日本・マレーシア両政府に対し、CCS推進をやめるよう求める公開書簡提出
日本からマレーシアへのCO2輸出は「炭素植民地主義」
2024年3月21日
クアラルンプール/東京 – 本日、最大規模の草の根国際環境ネットワーク「フレンズ・オブ・ジ・アース・インターナショナル」のメンバーである環境団体、Sahabat Alam Malaysia(FoEマレーシア)とFoE Japanは、日本政府とマレーシア政府に対し、炭素回収貯留(CCS)技術は、気候変動対策を遅らせるだけであるとして、CCSを促進しないよう求める公開書簡を提出しました。書簡は、先進国から途上国への二酸化炭素(CO₂)の輸出は重大な気候「不正義」であるとも述べています。
歴史的に多くのCO₂を排出してきた国の一つである日本は、マレーシアを含む他国へのCO₂輸出を積極的に検討しています。 3月1日にも、企業連合が東京湾の複数の産業から排出されるCO₂の分離・回収・集積、船舶輸送、マレーシアでのCO2貯留までの海外CCSバリューチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書を締結。 回収される CO₂の量は、年間約300万トンから600万トンが想定されています。
このような行いは気候危機を悪化させるだけではありません。マレーシアのようなグローバル・サウスの国々にCO₂を投棄することは、歴史的に多くの温室効果ガスを排出してきた国々がより多くの気候変動対策への責任をとるという気候正義の原則に根本的に反しています。 さらに、CCSはリスクが大きく、コストも高い有効性の立証されていない技術であり、長期的な責任を伴います。 このような技術に依存することは、日本の気候変動対策を遅らせるだけです。
FoEマレーシア代表のMeenakshi Ramanは、「マレーシアにおいて気候危機が日に日に悪化しており、グローバル・サウスの人々は不当に大きな影響を受けている。 裕福な国は、自らが引き起こしたことの代償を払い、自国で排出量を削減しなければならない。 現在、日本のような国々は、気候危機への責任だけでなくCO₂そのものを他国に移転することを検討している。これはグローバル・サウスに廃棄物を捨てる行為であり、ばかげている。 日本をはじめとした他国から輸出されたCO₂を受け入れることは、マレーシア自身の排出削減努力を台無しにすることになる。 将来世代の安全を保証するものではない技術に対し、誰がその費用を支払うのか? 私たちはまた、マレーシア政府に対し、富裕国からの廃棄物をこれ以上受け入れないよう要求する。マレーシアは、世界のあらゆる廃棄物の投棄場所となるべきではない。」とコメントしました。
グリーンピースマレーシアの気候・エネルギーキャンペーナーであるHamizah Shamsudeenは「CO₂の輸出は、マレーシアを新たなゴミ捨て場にするということだ。グリーンピースマレーシアや、我々が所属するクライメートアクションネットワーク(CAN)は、CCSは気候変動の解決策にならないと考えている。CCSに過剰に依存することは、石炭、天然ガス、石油などの非再生可能エネルギーが、ネットゼロの目標年である2050年以降もエネルギーミックスに残るということだ。マレーシア政府は、(CO₂を受け入れるのではなく)責任ある民主的で持続可能なエネルギー転換に向け、太陽光の促進やエネルギー効率の改善を含んだ、よりクリーンな代替策や政策・インフラの改善に投資を向けるべきだ」とコメントしました。
これまでも多くのCCS事業が、高いコストと技術的困難により失敗してきました。日本の国会は現在、国内外でCCS事業を実施するための法的枠組みとなるCCS事業法を審議しています。
FoE Japan事務局次長で気候変動・エネルギーキャンペーナーの深草亜悠美は、「日本政府のCCS政策は単なる夢物語だ。 現在の政策では、2050年までに1億 2,000万~2億4,000万トンのCO2を貯留することを目標としており、これは、日本の現在の排出量の約10〜20%に相当する。日本にはまだ商業規模のCCS事業は存在せず、技術的および財政的な障壁がある。日本政府が公然と、他国にCO₂を輸出する方が安価な選択肢であると主張しているのは恥ずべきことだ。日本政府は気候変動への公平性の原則とその歴史的責任に基づいて、より高い排出削減目標を設定し、こうした誤った解決策の推進をやめるべきだ。」とコメントしました。
また、FoEインターナショナルの気候正義・エネルギー国際プログラム共同コーディネーターのLise Massonは「炭素回収貯留は、本来であれば地中にとどめ置かれるべきである化石燃料を化石燃料企業が採掘し続けるためのトリックだ。私たちに必要なのは早急に抜本的な排出削減を公平な形で行うことであるが、(CCSは)その事実から目をそらさせるための目眩しである。また人々や地球に許容し難いリスクをもたらす。CCSは、グリーンウォッシュのツールであるだけでなく、私たちをさらなる気候危機をもたらす検証不十分で、コストが高く、危険な産業界の夢と言える。」とコメントしました。
気候危機に取り組むために残された時間の全てを無駄にすることはできません。 日本およびマレーシアは、迅速、公正、かつ公平なエネルギー移行のために協力すべきです。
詳細は公開書簡をご覧ください。
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