AIを活用した「未来型工場」で生産性が最大60%向上、日本は導入準備度で3位~BCG分析
高コスト国では海外移転よりも競争力の高い選択肢に

経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)と、その戦略シンクタンクであるBCGヘンダーソン研究所(BHI)は、世界の製造業1,000社を対象とした調査と独自の定量分析を基に、AIを活用した「未来型工場」の製造業への影響を調査したレポート「How the Factory of the Future Is Reshaping the Economics of Manufacturing」を発表しました。
AI活用型工場の実現性が高まる 生産性は最大60%向上
未来型工場とは、AIを活用し、生産体制全体を包括的に再設計することで、エネルギー効率、原材料使用量、歩留まり、生産効率などを多面的・同時に改善した工場です。その実現性は、①エージェント型システムの台頭により、従来は実現困難だった形で生産システム全体を再設計できるようになったこと、②バーチャルAIが自律制御システムや予知保全をすでに実現し、フィジカルAIがロボットの訓練時間や自動化可能な範囲を改善していること、③コンピューティング能力の向上により、低コストで高度な分析やシミュレーションを行えるようになったこと、という3つのブレークスルーにより高まっています。
レポートでは、未来型工場へと移行した場合、最大60%の生産性向上が見込まれると分析しています。今後工場の立地選択の鍵は、もはや労働コストや物流コストではなく、いかにその拠点をAI活用型工場へと変革し、高生産性を実現できるかです。地政学的な不確実性が高まり、サプライチェーンの不安定性が構造的リスクとなる中で、「地産地消型」の生産体制でレジリエンスを高めようとする製造業にとって、未来型工場への変革はますます重要となっています。
高コスト国では、未来型工場が海外移転より競争力の高い選択肢に
人件費や原材料費などのコストが高い国においてAIを活用した未来型工場への高度化を進めることは、工場の海外移転よりも競争力が高い選択肢となる可能性が明らかになりました。たとえば、ドイツ市場への供給を前提に、食品加工をドイツ国内で行った場合と中国で行った場合を比較すると、現状では生産コストにほとんど違いはありませんが、どちらの拠点でも未来型工場へと移行した場合、ドイツ国内の生産コストは中国に比べ14ポイント優位となり、大幅に競争力が高くなります(図表1)。
しかし、その恩恵は地域や業界により異なります。エネルギーコスト、人件費など地域ごとのコスト構造に加え、自動化の可能性や物流コスト比率など、業界特性も大きく影響します。ドイツと中国の例をみると、バッテリーセルの場合、現状では生産コストは25ポイントの差で中国が優位です。未来型工場への移行によりその差は15ポイントに縮まりますが、食品加工と異なり中国の優位は維持されると予想しています。

未来型工場への準備状況で日本は3位
コストに加え、人材の確保やデジタルインフラの整備状況も、AIを活用した未来型工場を導入するか否かの判断の重要な要素となります。調査では、企業の87%が未来型工場の導入に際し人材・スキルの確保がより重要になると回答し、69%がデジタルインフラの重要性が高まると答えました。未来型工場導入に向けた各国の準備度合いについて、スキルとデジタルインフラの整備状況を評価したところ、日本は、強固な通信ネットワークと高技能人材を強みに3位に位置付けられています(図表2)。

レポートでは、日本について、自動車、産業機械、電機製品などの分野において中国や南アジア・東南アジア諸国との競争激化に直面するなか、未来型工場が競争力低下を反転させるきっかけになると分析しています。たとえば、自動車部品を欧州市場に供給する場合について分析した結果、現状では中国との生産コストに7ポイントの差がありますが、未来型工場の導入によりその差が1ポイントに縮まると推測されます(図表3)。

著者らはまた、未来型工場への移行が進まなければ、西欧では約1.03兆ドル、米国では4,400億ドル規模の製造価値が国外に移るリスクがあると分析しています。レポートの共著者で、BCGケルン・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナー、ダニエル・キュッパーは次のように述べています。「製造業は新たな時代に突入しています。もはや競争力は、固定的なコスト比較ではなく、生産体制全体をどれだけ効果的に再設計できるかによって決まります。AIを活用した未来型工場は、企業の価値創出のあり方、そして『どこで生産するか』の意思決定そのものを根本から変えつつあります」
■ 調査レポート
「How the Factory of the Future Is Reshaping the Economics of Manufacturing」
■ 日本における担当者
苅田 修 マネージング・ディレクター & シニア・パートナー
BHIフェローで、BHI Japanのリーダー。BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループ、ヘルスケアグループ、および消費財・流通グループのコアメンバー。医療機器セクターの北東アジアリーダー。
東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ校経営学修士(MBA)。株式会社日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)を経て現在に至る。
■ ボストン コンサルティング グループ(BCG)について
BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいます。BCGは1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設されました。今日私たちは、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことをめざす変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を後押ししています。
BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントを支援しています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供します。経営トップから現場に至るまで、BCGならではの協働を通じ、組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会をつくるお手伝いをしています。
日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。
https://www.bcg.com/ja-jp/
■ BCGヘンダーソン研究所(BHI)について
BCGの戦略シンクタンクとして、アイデア創出に有効なテクノロジーを活用し、ビジネス、テクノロジー、科学分野からの新しい価値あるインサイトを探求・開発しています。ビジネスリーダーを巻き込んで、ビジネスの理論と実践の境界線を広げ、ビジネス内外から革新的アイデアを取り入れるための刺激的なディスカッションや実験を行っています。
2022年7月に日本における拠点であるBHI Japanを設立しました。
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 中崎・谷口・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
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