コントレア、藤田医科大学との共同研究が国際学術誌に掲載〜胃がん手術の術前説明に動画 を活用、"治療に対する不安や疑問"の軽減と説明時間約4割短縮を両立〜
— 胃がん手術の術前説明に患者共創プラットフォーム「MediOS」の動画説明を活用。消化器がん手術では検証の少なかった「意思決定の葛藤」への効果をランダム化比較試験で確認 —

藤田医科大学(愛知県豊明市、学長:岩田仲生)医学部 総合消化器外科の須田康一教授らの研究グループは、Contrea株式会社(東京都豊島区、代表取締役CEO:川端一広、以下「コントレア」)と共同で、胃がん手術の術前インフォームド・コンセント(IC)において、患者共創プラットフォーム※1「MediOS(メディオス)」の動画説明を診察前に視聴することの効果をランダム化比較試験※2により検証しました。その結果、強い意思決定の葛藤を示す患者さんがいなくなり、対面での説明時間も平均13.5分(約4割)短縮できることが示されました。
動画を用いた説明が患者さんの理解度や満足度を高めることは、これまでにも報告されてきました。しかし、治療の選択に伴う「意思決定の葛藤」※3への影響、とりわけ消化器がんの手術を対象とした検証はほとんど行われていませんでした。本研究は、この点をランダム化比較試験によって検証した初期の報告のひとつです。
本研究成果は、国際学術誌「World Journal of Gastrointestinal Surgery」に2026年9月27日付で掲載されました。
研究成果のポイント
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胃がん手術を対象に、動画による術前説明が「意思決定の葛藤」に与える影響を検証したランダム化比較試験。消化器がん領域での報告は世界的にも限られている。
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強い意思決定の葛藤(DCSスコア※3が37.5以上)を示した患者さんは、事前視聴群0%(0例)、対照群20%(6例)。
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対面説明の時間は、事前視聴群が平均22.4分、対照群が平均35.9分で、13.5分(約4割)の短縮。
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主要評価項目のDCSスコアは事前視聴群で低い傾向を示したが、有意差には至らず。
背景
胃がんの手術では、切除する範囲や再建の方法、術後に起こりうる合併症、ダンピング症候群※4や食生活の変化など、患者さんが理解して判断すべき内容は多岐にわたります。近年は術前・術後の薬物療法や個別化した治療戦略が加わり、意思決定はさらに複雑になっています。一方で、これらを限られた外来の時間で伝えきることは容易ではなく、医師が同じ説明を繰り返す必要もあるため、術前のICは時間的にも心理的にも負担の大きい工程となっています。
動画を用いた説明が患者さんの理解度や満足度を高めることは、これまでにも報告されてきました。しかし、患者さんが治療を選択する際に感じる迷いや不確かさ、すなわち「意思決定の葛藤」に動画がどう作用するのかは、ほとんど検証されていません。とりわけ、選択肢が多く術後の生活も大きく変わる消化器がんの手術を対象とした研究は限られていました。
そこで研究グループは、胃がん手術を控えた患者さんに対し、術前の説明動画を診察の前に視聴してもらうことで、意思決定の葛藤を軽減できるのではないかと考え、ランダム化比較試験による検証を行いました。
研究手法・研究成果
本研究は、藤田医科大学病院で2022年10月から2024年8月にかけて実施された、単施設・非盲検のランダム化比較試験です(臨床試験登録番号:UMIN000056846、藤田医科大学倫理審査委員会承認)。
ステージI〜IIIの胃がんでロボット支援下胃切除術を受ける患者さん60例を、対面説明の前に動画を視聴する群(30例)と、対面説明のあとに動画を視聴する群(30例)に無作為に割り付けました。対面説明は、標準化された説明を行うよう訓練を受けた5名の指導医が担当しています。
動画説明には、コントレアが提供する患者共創プラットフォーム「MediOS(メディオス)」を用いました。MediOSは動画説明・電子同意書・病歴やアレルギーの有無などを含めた問診票の入力・メッセージ機能を統合し、診療科を横断して医療者と患者さんの間のやりとりを担うプラットフォームで、本研究ではこのうち動画説明を使用しました。胃の働きや病期、術式、術後の合併症、退院後の生活などを数分単位のモジュールに分け、主治医が患者さんごとに合計約30分のプレイリストを組み立てています。
主要評価項目は対面説明後の意思決定葛藤尺度(DCS)のスコア、副次評価項目は対面説明に要した時間と、強い葛藤(DCSスコア37.5以上)を示した患者さんの割合としました。
その結果、強い葛藤を示した患者さんの割合は、事前視聴群で0%(0例)、対照群で20%(6例)でした(P=0.024)。対面説明に要した時間は、事前視聴群が平均22.4分(95%信頼区間18.8〜26.0)、対照群が平均35.9分(同32.3〜39.5)で、13.5分の差が認められました(P<0.001)。
主要評価項目であるDCSスコアは、事前視聴群が平均13.5、対照群が平均20.5で、事前視聴群が低い傾向にとどまりました(P=0.056)。両群とも標準化された説明を受けており、対照群のスコアも十分に低かったことが、差が検出されにくかった一因と考えられます。
また、いずれの群でも動画の視聴後にDCSスコアは有意に低下しました。一方で、対面説明のあとに強い葛藤が生じた患者さんでは、その後に動画を視聴しても葛藤が残る例がみられ、動画を先に視聴することが迷いの発生自体を防ぐうえで有効である可能性が示されました。
今後の展開
本研究は、説明の質を標準化しながら、医師が患者さんと向き合う時間を生み出せることを示しました。意思決定の葛藤という、これまで消化器がん手術の領域で十分に検証されてこなかった観点から、術前説明のあり方を評価した点に意義があります。
一方で、単施設での探索的な試験であり、主要評価項目では有意差に至っていません。また、患者さん側から見ると、約30分の動画視聴を含めた所要時間は事前視聴群のほうが長くなります。今後は多施設での検証や、視聴状況を客観的に評価する指標の導入が必要です。
藤田医科大学 研究グループとContrea株式会社は、今後も患者さんが理解し納得して治療に向かうための仕組みを臨床研究として検証し、その成果を医療現場に還元していきます。
用語解説
※1 患者共創プラットフォーム:患者さん自身を医療プロセスの共創者として位置づけ、説明・同意・問診・連絡といった医療者と患者さんの間で繰り返し発生する情報のやりとりを一貫して担うサービス。本研究で用いた「MediOS」は、動画説明・電子同意書・問診票入力(病歴・服薬情報・アレルギーの有無などを含む)・メッセージ機能を備え、診療科を横断して運用される。本研究ではこのうち動画説明を用いた。
※2 ランダム化比較試験:対象者をくじ引きのように無作為に2つ以上の群に分け、介入の効果を比較する試験方法。研究者や対象者の偏りを排除できるため、治療や介入の効果を検証する信頼性の高い方法とされる。
※3 意思決定の葛藤/意思決定葛藤尺度(DCS:Decisional Conflict Scale):治療の選択にあたって患者さんが感じる迷いや不確かさの程度を測る国際的な指標。16項目の質問に回答し、0〜100点に換算する。点数が高いほど葛藤が強く、37.5点以上は決定の先送りや迷いが生じている状態とされる。
※4 ダンピング症候群:胃の切除によって、食べた物が急に小腸へ流れ込むことで起こる症状の総称。食後30分以内に動悸・めまい・冷や汗・腹痛・下痢などが出る「早期ダンピング症候群」と、食後2〜3時間ほどで血糖値が急に変わることで冷や汗・ふるえ・脱力感などが出る「後期ダンピング症候群」がある。
論文情報
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論文タイトル:Impact of video-assisted informed consent on decision conflict and consultation time in gastric cancer surgery
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著者:鈴木和光, 柴崎晋, 渡邊祐介, 川端一広, 中内雅也, 田中毅, 稲葉一樹, 宇山一朗, 須田康一
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所属:1. 藤田医科大学 医学部 総合消化器外科学/2. 藤田医科大学 医学部 先端ロボット・内視鏡手術学/3. 北海道大学病院/4. Contrea株式会社
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掲載誌:World Journal of Gastrointestinal Surgery(第18巻第9号)
本件に関するお問い合わせ先
<研究に関するお問い合わせ>
藤田医科大学 医学部 総合消化器外科
教授 柴崎晋
mail:susumu.shibasaki@fujita-hu.ac.jp
<取材に関するお問い合わせ>
学校法人藤田学園 広報部
TEL:0562-93-2868・2492
mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp
<MediOSに関するお問い合わせ>
Contrea株式会社 広報担当 河瀬
TEL:03-6555-4621(代表)
mail:yoshimi.kawase@contrea.jp
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