中山間地域の農地維持支援、「プッシュ型」への転換を先駆けて実証
― 国の政策見直しの方向性を受け、衛星・地形データと AI で「交付対象となり得る農地」を見える化、制度利用まで伴走する新たな取り組みを開始―
福島県南相馬市(市長:門馬和夫)は、LAND INSIGHT 株式会社(本社:福島県南相馬市、代表取締役社長:遠藤嵩大、以下「LAND INSIGHT」)と Penguin Labs 合同会社(本社:東京都中央区、共同代表 CEO:赤塚慎平、以下「Penguin Labs」)と共同で、中山間地域等直接支払交付金の活用を市が能動的に後押しする「プッシュ型支援」の実証事業を開始します。衛星データ・地形データとAI の活用により交付対象となり得る農地を可視化し、市が中山間地域の集落に対して、制度の案内、合意形成、申請までを一体的に支援する取り組みを開始します。
背景:対象農地の半数以上が未活用 ― 南相馬市から先進モデルを構築
農林水産省が2026年6月に公表した「新たな水田政策の基本的考え方・仕組み」では、中山間地域等直接支払について、集落からの申請を待つ従来の運用から「プッシュ型で取り組む」方向性と、対象農地選定の効率化に向けたデジタル技術の活用促進が示されました。本実証は、この政策転換をいち早く現場で実装する取り組みです。
中山間地域等直接支払制度は、平地に比べ生産条件が不利な中山間地域において、集落等が協定を締結して農業生産活動を継続する場合に交付金を支払う国の制度で、2024 年度(令和 6 年 度)の交付総額は約 531 億円にのぼります。
一方、農林水産省の推計では、制度の対象となり得る田のうち、急傾斜の農地で約 5 割(対象 26.6 万 ha に対し実施 13.2 万 ha)、緩傾斜の農地では約 3 割(対象 52.3 万 ha に対し実施 15.1 万 ha)でしか制度が実施されていません(農林水産省「新たな水田政策の基本的考え方・仕組み」2026 年 6 月)。両者を合わせると、対象となり得る田 78.9 万 ha のうち実施は 28.3 万 ha(約 36%)にとどまり、6 割超の農地に制度が届いていない計算になります。
高齢化や担い手不足、申請手続の負担などを背景に、農地を守る仕組みが、それを必要とする集落の多くに届いていないのが現状です。 このため国は、前述の政策見直しにおいて、2026 年度(令和 8 年度)から全国の地方農政局が制度活用の少ない市への働きかけを開始する方針を示すなど、「プッシュ型」への転換を打ち出しています。市が集落へ働きかけるには、「どの農地が対象になり得るのか」「どの集落に 届いていないのか」を把握することが出発点となりますが、傾斜条件の確認や対象農地の特定を人手で行うことは容易ではありません。
南相馬市の現状と解決策【イメージ図】

実証の内容:「見つける・届ける・申請する」を、データと AI で支える
本実証では、市がプッシュ型の働きかけを行うために必要な情報基盤を、衛星データ・地形デ ータとAI により構築し、南相馬市内の旧石神村・旧上真野村エリアの農地(約 1.2 万筆)を対象に実地に検証します。
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対象候補農地の可視化 ― 国土地理院の標高データ(DEM)や衛星データを解析し、傾斜等の交付要件を満たす可能性のある農地を一筆単位で抽出します。急傾斜・緩傾斜・ 超急傾斜加算といった傾斜区分の判定に加え、急傾斜農地の団地としてのまとまり(連担)についても自動で判定し、空中写真上に色分けして表示します
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交付状況とのギャップの可視化 ― 現在交付を受けている農地と重ね合わせ、「対象になり得るにもかかわらず制度が活用されていない」地域を特定し、市が優先的に働きかけるべき集落を明らかにします
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交付見込額の試算 ― 対象候補となる農地について、年間の想定交付額および協定期間5年間の累計額を試算し(第 6 期対策の都府県単価に基づく参考値)、集落・農家への説明に使える形で提示します
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各種申請・関連業務の効率化に向けた検討(生成 AI 活用) ― 対象候補として抽出した農地の情報を、協定の申請や関連業務そのまま活かせるよう、AI の活用も含めて効率化の可能性を市とともに検討します

3者の役割

今後の展開
南相馬市での実証を通じて有効性を検証したうえで、中山間地域を抱える全国の自治体への展
開を目指します。LAND INSIGHT は、南相馬市で生まれた農業行政の現地調査効率化サービス
「圃場 DX」を全国120 以上の自治体に展開してきました。Penguin Labs は、本実証で構築す
る解析・AI 基盤を自社の地理空間インテリジェンス基盤「TWINZ Plus」(特許出願中)の一機
能として汎用化し、中山間地域等直接支払以外の農業行政業務や、国内外の農地評価ニーズへ
の展開を進めます。本実証は、現地調査の効率化にとどまらず、「制度の活用そのものを後押
しする」領域へ農業行政支援の射程を広げ、国が掲げるプッシュ型への転換を現場から先駆け
て推進する取り組みです。
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