「補助犬は、どこでトイレをする?」10月1日「身体障害者補 助犬法施行記念日」に考える、補助犬の排泄と社会の受け入れ
一般市民の42.8%が「補助犬がどこで排泄するかわからない」――まずは「補助犬にも排泄が必要」という理解から、補助犬ユーザーが安心して社会参加できる環境づくりへ
特定非営利活動法人日本補助犬情報センター(神奈川県横浜市、理事長 吉田文、以下日本補助犬情報センター)は、身体障害者補助犬の社会における理解と普及を目指した活動とともに、障害者の社会参加・社会復帰を推進することを目的に、第三者機関として中立の立場から相談・情報提供を行っています。
10月1日は、補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬の総称)の社会参加と受け入れを義務付けた「身体障害者補助犬法(以下、補助犬法)」の施行記念日です。2002年の同法施行後、今年で24年目を迎えた現在、日本国内では約850頭の補助犬が活躍しています。
補助犬ユーザーが外出する際、「補助犬の排泄(トイレ)」は見過ごすことのできない課題の一つです。補助犬ユーザーが安心して外出し、社会参加するためには、補助犬が適切に排泄できる環境が欠かせません。

そこで、日本補助犬情報センターでは、公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団の2025年度バリアフリー推進事業「身体障害者補助犬のトイレに関する基礎調査」を受託しました。
本事業では、株式会社LIXILをはじめ、動物行動学やユニバーサルデザインの専門家らが委員として参画し、それぞれの知見を活かし、様々な角度から調査を実施しました。
2026年3月には、それらの調査結果を取りまとめた「身体障害者補助犬のトイレに関する基礎調査 報告書」を公開し、「補助犬トイレ整備方針案」を提案しています。
日本補助犬情報センターには日々、補助犬のトイレに関する様々な疑問が寄せられています。「補助犬の排泄は衛生的に管理されているのか?」、「補助犬はどこで、どのように排泄しているのか?」「補助犬に排泄を我慢させているのではないか?」、などの疑問や誤解は、補助犬ユーザーの外出時の心理的負担や、周囲とのコミュニケーションの難しさにつながるものです。
補助犬が安心して排泄できる場所を確保することは、単に「犬のためのトイレ」を整備するという設備上の課題ではありません。補助犬ユーザーが補助犬とともに安心して外出し、働き、学び、買い物をするなど、社会の中で当たり前に生活し、社会参加するための大切な環境づくりです。
10月1日の「身体障害者補助犬法施行記念日」を機に、まずは「補助犬にも排泄が必要であること」を知っていただきたい。そして、補助犬が安心して排泄できる場所を社会の中に確保することで、補助犬ユーザーが遠慮することなく、補助犬とともに社会参加できる環境を目指していきます。
調査結果の考察(概要)
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補助犬の社会的認知と周知活動により、「補助犬の排泄」への誤解を解く必要がある。
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補助犬ユーザーの多くがバリアフリートイレ(多機能・多目的トイレ)を利用しており、利用への周
知と理解が求められる。
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「補助犬専用トイレ」は選択肢のひとつとして有効であるが、既設のトイレには運用や設備の課題に
より利用できないものも存在する。設置の際には、犬の行動特性を考慮し、補助犬ユーザーが利用し
やすいトイレ計画が重要である。

• すぐできることとして、既存のバリアフリートイレへの「ほじょ
犬マーク(左図)」の貼付、屋外の 植込みや駐車場等の片隅に看
板を立て、「補助犬排泄可能エリア」として提供する等がある。
これらは、補助犬ユーザーを「歓迎している」という施設側の意
思表示になると同時に、周囲への理解啓発にもつながる。こうし
た「当たり前の受け入れ」の地道な積み重ねが、真のインクルー
シブな施設運営実現の原動力となる。
調査結果の抜粋
1.補助犬の排泄について、知られていない現状が明らかに。先ずは知ってもらうことが重要。
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一般市民20代〜60代の男女計1,111人への意識調査では、「補助犬の排泄問題があることに驚いた」、「補助犬の排泄について考えたこともなかった」という感想が多数寄せられ、課題自体が認識されていないことが明らかとなった。その他、「考えるきっかけになった」、「新たな気付きが得られた」という声もあり、積極的な情報発信や啓発の有効性が示唆された。
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具体的な調査結果では、補助犬が排泄する場所について「わからない」と回答した人が42.8%と最多であった(図1)。また、「補助犬は排泄を我慢させられていると思うか」について「そう思う/どちらかといえばそう思う」が計36.3%、26.2%が「わからない」と回答し、 誤った認識の人とわからない人で62.5%を占めた(図2)。
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一方、補助犬ユーザーへのインタビュー調査では、「排泄を我慢させていないことを理解してほしい」との声が多くあがった。
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実際、補助犬ユーザーは補助犬の健康状態等も考慮しながら適切な排泄タイミングを管理しており、我慢させることはない。正しい情報を広く周知させることが重要である。

2.屋内では、補助犬ユーザーの多くが「バリアフリートイレ」を利用。 一般市民への意識調査では約75%が利用を許容する一方で、利用時に咎められるケースも
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盲導犬ユーザー7名、介助犬ユーザー12名、聴導犬ユーザー4名へのインタビュー調査では、16名が屋内では「バリアフリートイレ(多機能・多目的トイレ)」を利用していた。
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利用するメリットとして、「補助犬と一緒に入れるスペースがある」、「補助犬ユーザー本人が用を足せる」、「個室のため、雨風や人の目を避けられる」等があげられた。人目を避けられることで、ユーザーも犬も落ち着くことができる。
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しかし、ハード・ソフト両面における利用時の困りごとがみられた(表1)。

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一般市民向け意識調査では、補助犬がバリアフリートイレを利用することについて「よいと
思う/どちらかといえばよいと思う」の合計は74.9%であり、許容度は高い。
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一方、補助犬ユーザーへのインタビュー調査では、犬とトイレから一緒に出た際、外にいる人に指摘を受けた
り驚かれたりした経験のある人が多く、補助犬がバリアフリートイレを利用することについて
SNSで批判されたという声もあった。

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「否認派」の理由(表2)では「特に理由はない」が31.5%で最も多く、補助犬を知らないこ
とから「よくない」と思ってしまう可能性がある。「他の利用者とのトラブル」についても、
「補助犬もトイレを使う」というあたりまえの事実の周知が必要と考えられる。
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「犬アレルギーが心配」については、周知だけでは解決できない課題である。ただし、犬
(動物)アレルギーが「ある」と回答した人(5.5%)のうち、80.3%が「許容派」であり、
回答者自身ではなく家族や他人のことを心配している可能性もある。(アレルギーなし層の
「許容派」は74.6%)
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盲導犬の排泄方法として「ワンツーベルト※1」の使用が普及しており、基本的に排泄物で周囲
を汚すということはない。また、ワンツーベルトを装着させることに対し「可哀想」という誤
解があるが、子犬のときから楽しく適切にトレーニングを受けており問題ない。
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介助犬の場合は、ユーザーの個々の障害に合わせて、バリアフリートイレの中でもペット
シーツや排泄物キャッチャー等を使用する。
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ただし、補助犬も生き物であり、時には失敗することもある。その際もユーザーが責任を持っ
て片づけるが、「失敗」に寛容な社会であることが誰もが暮らしやすい街につながる。
※1ワンツーベルト:主に盲導犬が排泄する際、周囲を汚さないよう排泄物をキャッチするために犬の腰(おなか周り)に巻き付ける専用のベルト。排泄を促す掛け声である「ワンツー、ワンツー」にちなんで名付けられている(報告書p.78参照)。
3.「補助犬専用トイレ」は必要?!選択肢のひとつとしては有効だが、設備や運用には課題も―「バリアフリートイレ」に「ほじょ犬マーク」を貼るだけで使いやすく、啓発にも繋がる
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国内外の空港における補助犬トイレ(海外では犬用トイレ兼用も含む)の事例調査では、国
内外問わずトイレ内のスペースや設備は多様であり、理想的な犬用トイレは未だ確立されてい
ないことが示唆された。
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施設の公式WEBサイトで得られる情報は限定的であり、補助犬ユーザーが利用しやすいトイ
レという点では、情報提供、設備(使い勝手)の両面から改善の余地がある。実際、「設置さ
れているのに使えない」事例が散見された。
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日本独特の事例として、「補助犬トイレ」が施錠されており、利用時にインターフォン等で管
理者へ連絡が必要なケースがみられた。これは障害のある人が利用しづらいシステム※2であ
り、専用トイレがあっても有効活用されず、改善が求められる。
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また、犬の行動特性を考慮していない床の材質(滑りやすい等)や音響等、不適切な仕様の
専用トイレでは、補助犬が使いたがらない※3。
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日本の場合は、ペットシーツやワンツーベルトを使用した排泄訓練を行っている訓練事業者
が多く、バリアフリートイレ(多機能・多目的トイレ)を利用すると回答した訓練事業者も多
かった。そのため、補助犬専用トイレの設置は必ずしも必要ではなく、バリアフリートイレを
補助犬ユーザーが利用することの周知、利用しやすい環境整備を求める意見が多くあがった。
•「補助犬トイレ」は選択肢のひとつとして有効ではあるが、すぐできる対応として、実際に多く利用されているバリアフリートイレに「ほじょ犬マーク」を貼付するほか、施設内の屋外の植込みや駐車場等の排水溝近くのアスファルトといった、清掃が容易で人目が気になりにくい場所を「補助犬排泄可能エリア」として提供する等が考えられる。これらは施設側の補助犬ユーザーを歓迎する意思表示になると共に、補助犬ユーザーが利用してもよいという安心感と周囲への理解啓発につながるのではないか。

※2:視覚障がいのある盲導犬ユーザーはインターフォンがあることがわからない、タッチパネル操作ができない、車椅子使用の介助犬ユーザーには、操作パネルの位置が高く届かない、聴覚障がいのある聴導犬ユーザーは管理者との発話によるコミュニケーションが取れない等。
※3: 好ましい例として、車椅子ユーザーが容易にアクセスでき、犬が排泄行動をする際に十分なスペースを設ける。床材は、人工芝や防汚コートを施したコンクリート、屋外用防滑・防水シートを使用する。ステンレスや大きな隙間のあるグレーチングは犬が怪我をしたり恐怖心を抱くため推奨しない。等があげられる。
参考:国内外の補助犬用トイレの設置状況ーGoogleマイマップによる可視化の試み

国内外の事例調査結果を踏まえ、判明した国内外の補助犬トイレ設置地点をGoogleマイマップ により集約しました。
今まで把握しづらかった「補助犬専用トイレ」の存在が一目で確認可能となり、国内施設においては、詳細の場所や設備の内容も確認できるようになっています。ぜひご活用ください。
有識者コメント
吉田 文 教授/大阪保健医療大学作業療法学専攻・日本補助犬情報センター理事長
身体障害者補助犬法は、2002年に施行され2027年で25周年を迎える。しかし、今回の調査で社会的に認知されていないことが明らかになった。社会の多くの方が補助犬の排泄について知らないために起こる不寛容は、補助犬ユーザーの社会参加のしづらさにつながる。それは社会の中で生きる誰にとっても他人事ではない。今回の調査は補助犬の排泄を通して、多様な方々が社会にいること、それをお互いに知ろうとすること、その一歩を継続する重要性を示唆している。

川内 美彦 元東洋大学教授/東洋大学 人間科学 総合研究所 客員研究員
これまで補助犬のトイレ利用についての調査はあまりなかった。補助犬の排泄は訓練され、管理されているが、社会の理解が追いついておらず、その結果としてユーザーが肩身の狭い思いを抱えながら遠慮しつつ排泄させているということが明らかとなった。補助犬はユーザーと一緒に社会の中で暮らしている。補助犬とそのユーザーをきちんと迎え入れることのできる社会のために、この基礎調査が行われた意義は大きい。

実施事項(調査)・役割分担
実施調査の役割分担、及び概要・詳細は、「身体障害者補助犬のトイレに関する基礎調査 報告書(2026年3月)」の下記( )内ページをご参照ください。なお、当報告書は(公財)交通エコロジー・モビリティ財団の公式WEBサイト内、「バリアフリー推進事業の報告書等リスト」に掲載されています。
報告書は、以下のボタンよりご覧いただけます。
〇調査の役割分担(p.5)
1.国内外主要空港の補助犬トイレの事例収集・実態調査:2025/10/9~12/22実施(p.7~)
2.国内外における補助犬専用トイレのGoogleマイマップによる可視化の試み(p.18~)
3.国内外の補助犬訓練施設事業者へのアンケート調査:2026/1/13 ~ 2/28実施(p.21~)
4.補助犬ユーザーに対する補助犬の排泄方法に関するインタビュー調査:2026 /3/1~21実施
(p.26~)
5.一般市民に対する補助犬の排泄に関する意識調査:2026/3/5実施(p.44~)
6.課題整理と補助犬トイレ整備方針の検討(p.74~)
株式会社LIXIL(https://www.lixil.co.jp/)

LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。

特定非営利活動法人日本補助犬情報センター
日本補助犬情報センターは、補助犬の社会における理解と普及を目指した活動とともに、障害者の社会参加を推進する事を目的に、第三者機関として中立の立場から相談・情報提供を行っています。
所在:神奈川県横浜市港北区新羽町1688-1-B203
mail:info@jsdrc.jp
公式HP: https://www.jsdrc.jp/
公式Facebook:https://www.facebook.com/jsdrc.hojoken
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