マーサー 「グローバル年金指数ランキング」 (2019年度) を発表

ー 家計債務と老後資産の高い相関関係を明確化 ー

マーサージャパン株式会社

• 調査開始から今年で11年目となる今回のマーサー・メルボルン・グローバル年金指数 (MMGPI)では、世界人口のほぼ3分の2を網羅する、37ヵ国の年金制度を比較検証
• オランダとデンマークはそれぞれ1位と2位の座を維持し、「A」ランクを獲得
• 日本の年金制度は37ヵ国中31位
• 老後資産と家計債務の水準の関係性を示唆
2019年度マーサー・メルボルン・グローバル年金指数(MMGPI)調査によると、先進国と成長国において老後資産が増加すると家計債務も増加し、これら水準の間には強い相関性が存在する。

MMGPIは、モナッシュ金融研究センター(MCFS、メルボルンにあるモナッシュ大学ビジネススクールの研究センター)とプロフェッショナルサービスを提供するマーサーとの共同研究プロジェクトであり、豪州ビクトリア州政府の支援を受けている。

本レポートは、老後資産に関連して、「資産効果」、すなわち、資産の増加とともに支出が増加する傾向を文書化した最初の国際的な研究である。MMGPIのデータは、老後資産が増加するにつれて個人はより豊かに感じるため、より多くの資金を借り入れる可能性が高いことを示唆している。

当研究の著者であるマーサーのデイビッド・ノックス博士は、次のように述べている。「老後資産が増加するということは、世帯が将来の生活資金を自身の(年金)貯蓄で賄うことができるため、より経済的な安定感を得られることを意味し、そういった状況下で人々は、現在および将来の生活水準の改善に向け、退職前に資金を借りることができるようになります。

個人の資産の増加とともに、住宅所有や金融商品への投資、あるいは退職後に備えた貯蓄であろうと、人々は将来の負債の増加に対し楽観的な展望を抱くようになります。世界全体で、個人が保有する老後資産が1ドル増加するごとに、家計の純債務は50セント弱増加するというエビデンスがあります」

当該指数は、世界の人口のほぼ3分の2を網羅する37ヵ国の退職制度を比較検証している。そして、世界の年金制度の多種多様性を顕在化し、世界最高水準の制度でさえ欠点を内包することを示している。2019年度の指数は調査対象として新たにフィリピン、タイ、トルコの制度を追加した。

それぞれの年金制度には独自の事情があるが、当研究レポートは、すべての地域が直面している課題に対し共通する改善点があることを明らかにしている。

ノックス博士は次のように述べている。「世界の年金制度は、前例のない平均寿命の伸び、そしてそれに伴う高齢者の健康と福祉を支える公共資源への高まる圧力に直面しています。退職者がより豊かな長期的成果を確実に得られるようにするためには、各国政府が制度の長所と短所を見直すことが不可欠です」
 
各国の制度の総合指数は、「十分性 (Adequacy)」、「持続性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される40以上の項目から構成され、この3つの項目指数を加重平均して算出している。2019年度の指数は、純所得代替率、すなわち、退職前雇用所得に対する年金給付額の比率の計算において新しいアプローチが採用されている。これまでの殆どの指数レポートでは、純所得代替率は所得の中央値に基づいて計算されていたが、本レポートでは、所得水準の範囲について経済協力開発機構のデータを使用し、より幅広い退職者グループのデータが反映されている。

ビクトリア州雇用・改革・貿易大臣のマーティン・パクラ氏は、「11年目を迎えたマーサー・メルボルン・グローバル年金指数は、世界中の年金制度に関する優れたデータ源であり、このレポートに対する国際的な高い評価は、業界の研究、イノベーション、金融のグローバルセンターとしてのメルボルンの評判を確立させています」と述べた。

数値による分析
オランダは指数が最も高く(81.0)、過去11年のMMGPIレポートのうち10年において一貫して1位または2位の座を維持している。最も指数が低かったのはタイであった(39.4)。

各サブ指数で最も高い指数となったのは、十分性ではアイルランド(81.5)、持続性ではデンマーク(82.0)、健全性ではフィンランド(92.3)であった。最低指数は、十分性ではタイ(35.8)、持続性ではイタリア(19.0)、健全性ではフィリピン(34.7)だった。

持続性は、高齢化社会および確定拠出型年金ではまだ不十分
現行制度における将来の年金給付継続の可能性を測定することで、持続性のサブ指数は、多くの年金制度の弱点を引き続き浮き彫りにしている。

特に、南米とアジアの多くの年金制度における持続性の問題は、それらの制度の持続性の指数が平均してDにランク付けされたことで改めて浮き彫りとなった。例えば、チリはこのサブ指数において71.7と高数値を達成したが、ブラジルとアルゼンチンの指数はそれぞれ27.7と31.9であった。同様に、アジアでは、シンガポールは59.7を達成しているが、日本の指数は32.2であった。

ただし、この問題は発展途上国に限定されるものではない。多くの欧州諸国も同様の圧力に直面している。デンマークは持続性サブ指数の最高値82.0を達成しているものの、イタリアとオーストリアの指数はそれぞれ19.0、22.9と低かった。

持続性指数に寄与する測定基準においては、制度自体の変更が困難なものもあるが、制度の長期的有効性の向上に貢献出来得る変更が可能なものもある。すなわち、将来のための貯蓄水準の引き上げの奨励または義務化、年金支給年齢の暫時引き上げ、国民の勤続延長の実現または奨励等であり、これらは提言に含まれている。

MCFSのディレクターであるディープ・カプール教授は、次のように述べている。
「一部の制度は、債務主導型の投資戦略をとる確定給付制度に依拠していますが、確定拠出年金は、個人の退職後に向けた資産形成においてますます重要な役割を担っています。年金基金が保有する資産を多様化することで、確定拠出年金のリスク調整後の投資リターンを最大化することが非常に重要です。

公的年金制度のコストを削減するためには、一部の政府がすでに実施しているように、長寿化に合わせて国民年金や退職年齢を再検討することが不可欠です」

今回の日本の結果について、マーサージャパンのプリンシパルである北野信太郎は以下のようにコメントしている。
「日本の数値は各指数も総合指数も、昨年と大きな変化はありませんでした。一方で、今年の6月に金融庁が発表した報告書、いわゆる「老後2,000万円」問題が大きく話題を呼んだように、当指標の十分性が低い、というのも、国民一人一人が実感しているのではないかと思います。

その解決法として、更に貯蓄に励みましょう、というアプローチもあるのでしょうが、年金問題の根源が長寿化であるのに対して、就業期間の延伸という本質的な議論になかなか進まないことに、問題の根の深さを見る気がします。奇しくも10月4日の安部総理の所信表明演説でも、「全世代型社会保障」と名付けて、70歳までの雇用機会の確保について触れられていましたが、国としてやるべきことと合わせて、労使双方で取り組むべき課題もあるように思われます。

まず雇用主側の課題として、年功的な報酬制度を採用するような場合は、高齢人材の人件費が生産性に対して相対的に高くなるため、高齢者の雇用に対して後ろ向きになることが挙げられます。加えて、マーサーが発表した「高齢化への備えはできていますか?(https://www.mercer.co.jp/newsroom/2019-next-stage-future-fit-approaches-to-longevity.html)」レポートでも指摘しているように、多くの雇用主が、高齢人材はテクノロジーの進化についていけない、あるいは、生産性が低い、など、個々人の特性ではなく、年齢によるある種の偏見を持って高齢人材に接しているということも、高齢者の雇用を阻む要因と考えられます。

就業者側の課題としても、特に終身雇用制度の環境下で人生の折り返しを過ぎたころなど、更なる学びを放棄してしまっているケースなどは無いでしょうか?定年を過ぎて働き続けるためには、健康を維持することは勿論、雇用に足る市場価値を維持するための「リスキル」の努力が、個々人に求められる時代となっています。「健康寿命」の延伸とともに、「キャリア寿命」を伸ばすための取り組みを、我々一人一人が自分事として考える必要があるのではないでしょうか?」

-以上-

2019年度マーサー・メルボルン・グローバル年金指数

 

 

 


「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング(MMGPI)」の詳細・参考資料は以下をご参照ください:
•「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数2019」レポート全文(英文 -PDF: 約8MB)
•MMGPI レポート・ハイライト (英文 ‐37ヵ国の評価サマリー ‐ 4ページ)
※上記資料をこちら(https://info.mercer.com/jp-2019-mmgpi-report.html)より無料ダウンロードいただけます。

モナッシュ金融研究センター(MCFS)について
モナッシュ金融研究センター(MCFS)は、オーストラリアのモナッシュ大学ビジネススクールの研究センターで、金融業界における実践上の研究課題に学術的厳密さを持たせることを目指しています。また、エンゲージメントプログラムを通じて、学者と実務家の間の双方向の知識交換を促進しています。同センターの研究テーマは多岐にわたっていますが、現在は退職後に向けた資産形成、持続可能な金融、技術のディスラプションなど、資産運用業界に関連する問題に重点を置いています。 

* 本プレスリリースはマーサー(オーストラリア) が発表したプレスリリースをベースに翻訳・編集したものです。


マーサーについて
マーサー (英語社名:Mercer、本社: ニューヨーク、社長兼CEO:Martine Ferland) は、組織・人事、福利厚生、年金、資産運用分野におけるサービスを提供するグローバル・コンサルティング・ファームです。
全世界約25,000名のスタッフが44ヵ国をベースに、130ヵ国以上でクライアント企業のパートナーとして多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。

日本においては、40年以上の豊富な実績とグローバル・ネットワークを活かし、あらゆる業種の企業・公共団体に対するサービス提供を行っています。組織変革、人事制度構築、福利厚生・退職給付制度構築、M&Aアドバイザリー・サービス、グローバル人材マネジメント基盤構築、給与データサービス、年金数理、資産運用に関するサポートなど、「人・組織」を基盤とした幅広いコンサルティング・サービスを提供しています。

マーサーは、ニューヨーク、シカゴ、ロンドン証券取引所に上場している、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ(証券コード: MMC)グループの一員です。 マーサーについての詳細は、以下をご参照ください:

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マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズはマーシュ(保険仲介とリスクマネジメント)、ガイ・カーペンター(再保険仲介・コンサルティング)、マーサー (組織・人事マネジメント・コンサルティング)、そしてオリバーワイマン(戦略コンサルティング)から構成されており、年間総収入170億米ドル超、全世界に76,000名の従業員を擁し、世界各地の顧客に分析、アドバイスを行い、各種取引を支援しています。

当グループは、責任ある企業市民として事業展開しているコミュニティに貢献しています。詳しい企業情報については http://www.mmc.com/ をご覧ください。
 

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未上場
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設立
1978年02月