消費財市場、成長の主役は「ディスラプターブランド」へ

飲料で22%、バス&ボディで50%、害虫駆除・虫よけで72%のカテゴリー成長を牽引。マッキンゼー、5つのディスラプション類型と既存企業が学ぶべき6つの特性を発表

マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン

マッキンゼー・アンド・カンパニー(日本代表:岩谷直幸)はこのたび、消費財(CPG)市場で急成長するディスラプターブランドの実態と、既存企業が成長の優位性を取り戻すための示唆を分析した最新ホワイトペーパー「消費財(CPG)企業はディスラプターブランドから何を学べるか」を発表しました。 

本ホワイトペーパーでは、過去5年間で年平均25%以上の成長率を記録した、または売上を2億ドル以上拡大したブランドを「ディスラプターブランド」と定義しています。消費財市場全体の成長が鈍化する一方、こうしたブランドは、飲料やスナックからバス・ボディ、害虫・虫よけ駆除まで、ほぼあらゆるカテゴリーでシェアを拡大しています。 

カテゴリー別に見ると、飲料ではディスラプターが過去5年間のカテゴリー成長の22%を牽引し、バス・ボディでは50%、害虫駆除・虫よけでは72%に達しました。害虫駆除・虫よけでは、ディスラプターの売上が30倍に拡大し、シェアは22.8ポイント上昇しています。ディスラプションは一部の新興カテゴリーに限らず、規模や成熟度を問わず起こり得ることを示しています。 

本ホワイトペーパーは、Brian Henstorf(シニアパートナー、ダラスオフィス)、Duncan Miller(シニアパートナー、アトランタオフィス)、Kristi Weaver(シニアパートナー、シカゴオフィス)による共著です。日本語監訳は、児島愛子(パートナー、東京オフィス)が担当しました。 

▼ホワイトペーパー
消費財(CPG)企業はディスラプターブランドから何を学べるか

■ 成長鈍化の一方、消費者は新しいブランドを試す 

マッキンゼーの分析では、40を超える消費財カテゴリーで成長が急減速し、ほとんどのカテゴリーで現在の成長率は過去平均を2パーセントポイント以上下回っています。これまで既存大手を支えてきた広範な流通網、棚スペース、調達力といった「規模の優位性」だけでは、成長を保証しにくくなっています。 

一方、消費者のブランド選択は流動化しています。McKinsey ConsumerWiseの調査では、約37%が過去3カ月以内に新しいブランドを試したと回答し、40%が近いうちに自分へのご褒美や贅沢品を購入する予定と回答しました。プレミアム、健康志向、特定ニーズへの対応など、明確な価値提案を持つ新興ブランドにとって追い風となっています。 

小売業者側でも、需要転換分析などの高度化により、新規ブランドを導入した場合のカテゴリー全体への効果を見極めやすくなりました。新興ブランドを棚に並べるリスクが低下し、ディスラプターが早期に流通と規模を獲得できる環境が整いつつあります。 

■ 添付図表1:ディスラプションは5つの類型で捉えられる 

本ホワイトペーパーは、カテゴリーの規模、成熟度、イノベーションのスピードに応じて、ディスラプションを以下の5つに分類しています。重要なのは、カテゴリーが順番に同じ道筋をたどるのではなく、どの段階からでも急速な変化が起こり得る点です。 

図表1:CPGカテゴリーにおけるディスラプションの5つの類型 
  1.  限定型:ディスラプターは存在するものの、カテゴリー成長への貢献はまだ限定的。規模や既存の市場ポジションが引き続き優位性となります。 

  2. 初期段階:小規模ながら急成長するブランドが増え、将来の拡大型への移行を予感させる豊富なパイプラインが形成されています。 

  3. 拡大型:成熟したディスラプターがカテゴリー成長を牽引し、大手企業による買収や積極的なポートフォリオ開発も活発になります。 

  4. 激化:ディスラプターがカテゴリー成長の大半を生み出し、市場のペースメーカーとして競争ルールを主導します。 

  5. 変革型:少数のブランドがカテゴリーの定義そのものを書き換え、市場全体のシェアや需要構造を大きく変えます。 

大規模で確立されたカテゴリーでは限定型から拡大型が起こりやすい一方、イノベーションサイクルの速い中規模カテゴリーでは激化、小規模で動きの遅かったカテゴリーでは変革型が起こる可能性があります。企業は市場規模だけでなく、消費者ニーズの変化とイノベーション速度を併せて診断する必要があります。 

■ 添付図表2・3:飲料、バス&ボディ、害虫駆除・虫よけで成長を大きく牽引 

ディスラプターのインパクトは、カテゴリーによって大きく異なります。飲料は1,840億ドル規模の大市場でありながら、ディスラプターが過去5年間のカテゴリー成長の22%を担い、売上は6倍、シェアは6.2ポイント上昇しました。35のディスラプターブランドが存在し、うち12ブランドは年間売上5億ドル超、4ブランドは10億ドル超に達しています。 

バス&ボディでは、ディスラプターがカテゴリー成長の50%を創出し、売上は9倍、シェアは14.2ポイント上昇しました。害虫駆除・虫よけでは、わずか2ブランドがカテゴリーを再定義し、成長への貢献度72%、売上成長30倍、シェア上昇22.8ポイントという突出した変化を生み出しています。 

初期段階の甘いスナックでも、ディスラプターの売上は10倍に拡大しています。現在の貢献度が12%にとどまるカテゴリーでも、成長パイプラインの厚み次第で短期間に拡大型へ移行する可能性があります。 

図表2:カテゴリーとディスラプターの成長(2020~25年) 
図表3:カテゴリー別成長とディスラプションの可能性(2020~25年) 

■ 既存企業が取り入れるべき6つの特性 

ディスラプターの成功は、単一の製品アイデアやデジタル広告の巧拙だけでは説明できません。本ホワイトペーパーは、カテゴリーを横断して共通する6つの特性を提示しています。 

  1. 大胆で文化的な共感を呼ぶメッセージング:ソーシャル上の会話や文化的な文脈に入り込み、消費者との関係をリアルタイムで更新する。 

  2. 独自のフィジカル販売戦略:ポップアップ、イベント、空港など、商品を実際に体験できる接点をつくり、オンラインの購買ジャーニーにつなげる。 

  3. 差別化された製品イノベーション:処方、パッケージ、形状、ベネフィットを小刻みに検証し、コミュニティとの共創で改善を重ねる。 

  4. デジタルの熟達:ソーシャル、D2C、インフルエンサー、データを一体で活用し、獲得からロイヤルティまでを設計する。 

  5. スピードとアジリティ:MVPや小規模テストを通じて素早く学び、成功した施策を迅速に拡大する。 

  6. 消費者起点のパーパス:満たされていないニーズや価値観を明確な存在意義に結び付け、長期的な信頼を築く。 

既存企業に求められるのは、スタートアップの表面的な施策を模倣することではありません。AIやソーシャルリスニングによる兆候の把握、デジタルプロトタイピング、小ロット生産、クロスファンクショナルなチームなどを組み合わせ、消費者の変化を発見してから市場投入するまでの時間を根本的に短縮することが重要です。 

■ 日本企業への戦略的示唆 

日本の消費財企業にとって最初の一歩は、自社ポートフォリオを5つの類型で診断し、カテゴリーごとに異なる戦い方を明確にすることです。限定型では既存の規模を生かしながら次の変化を先回りし、初期段階では成長候補を早期に発見し、拡大型・激化では投資配分と意思決定のスピードを大幅に高める必要があります。 

第二に、イノベーションを「大型新商品を年に数回投入する活動」から、消費者シグナルを継続的に捉え、小さく試し、素早く修正する反復型の仕組みに転換することが求められます。データ、AI、マーケティング、商品開発、営業を横断したチームに権限を与え、検証からスケールまでを一気通貫で担わせることが有効です。 

第三に、M&Aや提携はブランドを取得するだけでなく、ディスラプターのスピード、意思決定、コミュニティとの接点を自社に移植する機会として設計する必要があります。買収後に既存企業のプロセスへ過度に統合すると、成長の源泉である俊敏性を失う可能性があります。 

■ 主なポイント 

・消費財40超のカテゴリーで成長が急減速し、多くのカテゴリーで現在の成長率は過去平均を2パーセントポイント以上下回る 

・ディスラプターブランドは、過去5年間で年平均25%以上成長、または売上を2億ドル以上拡大したブランドと定義 

・飲料ではカテゴリー成長の22%、バス&ボディでは50%、害虫駆除・虫よけでは72%をディスラプターが牽引 

・ディスラプションは「限定型」「初期段階」「拡大型」「激化」「変革型」の5つに分類でき、規模や成熟度を問わず発生する 

・約37%の消費者が過去3カ月以内に新しいブランドを試しており、ブランド選択の流動化が新規参入者を後押し 

・既存企業が学ぶべき共通特性は、メッセージング、フィジカル販売、製品イノベーション、デジタル、スピード、パーパスの6つ 

・競争力回復には、カテゴリー別の診断、反復型イノベーション、クロスファンクショナルなチーム、M&A後の俊敏性維持が重要 

■ 取材可能な主な論点 

本件について、マッキンゼーの消費財・小売、マーケティング、デジタル領域の専門家が、以下のテーマについて背景解説・個別取材に対応可能です。 

・なぜ消費財市場で「規模の優位性」だけでは成長しにくくなっているのか 

・飲料、スナック、バス&ボディ、害虫駆除・虫よけでディスラプションの進み方が異なる理由 

・5つのディスラプション類型を用いたカテゴリー・ポートフォリオ診断 

・ディスラプターブランドに共通する6つの特性と、既存企業が取り入れる方法 

・AI、ソーシャルリスニング、デジタルプロトタイピングが商品開発をどう変えるか 

・ディスラプターブランドの買収後に成長を止めないための統合設計 

・日本の消費財企業が今後3~5年で優先すべき組織能力・投資 

マッキンゼー・アンド・カンパニー

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、グローバルに展開する経営コンサルティングファームとして、企業および公共機関の重要課題解決を支援しています。産業横断的な知見と高度な分析力により、クライアントの持続的成長と変革の実現に貢献しています。

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ビジネスカテゴリ
経営・コンサルティング
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会社概要

URL
https://www.mckinsey.com/jp/overview
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区六本木 1-9-10
電話番号
-
代表者名
岩谷直幸
上場
未上場
資本金
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設立
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