プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMES
  • Top
  • テクノロジー
  • モバイル
  • アプリ
  • エンタメ
  • ビューティー
  • ファッション
  • ライフスタイル
  • ビジネス
  • グルメ
  • スポーツ

PR TIMESのご利用について

資料をダウンロード

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
会社概要

CD4-CD8-ダブルネガティブT細胞が大腸がんを攻撃する免疫を抑えている?

免疫を抑制する細胞に着目した治療法開発に期待

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長:中村祐輔) 難病・免疫ゲノム研究プロジェクトの清谷一馬プロジェクトリーダーらの研究グループは公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センターおよび 有明病院 消化器外科との共同研究で、大腸がんの組織において、CD4分子もCD8分子も、共に発現していないCD4-CD8-ダブルネガティブT細胞(DNT細胞)が多く存在することを見出しました。さらに、DNT細胞が免疫細胞のがん細胞に対する攻撃を抑えている可能性を明らかにしました。

一般的にT細胞はT細胞受容体(TCR)に加えて、CD4分子もしくはCD8分子のいずれかを発現し、免疫に関わっています。しかし、CD4分子もCD8分子も発現していないDNT細胞も、非常に少ない割合で血液や正常組織に存在していますが、その働きについては今までほとんどわかっていませんでした。

今回の研究では、大腸がん組織中には、免疫器官のひとつであるリンパ節組織中よりも多くのDNT細胞が存在することが確認されました。加えて、このDNT細胞は主にCD8+T細胞から生じていますが、細胞傷害活性(がん細胞等を破壊する働き)をほぼ失っていることを明らかにしました。また、がん組織内のDNT細胞数の割合は、細胞傷害活性を持つT細胞数とは負の相関を示すことから、DNT細胞はがん組織においてがん細胞を攻撃する免疫を抑える因子として働いている可能性が示唆されました。この結果により、DNT細胞を抑えることが、新たな治療法の開発につながると考えています。

図.大腸がん組織でのDNT細胞の機能


本研究成果は、2024年7月5日に国際科学誌「OncoImmunology」に発表されました。

ウェブサイト:https://doi.org/10.1080/2162402X.2024.2373530


研究の背景

近年、がんにおける免疫(主にT細胞による免疫)の重要性が明らかになってきており、T細胞はがん特異的な抗原(がん細胞の目印)を認識し、がん細胞を攻撃することがわかっています。したがって、がん組織内に入り込んでいるT細胞(腫瘍浸潤T細胞)が多いがんほど、免疫療法の効果が高く、予後が良いことが知られています。T細胞にはいくつかの種類が存在し、ほとんどのT細胞が、CD4分子もしくはCD8分子のいずれかを発現し、CD4+T細胞または、CD8+T細胞として機能しています。CD4分子もCD8分子も発現していないCD4-CD8-ダブルネガティブT細胞(DNT細胞)は血液や正常組織には非常に少ない割合でしか存在しない細胞であり、がん組織内におけるその機能についてはほとんどわかっていませんでした。


本研究の内容

本研究では、大腸がん患者のがん組織及び免疫器官のひとつであるリンパ節を利用して、大腸がん組織におけるDNT細胞の働き等を解析しました。

その結果、リンパ節と比べて、大腸がん組織内にはDNT細胞が有意に多く存在することが明らかになりました。この大腸がん組織検体を用いて、各種細胞のT細胞受容体シーケンス解析を行った結果、DNT細胞は、CD8+T細胞と共通のT細胞受容体を持っていることから、CD8+T細胞に由来していることが示唆されました。CD8+T細胞及びDNT細胞のシングルセルRNA解析によって、DNT細胞は、ある種のCD8+ T細胞に類似しているが、グランザイムBやパーフォリン等の細胞傷害活性(がん細胞等を破壊する働き)を有する物質に関する遺伝子の発現が非常に低いことから、細胞を攻撃する機能を欠いていることが示されました。さらに、がん組織内のT細胞浸潤が少ないがん組織ほど、DNT細胞の割合が高いことが明らかになりました

これらのことから、DNT細胞は、がん組織内においてがん細胞を攻撃する免疫を抑える因子として機能する可能性が示唆されました。今後、DNT細胞を標的とした新たな治療法の開発が期待されます。


用語解説

CD8+T細胞: 細胞表面にCD8分子を発現しているT細胞で、細胞傷害性T細胞とも呼ばれ、がん細胞やウイルス感染細胞などを認識して攻撃し、破壊する細胞です。

CD4+T細胞: 細胞表面にCD4分子を発現しているT細胞で、ヘルパーT細胞として細胞傷害性T細胞やB細胞の活性を促進する細胞です。一部のCD4+T細胞には制御性T細胞として働く細胞もいます。


研究支援

本研究成果は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業、日本学術振興会 科学研究費補助金の支援を受けました。


論文情報

論文タイトル:

Characterization of double-negative T cells in colorectal cancers and their corresponding lymph nodes

著者:

岡村和美1, Lifang Wang1, 長山聡2,3, 山下万貴子4, 建智博1, 松本早紀1, 高松学5,6,

北野滋久4, 清谷一馬1,7, 中村祐輔1,7

1公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター 免疫ゲノム医療開発プロジェクト 免疫ゲノム解析グループ

2 公益財団法人がん研究会 有明病院 消化器外科

3 医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院 消化器外科

4 公益財団法人がん研究会 有明病院 先端医療開発科 がん免疫治療開発部

5 公益財団法人がん研究会 がん研究所 病理部

6 公益財団法人がん研究会 有明病院 病理部

7 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 難病・免疫ゲノム研究センター 難病・免疫ゲノム研究プロジェクト

掲載雑誌:

OncoImmunology

DOI: 10.1080/2162402X.2024.2373530


医薬基盤・健康・栄養研究所について

2015年4月1日に医薬基盤研究所と国立健康・栄養研究所が統合し、設立されました。本研究所は、メディカルからヘルスサイエンスまでの幅広い研究を特⾧としており、我が国における科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展その他の公益に資するため、研究開発の最大限の成果を確保することを目的とした国立研究開発法人として位置づけられています。

ウェブサイト:https://www.nibiohn.go.jp/



がん研究会について

がん研究会は1908年に日本初のがん専門機関として発足して以来、100年以上にわたり日本のがん医療において主導的な役割を果たしてきました。基礎的ながん研究を推進する「がん研究所」や新薬や遺伝子を研究する「がん化学療法センター」「がんプレシジョン医療研究センター」、さらに新しい医療の創造をする「がん研有明病院」を擁し、一体となってがんの克服を目指しています。

ウェブサイト: http://www.jfcr.or.jp/

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー新規登録無料

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


種類
その他
ビジネスカテゴリ
医薬・製薬
ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

2フォロワー

RSS
URL
https://www.nibiohn.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号 大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号
電話番号
072-641-9832
代表者名
中村 祐輔
上場
未上場
資本金
-
設立
-
トレンド情報をイチ早くお届けPR TIMESを友達に追加PR TIMESのご利用について資料をダウンロード