標準的な結核検査は小児結核の93%を検出できず
――MSFの新たな小児結核・HIV/エイズ二重感染研究で、診断未確定の小児結核の脅威が浮き彫りに
見逃される小児結核患者
マレーシア・クアラルンプールで開催中の「第43回世界肺の健康会議(Union World Conference on Lung Health)」でMSFが発表する研究は、3年間、6ヵ国13件のMSFのプログラムで対象となった小児結核患者2451人から収集されたデータに基づくもの。この研究によると、結核とHIV/エイズに二重感染した子どもたちは、結核だけに感染しているHIV陰性の子どもよりも、死亡リスクが高い(前者が12.8%、後者が5.2%)。データソースとなった患者全体の半数以上(56%)が肺結核患者だが、現在最も一般的に用いられている喀痰塗抹顕微鏡検査で、結核「陽性」と診断された患者はわずか6.4%だった。
MSFマンソン・ユニット責任者のフィリップ・デュ・クロ医師は、「子ども10人中で1人の結核しか発見できないのであれば、多くの症例が見逃されていると考えていいでしょう。そもそも結核と診断されないために、助かるはずの命が助からず、感染が広がっていくのです。こうした悲しい現実の最たるものが、つい1ヵ月前まで、世界の小児結核の具体的な問題について、ほとんどデータがなかったという事実です」と現状の問題を指摘する。
子どものための検査法の確立急務
現在、最も一般的に用いられている結核検査には、患者の肺から吐き出される喀痰のサンプルが要となっている。しかし、子どもの場合、肺以外の場所が感染していることも珍しくなく、また、顕微鏡による検出に必要な数の結核菌が喀痰に含まれないこともあり、この検査方法はあまり有効ではない。また、喀痰を上手に吐ける子どもは少なく、サンプル採取についても困難が生じる。
MSFの必須医薬品キャンペーン科学顧問、マルティナ・カセンギ医師は、「適切なサンプルを採取するためには、侵襲性の痛みを伴う方法をとらざるを得ません。喀痰を吐き出せるように肺に吸入剤を注入したり、胃から喀痰を吸引したりするのです。喀痰を使わず、血液、尿、便など、採取が簡単なサンプルで行える子ども向けの結核検査が緊急に必要です」と訴える。
新しい結核診断検査方法である「Xpert MTB/RIF」のような方法は、子どもの受診数を大幅に増やし、結果も1日で出せるが、喀痰サンプルが上手に吐けないなどの理由で、感染の疑いのある相当数の子どもの診断が確定できない。今のところは、子どもたちがよりよい検査を確実に受けられることが重要だが、一方で喀痰以外のサンプルを使ったXpert MTB/RIF検査の有効性を見定め、子どもの結核診断で最大限活用するための、さらなる取り組みが必要だ。
子どもにも有効な結核検査の開発を妨げている大きな壁の1つが、新しい診断法の有効性を評価する基準がないことだ。米国国立衛生研究所(NIH)の主導によるワークショップで、子どもを対象とした新しい結核診断検査の評価に用いるための、臨床症例定義と方法論的アプローチの共通認識が検討された。この共通認識により、学術研究者や検査開発者は、子どもに適した検査方法を目指していくことになるだろう。
MSFの必須医薬品キャンペーン結核アドバイザー、グラニア・ブリグデン医師は、
「今、求められているのは、子どもを最優先に考え、子どもたちのニーズに応えられる検査開発者です。検査用サンプルを採取するために、つらい思いをさせた挙句、診断が確定できないような検査はせずに済む方向を目指さなければなりません」と話す。
長らく顧みられてこなかった小児結核に取り組む必要をMSFが訴えた、2011年10月発行の報告書『闇の中から(Out of the Dark)』の、2012年更新版がオンラインで公開中:www.msfaccess.org/tb
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