「第52回 信頼性・保全性・安全性シンポジウム」各賞受賞者決定!
ものづくり日本を支える研究者・技術者による研究報文・事例の各賞受賞者が決定!
一般財団法人日本科学技術連盟(本部:東京都新宿区、理事長:佐々木 眞一、以下 日科技連)は、2023年7月13日(木)~14日(金)に「第52回 信頼性・保全性・安全性シンポジウム」をオンライン・ライブ配信で開催し、ものづくり日本を支える研究者・技術者による研究・経験・実践事例が発表報告されました。
参加者からの投票結果をもとに、本シンポジウム報文小委員会による厳選なる審査と組織委員会の最終審議を経て2023年9月26日(火)、今年度は「優秀事例賞(1件)」「奨励報文賞(1件)」「奨励発表賞(2件)」を授与することを決定いたしました。優秀報文賞、学術/技術貢献賞は該当者なし。
※発表番号、所属は発表時のものです、Session番号順、敬称略、○は発表者
【優秀事例賞】(Best Application Award)
Session3-2
発表事例:フライトデータと機械学習を活用した航空機ブリードシステムの予知保全
著 者:谷口 誠
所 属:全日本空輸株式会社
[受賞理由]
航空機の不具合には、必ずしも航空機製造メーカーの取り組みが十分でない事例もあり、その場合は、機体を運用するエアラインが、不具合対策に取り組む必要があります。頻度は低いが定時出発への影響が高い不具合はその傾向にあり、本発表のA320neo/A321neoのブリードエアシステムの電動バタフライバルブ(HPV)に対する予知保全は、定時出発、定時着陸をより確実にするために、ANAが独自に取り組んだ課題の報告でした。
HPVシールリングの軽微なはみだしを対象に、機械学習を用いた検知モデルを開発し、モデルの検知精度が極めて高い結果が得られました。検証を経てすでに運用を開始しており、従来の予防保全と比べ、不具合顕在化の減少、点検の工程削減で大きな成果を得ています。また、用いるデータの検討から特徴量抽出など機械学習に関する研究まで全て社内で実施したことは大きな驚きであり高く評価されます。以上から、本発表は優秀事例賞に値すると判断いたしました。
【奨励報文賞】(Incentive Paper Award)
Session2-1
報文名:Acoustic Emission (AE)法を活用した接着材料の微小剥離不具合予測
著 者:○長塚 祐真、松井 慶輔、上山 誠司
所 属:ソニー株式会社
[受賞理由]
半導体など電子デバイス分野では、内在する亀裂,剥離などを検査する手法として超音波深傷検査(SAT:Scanning Acoustic Tomography)が一般的に用いられています。本研究は、接着剤料の副次的機能に焦点を当て、接着剤料内部で発生する、より微小な剥離をアコースティック・エミッション(AE:Acoustic Emission )法を用いて検出する新たな取り組みの提案でした。
本手法の有効性を現存する代表的な接着剤を用いて複数のデータで検証されており、実験を重ねた結果は、解析精度の向上、ならびに劣化寿命予測に大きく貢献する研究内容でした。また、大変分かり易く理解しやすい発表内容であったことも評価でき、奨励報文賞に値するものと判断いたしました。
【奨励発表賞】(Incentive Application Award)
Session2-2
発表事例:電気-光サンプリング技術を用いたTime Domain Reflectometry法による
高密度半導体パッケージの故障解析
著 者:前原 泰秀
所 属:ルネサス エンジニアリングサービス株式会社
[受賞理由]
半導体パッケージ内部やケーブルなど、故障位置が不明確な物に対する位置推定手法として電気パルス信号を印加し反射信号を観測することで、時間位置から物理的な故障位置を推定するTDR(Time Domain Reflectometry)法が用いられています。
しかしながら、微細且つ複雑化する半導体パッケージ内部の故障位置を特定するには時間分解能が足らず故障位置推定できなかったことから、本発表ではTDR解析器に光サンプリング技術を追加することで時間分解能を向上させる取り組みが発表されました。
本手法により故障部位の発見精度向上が期待でき、今後の更なる進展により半導体解析分野での大きな貢献が期待される事例内容であったことから、奨励発表賞に値するものと判断いたしました。
【奨励発表賞】(Incentive Application Award)
Session4-3
発表事例:学習情報を最適化した異常診断手法の適用事例報告
著 者:○佐藤 收、茂木 悠佑、早瀬 太皓
所 属:株式会社IHI
[受賞理由]
本発表では、独自に改良・開発された異常予兆診断システムを、実際に火力発電プラントで適用検証された事例を紹介いただきました。
この異常予兆診断システムは、マハラノビス・タグチ法(MT法)をベースに環境変化に追従・学習しながら診断を行う機能を有しており、これを実際の稼働中のプラントに実装された結果、確かに異常を高精度に検知でき、対応の迅速化・計画外停止の防止などが図れ、高い有効性があることを実証されました。
深層学習ではなくMT法を使用することに対するフロアからの質問にも明確に応答され、聴講者の理解を深め共感を得るものであり、さらに多くの機械設備への展開を目指されており、奨励発表賞に値するものと判断いたしました。
1.賞の種類と紹介
(1)優秀報文(事例)賞
優秀報文/事例賞は、理論・方法などに従来試みられなかった新しい知見を有する内容、あるいは信頼性業務の遂行上裨益をもたらす内容を有する、優れた発表に与えられるものです。
(2)奨励報文(発表)賞
奨励報文/発表賞は、一般投票では選出されにくい専門分野や理論的な研究について、今後の信頼性・保全性・安全性の研究や発展を期待して奨励報文・発表に与えられるものです。
(3)学術/技術貢献賞
学術貢献賞は、発表の内容が学術的また労力的見地から見て表彰に値すると判断されるもの。技術貢献賞は、発表内容が啓蒙的であって参加者にとって大いに有益と判断された発表に与えられるものです。
2.優秀報文・優秀事例制度の目的と選考方法
本表彰制度は、研究発表者のインセンティブを喚起するとともに、一般参加者には優秀報文・事例の推薦を通して本シンポジウムへ積極的に参画していただくことをねらいとしています。
本シンポジウムは、企業の第一線で活躍されている研究者や技術者の方々が現実的に重要な信頼性、保全性さらにヒューマンエラー防止など安全性にかかわる問題を解決していくための知見を共有する場であり、発表者と参加者との討論により問題点を整理し、得られた知見をより体系化して知識の共有化を図ることを目的としています。
このようなねらいと背景から、参加者全ての方々に幅広く優秀報文・事例の推薦をお願いし、これに基づいて選考を行っています。本年も、参加者の皆様の多様な視点から投票をいただきました。
一般発表(研究報文/事例報告)27件について、参加者からの投票結果をもとに、本シンポジウム報文小委員会(委員長:弓削哲史氏(防衛大学校 電気情報学群 電気電子工学科 教授))による厳選なる審査と組織委員会(委員長:田中健次氏(電気通信大学 産学官連携センター 特任教授))の最終審議を経て、上記に示す「優秀事例賞(1件)」「奨励報文賞(1件)」「奨励発表賞(2件)」の各賞受賞者を決定いたしました。
3.第52回 信頼性・保全性・安全性シンポジウム「優秀報文(事例)賞、奨励報文(発表)賞、学術/技術貢献賞 受賞報文・事例の紹介」
4.信頼性・保全性・安全性シンポジウムとは
1971年に開始。当シンポジウムは、50年の歴史と伝統を誇る、いろいろな分野の信頼性・保全性・安全性分野のビッグイベントです。エンジニア、マネージャー、研究者が集い、ものづくり日本を支える「産・学」から最新かつ実践的な技術・経験・研究成果・実践事例が発信され、これらを共有し、意見交換・討議などを行うとともに、基調講演、特別講演、招待講演、特別企画セッションなどを通じて多彩な人的交流と情報交換の場を提供することを主眼としたシンポジウムとして毎年7月に開催しています。
<第52回 信頼性・保全性・安全性シンポジウム開催レポート>
5.問合わせ先:
一般財団法人日本科学技術連盟 信頼性・保全性・安全性シンポジウム担当
TEL. 03-5378-9850 E-mail: rms-sympo@juse.or.jp
-以上
- 種類
- イベント
- ビジネスカテゴリ
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