CALL4、日本の「黙秘権」を問う訴訟のサポート開始
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000130
日本初(※1)の公共訴訟支援に特化したウェブプラットフォームCALL4(コールフォー)(運営:認定特定非営利活動法人CALL4、共同代表理事:谷口太規、丸山央里絵)は、日本の「黙秘権」を問う訴訟のサポートを2024年3月11日より開始いたします。
当時弁護士だった原告の江口さんは、犯罪の嫌疑をかけられ横浜地検特別刑事部に逮捕されました。黙秘権の行使を宣言したにもかかわらず、約21日間・約56時間にわたって検察官から「ガキ」「お子ちゃま」など、さまざまな暴言、嫌味、侮辱を浴びせられました。
日本国憲法38条1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とすべての被疑者に対して「黙秘権」を保障しています。取調べで黙秘をすることは、憲法上の権利の行使であるにもかかわらず、実際に「黙秘権」を行使することが難しい現状があります。
また、過酷な取調べによって、自分が犯していない罪の自白を強要され、無実の人が冤罪になった歴史があります。冤罪を生む過酷な取調べをなくすためにも、黙秘権保障の重要性は強調する必要があります。
この訴訟は、裁判を通してこのような取調べが違法であることを明らかにすることで、黙秘権が真に保障される社会にするための訴訟です。
※1 日本国内における「公共訴訟支援に特化したウェブ支援プラットフォーム」として、2019年9月に弁護士による見解など自社調査した結果
三つの権利侵害
検察官による取調べは次のように江口さんの権利を侵害したものだと主張します。
1. 黙秘権の侵害
江口さんは逮捕後の取調べの冒頭で「私からはこれ以上話すことはありません」と述べて黙秘権行使の意思を明確にしました。しかし、検察官は取調べを継続し、21日間にわたって56時間を超える取調べをしました。
密室での長時間の取調べは、孤立無援でそれ自体が供述を強制する雰囲気をもつものです。
黙秘権行使の意思を無視して取調べを受けることを強いる行為は、供述の強要そのものです。
さらに、検察官は江口さんの人格や弁護士としての能力を侮辱する言動を繰り返しました。
このような言動は、黙秘する被疑者に対しての問いかけや、話すよう説得するという範囲を超えて、精神的に圧迫することで供述を強要しようとするものであり、黙秘権を侵害する違法行為です。
2. 弁護人依頼権の侵害
日本では、日本国憲法34条前段「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」によって、弁護人依頼権が保証されています。
この弁護人依頼権は、被疑者が弁護人を選任することは妨害されてはならないというだけでなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会をもつことを実質的に保障しています。
そして、被疑者が弁護人から援助を受けるためには、被疑者と弁護人の信頼関係が欠かせません。取調官が被疑者と弁護人との信頼関係を破壊する行為をすれば、弁護人から援助を受ける機会をもつ権利を侵害するものです。
この事件では、検察官は、江口さんが弁護人を選任していることについて「(弁護人に)迷惑かけないでもらいたいですよねえ。自分でやればいいじゃん」などと発言したり、弁護人の活動について「着眼点がとろい」、「稚拙な主張」などと弁護人の活動を侮辱する発言をしたりしています。これは江口さんに、弁護人に依頼を継続して良いのか不安にさせ、また弁護人の活動に不信感を植えつけようとするものです。江口さんと弁護人の信頼関係を破壊する行為であり、弁護人依頼権を侵害する違法行為です。
3. 人格権の侵害
検察官は、江口さんの取調べを通じて全般的に、江口さんの人格、弁護士としての能力、防御方針などを侮辱する言動を繰り返していました。これらの言動は、江口さんの人格権を侵害する違法行為です。
これらの主張に対して国は、56時間を超える取調べをしたことや、取調べでの検察官の発言内容自体は認めた上で、江口さんの黙秘権等を侵害するものではなく、適法な取調べであったと主張しています。検察官が56時間を超える取調べをしたことや、取調べでの検察官の言動を裁判所がどのように評価するのかが争点になります。
取調べ映像の公開
取調べ適正化のため2019年から一部の事件で取調べがビデオで撮影されるようになりましたが、今までこの取調べの映像は国に賠償を求める訴訟で利用されることはほぼありませんでした。
この事件では実際の取調べ映像を提出するよう国に申し立て、映像は裁判の証拠となり、公開の法廷で再生されました。このこと自体に一つの先例的意義があります。
そして、原告弁護団は、取調べの実態を多くの人に知ってもらうため、その映像をインターネット上で公開しました。
https://youtu.be/XArMxYdhk_U?feature=shared
資金の使途
・訴訟提起の際の手続費用や、研究者への意見書執筆依頼費用
・江口さんに対して行われた取調べの実態を国内外のみなさまに広く知っていただく情報発信のための動画作成費用
・そのほか、裁判の遂行に必要な費用や取調べの実態を発信する広報活動費用
原告の思い
自分自身が被疑者になって、初めて、取調べのリアルな実態を知りました。
私は、現実にどのような取調べが行われているかを、多くの人に知ってほしいと思いました。そして、捜査官が「取調べ」の名の下に被疑者を延々と罵倒することは違法ではないのか、裁判所に判断してほしいと思いました。そのためにこの裁判を起こしました。
取調べを受けることは、いつでも、誰にでも起こりうることです。みなさんに取調べのリアルな実態をお伝えして、ひとごとでなく自分の問題として考えてもらいたいと思い、裁判の資料を公開し、クラウドファウンディングを行うことにしました。
担当弁護士のメッセージ
取調べの実態を明らかにし、現在の実務が憲法が考えた黙秘権の保障とはかけ離れた地点にあることをみなさんに知ってもらうことは、この事件を担当することになった私達の使命です。そのためにまず取調べの動画を公開しました。次は、このような取調べを受けた江口さんがどのように感じたのかをお伝えする動画を公開する予定です。
今後も積極的に情報を発信し、皆さんに取調べの実態を知っていただくことで、取調べの現状を変えていきたいと思います。
担当弁護士の紹介
宮村啓太 第二東京弁護士会 宮村・井桁法律事務所
趙 誠峰 第二東京弁護士会 Kollectアーツ法律事務所
髙野 傑 第二東京弁護士会 早稲田リーガルコモンズ法律事務所
https://legalcommons.jp/member/takano
CALL4について
「CALL4」は2019年9月のサービス開始以降、公共訴訟を支援するクラウドファンディングと、訴訟の背景にある課題や原告の人生を伝えるコンテンツの提供を行っています。活動を通じて、より多くの人たちが司法で起きていることを知り、関心を持ち、そしてさまざまな形で参画することができる仕組み作りに尽力しています。
「結婚の自由をすべての人に」訴訟、性風俗事業者に対する持続化給付金不支給を問う「セックスワークにも給付金を」訴訟、最高裁で史上11件目の法令違憲判決が出された在外国民審査訴訟、入管施設内における暴行事件など、多くの訴訟について、訴訟概要やその問題背景についてのコンテンツ発信を行なっています。
運営団体「認定特定非営利活動法人CALL4」について
認定特定非営利活動法人CALL4は、公共訴訟を支援するウェブプラットフォーム「CALL4」の運営のために設立された営利を目的としない法人で、共同代表を務める弁護士の谷口太規、編集者の丸山央里絵の他、多様な専門性を有するプロボノメンバーによって活動が担われています。
詳細は以下よりご確認ください。
CALL4は今後も、クラウドファンディングをはじめとするケースサポートを通じて、司法をより身近に感じていただけるよう日々活動してまいります。
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