マチュピチュ周辺の密林下で新たな遺跡を確認

― JICAと日本技術による文化遺産保全の新たな一歩 ―

JICA

 JICAはペルー文化省、福島県の企業である株式会社ふたばとともに、日本の高精度3D測量技術(UAV-LiDAR)を活用した調査により、マチュピチュ遺跡周辺の密林下から、これまで確認が困難であった複数の新たな遺構形状の抽出に成功しました。本成果は、森林を伐採せずに未踏査地域の遺跡確認を実現する画期的な取り組みであり、文化遺産保全の高度化と観光安全の強化に向けたJICAの協力の大きな一歩となります。本調査は、文化遺産保全の高度化と観光との両立というペルーの国家的課題に対し、日本の技術と知見を活用して取り組むJICA事業の一環です。

 今回の調査では、マチュピチュ遺跡の北東部に広がる大規模段々畑群「アンデネスオリエンタレス」において、木々に覆われて視認が困難であった全体像を初めて把握することに成功しました。さらに遺跡北側の未調査エリアの月の神殿付近では、L字型の壁状構造(高さ約2.7m)や線対称の三段の段々畑、加工の可能性がある直方体の石材など、複数の特徴的な遺構候補が新たに確認されました。これらは、UAV-LiDAR で取得した高密度点群データから森林部分のデータを除去し、地表面の形状を非破壊で抽出することにより可能となったものです。

アンデネスオリエンタレスの段々畑:マチュピチュ遺跡の北から東側の底部に広がる遺跡・アンデネスオリエンタレス。写真では木々に覆われ確認できなかった段々畑を点群化し、木々などの不要データを除去することで段々畑全体の規模や隣接する段々畑とつながる位置を確認。

月の神殿付近における塀のような遺構:通常の段々畑とは違う形状で、高さ2.7m、厚さ0.6mの壁面が約12.9×6.4mのL字で2面の壁状構造になっている。

月の神殿付近における段々畑:線対称な形状をした3段の段々畑。

月の神殿付近における巨石らしい立体物:密林下に平場と長辺2mほどの直方体形状の構造体を確認。平らな面になっているため加工された巨石の可能性が高い。

その背後には空洞スペースも確認できる。近くにある遺跡「月の神殿」の空洞内部にも遺構があるため、規模は小さいが類似性が高いと推測される。

~ペルーで歓迎される文化遺産保全と観光開発へのJICAの貢献~

 ペルーには、インカ帝国期(13~16世紀)を含む22,000を超える遺跡が存在し、登録・保全が追いついていません。文化遺産は国の誇りであり、観光は基幹産業のひとつですが、文化遺産保全と観光開発はしばしばトレードオフの関係にあります。

 この課題に対して、JICAは、ペルー文化省と協力し、高精度3Dデータを活用した文化遺産保全体制の構築と持続可能な観光開発をめざして「3D-SACURA」(2025年2月~2027年1月)を形成しました。JICAは、制度面・運用面・人材育成面での支援を通じて、取得された3Dデータがペルー側で持続的に活用される体制づくりを後押ししています。

~ 日系人が紡いだご縁が、JICAと日本企業の共想へ ~

 本事業の背景には、日本とペルーの長年の交流があります。マチュピチュ村の初代村長(1948~1950年)を務めた日系移民の野内与吉氏は、福島県大玉村の出身で、水道や電力整備、ホテル建設など村の基盤づくりに大きく貢献しました。その功績は現在もペルーで高く評価されており、この歴史的な縁を契機に、大玉村とマチュピチュ村は2015年に友好都市協定を締結しました。

 また、大玉村は、2011年の東日本大震災の際、原発事故により避難を余儀なくされた福島県富岡町から多くの町民を受け入れました。大玉村に深い感謝の念を抱いていた富岡町出身の、株式会社ふたばの遠藤秀文社長は、「自社の3D測量技術を活かして大玉村とマチュピチュ村の友好関係を促進することで大玉村に恩返ししたい」という思いを抱くようになりました。この構想がJICAに持ち込まれたことが、本事業形成のきっかけとなりました。

~ 日本の技術で遺跡保全に新たな選択肢を~

 株式会社ふたばは、東日本大震災後、原発事故の影響により人が立ち入ることが困難となった地域の姿を後世に伝えるため、町並みや地形を記録、保存する3Dアーカイブの取り組みを行ってきました。その過程で、人が立ち入れない環境下でも効率的にデータを取得するための飛行計画の設計や、取得した膨大なデータを解析して高精度な3Dモデルを構築する技術を磨いてきました。こうした日本国内で培われた知見と技術が、本事業におけるマチュピチュ遺跡の非破壊・高精度調査にも活かされています。

 3D‑SACURAでは、株式会社ふたばが培ってきた三次元計測・解析技術を活用し、マチュピチュ遺跡の石積構造の3Dデータ化や地形解析を実施しています。これにより、

  • 大幅な作業の効率化と省力化

  • 経年変化のモニタリング

  • 劣化・変形箇所の可視化

  • 科学的エビデンスに基づく保全計画の高度化 

が可能となり、遺跡保全と観光管理の両面でデジタル技術の活用が進みつつあります。また、取得した遺跡や地形のデータはVRやARなどを通じて、観光プロモーション、文化遺産保全に向けた啓蒙活動、災害ハザードマップの作成などにも活用が可能であり、文化遺産の活かし方の幅を広げます。

~ 日本の技術が世界遺産保全を支え、その知見が再び日本へ ~

 マチュピチュのような、高山帯・雲霧帯で得られた3D解析技術やリスク評価の知見は、日本の文化財保全や観光地の安全管理、防災分野にも活かすことができます。JICAは海外で得た技術や知見を日本の現場へと還元する知識循環の構築も目指しています。

 JICAは、日系人をはじめとする先人が築いてきた信頼の上に立ち、これからも日本とペルー両国の社会・経済発展に寄与する協力を推進していきます。

3D-SACURAで活用したUAV-LiDAR

計測・解析作業に関する実践研修の様子

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会社概要

独立行政法人国際協力機構

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URL
https://www.jica.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル
電話番号
03-5226-6663
代表者名
田中明彦
上場
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資本金
-
設立
2003年10月