『飛鳥・藤原の宮都』世界遺産登録の現場|第48回世界遺産委員会を世界遺産アカデミー研究員が詳細レポート

初めて韓国で開催された世界遺産委員会の全日程に、NPO法人世界遺産アカデミーの宮澤光主任研究員が現地参加。今年の審議結果のポイントや議事の様子を解説します。

特定非営利活動法人 世界遺産アカデミー

会場となった釜山にある国際会議場BEXCO

2026年7月19日から29日の期間に、韓国の釜山で第48回世界遺産委員会が開催されました。今回は韓国で初めて開催される世界遺産委員会で、議長は韓国の元外交官のイ・ビョンヒョン氏が務めました。

文部科学省後援「世界遺産検定」を主催するNPO法人世界遺産アカデミーの宮澤光主任研究員が、現地で会議の全日程に参加しました。今年の世界遺産委員会の注目ポイントを解説します。

▼新規登録の遺産と和訳の一覧は以下の資料をご参照ください。

https://www.sekaken.jp/pdf/202607_new.pdf

▼世界遺産検定事務局が運営する世界遺産の総合情報サイト「pamon」では各新規登録遺産を詳細に解説しています。

https://pamon.sekaken.jp/wh-list/?post_type=heritage&ins-year-from=2026&ins-year-to=2026


※以下、宮澤研究員による解説

『飛鳥・藤原の宮都』を含む25件の新規登録で、世界遺産の総数は1,273件に。遺産保有国も3カ国増加

日本で27件目の世界遺産となった『飛鳥・藤原の宮都』の構成資産のひとつである「石舞台古墳」(©mtaira/Adobe Stock)

今回の世界遺産委員会では、日本の『飛鳥・藤原の宮都』を含む25件の世界遺産が新しく誕生し、世界遺産の総数は1,273件になりました。また南スーダン共和国とコモロ連合、サントメ・プリンシペ民主共和国の3カ国が新たに遺産保有国となり、世界遺産を保有する国は173カ国となりました。世界遺産を1つも保有しない世界遺産条約締約国は23カ国となり、世界中の文化や自然の保護を目指す世界遺産委員会のグローバル・ストラテジーに従って、確実に遺産保有国が増えてきていると言えます。

【今回新規登録された遺産数】

文化遺産:19件

自然遺産:5件

複合遺産:1件

合計:25件

【世界遺産の総数】

1,273件

今回の注目はやはり、日本から2年ぶりに27件目の世界遺産となる『飛鳥・藤原の宮都』が登録されたことです。この遺産は、日本が中国大陸や朝鮮半島との交流の中で影響を受けながら、律令制に基づく中央集権体制を築いたことを証明する遺産です。諮問機関からは事前に満点に近い評価を受けていたため、本会議でも大きな審議はなく登録が決議されました。決議されると、日本の代表団の座席まで多くの大使や関係者が祝福に訪れ、日本の加納特命全権大使もにこやかに対応に追われていました。


世界遺産リストの多様性を高める新規遺産のラインナップ。危機遺産数は増加

ウンブリア州にあるヌオヴォ・ジャン・カルロ・メノッティ劇場。『18-19世紀のイタリア中部におけるイタリア式の共同所有型劇場システム』の構成資産のひとつ(©ArTo/Adobe Stock)

今回の25件の新しい世界遺産には、美しい劇場がイタリアの『18-19世紀のイタリア中部におけるイタリア式の共同所有型劇場システム』とブラジルの『アマゾニアの劇場群』の2件登録された他、近代建築や都市計画に関係するフィンランドの『アルヴァ・アアルトの作品群』やポーランドの『グディニャ:モダニスト都市の中心部』、ウズベキスタンの『タシュケントのモダニズム建築:中央アジアにおける近代性と伝統』、また2023年からの新しい概念「記憶の場」であるフランスの『ノルマンディー上陸作戦の海岸群(1944年)』など、世界遺産リストの多様性を高めるためにこれまで登録数が比較的に少なかった分野や地域の遺産も多く登録されました。

一方で、レバノンの『アメル山の城塞群』とパレスチナの『セバスティア』が、近年の紛争などを理由に世界遺産登録と同時に危機遺産リストにも記載された他、既に世界遺産に登録されていたレバノンの『フェニキア都市ティルス』やウクライナの『タウリカ半島の古代都市とチョーラ』も紛争などによって保護・保全が十分ではないことなどを理由に危機遺産リストに記載され、危機遺産リスト記載の遺産数は、6件追加、1件削除の、合計58件になりました。危機遺産リストから脱した1件は、開発問題で危機遺産リストに記載されていたオーストリアの『ウィーンの歴史地区』です。世界遺産委員会ではかなり議論が紛糾しましたが、一部の委員国の強い主張もあり危機遺産リストからの削除が決議されました。


現在の不安定な国際情勢を映し出すかのような議論

緊急的登録推薦で申請され、世界遺産登録と同時に危機遺産リストにも記載されたレバノンの『アメル山の城塞群』(©diak/Adobe Stock)

今回の世界遺産委員会では、レバノンやパレスチナ、ウクライナの遺産が危機遺産リストに記載されると同時に、イスラエルやロシアとの間でお互いを非難するコメントが出るなど、近年の不安定な国際情勢を反映したような議論も少なからずありました。また、アメリカは自国から推薦された『オキフェノーキ国立野生生物保護区』が審議され登録されたにもかかわらず委員会に代表団を派遣していないなど、国際協調やUNESCOの活動に距離を置く現政権の意向が強く反映されているようにも感じました。

来年の第49回世界遺産委員会は、2027年6月27日(日)から7月7日(水)の日程で、トルコのイスタンブルで開催されます。イスタンブルでの世界遺産委員会は、2016年の第40回以来です。この時の世界遺産委員会は非常に珍しいもので、世界遺産委員会の会期中にクーデターが起こったために世界遺産委員会が中断され、年末にパリのUNESCO本部に会場を移して続きが行われました。その時のリベンジとも言えます。


NPO法人世界遺産アカデミー 宮澤光 主任研究員

NPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産アカデミーの研究員として世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、これまで全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。

▼世界遺産検定HPの「研究員ブログ」ではより詳しく各日の審議の様子をレポートしています。

https://www.sekaken.jp/whinfo/blog/


NPO法人 世界遺産アカデミー

NPO法人 世界遺産アカデミー

ユネスコの理念を広め、多文化理解を進めることで、世界遺産の保全活動の輪を広げ、社会に貢献することを目的に設立。2006年より、世界遺産条約の理念や世界遺産の価値を学ぶ「世界遺産検定」を開催。受検料の一部はユネスコの信託基金「世界遺産基金」に寄付され、世界遺産の保護・保全に役立てている。また、世界遺産の専門家による講演会の開催、自治体・教育機関への講師派遣、各国大使館での文化体験イベントの開催、世界遺産の保全活動を体験するクリーンツーリズムイベントの開催、世界遺産の建築見学ツアーなど、様々な取り組みを行っている。
【世界遺産アカデミー公式HP】https://wha.or.jp/


世界遺産検定

世界遺産検定

ユネスコの理念を知り世界遺産活動の輪を広げることを目的に、世界遺産アカデミーが主催する文部科学省後援の検定。2006年の第1回検定以来、40万⼈以上が受検、24万⼈以上が認定されており、2026年に20周年を迎えた。検定は年4回、全国の公開会場やテストセンターで開催しており、4級、3級、2級、準1級、1級、最上級のマイスターの全6級で構成。20代を中⼼に⼦どもからシニアまで幅広い受検者を集め、メディアからの注⽬も⾼い。⼤学等⼊試優遇や学校での授業にも組み込まれているほか、世界遺産に関連する施設・催事などでの認定者向けの優待特典も全国50カ所以上で実施されている。受検者からは「世界遺産を勉強したら、旅がもっと楽しくなった」との声も多く、趣味・教養を深める検定としても⼈気を博している。
【世界遺産検定公式HP】https://www.sekaken.jp/

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会社概要

URL
https://wha.or.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都千代田区一ツ橋2-6-3 一ツ橋ビル2F
電話番号
03-4332-1107
代表者名
朝比奈豊
上場
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資本金
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設立
2005年02月