業界最高クラスの伝熱性能を実現した鉛直アルミ扁平管熱交換器を開発

空調機のさらなる省エネと冷媒量の削減により、カーボンニュートラル社会の実現に貢献

三菱電機株式会社

三菱電機株式会社は、冷暖房用ヒートポンプ(※1)式空調機向けに、業界最高クラス(※2)の伝熱性能を実現した鉛直アルミ扁平管熱交換器(VFT(※3)熱交換器)を開発しました(図1)。

                                                図1 開発した鉛直アルミ扁平管熱交換器


 近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、省エネ性に優れるヒートポンプ式空調機の需要が拡大しています。一方で、ヒートポンプ式空調機には地球温暖化係数の高いフロン冷媒が使用されており、環境負荷低減のために冷媒量を削減すると伝熱性能が低下するという課題がありました。冷媒量の削減と伝熱性能の向上を両立するためには、熱交換器内に冷媒を流す扁平管をより細径かつ高密度に多数配置し、冷媒と空気が触れる面積を拡大するとともに熱交換器内の容積を削減することが有効ですが、従来の水平アルミ扁平管熱交換器(HFT(※4)熱交換器)ではその構造上、扁平管の数を増やすと重力の影響を受けてガスと液が混ざり合う冷媒をすべての扁平管内に均等に行き渡らせることが難しく、伝熱性能の向上が困難でした。

 今回、当社が開発した鉛直アルミ扁平管熱交換器は、鉛直上向きに延びるアルミ扁平管(VFT)と、二重管構造の高性能冷媒分配器を採用することで、より細径のアルミ扁平管を高密度に多数実装しながら冷媒を均等に行き渡らせることが可能となりました。これにより、従来の水平アルミ扁平管熱交換器と比較して、伝熱性能が最大で約40%向上し、さらに熱交換器の内容積を最大で約20%削減することで、熱交換器内部の冷媒量の削減も実現しました。

 この他、独自の解析技術を用いて排水性を大幅に向上させた新構造のフィンも採用することで、暖房中の除霜運転時に霜が溶けた水が熱交換器から排出されずにフィン上で凍結し、熱交換器の通気を妨げて空調機能が低下するという課題を解決しました。

 当社は今後、本技術の製品への適用を進めていくことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。


■開発の特長

1.新構造の鉛直アルミ扁平管と高性能な冷媒分配器を開発、業界最高クラス(※2)の伝熱性能と熱交換器内部の冷媒量の削減を両立

・従来、多数のアルミ扁平管を水平に配置していた構造から、鉛直に配置する新構造を開発

・冷媒分配器内部のガスと液を均等に混合する二重管構造の高性能な冷媒分配器を開発

・業界最小クラス(※2)の細径により、従来の水平アルミ扁平管熱交換器と比べて、約4倍となる100本以上(熱交換器1ユニットあたり)のアルミ扁平管を高密度に実装しながら、ガスと液の冷媒を均等に行き渡らせることに成功。アルミ使用量を抑えながら伝熱面積を増加させることで伝熱性能が最大で約40%向上し、熱交換器の内容積を最大で約20%削減することで、業界最高クラス(※2)の伝熱性能と熱交換器内部の冷媒量の削減を実現


2.新構造の導水流路を設けた高排水フィンを開発、フィン上の水を高速で排水し空調機能の低下を抑制

・当社独自の排水解析技術により、熱交換器フィン上の水の流れを可視化

・業界で初めて(※2)、水を高速に排水する新構造の導水流路を設けた高排水フィンを開発



■今後の予定

 今後、本技術のヒートポンプ式空調機製品への適用を進め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。



■特長の詳細

1.新構造の鉛直アルミ扁平管と高性能な冷媒分配器を開発、業界最高クラス※2の伝熱性能と熱交換器内部の冷媒量の削減を両立

 当社はこれまで、冷媒が流れる管を従来の銅円管からアルミニウム素材の扁平形状の管に変更したアルミ扁平管熱交換機を製品に適用し、冷媒使用量の削減と高性能化を両立してきました。さらなる冷媒量の削減と高性能化には、アルミ扁平管をより細径にし、高密度に多数配置することで冷媒と空気が触れる面積を拡大しつつ、熱交換器内の容積を削減し少ない冷媒で効率的に熱交換を行うことが有効ですが、熱交換器内部ではガスと液が混ざり合った冷媒を均等にアルミ扁平管に行き渡らせることが必要です。従来のHFT熱交換器は、冷媒分配器内部を下から上に向かって冷媒が流れ、冷媒分配器から水平方向に複数配置されたアルミ扁平管に冷媒が分流する構造であったため、アルミ扁平管の数が増えると、重力の影響でガスと液の冷媒をすべてのアルミ扁平管に均等に行き渡らせることが困難でした。

今回、冷媒分配器内部を水平方向に冷媒が流れ、冷媒分配器から鉛直上向きに多数配置されたアルミ扁平管へ冷媒が分流する新構造を開発し、重力の影響を受けることなく冷媒を均等に行き渡らせることを可能にしました(図2)。また、冷媒分配器内部のガスと液の冷媒の流れをシミュレーション技術や高速度カメラで可視化することで、ガスと液の冷媒を複数の小穴から噴出させ、均等に混合する二重管構造の新しい冷媒分配器を開発しました(図3)。これにより、業界最小クラス(※2)の細径で、従来のHFT熱交換器と比べて約4倍となる100本以上(熱交換器1ユニットあたり)のアルミ扁平管を高密度に実装しながら、ガスと液の冷媒を均等に行き渡らせることに成功しました。

この結果、従来のHFT熱交換器に対してアルミの使用量を抑えながら伝熱面積を増加させ、伝熱性能を最大で約40%向上し、熱交換器の内容積を最大で約20%削減することで、熱交換器内部の冷媒量の削減を実現しました。

                                               図2 HFT熱交換器とVFT熱交換器の比較  


                                                   図3 高性能冷媒分配器   



2.新構造の導水流路を設けた高排水フィンを開発、フィン上の水を高速で排水し空調機能の低下を抑制

 冷暖房用ヒートポンプ式空調機では、暖房運転時に室外機に付着した霜を溶かす除霜運転を行います。霜が溶けた水が熱交換器から排出されずにフィン上に留まると、凍結して熱交換器の通気を妨げ、空調機能力が低下するため、排水する必要がありますが、新構造のVFT熱交換器は、水平方向に配置されるフィンが上下に重なる構造であるため、従来のHFT熱交換器と同じ形態のフィンをそのまま適用すると、排水が阻害されることが課題でした。

今回、独自にフィンの排水解析技術を開発することで、水の流れを可視化し、排水スリットや切り起こし構造をフィン上に設けて、排水性を大幅に向上させた新構造の高排水フィンを業界で初めて(※2)開発しました(図4)。

これにより、VFT熱交換器の冷暖房用ヒートポンプ式空調機への適用を実現しました。 


                                                    図4 高排水フィン   




※1 外気と屋内の間で熱を移動させることで、高いエネルギー効率で暖房や冷房したり、水を温めたりする機器

※2 2023年11月1日現在 当社調べ、冷房と暖房を行う定置の空調機において

※3 VFT:Vertical Flat Tube

※4 HFT:Horizontal Flat Tube



<お客様からのお問い合わせ先>

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所

〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町八丁目1番1号

FAX 06-6497-7289

http://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_at.html

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会社概要

三菱電機株式会社

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URL
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビル
電話番号
03-3218-2111
代表者名
漆間 啓
上場
東証プライム
資本金
1758億2077万円
設立
1921年01月