増殖休止中の線維芽細胞はコラーゲン6増産体制にあることを発見

コラーゲン6を介し真皮全体に影響を及ぼしている可能性も

ポーラ・オルビスHD

ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、真皮の線維芽細胞の研究を進め、以下を発見しました。本知見の一部は、2023年5月10日~13日に開催された国際研究皮膚科学会(ISID2023)にて発表されました。
1.線維芽細胞には、増殖を休んでいる「G0期(補足資料1)」に増えるコラーゲンがあった(コラーゲン6)
2.コラーゲン6(補足資料2)は、ヒトの真皮線維芽細胞においてオートファジー(※1)を亢進させる
※1 細胞が自分で細胞内の成分や小器官を分解する仕組み。加齢とともに停滞することが分かっている。

●分裂を休んでいる線維芽細胞は何をしている?

線維芽細胞は、皮膚の真皮でコラーゲンなどを産み出すことから、肌のハリに影響する細胞として注目されています。個々の細胞には、分裂・増殖のサイクル(細胞周期)に入っている時期と増殖を休んでいるG0期があり(補足資料1)、真皮の中では、G0期の細胞も存在すると考えられます。そこで、G0期の線維芽細胞の特徴について研究しました。


●G0期の線維芽細胞はコラーゲン6産生を行っていた

G0期の細胞が多くなる条件でヒトの真皮由来の線維芽細胞を培養してみると、さまざまな細胞周期の細胞が混ざっている場合に比べて、コラーゲン6(補足資料2)の遺伝子発現量が増えていることが分かりました(図1)。

これは、真皮の線維芽細胞にとって、G0期はコラーゲン6を活発に生み出す時期であることを表しています。コラーゲン6は真皮内に存在する他の成分どうしを結びつけるため、コラーゲン6が失われると皮膚の強度が低下すると考えられます。このことから、G0期の線維芽細胞は、細胞増殖を休止してコラーゲン6を生み出し、肌のハリの維持に役立ってくれていることがうかがえます。


●コラーゲン6はヒトの真皮線維芽細胞においてオートファジーを活性化する

さらに、さまざまな細胞周期の細胞が混ざっている線維芽細胞に対してコラーゲン6の役割を探ると、オートファジーが活性化することが分かりました(図2)。

以上のことから、G0期にある線維芽細胞は、増殖は休んでいても、コラーゲン6の増加を通じて線維芽細胞全体の活動を支えていると言えそうです。



【補足資料1】 細胞周期とG0期について

細胞には、分裂して増殖する細胞周期と呼ばれる状態(G 1期、S期、G2期、M期からなる)と、増殖を停止しているG0期と呼ばれる状態が存在します(図3)。

G0期には、神経細胞や脂肪細胞、筋肉細胞のように、増殖できない状態にまで分化した場合や、老化してそれ以上増殖できない場合も含まれますが、本研究では、増殖能力は保ちつつも増殖のための活動を休んでいて、環境に応じて再び細胞周期に戻れる状態のG0期細胞を対象としました。

コラーゲンを足場として接着した線維芽細胞の多くがG0期やG1期の状態になると知られており(※2)、皮膚でもG0期の線維芽細胞が一定レベル存在すると考えられます。しかし、G1期とG0期をまとめて検討した研究でも60報前後(※3)のみと、これまでG0期に着目した真皮の線維芽細胞についてはあまり報告されていませんでした。

※2 Kono T, Arch Dermatol Res. 1990;282(4):258-262.

※3 ポーラ化成工業 研究所調べ

 

【補足資料2】 コラーゲン6について

コラーゲン6は、真皮の大部分を占めるコラーゲン線維を構成する1型や3型コラーゲンとは別のコラーゲンです。生体内のさまざまな組織で、器官や細胞の周囲、基底膜の近く、または、コラーゲン線維の間に存在しています。コラーゲン6の線維は、1型や3型コラーゲンのような太く長い線維ではなく、糸でつながったビーズのような形の細線維と呼ばれる短い構造です。これまでに、ヒアルロン酸や4型コラーゲン、プロテオグリカンと結合することや、それらの結合を介して線維状のコラーゲンと結合することが知られています。

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会社概要

URL
https://www.po-holdings.co.jp/index.html
業種
製造業
本社所在地
東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル
電話番号
03-3563-5517
代表者名
横手喜一
上場
東証1部
資本金
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設立
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