細胞内の還元環境に応答して薬物を放出する新規アルブミンナノ粒子製剤の開発

国立大学法人熊本大学

・効果的な疾患治療を可能とする薬物輸送担体には、高濃度の薬物を搭載可能であること、血中で安定であること、標的細胞へ取り込まれた後、細胞内で搭載した薬物を放出することなどが求められますが、未だそのような条件を満たすアルブミンナノ粒子の作製法は存在しません。
・今回新たに開発したアルブミンナノ粒子は、血清中で高い安定性を持ち、還元環境下において効率的に崩壊して薬剤を放出可能なことを確認しました。
・本アルブミンナノ粒子に、従来肝臓への輸送が困難な肝疾患治療薬剤エダラボンを搭載し投与した結果、エダラボンの副作用である腎障害を回避しつつ、優れた肝保護効果を発揮し、急性肝炎モデルマウスの生存率を大幅に延長しました。
今後は、本ナノ粒子を利用した脳梗塞治療等の応用が期待されます。

【概要説明】

 熊本大学大学院生命科学研究部の安田健吾研究員、前田仁志助教、渡邊博 志准教授、丸山徹教授らの研究グループは、同大学院研究部の中村照也准教授、京都薬科大学薬学部の異島優教授、崇城大学薬学部の西弘二准教授、井本修平教授、山﨑啓之教授、小田切優樹特任教授、同大学工学部の櫻木美菜准教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部の石田竜弘教授、イェール大学医学部の岩切泰子教授らとの共同研究により、細胞内の還元環境に応答して薬物を放出する新規アルブミンナノ粒子製剤を開発しました。
  本研究成果は、令和5年9月12日に「ACS Nano」に掲載されました。



【展開】

 既存のエダラボン注射剤には、エダラボンの酸化的分解の抑制を企図して亜硫酸ナトリウムが添加剤として配合されていますが、長期使用における有害性が懸念されています。好都合なことに、HSAはpH調節能や抗酸化活性を有しているため、HSAナノ粒子を用いることで、添加剤フリーなエダラボン製剤を初めて開発することができました。今後は、本ナノ粒子を利用した脳梗塞治療等の応用が期待されます。


▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。

 https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei/20231020


【論文情報】

論文名:“Encapsulation of an Antioxidant in Redox-Sensitive Self-Assembled Albumin Nanoparticles for the Treatment of Hepatitis”

著者:Kengo Yasuda, Hitoshi Maeda, Ryo Kinoshita, Yuki Minayoshi, Yuki Mizuta, Yuka Nakamura, Shuhei Imoto, Koji Nishi, Keishi Yamasaki, Mina Sakuragi, Teruya Nakamura, Mayumi Ikeda-Imafuku, Yasunori Iwao, Yu Ishima, Tatsuhiro Ishida, Yasuko Iwakiri, Masaki Otagiri, Hiroshi Watanabe*, Toru Maruyama*

掲載誌:ACS Nano

doi:doi.org/10.1021/acsnano.3c02877

URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.3c02877


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096-344-2111
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上場
未上場
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-
設立
1949年05月