日本メナード化粧品、日本人のルーツの違いと肌質の関連について解析
~南方諸島から日本列島に移住してきた人の肌はターンオーバーが遅延し易い~
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、ヒトのルーツを探る手掛かりとされるミトコンドリアハプログループ(以下ハプログループ)を指標にして、日本人のルーツと肌質との関連性について解析しました。20代~50代の女性、計358名を対象に、ハプログループと肌表面の角質細胞の大きさについて解析したところ、南方諸島から日本列島に移住してきたと考えられている「ハプログループF」の女性は、角質細胞の大きさが大きく、肌のターンオーバーが遅延しやすい傾向ということが分かりました。このように、日本人のルーツの違いがその人の肌質に関係していることが考えられました。今後、日本人の肌質の秘密を解き明かすためにも、さらに詳細な解析を進めていきます。
【ハプログループと肌質との関連性に関する研究】
私たちの細胞の中には、ミトコンドリアと呼ばれる小器官があります。ミトコンドリアは、細胞の核にあるDNAとは別に独自のミトコンドリアDNA(mtDNA)を持っています。このmtDNAは、母親から子に受け継がれる特性があり、長い年月をかけて変異しながら次世代に受け継がれるため、現在ではいくつかのmtDNAの型が存在しており、この型を系統的に分類したものがハプログループです。現在、ハプログループ(mtDNAの型)を調べることで、そのハプログループがどこの地域に多く存在しているのか、またそれをたどることでヒトのルーツを知るための研究に活用されています。今回メナードでは日本人におけるハプログループと肌質との関連性に着目し、日本人女性の肌表面の角質細胞の大きさの違いからターンオーバーの状態を推測し、ハプログループとの関連性を調べました。その結果、南方諸島から日本列島に移住してきたと考えられている「ハプログループF」の人は、角質細胞の大きさが大きく、肌のターンオーバーが遅延しやすい傾向があると考えられました。
今回の結果は、日本人のルーツの違いによって肌質が異なる可能性を示しています。今後、さらに詳細な解析を進め、個々の肌質の違いが何故生じるのか明らかにしていきます。
なお、本研究成果は、国際科学誌「Experimental Dermatology」オンライン版に掲載されました。
【参考資料】
1.ハプログループ
ミトコンドリアは、細胞が取り込んだ酸素を利用し、エネルギーを産生する重要な細胞内小器官です。ミトコンドリアは、細胞核のDNAとは別に独自のDNAを持っており、ミトコンドリアDNA(mtDNA)と呼ばれています。mtDNAには細胞のエネルギーを産生するのに不可欠な遺伝情報が含まれており、私たちの体質や健康維持に深く関わっています。このmtDNAは、母親から子に受け継がれる特性があり、近年ではこの特性を生かして、長年にわたり変異しながら受け継がれてきたmtDNAを解析することで、家系や人類のルーツを追跡するための研究に活用されています。これまでの研究から、mtDNAはいくつかの型に分類され、この型を指標に人類の系統がグループ化されています。
このmtDNAの型によって分類されたグループを「ハプログループ」と呼び、①場所によって多く存在するハプログループの型が決まっているため地域性があり、②祖先となるハプログループが決まっているため、自身のハプログループを知れば、祖先がどこから来たかを推測でき、自身のルーツを探る指標として有用な手段の一つと考えられています。
2. ハプログループと肌のターンオーバーの速さの関係
メナードは日本人のハプログループと肌質との関連性に着目し実験を行いました。まず、358人の日本人女性の
mtDNAについて遺伝子解析を行い、ハプログループに分類しました(右表)。今回の研究では、このハプログループの分類と肌のターンオーバーの速さとの関係について解析しました。
同女性から、環境要因をできるだけ排除するために、紫外線曝露が少ない前腕内側から、テープストリッピングにより角質細胞を採取し、その角質細胞の大きさを測定することで肌のターンオーバーの状態を推測しました。一般的に、ターンオーバーの速度が遅いほど角質細胞の大きさが大きくなることが分かっています。
解析の結果、ハプログループFに属する女性は、加齢に伴って角質細胞の大きさが大きくなる割合が高いことがわかりました(下グラフ)。すなわち、ハプログループFに属する女性は、加齢に伴い肌のターンオーバーが遅延しやすい傾向があると考えられました。
なお、ハプログループFは、タイやラオスを含む東南アジアで最大のグループであると報告されており、日本人でこのハプログループに属する人は、南方諸島から日本列島に移住してきたと考えられています。今回の結果は、日本人のルーツの違いによって肌質が異なる可能性を示しています。今後、さらに詳細な解析を進め、個々の肌質の違いが何故生じるのか日本人のルーツからアプローチしていきます。
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