現場の業務を着実に改善し、デジタルを定着させる取り組みが多く見られます。これは、日本の製造業が持つ現場改善、品質重視、技能継承の文化とも関係していると考えられます。

2. 海外は「技術実装型」のDX事例が目立つ

海外の製造業DX事例では、AI、クラウド、デジタルツイン、シミュレーション、ロボット、データ基盤など、技術テーマを前面に出した発信が多く見られます。特に、仮想工場、ロボットシミュレーション、クラウドデータ基盤、生成AI、AIエージェントなど、先端技術を活用した事例が目立ちます。

3. 違いは「進み具合」ではなく「重点領域と発信の仕方」の違いとして見るべき

本分析で見られた差は、日本企業が遅れている、海外企業が進んでいる、という単純な比較を示すものではありません。公開事例の傾向として、日本では現場定着、品質、業務改善、人材育成の文脈が強く、海外では技術活用、プラットフォーム、デジタルツイン、AIの文脈が強く出やすい、という違いとして捉えることが重要です。

製造業が国内外事例から学べること

今回の比較分析から、製造業がDX施策を検討する際には、日本企業の現場定着型の取り組みと、海外企業の技術実装型の取り組みを組み合わせて参考にすることが有効であると考えられます。

•日本企業の事例からは、現場への浸透、品質改善、人材育成、市民開発、既存業務との接続を学ぶことができる

•海外企業の事例からは、AI、クラウド、デジタルツイン、ロボット、データ基盤などの技術活用の方向性を学ぶことができる

•自社DXの検討では、技術導入だけでなく、現場で使いこなすための教育・運用・組織づくりまで設計する必要がある

•国内外の事例を比較することで、自社が取り組むべきテーマの優先順位や、次に検討すべき技術領域を考えやすくなる


株式会社パブリカ

製造業を中心としたコンサルティングサービス(プロジェクトマネージメント、DXコンサルティング)を軸に、製造業向けウェブメディア事業(ものづくり新聞)、製造業向けDX人材育成プログラム(Innovation Maker Academy)などを手掛けています。私たちの夢は、ものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現です。目には見えない「作る人の想い」と変革の力を掛け合わせ、ものづくり企業と共に心躍る未来をつくり続けます。
HP:株式会社パブリカ

ものづくり新聞について

ものづくり新聞は、「ものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現」を目指すウェブメディアです。中小製造業や工芸職人のインタビュー記事や、製造業のDX・業務改革に関する情報を発信するメディアです。

この活動の一環として、国内外の製造業DX事例を継続的に収集し、業種、地域、技術、業務領域、活用テーマごとに分類・分析することで、製造業の実務者が自社の取り組みに活用できる情報提供を目指しています。

ウェブサイトはこちらから⇨makingthingsnews.com

製造業向けDX人材育成プログラム「Innovation Maker Academy」

ものづくり新聞による取材やコンサルティング活動により得た知見をもとに、製造業向けDX教育事業「Innovation Maker Academy」を展開しています。デジタル活用やDX推進課題に対して専門講師が講義やワークショップを実施いたします。「ものをつくる人から、変革を動かす人へ」をコンセプトに掲げ、ツール導入ありきではない教育プログラムをご提供しています。

ホームページはこちらから⇨imacademy.jp

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ものづくり新聞 編集部(製造DX担当)

お問い合わせ先:dx@publica-inc.com

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会社概要

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URL
https://publica-inc.com/
業種
サービス業
本社所在地
東京都江東区三好1-8-3-2F
電話番号
03-4405-4370
代表者名
伊藤宗寿
上場
未上場
資本金
110万円
設立
2017年09月