2021年台湾工作機械産業の展望<ワイズ機械業界ジャーナル2021年1月第2週号発行>
〜台湾機械業界の動向が分かる〜
ワイズコンサルティング グループ(本社:中華民国台北市、代表取締役:吉本康志)は台湾機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の1月第2週号を発行しました。今週号では、プラスチック・ゴム加工機械業界、エネルギー業界、工作機械メーカーの建徳工業(KENT INDUSTRIAL)、工作機械業界について紹介します。
<210114号内容>
1 | プラスチック・ゴム加工機械業界 | 台湾プラスチック・ゴム加工機械設備製造業の 振り返りと今後の展望 |
2 | エネルギー業界 | RCEP発効の台湾洋上風力発電産業に対する分析 |
3 | 工作機械業界 | 工作機械メーカー 建徳工業(KENT INDUSTRIAL) |
4 | 工作機械業界 | 2021年台湾工作機械産業の展望 |
●今週号の記事を一部紹介します。
<2021年台湾工作機械産業の展望>
工業技術研究院(工研院)の産業科技国際策略発展所は「2021年機械産業発展トレンドフォーラム」で、新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受けて各国が封鎖措置などを実施したことが需給に打撃を与えたため、20年の世界工作機械産業の生産額は697億4,900万米ドルとなり、昨年の841億6,400万米ドルから17.7%減少するとの予測を明らかにした。
また台湾工作機械産業は、新型コロナウイルス感染症の影響で上半期に需要が大きく減少したことから、2020年の生産額は1,015億4,100万台湾元で前年比31.2%の大幅減少となる見込みとした。
一方で工研院は、2021年から各国の経済活動に対する規制が緩やかになると予測している。加えて、中国製造業では景気が好転して自動車や3C(コンピューター、通信、家電)製品などの需要が回復し、とくに省エネと二酸化炭素の排出量削減のために各大手自動車メーカーが電気自動車(EV)に注力している。EVとガソリン自動車は動力システムが異なるため、関連する工作機械の需要が伸びる見込みだ。このうち、エンジンとトランスミッションを生産する工作機械は需要が減少するが、▽モーター▽ギアボックス▽軽量化車体▽部品を生産する工作機械は需要が拡大するとみられる。
このほか、新型コロナウイルス感染症の流行が拡大する中、生産における接触ゼロと区分分けが進んでおり、分散型生産の需要が拡大している。とくに生産の自動化とデジタル化におけるモノのインターネット(IoT)やリモート監視などの機器・設備への応用が新たな商機を生んでいる。このため、いかに第5世代移動通信(5G)技術を工作機械の製造システムに統合するか、製造分野で人工知能(AI)と拡張現実(AR)を応用していくかが、今後メーカーにとって課題となるだろう。
台湾工作機械産業の輸出に対する関税と為替レートの影響
2020年は台湾元レートが大幅に上昇し、台湾工作機械の輸出に大きな影響を及ぼした。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と▽中国▽日本▽韓国▽ニュージーランド▽オーストラリアが東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に正式署名したことによって、台湾当産業は関税障壁に直面することになった。これらの問題に対して、工作機械メーカーはソリューションサービスの提供を強化していくべきだろう。通常、設備販売の粗利益率は2~3%であることに加えて、顧客の要求は製品とサービスに対するものであり、設備のみに対するものではない。購入後の技術支援などアフターサービスも重要となるため、台湾工作機械産業は情報サービスの価値を高め、製品の差別化と産業の競争力を強化し、今後の市場競争に備えるべきだ。
二、メーカーの動向
2020年12月8日に台湾区工具機・零組件工業同業公会(TMBA)が発表した「工作機械産業景気調査」によると、20年の台湾当産業の出荷は19年からの減少傾向が続いた。しかし、新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発され、世界経済に回復の兆しが見え始める中、メーカーも景気を楽観するようになっており、台湾当産業の景気は21年第1四半期から、遅くとも第3四半期には好転すると予測される。
亜徳客(エアタック)
空気圧部品大手、亜徳客国際集団(エアタック・インターナショナルグループ)は、▽電子業▽工作機械▽電池などのメーカーからの需要が高くため、2020年通年の連結売上高は20.13%増で191.02億台湾元だった。20年第1四半期は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、業績が悪化したものの、在宅勤務やリモート学習の増加を受けて電子業が好況を迎え、これに伴って空気圧部品に対する需要も拡大したため、20年通年では高業績となった。また、5G関連の顧客からの受注も安定していることに加えて、工場の自動化のほか、電子業と自動車業の回復による需要増加によって、21年の業績も成長が期待できる。また、同社は現在、リニアガイド製品にも注力している。
上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ
上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)の卓永財総裁は、半導体産業の受注が旺盛であることから、同社と子会社の大銀微系統(ハイウィン・マイクロシステム)は半導体設備の受注が2021年末まで見通しが立っていると説明した。
このほか、医療や自動化分野における需要も高く、五軸工作機械などハイエンド設備の需要が好転し、上銀科技の20年第4四半期の業績は第3四半期を上回り、21年第1四半期の業績は前年同期を超える見通しだ。20年は大環境の景気低迷と新型コロナウイルス感染症の影響を受け、上半期の売上高は大幅減少したが、下半期には半導体産業からの受注が増加したことに加えて、医療と自動化分野における需要も安定していることから、20年通年の連結売上高は前年比5.2%増で212.62億台湾元だった。21年通年の売上高と利益は前年を上回ると予測される。
東台精機(東台マシン&ツール)
東台精機(東台マシン&ツール)は、米中貿易摩擦と新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、2020年第1~3四半期の売上高は前年同期比で3割減少し、粗利益率は大環境の景気悪化や為替レートの変動などの影響で19%まで下落した。しかし、中国市場の景気回復に伴って第4四半期の受注は前期比10%増となった。20年通年の連結売上高は前年比29.1%減で77.86億だった。同社の厳璐発言人は「自動車とプリント基板(PCB)メーカーからの需要が好転し、現在の受注規模は32億台湾元、見通しは21年第2四半期まで立っている」と説明した。
三、まとめ
TMBAの黄建中秘書長は新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発され、2021年の世界経済は好転するとの見方を示した。市場の需要が回復し、製造業が在庫補充を進め、各国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は半数が景況拡大と悪化の分かれ目である50ポイントを超えるとみられる。米国と日本の報告でも、工作機械の受注減少幅は縮小しつつあり、新型コロナウイルス感染症の工作機械産業に対する影響はピークを過ぎたといえる。とくに、日本の工作機械産業は受注が大きく回復しており、景気が明らかに好転していることを示している。しかし、欧州の一部国家では封鎖・隔離措置が実施されており、市場需要は低迷が続くとみられる。
全体的に見ると、工作機械産業は2021年の景気を好感しているが、地域経済協定による貿易障壁や為替レートの変動などマイナス要素も存在する。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行によって、在宅勤務、生産の自動化、オンライン会議など労働形態が変化し、アフターコロナのニューノーマルとなるだろう。台湾工作機械産業は引き続き5G応用によるソリューションと製造分野におけるAIとARの応用などに力を売れ、産業の競争力を強化していくべきである。
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