全国大学生協連の会員生協合計で7年ぶりの黒字達成。その先に大学生協が目指すものとは。
― 全国大学生協連 会長理事・武川正吾氏と中島達弥専務理事が語る、大学生協の役割と2030年に向けた展望 ―
全国大学生活協同組合連合会は、会長理事・武川正吾氏(東京大学名誉教授)と専務理事・中島達弥氏によるトップインタビューを公開しました。2025年度、会員生協合計で7年ぶりとなる経常黒字を実現しました。しかし、対談で語られたのは黒字という成果そのものではありません。大学生協の未来をめぐる対話から見えてきたのは、学生の成長、大学コミュニティ、そして協同組合の新たな可能性でした。経営改善を土台として、学生・大学・地域社会にどのような価値を提供していくのか――。大学生協の存在意義と2030年に向けた展望が率直に語られています。

大学生協の原点は『学生が主体となる協同組合』
武川会長は、大学生協には①学生・教職員が主体となる協同組合、②学生自治を支える組織、③学生と教職員が対等に議論する場、④学生が経営を学ぶ実践の場、⑤学生の居場所という五つの役割があると整理しました。
「大学生協は協同組合ですが、学生委員の役割が非常に大きな組織です。
通常の協同組合も組合員が主要な役割を果たしていて組合員と利用者が一体ではありますが、大学生協の場合は大学の当事者である学生・教職員自身が組合員となって購買をはじめ様々な事業を行い、利用者も自分たちであるということが大きな特徴で、全国で約1万人の学生委員が活躍しているということも重要な要素だと思います。」

武川 正吾 先生(東京大学名誉教授)

中島 達弥
7年ぶりの黒字、その先へ
中島専務は7年ぶりの黒字を評価しつつ、依然として厳しい経営環境にある生協も少なくないと説明します。黒字化はゴールではなく、組合員への価値をどう高めるかが次の課題です。
「供給は満足のバロメーター、利用は支持のバロメーター。」
「注目すべきは供給額それ自体ではなく、どれだけの組合員に利用されたか、つまりは利用者数や利用頻度、キャンパスでのシェア率であって、その結果、付加価値をどれだけ組合員に提供できたかということが貢献を測るポイントになってくると思います。」
2025年度は会員生協合計で7年ぶりの経常黒字となりました。一方で生協間の二極化も課題です。専務理事には『大学や組合員を知る力』『事業経営をする力』『協同組合人としての力』の3つが重要であり、経営改善と組合員価値の両立が求められます。
「私たちは大学を職域とする生協なので、「大学や組合員を知る力」。次に、数値をきちんと把握してそこから現状を読み取り、その状態をどう改革して数値を作っていくかという「事業経営をする力」。3つ目は、その大学や組合員を知り経営の要諦を握ったうえでどう運営していくかという「協同組合人としての力」です。この3つの力がうまくかみ合うことが、大学生協の経営がうまく進み出すポイントだと思います。」




協同組合を未来へ伝える
学生に協同組合をどう伝え、大学や地域とどう連携していくか、書店や学生支援をどう発展させるかなど、対談は大学生協の未来像へと話題が広がります。
武川会長は大学生協の書籍事業について、大学教員の立場から次のように述べました。
「生協は大学の教員も組合員になっているので、ある意味で大勢の著者を抱えている状態だと思います(笑)。「スタディ・エッセンシャルズ」やその他の書籍事業についても大学生協は優位な地位にあると思うので、そこを生かして日本の出版界・読書界を押し広げていくことができると思います。昔から読書マラソンや書籍の復刊事業は読者や出版社から高評価を得られていますが、こういうことは今後もあっていいと思っています。」
大学生協はこれから何を社会に提案していくのか
対談の最後に浮かび上がるのは、大学生協は単なる福利厚生事業ではなく、学生・大学・地域社会をつなぐ協同のプラットフォームであり続けたいという強い意思です。【参考 大学生協2030Goals —2030年までに私たちが実現したいこと—】
武川会長は、少子化が進む時代だからこそ大学生協の存在価値は高まるとし、次のように期待を語ります。
「国公立大学の統廃合が進み、私立大学間の生存競争が始まっていく。実際に募集を停止した大学も出てきていますし、これは後戻りしない方向だと思います。逆にどういう大学が存続するのかと考えると、「大学生協のある大学が生き残れるんだ」と言われるくらいになるといいなと思います。」
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