現代美術家 松山智一、日本初となる大規模な個展「松山智一展:雪月花のとき」を弘前れんが倉庫美術館にて開催
期間:2023年10月27日(金)〜2024年3月17日(日)
現代美術界の気鋭アーティスト松山智一
松山智一(1976年生まれ)は、ニューヨークを拠点に活動し、鮮やかな色彩と精緻な描線による絵画や、SOHO地区に位置する120平方メートル超の巨大なスペース・バワリーミューラルでの壁画制作(ニューヨーク/米国、2019年)や、モニュメントとランドアートからなるパブリックアート広場《花尾》(新宿東口駅前広場、東京、2020年)、創建100周年を記念した屋外彫刻展での立体作品《Wheels of Fortune》(「神宮の社芸術祝祭」明治神宮、東京、2020年)など、大規模なパブリックアートプロジェクトも手がけており、大胆さと繊細さを併せ持った作品を発表しています。その作品に描かれるのは、日本や中国、ヨーロッパなどの伝統的な絵画からの引用や、ファッション誌の切り抜き、実在する消費社会の生産物や日常生活で慣れ親しんだ商品やロゴなど、さまざまなイメージのサンプリングです。
一見しただけでは引用元が判別不可能なほど、複雑に組み合わされた大量のイメージ群は、現代社会に生きるわたしたち自身を取り巻くものであり、いつかどこかで見ていたかもしれないものでありながら、普段は繋げて考えることの少ない、わたしたち一人一人の身体の奥底に蓄積された記憶の束が、形を持って現れたようでもあります。
こうした松山作品の制作の根底には、豊かな自然と歴史的な遺産が息づく岐阜に生まれ、アメリカ西海岸のストリートカルチャーに触れた少年時代、再び日本に戻ると、経済学を学んだ後、一度はアスリートの世界に身を置くも、デザインの道へと転身した二十代と、伝統文化から現代のカウンター・カルチャーまで、対極にあるものとして理解されることの多い世界の多様性を、身をもって実践してきた自身の半生が深く影響を及ぼしています。
本展は、松山がコロナ禍を前後する時期に制作した近作と本展で初めて発表される新作を中心に、アーティストとしての進化と深化の過程を紹介するものであり、常に新しい文化を受け入れてきた歴史が息づく街である弘前で、作家の新たな魅力を発見する機会となることでしょう。
展覧会のみどころ
1. 松山智一にとって初の大規模個展で近年の代表作を一望の下に紹介
2009年、ニューヨークのギャラリーで開催された初個展から14年、本展は、年々活動の幅を広げながら、精力的に作品発表を続ける松山の作品を紹介する日本初の美術館での個展です。総展示面積1,200㎡を超える美術館個展としては、松山にとって初の規模でもあります。
出品作品には、ニューヨークのスタジオで大人数のスタッフと共に制作を行ってきた松山が、コロナ禍でスタジオ制作ができなくなった時、遠隔でスタッフたちとの制作を試みた《Cluster 2020》(2020年)や、たった一人で制作した《Broken Train Pick Me》(2020年)など、コロナ禍を通じて松山が創作活動の意味を問い続けた近年の作品群や、ミュージシャンのゆずからの呼びかけで実現したコラボレーションによる《People With People》(2021年)など、松山の活動を代表する作品が含まれており、本展は松山の代表作を一望できる機会となります。
2. 初公開の新作、および日本未公開の作品を多数展示
本展では、初公開の新作9点を含む日本初公開作品23点に加えて、近年の絵画や彫刻、計30件を紹介します。洋の東西や時代を超える多種多様なイメージ群のコラージュから生まれた緻密な絵画、パブリック・アートとして屋外設置されることも多いステンレス・スチール製の立体作品といった松山の代表的な作品に加えて、日本では初公開となる極彩色の立体作品2点《Mother Other》《This is What It Feels Like ED.2》(ともに2023年)が出品されます。これらは、嵌玉眼(かんぎょくがん)や京都の截金(きりかね)職人による截金文様などの伝統技法と、FRPにポリウレタン塗装という、新旧の彫刻技法が融合されることで生まれた作品です。
3. 制作の背景を知ることのできる展示構成
松山の制作は、作家が日常的におこなっている伝統的な美術に関するリサーチと、日常生活の中で収集した大量のイメージ群とが、自在に組み合わされることで生まれます。1枚の絵画作品、1体の彫刻が生まれるには、10〜20にも及ぶような文字通りに古今東西のイメージのレファレンスがあり、それらが松山の手によって組み合わされていきます。本展では、普段目にすることのできない、こうした制作の過程で引用された資料やスケッチなどを紹介し、松山の作品世界の一端を解き明かします。
展覧会タイトルについて
タイトルの「雪月花のとき」とは、中国の唐代中期の詩人である白居易(白楽天・772-846年)が著した詩の一節からの引用です。同詩は、官吏として各地を転々としながら詩作を続けた白居易が、遠く離れた土地にあるかつての部下で友人でもある殷協律を、季節が変わっても思いつづける気持ちを詠ったものでした。
そこに込められた思いは、現代において、世界中の多様な人々や文化が交差する街であるニューヨークを拠点に、日本とアメリカという自らのルーツとなった土地の文化と、中国やヨーロッパなど、世界の視覚芸術の歴史を形作ってきた土地に蓄積された文化、そして、ハイアートとカウンター・カルチャーやポップ・カルチャーまで、等しく自らのフィールドとして向き合っていこうとする松山の姿勢に重なってきます。加えて、それに対応する英語のタイトル「Fictional Landscape」は、松山の代表的なシリーズ作品であり、身近なもののようでありながら「ここにはないどこか」へと通じる、想像力によって生まれるもう一つの世界を表します。
開催概要
展覧会名:松山智一展:雪月花のとき
(英語)MATSUYAMA Tomokazu: Fictional Landscape
会 期:2023年10月27日(金)〜2024年3月17日(日)
会 場:弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市吉野町2-1)
開館時間:9:00-17:00(入館は閉館の30分前まで)
休 館 日 :火曜日、年末年始(2023年12月25日(月)〜2024年1月1日(月))
※ただし、2024年1月2日(火)、1月3日(水)は開館
観覧料(税込):一般 1300円(1200円) 大学生・専門学校生 1000円(900円)
※( )内は20名様以上の団体料金
※ 以下の方は無料
高校生以下の方/弘前市内の留学生の方/満65歳以上の弘前市民の方
ひろさき多子家族応援パスポートをご持参の方/障がいのある方と付添の方1名
主 催:弘前れんが倉庫美術館
特別協力:KOTARO NUKAGA、MATSUYAMA STUDIO
後 援:東奥日報社、デーリー東北新聞社、陸奥新報社、青森放送、青森テレビ、
青森朝日放送、エフエム青森、FMアップルウェーブ、弘前市教育委員会
一般問合せ:TEL 0172-32-8950
アクセス:JR 弘前駅より
-弘南バス・土手町循環100円バス「蓬莱橋」下車 徒歩 約5分
-徒歩 約20分
-タクシー 約7分
ウェブサイト:http://www.hirosaki-moca.jp
SNS:Instagram:@hirosaki_moca Twitter:@hirosaki_moca Facebook:@hirosaki.moca
作家プロフィール
松山智一 MATSUYAMA Tomokazu
1976年岐阜県生まれ、ブルックリン在住。絵画を中心に、彫刻やインスタレーションを発表。アジアとヨーロッパ、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を有機的に結びつけて再構築し、異文化間での自身の経験や情報化の中で移ろう現代社会の姿を反映した作品を制作する。バワリーミューラルでの壁画制作(ニューヨーク/米国、2019年)や、《花尾》(新宿東口駅前広場、東京、2020年)、《Wheels of Fortune》(「神宮の社芸術祝祭」明治神宮、東京、2020年)など、大規模なパブリックアートプロジェクトも手がけている。近年の主な個展に、「Accountable Nature」龍美術館(上海/中国、2020年|重慶/中国、2021年)、「17 Hours」オーストラリア現代美術館(シドニー/豪州、2015年)などがある。
KOTARO NUKAGA
KOTARO NUKAGAは異文化が交差し多様な情報が発信される六本木と、新たな現代アートの中心地として注目される天王洲に拠点を置き、国内外の先鋭的なアーティストと共に独自性の高いギャラリープログラムを展開しています。(代表:額賀 古太郎)
弘前れんが倉庫美術館について
弘前れんが倉庫美術館は、明治・大正時代に酒造工場として建設された煉瓦造の建物を「記憶の継承」をコンセプトに改修し、2020年に開館した現代美術館です。黒いコールタールの展示壁や高さ15mの吹き抜けなど空間の特性を生かした現代アートの展覧会を開催しています。館内では奈良美智やジャン=ミシェル・オトニエルをはじめ国内外のアーティストのコレクション作品を展示するほか、ライブラリーや貸出スタジオを備えています。また、シードル工房を併設したカフェ、ミュージアムショップが隣接しています。
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