【立命館大学】2050年まで海洋プラスチックごみの流入をゼロにしても、蓄積は止まらない

~マイクロプラスチックへの細分化を考慮し、将来の蓄積量と必要な清掃量・費用を推計~

立命館大学

 立命館大学政策科学部の上原拓郎教授らの研究チームは、コンピュータシミュレーションモデルを用いて世界の海洋プラスチックごみの将来推計を行いました。その結果、2050年までに海洋への新たなプラスチックごみの流入をゼロにしたとしても、既に海洋に存在するプラスチックごみが細分化することで、マイクロプラスチックが蓄積し続ける可能性があることを明らかにしました。さらに、削減目標を達成するために必要な清掃量とその費用を推計しました。本研究成果は、2026年9月12日に、Springer Nature社「Communications Earth & Environment」に掲載されました。

本件のポイント

  • シミュレーションモデルを用いて、2050年までに海洋への新たなプラスチックごみの流入をゼロにした場合の「マクロプラスチック(※1)」と「マイクロプラスチック(※2)」の蓄積量を推計した

  • 新たな流入を止め、既存のマクロプラスチックを清掃しても、既に海洋に存在するプラスチックごみのマイクロプラスチックへの細分化によって、その蓄積を十分に防げない可能性があることを示した。

  •  削減目標を達成するために必要な清掃量と費用を明らかにした。対策に必要な費用は、世界GDPの0.0001~0.0052%程度、現在の環境対策予算の0.3–15.7%程度にとどまると推計された。

<研究成果の概要>

 本研究では、海洋プラスチックごみの移動・劣化・清掃を統合したシステム・ダイナミクスモデル(※3)を構築し、2050年までに浮遊する海洋プラスチックごみを除去するために必要な物理的・経済的努力を世界規模で評価しました。その結果、2050年までに海洋への新たなプラスチックごみの流入を停止し、既存の浮遊マクロプラスチックを回収しても、マイクロプラスチックの蓄積を十分に防げない可能性を示しました。

 G20大阪サミットでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されています。本研究は、海洋への新たなプラスチックごみの流入を止めるだけでなく、すでに海洋に存在するプラスチックごみへの早急な対策が必要であることを、世界規模のシミュレーションにより定量的に示したものです。

<研究の背景>

 海洋プラスチック汚染は、生態系だけでなく、経済活動や人の健康にも影響を及ぼす世界的な環境問題です。これまで、海洋プラスチックごみの動態を捉える研究は行われてきたものの、本研究のように、海岸・沿岸・沖合の間を移動するプラスチックごみや、マクロプラスチックが自然環境中で劣化しマイクロプラスチックへと細分化される過程を同時に考慮したモデルを用いて、設定された削減目標を達成するための物理的・経済的な努力量を評価する研究は十分に行われてきませんでした。

 そこで本研究では、海洋プラスチックごみの「流入」だけでなく、すでに海洋に存在するプラスチックごみの「蓄積」と「細分化」に着目し、将来の海洋プラスチックごみの変化と対策に必要な清掃量・費用を評価しました。

図1.初期に浮遊する海洋プラスチックごみの量のシミュレーション結果                          (a) 年間の海洋へのプラスチックごみ流入量。(b) 2050年までの海洋へのプラスチックごみの累積流入量。(c) 年間の清掃量。(d) 2050年までのプラスチックごみの累積回収量。(e) 海洋に蓄積するプラスチックごみ量の経年変化。(f) 2050年時点で海洋に蓄積しているプラスチックごみ量。CMa:沿岸域のマクロプラスチック、Cmi:沿岸域のマイクロプラスチック、OMa:沖合域のマクロプラスチック、Omi:沖合域のマイクロプラスチック、SMa:海岸のマクロプラスチック、Smi:海岸のマイクロプラスチック。

<研究の内容>

 本研究では、海洋プラスチックごみの海岸・沿岸・沖合におけるマクロプラスチックとマイクロプラスチックの移動、さらにはマクロプラスチックがマイクロプラスチックに劣化する過程を捉えるシステム・ダイナミクス(System Dynamics, SD)モデルを開発しました。このモデルを用いて、海洋への新規流入と清掃強度を変えた複数のシナリオを比較し、2050年までのプラスチック蓄積量と清掃費用を推計することで、流入抑制と清掃を組み合わせた対策の効果と経済的負担を評価しました。

<社会的な意義>

 「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」では、海洋プラスチックごみへの対策として、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指しています。しかし本研究は、流入を止め、既存のマクロプラスチックを清掃するだけでは、既に海洋に存在するプラスチックごみや、流入をゼロにするまでに海洋へ流入し続けるプラスチックごみが細分化することで、マイクロプラスチックの蓄積を防げない可能性を示しました。

 さらに、マイクロプラスチックの清掃自体は不可能ではないものの、費用面から現実的ではないと考えられます。なお、マクロプラスチックの清掃を加速するには追加費用を要するものの、その規模は年間1~56億ユーロと推計されました。これらの結果は、海洋プラスチック対策において、新たな流入を抑制するだけでなく、すでに海洋に存在するマクロプラスチックを早期に回収し、マイクロプラスチックへの細分化を抑えることの重要性を示すものです。今後の国際的な海洋プラスチック政策を検討する上で重要な知見となります。

<研究者のコメント>

 海洋プラスチックごみの問題はストック(蓄積)の問題で、フロー(流入速度)の問題ではありません。追加的な流入、つまりフローをゼロにしても、ストックがゼロになるわけではありません。本研究は特にこの点を定量的に明らかにすることを意図しています。

<論文情報>

論文名   : Halting marine plastic inputs by 2050 is necessary but not sufficient to avoid microplastic accumulation

著者    : Uehara, Takuro., Cordier, Mateo., & Lebreton, Laurent

発表雑誌: Communications Earth & Environment

掲載日   : 2026年9月12日10時(現地時間)

DOI    : 10.1038/s43247-026-04054-1

URL    : https://doi.org/10.1038/s43247-026-04054-1

<用語説明>

※1   マクロプラスチック:比較的大きなプラスチックごみ。本研究では、流入時に浮遊する、海岸や沿岸、沖合に存在する比較的大きなプラスチックごみを指します。

※2   マイクロプラスチック:一般に5mm以下の微細なプラスチック。本研究では、マクロプラスチックが自然環境中で劣化・細分化することで生じるものとして扱っています。

※3   システム・ダイナミクス(SD)モデル:時間の経過に伴う物質や資源などの「蓄積」と「流入・流出」の変化をコンピュータ上で再現し、将来の状態をシミュレーションするモデル。

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

立命館大学

9フォロワー

RSS
URL
https://www.ritsumei.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
京都府京都市中京区西ノ京朱雀町1 立命館朱雀キャンパス 
電話番号
075-813-8146
代表者名
仲谷善雄
上場
未上場
資本金
-
設立
-