【全国242の病院、47都道府県へ調査を実施】付き添い入院の当事者・病院・自治体 の最新実態を可視化した「付き添い白書2025」を発行
国の制度改正後も運用面や現場の新たな課題が判明 ~付き添い環境には改善の兆し。一方で付き添い家族の体調悪化や経済負担は深刻化。病院・自治体に残る課題も明らかに。課題解決に向けた取り組みも開始~
全国で小児科の人手不足が深刻化するなか、入院した子どもの親が病室に寝泊まりし、看護師の代わりに24時間体制で身の回りの世話などを行う「付き添い入院」が社会問題化しています。認定NPO法人キープ・スマイリング(本部:東京都中央区、理事長:光原ゆき、以下キープ・スマイリング)は、入院中の子どもに付き添う家族1,198名を対象とした当事者調査に加え、全国242施設の医療機関を対象とした病院調査、および全国47都道府県を対象とした自治体調査を実施し、その結果をまとめた「付き添い白書2025」を発行しました。
■調査背景
付き添い入院をめぐっては、当事者家族には心身や経済的な面で深刻な負担が発生しており、代替するケアには、実質的に医療行為又はそれに準ずる専門的な医療的ケアが含まれているケースも起きている状況です。こうしたなか、全国3,600人以上の付き添い家族の声を集めた調査と要望書を2023年に国に提出したことを一つの契機に、2024年度診療報酬改定では手当てが新設されたほか、2025年には、こども家庭庁による「入院中のこどもの家族の付添い等に関する環境改善事業」(補助金)を創設。病院の環境改善に国の財政支援が初めて導入されました。
しかし、その後も全国の付き添い当事者からの相談は絶えず、当事者の経過変化や病院側の環境改善を把握する調査は存在せず、本制度がどの程度活用され、どれだけ現場の状況改善につながっているのか分からない状況でした。そこで、付き添い家族を支援するキープ・スマイリングは、2025年12月から2026年1月にかけて、全国242施設の医療機関と1,198名の付き添い当事者、そして全国47都道府県を対象に大規模調査を実施。一連の制度改正や社会情勢の変化を経て現場がどう変化したか、①当事者、②医療機関、③自治体に残る課題は何か、最新実態を可視化しました。
その結果、付き添い家族が抱える問題は、一部に変化が見られる一方で、未だに残された課題や病院環境について新たな課題が判明しました。キープ・スマイリングでは、本調査結果を踏まえ、病院の環境改善を後押しする支援事業や、小児病棟を直接応援できる新たな仕組みづくりを進めてまいります。
■調査結果サマリー
① 診療報酬改定や国の補助制度創設を受け、生活環境は改善傾向(熟睡感なし 85.4%→80.0%、病院食の提供がない 84.1%→80.2%、ほぼ毎日入浴できる人 61.6%→70.0%)
② 一方で、75.0%が「病院から付き添いを要請された」と回答。付き添いをするかどうかの選択肢が実質的にない状況が判明。
③ 58.9%が「体調を崩した経験あり」、82.6%が「体調不良時も十分な支援を受けられなかった」と回答、付き添い家族の体調管理はいまだ大きな課題
④ 経済的不安を感じる付き添い家族は78.1%、「とても感じる」は31.0%から39.7%へ増加。
付き添い家族の経済的負担はより深刻化
⑤ 初の病院調査では、82.2%の医療機関が「家族に看護の代替をさせない環境は十分整っていない」と回答
⑥ 補助金を「知らない」病院が33.3%、補助金制度が現場に十分届いていない実態も明らかに
■調査結果詳細
① 食事や睡眠、入浴など生活環境に改善の兆しがある一方で、依然として8割が睡眠に課題

今回の調査では、「熟睡感がない」は85.4%から80.0%へ、「病院食の提供がない」は84.1%から80.2%へ減少し、「ほぼ毎日入浴できる」は61.6%から70.0%へ増加し、生活環境には改善の兆しが見えました。
病院調査でも、今年度中に付き添い環境の改善に取り組む予定の医療機関が確認されており、長年課題とされてきた生活環境の改善に向けて、現場が動き始めていることがうかがえます。
一方で、依然として病院食が提供されない施設は8割、熟睡感がない人も8割にのぼっており、付き添い家族が置かれた環境の解決には至っていません。
② 70%以上が「選べなかった」「要請された」と回答。付き添いをするかどうかの選択肢が家族側にないことが判明

制度改正後も、付き添いが家族の意思で行われたかについては大きな変化が見られませんでした。
73.5%が「付き添いを選べなかった」、75.0%が「病院から付き添いを要請された」と回答しており、多くの家族が実質的に付き添いを前提とした状況に置かれています。
2022年調査と比較すると一定の改善は見られるものの、依然として約4人に3人(73.5%)が付き添うかどうかを選択できていません。子どもにとって家族の存在は大切である一方で、「付き添いたい」と「付き添わなければならない」は異なります。家族が希望に応じて選択できる環境づくりは、なお大きな課題として残されています。
③ 家族の健康への影響は深刻化。約6割が体調を崩した経験あり。

睡眠や入浴環境などに改善の兆しが見られる一方で、付き添い家族自身の健康状態は改善していません。58.9%が付き添い中に体調を崩した経験があると回答し、2022年から増加しました。また、体調不良になっても57.5%が付き添いを継続し、82.6%は十分なサポートを受けられなかったと回答しています。
背景には、「代わりがいない」「子どもを残して休めない」といった状況があります。付き添い家族の健康は子どもの療養生活を支える基盤でもあります。家族が体調を崩した際に休息や交代ができる仕組みづくりが求められています。
④ 約8割が「経済的負担を感じる」。退職や休職、二重生活費が家計と生活を圧迫。

今回の調査では、付き添い家族の経済的負担の深刻さが改めて浮き彫りになりました。経済的不安を感じる人は78.1%にのぼり、「とても感じている」と回答した人は31.0%から39.7%へ増加しました。
付き添い期間中は、交通費や宿泊費、食費に加え、自宅と病院を行き来するための二重生活費が発生します。また、付き添いによる休職や退職によって収入が減少するケースも少なくありません。長期入院では退職率が13.1%に達しており、子どもの治療と家族の生活基盤の両立が大きな課題となっています。
⑤ 9割以上の施設で夜間の病棟保育士を配置せず。「家族に看護の代替をさせない環境は十分整っていない」と認識している病院は82%。

今回初めて実施した全国242施設の病院調査では、医療機関側も現状に課題意識を持ちながら、改善に向けた壁に直面していることが明らかになりました。95.5%の病院が「付き添いは子どもにプラスの効果がある」と回答する一方で、82.2%は「家族に看護の代替をさせない環境は十分整っていない」と回答しています。
また、夜間に病棟保育士を配置していない施設は93.8%、看護補助者を配置していない施設は74.6%にのぼり、家族の負担が大きくなる夜間ほど支援体制が手薄である実態も明らかになりました。
⑥ 33.3%の病院が「制度を知らない」と回答。制度の周知や運用面での課題が浮き彫りに。
病院調査では、こども家庭庁が創設した環境改善補助金について、33.3%の病院が「制度を知らない」と回答しました。制度が整備されても、現場に情報が届かなければ活用は進みません。
また、自治体によって制度の周知や支援体制にも差が見られ、地域によって改善のスピードにばらつきが生じています。
今回の調査からは、制度創設そのものだけでなく、病院や自治体が活用しやすい仕組みづくりや伴走支援の重要性が浮き彫りになりました。

■ 調査結果を受けた今後の取り組み
今回の調査では、多くの医療機関が付き添い環境の改善の必要性を認識しながらも、人材や予算、ノウハウ不足などにより十分な対応ができていない実態が明らかになりました。また、国の補助制度についても十分に活用されていない現状が判明しています。
【1】病院の環境改善を後押しする支援事業を開始 ※後日リリース予定
付き添い環境の改善を目指す医療機関向けに「付き添い環境改善よろず相談所」を開設します。病院ごとの課題に応じて、物資支援や先進事例の紹介、地域企業・団体とのマッチングなどを実施するとともに、調査結果や全国の実践事例をまとめた「付き添い環境改善ハンドブック・事例集(仮称)」を制作し、全国の病院・自治体へ提供します。病院同士が学び合い、改善を進められる仕組みづくりを通じて、付き添い家族の療養環境向上を後押しします。※本事業は、日本財団の助成を受けて実施しています。
【2】支援者が病院を直接応援できる「小児病棟支援ポータル(仮称)」開設 ※後日リリース予定
コングラント株式会社と連携し、全国の小児病棟が必要とする物品や環境改善プロジェクトに対して、個人や企業が直接寄付できるオンラインプラットフォームを開設します。病院ごとのニーズを可視化し、地域や病院を指定して応援できる仕組みを通じて、全国各地の環境改善を促進します。
【3】環境改善をさらに加速するクラウドファンディングを実施 ※別紙リリース参照
上記の取り組みをより多くの病院へ届けるため、クラウドファンディングを実施します。調査で明らかになった課題を広く社会に発信するとともに、病院・自治体・企業・市民が連携して付き添い家族を支える仕組みづくりを進めてまいります。
(詳細はこちら:https://congrant.com/project/momsmile/23288)
■理事長メッセージ
前回の調査発表から約3年、国の制度や病院の取り組みが少しずつ動き始めました。2024年度診療報酬改定では付き添い家族への環境配慮が評価され、2025年度には環境改善に向けた補助制度も創設されました。今回の調査で、睡眠や食事、入浴環境などに改善の兆しが見られたことは、多くの当事者や支援者の声が社会を動かした成果だと感じています。
一方で、付き添い家族が抱える健康面・経済面の負担の大きさも浮かび上がりました。体調を崩しても休めない、収入が減っても子どものそばを離れられない、そんな状況は今も続いています。

また、病院調査では、多くの医療機関が環境改善の必要性を感じながらも、人材や予算、ノウハウ不足によって十分な対応ができていない現実も明らかになりました。付き添い環境の改善は確実に前進しています。しかし、制度をつくるだけでなく、それを現場で活用し、家族が変化を実感できるところまで届けなければなりません。
そこで、私たちは病院向けの相談所開設や、小児病棟を支援したい人と病院をつなぐ新たな仕組みづくり、環境改善を加速するためのクラウドファンディングを進めてまいります。病院、自治体、企業、市民の皆さまと力を合わせながら、子どもと家族が安心して過ごせる社会の実現を目指していきます。
■ 「付き添い白書2025」概要
調査対象(当事者):入院中の子どもに付き添った経験のある家族 1,198名
調査対象(医療機関):全国の小児病棟を持つ医療機関 242施設
調査対象(自治体):全国47都道府県を対象に実施 実施時期:2025年11月〜2026年1月
調査・発行:認定NPO法人キープ・スマイリング
助成:助成:本白書はPolicy Fund「山本正喜ポリシー基金」の支援を受けて制作・発行されました
詳細報告書URLおよび前回調査詳細:https://momsmile.jp/activity/survey/
■認定NPO法人キープ・スマイリングについて
当団体は、入院中の子どもに付き添う家族を支える認定NPO法人です。全国の付き添い家族への食支援・物資支援を中心に、付き添い環境の改善に取り組んでいます。
団体ウェブサイト:https://momsmile.jp
【本件に関するお問合せ先】
認定NPO法人キープ・スマイリング(広報担当)
E-mail:pr@momsmile.jp 電話:03-6822-5371
取材のお申し込み:https://momsmile.jp/contact/media/
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