被爆者の記憶を、次の世代の学びと行動へ――3者共催で記念シンポジウム を開催
史料・国際活動・学生の実践から、国の「受忍」政策と被爆者の記憶の継承のあり方を考える
被爆者の証言を「聞く」だけでなく、被爆者がなぜ立ち上がり、社会に働きかけてきたのかを、次の世代はどう受け継ぐのか――。日本被団協結成70年を迎えた2026年9月19日、日本被団協、ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会、全国大学生活協同組合連合会の3者は、記念シンポジウムを開催しました。

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名称 |
「原爆体験の記憶遺産を未来へつなぐ連携協定」記念シンポジウム|日本被団協結成70年 私たちが継承するもの~いま国の「受忍」政策を問う~ |
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日時 |
2026年9月19日(土)14:30-17:00 |
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会場 |
大学生協会館 地下会議室・オンライン中継 |
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共催 |
日本原水爆被害者団体協議会、認定NPO法人ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会、全国大学生活協同組合連合会 |
企画概要
全国大学生活協同組合連合会(以下「全国大学生協連」)は2026年9月19日、日本原水爆被害者団体協議会(以下「日本被団協」)、認定NPO法人ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会(以下「継承する会」)と共同で、「原爆体験の記憶遺産を未来へつなぐ連携協定」記念シンポジウムを開催しました。日本被団協結成70年の節目に、「私たちが継承するもの~いま国の『受忍』政策を問う~」をテーマとして開催。大学生協杉並会館とオンラインを結び、学生、被爆者、市民、大学・大学生協関係者など計121人が参加しました。
シンポジウムでは、被爆者の証言だけでなく、被爆者が何を考え、どのように人々とつながり、社会へ働きかけてきたのかを、史料・国際活動・学生の実践から学びました。被爆者の経験を直接語り継ぐことが難しくなるなか、その運動の歴史と精神を次の世代がどう受け継ぐのかを考える機会となりました。

連携協定から始まる、未来へつなぐ実践
戦後81年を迎え、被爆者の高齢化が進むなか、原爆体験と被爆者運動の記録を誰が、どのように未来へ手渡すのかが問われています。
全国大学生協連、継承する会は2026年5月、「原爆体験の記憶遺産を未来へつなぐ連携協定」を締結しました。原爆体験を過去の悲劇にとどめず、今日と未来を生きる人々に人間の尊厳と平和の意味を問い続けるものと位置づけています。
協定では、学生をはじめとする若い世代が「知り、知らせ、考え、話し合い、行動する」機会をつくること、平和や人権、社会課題に主体的に向き合う力を育むこと、地域に根差した記憶遺産の継承活動を進めることなどを掲げています。
全国大学生協連の中島達弥専務理事は、連携協定を「現場で使い、実践するもの」と位置づけ、全国各地の学生と地域の継承活動をつなぐ決意を述べました。今回のシンポジウムは、その実践の第一歩です。


史料からたどる、被爆者の70年の運動
昭和女子大学の松田忍氏と学生の皆さんは、「戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト」の取り組みを報告しました。
日本被団協の定期刊行物、手書きのメモ、原爆被害者調査のアンケート原票、対政府交渉の記録などを紹介し、被爆者が自らの被害を語り、国家補償と核兵器廃絶を求めてきた歩みを明らかにしました。
報告で示されたのは、原爆が投下された当日や直後の「被爆体験」だけでなく、身体的・心理的・社会的な被害によって人生全体が変えられ、その影響が現在まで続く「原爆体験」を捉える必要性です。
また、戦争による犠牲は「国民が等しく受忍しなければならない」とする国の考え方に対し、日本被団協が調査や証言、対政府交渉を重ねて問い続けてきた歴史が共有されました。「受忍」を過去の政策ではなく、現在と未来の社会のあり方に関わる問題として考える重要性が提起されました。




「受忍」政策とは
受忍政策とは、戦争という非常事態における生命・身体・財産の犠牲を国民が等しく受忍すべきものとし、国の法律上の責任を追及して救済を求める道を認めない考え方です。日本被団協は、国家補償によって責任の所在を明らかにすることが、同じ被害を繰り返さないために不可欠だと訴えてきました。
核兵器は絶対に許してはならないものです。広島・長崎の犠牲がやむをえないものとされるならばそれは核戦争を容認することにつながります。
日本被団協が原爆被害者援護法の制定を求めているのは、国が原爆被害を補償することによって、「核戦争を拒否する権利」をうち立てるためです。受忍論を拒否し、国家補償を求めることを通じて、国家に対して「ふたたび被爆者をつくらない」という誓いを求めているのです。
このように考えれば、受忍論を拒否して、被爆者への国家補償を求める運動と連帯していくことは、若い世代にとっても、自分たちが現在と未来において核戦争を拒否することにつながります。

被爆者と共に行動する、市民社会の国際的な役割
核兵器をなくす日本キャンペーンの浅野英男氏は、NPT再検討会議における市民社会の取り組みを報告しました。
核軍縮をめぐる国家間の合意形成が難しさを増す一方で、世界各地の核被害者や市民が連携し、核兵器の非人道性と廃絶を訴えています。浅野氏は、原爆展、各国代表との面会、デモ行進、海外の若者・市民団体との交流など、国際社会へ働きかける多様な活動を紹介しました。
被爆者の話を聞くだけでなく、同じ方向を向き、共に行動する経験には大きな学びがあります。浅野氏は、若い世代が参加できる機会を増やすこと、市民社会が国際的な場で担ってきた役割を整理し、次の担い手へつなぐことの必要性を訴えました。

大学生が平和を自分の言葉と行動にする
Peace Now! Hiroshima 2026企画局長の宮本安慈さんは、大学生協が1982年から続ける体験型平和学習「Peace Now!」と、愛媛大学での実践を報告しました。
被爆地や戦跡を訪ね、証言を聞き、参加者同士で対話するなかで、自分にとっての平和を言葉にすることの大切さを紹介。平和学習は一度で完結するものではなく、人生の段階や立場に応じて考えを更新し続ける営みだと語りました。
また、戦争のない状態という「大きな平和」に加え、互いの違いや「好き」を安心して表現し、受け止め合える「身近な平和」も提示。大学生協には、学生が主体となって学びを企画し、対話を通じて平和を形にできる環境があることを伝えました。

世代と立場を越えた討論――何を継承できるのか
討論では、市民社会の国際的な連携、立場によって異なる「平和」の捉え方、受忍政策の現代的な意味などをめぐり、登壇者が意見を交わしました。
議論で繰り返し確認されたのは、考え方が異なるからこそ対話を続け、共通点を探ることの大切さです。同時に、被爆者が受けた被害を、直接の当事者ではない人が代わって訴えることには限界があるとの指摘もありました。
一方で、被害を受けた人が何を考え、なぜ立ち上がり、どのように社会へ働きかけたのかを史料から学び、その運動の精神を受け継ぐことはできます。証言の「伝承」にとどまらず、史料を学び、新しい行動を生み出すことが、これからの継承の形として示されました。
「ここを出発点に」――被爆者から次の世代へ
日本被団協代表委員の田中熙巳氏は、日本被団協のノーベル平和賞受賞について、被団協をたたえて終わるものではなく、被爆者が続けてきた運動を若い世代が引き継ぐことへの激励でもあると述べました。そして、被爆者の証言とともに、被爆者がどのように行動し、国民へ訴え、海外の会議へ参加し、組織をつくってきたのかを学んでほしいと呼びかけました。
閉会にあたり、継承する会代表理事の濱住治郎氏は、次のように語りました。
「ノーベル平和賞を受賞したから終わりではなく、ここを出発点にしようというのが被爆者の思いです」
参加者に対しては、この日の学びを会場の中だけで終わらせず、周囲へ伝え、次の行動へつなげるよう呼びかけました。

全国の大学生協と地域へ、継承の輪を広げる
全国大学生協連は今後も、日本被団協、継承する会と連携し、大学生協杉並会館を学びと交流の拠点の一つとしながら、全国各地の大学生協と地域をつなぐ取り組みを進めます。
被爆者の証言に加え、被爆者運動の歴史と史料を学ぶ機会をつくり、若い世代が自ら「知り、知らせ、考え、話し合い、行動する」継承の形を各地で広げていきます。
参加者の声(アンケートより)
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社会人のものです。大学で原爆について学んでおり、今回参加しました。昭和女子大の史料研究について、単にその内容を知るということだけでなく、その史料が形成される歴史的背景、文脈を捉えるという見方でその史料に現れる人々が非常に立体的に浮かび上がってくる点が非常に面白く感じました。実際に人間らしく生きてこられてた方が主体となった運動であるということを知る一つの方法として史料の価値を感じました。国家補償が被爆者のいなくなる未来において「被害を訴えることができなくなる」という問題について、非常に緊直した課題かと思います。
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被爆者の方の体験・運動を大学生をはじめとする若い方が継承していく・・・。その間に位置する被爆二世である私は、どのような角度からどのような切り口で平和運動をしていけば良いのか、非常に考えさせられるシンポジウムでした。
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「過去を歴史にしなければならない」という松田先生の言葉が心に残りました。過去はいつか忘れられてしまうけれど、歴史は後世にも残り、かつ評価の対象や議論の出発点になるということだと思います。田中さんが、被爆者の方をはじめ世代が上の人たちは証言だけなくどう行動したかも伝えていってくださいと呼びかけていらっしゃいましたが、松田先生たちのプロジェクトはまさにそれを助ける、あるいはそのものだと感じました。「継承」とはいったいどういうことなのか深く考えさせるシンポジウムでした。
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被団協の運動は原爆被害者の運動であるが、原爆被害の補償を求める活動を軸に政府の戦争開戦の責任を認めさせ、二度と戦争、核兵器の使用を起こさせないとする市民による草の根の運動であると感じた。実際に被害を受けた被爆者が少なくなりつつあるが、その中で戦争核兵器反対の運動を次世代につないでいくことは大変重要な課題であると思う。
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