経済産業省の「「企業買収における行動指針」の解釈について(案)」、「「企業買収における行動指針」のポイント(案)」及び「「企業買収における行動指針」Q&A(案)」に対する意見を提出

カタリスト投資顧問株式会社

2026年7月22日

カタリスト投資顧問株式会社

カタリスト投資顧問株式会社は、経済産業省が行った「「企業買収における行動指針」の解釈について(案)」、「「企業買収における行動指針」のポイント(案)」及び「「企業買収における行動指針」Q&A(案)」に係るパブリックコメントに対して、下記の通り意見を提出いたしました。

 現金対価による全部買収においては、特に少数一般株主が買収後の企業価値向上の果実を享受する手段は、買収価格として現金を受け取ることに限られます。買収後に対象会社の企業価値が向上したとしても、既に退出した少数一般株主はその利益を享受することはできません。したがって、「将来の企業価値向上に資する」という理由で、最高価格ではない提案を選択することを認めるのであれば、その考え方については慎重な整理が必要であると考えます。

 本案は、「最も企業価値の向上に資する提案」と「最も株主利益が確保される提案(最も高い買収価格)」とは通常は一致し、両者が異なる場面は例外的であると整理しています。しかし、その例外を認める以上、その例外がどのような場合に許容されるのかについては、より明確な基準が必要です。

 仮に、買収後の企業価値がより高まることが合理的に見込まれる買収者が、最高価格ではない提案を行った場合であっても、その企業価値向上の利益は、買収後も会社に残る買収者やその他のステークホルダーに帰属するものであり、現金で退出する少数一般株主には帰属しません。少数一般株主は、買収後の経営に影響力を持たず、その将来価値を取り戻す機会もありません。本当に企業価値向上が実現されるのであれば、その価値は本来、買収価格にも反映されるべきです。にもかかわらず、より低い価格しか提示されないのであれば、その差額は買収者側に留保される価値であり、その負担を退出する少数一般株主が受領対価の減少という形で負う理由はありません。

 また、大株主や親会社、さらには政府には、雇用、産業政策、安全保障、取引関係その他の公益的・政策的観点を考慮する責任を負う場面があります。しかし、そのような公益的・政策的判断を担う主体と、退出する少数一般株主の利益を守ることを使命とする主体とは、本来、その役割が異なります。

 独立社外取締役及び特別委員会が設けられている趣旨は、まさに経営陣その他の利害から独立し、退出する少数一般株主の利益を代表して判断することにあります。したがって、経営陣や従業員、取引先その他のステークホルダーの意向を理由として最高価格ではない提案を選択することを広く認めれば、本来排除すべき利害や公益的判断が、特別委員会の判断を通じて再び買収者の選択に持ち込まれることとなります。それは、特別委員会という制度が担う役割とも必ずしも整合しません。

 さらに、本案は、最終的には株主が買収の成否を決定するとしていますが、Q&A(案)問6では、対象会社との信頼維持や関係維持等を理由として、事業会社株主等が取締役会の賛同する提案へ応募することも経営判断として認められ得るとしています。日本市場には政策保有株主や事業会社株主が存在することを踏まえると、株主意思のみをもって、交渉力や影響力を持たない少数一般株主の利益が常に十分保護されるとは限りません。

 このような理由から、現金対価による全部買収において最高価格ではない提案を選択することを認めるのであれば、そのような場面が真に例外に限られることを制度上も明確にすべきと考えます。

 そのためには、少なくとも、

・特別委員会が主導する公正なマーケットチェック又はオークション・プロセスの実施

・将来キャッシュフロー又は割引率への影響についての合理的かつ可能な限り定量的な説明

・一般株主によるMajority of the Minority(MoM)条件、又はこれと同等の少数株主保護措置

を、例外を許容するための基本的要件として明示すべきと考えます。

 特にMoM条件は、本来、MBOや支配株主による買収のような構造的利益相反取引における少数株主保護措置として位置付けられています。しかし、取締役会が最高価格ではない提案を選択する局面も、経営陣の固有の利害が判断に影響する疑いが類型的に生じ得るという意味では、実質的にこれに近い構造を有しています。したがって、このような例外を認めるのであれば、構造的利益相反取引に準じた手続的担保が求められると考えます。

 本案は、例外は「例外的」であるとの考え方を示しており、その方向性自体には賛成します。しかし、その要件を十分に具体化しないままでは、実務上、例外の適用範囲が拡大して受け止められるおそれがあります。

 企業買収ルールに対する国内外の投資家の信頼は、交渉力や影響力を持たない少数一般株主であっても、その経済的利益が制度として公正に保護されるという確信の上に成り立っています。

 現金対価による全部買収においては、最高価格提案を原則とすることをより明確に位置付けるとともに、そこからの逸脱が真に例外に限られることが実務上も担保されるよう、例外を許容する要件について、より明確な整理を示すことを求めます。

以上

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


会社概要

カタリスト投資顧問株式会社

11フォロワー

RSS
URL
https://www.japancatalyst.com/
業種
金融・保険業
本社所在地
東京都港区赤坂1丁目12番32号 アーク森ビル25階
電話番号
03-5657-9970
代表者名
平野 太郎
上場
未上場
資本金
1億円
設立
2019年09月