低濃度水素吸入による筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)改善のメカニズム

就寝中の高濃度水素吸入に伴う人体内水素爆発リスクにも言及

MiZ株式会社

 MiZ株式会社(本社:神奈川県鎌倉市)と慶應義塾大学の研究グループは、水素吸入による筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome、以下ME/CFS)の改善効果について、総説および症例報告として2報の査読付き学術論文を発表してきました(Front Neurol. 13: 841310, 2022/Med Gas Res. 14: 84-86, 2024)(注1,2)。

 また同研究グループは、2026年1月、高濃度水素吸入器による人体内水素爆発事故を検証した論文を査読付き学術誌『International Journal of Risk and Safety in Medicine』(SAGE Publishing)に発表し、高濃度水素吸入器の危険性について警鐘を鳴らすとともに、爆発の危険性を伴わない低濃度水素吸入への転換を提言しています(注3,4)。

 本プレスリリースでは、低濃度水素吸入によるME/CFS改善のメカニズムを改めて詳述します。また、ME/CFS患者は長時間寝たきりとなることも多いため、就寝中の高濃度水素吸入に伴うリスクについて併せて考察します。

  

1.酸化ストレスが筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の主要な原因である可能性

 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状やワクチン接種後の体調不良と共通する点が多いことから、報道でも取り上げられてきた疾患です。特徴として、6か月以上持続する強い疲労に加え、身体・精神の両面にわたる多様な症状を伴います。発症の原因は解明されておらず、確立した治療法も存在しないまま、40年以上が経過しています。

 これまでの研究により、ME/CFS患者の脳内では特定の部位に強い炎症が生じていることが示されています(Nakatomi Y et al. J Nucl Med. 2014)(図1)。

•扁桃体の炎症:認知機能の低下や判断力の低下を招く

•海馬の炎症:強い不安感やうつ症状を引き起こす

•視床の炎症:頭痛、筋肉痛、感覚過敏につながる

 これらの炎症の根本原因は、細胞内のミトコンドリア等から発生する悪玉活性酸素「ヒドロキシルラジカル(•OH)」による過度な酸化ストレスであると考えられています。

図1 ME/CFSにおける脳内炎症と症状の相関関係

2.水素はヒドロキシルラジカルと反応して水分子に変換しME/CFSの症状を緩和し得る
 水素分子(H₂)はヒドロキシルラジカル(・OH)と反応して水分子に変換され、抗酸化作用を示します。また、水素は自然界で最も小さい2原子分子であるため、細胞膜や血液脳関門を自由に透過し、脳内を含む全身に速やかに行き渡り、拡散によって体外に排出されるため、体内に蓄積することはありません。
 低濃度であっても、水素は気体として極めて多数の分子を含むため、脳内のヒドロキシルラジカルを消去するのに十分な量が供給されると考えられます。したがって、爆発リスクを伴う高濃度水素を使用する合理性は乏しく、安全性が担保された低濃度水素吸入でも、ME/CFSの症状改善に寄与しうると考えられます(図2)。

図2 水素分子は脳内で発生するヒドロキシルラジカルを消去し、ME/CFSの症状改善に寄与しうる。低濃度水素吸入でも、消去に必要な水素分子数を脳内に供給できる。

 

3.低濃度水素吸入(5%)によるME/CFS改善の症例と特許
 2024年の症例報告(Med Gas Res. 14: 84-86, 2024)で、MiZ株式会社は、医療機関の協力のもと、ME/CFS患者10名を対象に、低濃度水素ガス吸入(水素濃度約5%、水素発生量200mL/min)による経過観察を行いました。以下では、そのうち顕著な改善が確認された代表的な4症例を示します。

 なお、症例中のPS(Performance Status)は、ME/CFSの日常生活動作の重症度を0〜9で評価する指標で、数値が大きいほど重症であることを示します。PEM(Post-Exertional Malaise)は労作後に著しく症状が悪化する状態を指し、ME/CFSの中核的な特徴とされます。

症例1:新型コロナワクチン接種後の体調不良からの回復

主な症状:強い疲労感、睡眠障害、全身の痛み、集中力の低下、起立時のめまい、光・音・臭い・化学物質に対する過敏症

経過:2022年7月より1日11.5時間、水素濃度5%の吸入を開始。2〜3か月で日常生活を阻害していた症状が顕著に改善し、12月には自覚症状が大幅に軽減。長時間の低濃度水素吸入が多様な症状の緩和に寄与した事例。

症例2:重度の過敏症状から日常生活への復帰

主な症状:重度の倦怠感(PS6〜7)、PEM、光・音・匂いに対する過敏症

経過:2022年7月より1日7時間、水素濃度5%の吸入を継続。8月にはPS5まで回復し、1日5,000〜8,000歩の散歩が可能に。2023年1月にはPEMが消失、2月に1日1万歩、3月に体調がほぼ回復し、オンラインでの就業にも復帰。

症例3:再感染による悪化の克服とQOLの改善

主な症状:記憶障害、言語想起困難、胃腸の不調、筋力低下、PEM

経過:2022年5月より1日2時間、水素濃度5%の吸入を開始。1か月でPEMが消失、7月に全般的な症状が改善。11月には吸入開始前より体調が向上し、観察を終了。

症例4:全身疼痛と認知機能の改善

主な症状:全身の疼痛、強い疲労感、認知機能の低下、光・音・臭いに対する過敏症、リンパ節の圧痛

経過:2022年7月より1日7〜8時間、水素濃度5%の吸入を開始。徐々に症状が改善し、9月には文章を読めるまでに認知機能が回復。身体症状のみならず認知機能の面でも改善が認められた事例。

 MiZ株式会社は、これらの症例に基づき、低濃度水素吸入によるME/CFSの症状改善に関する特許を取得しています。

4.ME/CFS改善で重要なことは、できるだけ長時間の低濃度水素吸入

 上述したように、ME/CFS患者の脳では、扁桃体・海馬・視床という複数の部位に炎症が同時に存在します。また、それぞれの炎症は通常と比較して強く表れている可能性があります。

 これら複数の炎症部位にヒドロキシルラジカル消去に十分な水素分子を行き渡らせるには、濃度を高めるのではなく、吸入時間を延ばすことが合理的です。低濃度であっても、時間をかけて継続的に吸入することで、必要な分子数を脳内に供給できます。

 実際、MiZ株式会社が行った症例観察では、1日2〜4時間程度の吸入でも回復傾向が認められた患者がいる一方で、1日6時間以上の吸入を行った患者の方がより明確な改善傾向が見られたことが、医師の所見として確認されています。すなわち、ME/CFSの改善にとって重要なのは「高濃度」ではなく「長時間」であると考えられます。

5.就寝中の高濃度水素吸入に伴うリスク

 MiZ株式会社と慶應義塾大学等の研究グループは、2026年1月、「日本で発生した高濃度水素吸入器による防止可能な人体内水素爆発 ― 安全な低濃度水素吸入への転換を提言」と題する論文を国際医学誌『International Journal of Risk and Safety in Medicine』(SAGE Publishing)に発表し、高濃度水素吸入器の危険性について警鐘を鳴らしました。

 本論文では、「水素・酸素混合ガス(2:1)」や「水素濃度100%」を吸入する装置では、鼻腔や肺などの閉鎖空間で水素濃度が爆発域(10%を超える範囲)に達し、静電気等の微小な着火源によって人体内水素爆発が生じる危険性があると指摘しています。なお、10%という数値は、理想的条件下で定義される水素の爆発下限界とは区別される、吸入環境を想定した実証値です。

 消費者庁の事故データバンクには、鼻腔内での爆発による顔面複雑骨折や、肺・気道内での爆発による裂傷・大量出血といった事例が複数報告されています。事故は静電気が発生しやすい冬季に集中する傾向があり、季節要因によるリスクの増大も示されています。

 ME/CFS患者は長時間寝たきりとなることも多く、就寝中に水素吸入器を使用するケースがあります。一方、高濃度水素は静電気のような微小なエネルギーでも着火しうるため、寝具の摩擦によって発生する静電気は爆発の着火源となり得ます。

 消費者庁には、高濃度水素吸入器により、睡眠中に肺内部で水素爆発が生じた事故も報告されています。水素の火炎は2,000℃を超える高温に達するため、爆発によって発生した火が寝具や衣類に燃え移った場合には、火災や熱傷による二次的被害が懸念されます。就寝中は使用者の避難行動が遅れるため、二次火災による被害が拡大しやすい状況にあります。

 以上のとおり、静電気が発生しうる寝室環境において、就寝中に高濃度水素吸入器をベッドサイドに設置することは、爆発リスクを伴う使用形態であるといえます。

6.参考情報
注1:水素によるME/CFS改善可能性の総説

邦文タイトル:筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の治療のための医療用ガスとしての分子状水素:文献レビューに基づく有効性の可能性
英文タイトル:Molecular Hydrogen as a Medical Gas for the Treatment of Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: Possible Efficacy Based on a Literature Review
著者:平野伸一 博士(獣医学)1、市川祐介 博士(理学)1、佐藤文平1、武藤恭佳 博士(工学)2,3、佐藤文武1
所属:1.MiZ株式会社 研究開発部、2.慶應義塾大学、3.武蔵野大学
掲載誌:Front Neurol. 13: 841310, 2022.
URL:https://www.frontiersin.org/journals/neurology/articles/10.3389/fneur.2022.841310/full

注2:低濃度水素によるME/CFS改善に関する症例報告
邦文タイトル:水素ガスを用いた筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の治療成功:4例の症例報告
英文タイトル:Successful treatment of myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome using the hydrogen gas: a case report in four patient
著者:平野伸一 博士(獣医学)1、市川祐介 博士(理学)1、佐藤文平1、武藤恭佳 博士(工学)2,3、佐藤文武1
所属:1.MiZ株式会社 研究開発部、2.慶應義塾大学、3.武蔵野大学
掲載誌:Med Gas Res, 14: 84-86, 2024.
URL: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10715329/

注3:人体内水素爆発の論文
英文タイトル:Preventable In-Body Hydrogen Explosions from High-Concentration H₂ Inhalers in Japan —Switch to Safe, Low-Concentration Hydrogen Therapy—
邦文タイトル:日本における高濃度水素吸入器による人体内水素爆発とその防止策-低濃度水素療法への転換の必要性-
掲載誌:The International Journal of Risk and Safety in Medicine. 2026 Jan 5:9246479251414573.
論文オリジナル URL: https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/09246479251414573

注4:低濃度水素吸入に関するガイドブック配布

URL: https://e-miz.co.jp/pressrelease/pressrelease15.html

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医療・病院
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会社概要

MiZ株式会社

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URL
http://www.e-miz.co.jp/index.html
業種
医療・福祉
本社所在地
神奈川県鎌倉市大船2-19-15
電話番号
0467-53-7511
代表者名
佐藤文武
上場
未上場
資本金
5000万円
設立
1991年11月