参加者の約8割が新たな「つながり」を実感。能登半島地震・広域避難者支援の効果検証レポートを公開

~笑語ひろば参加者678名のデータから見えた、災害時・平時に共通する地域共生モデル~

NPO法人クロスフィールズ

NPO法人クロスフィールズ(東京都品川区、代表理事:小沼大地) は、2024年8月に石川県金沢市を拠点に、能登半島地震による高齢の広域避難者と地域住民が地域の中でつながりを育む事業を開始。地域の団体・事業者・市民との協働による交流型イベント「笑語(わらかた)ひろば」の開催や、人と人・人と地域をつなぐ「市民リンクワーカー*」との協働を通じて、一人ひとりの「小さな願い」を起点に新たなつながりや活動を地域の中で育んできました。

*市民リンクワーカーとは:
人や地域、地域資源(地域のサークル活動や市民活動、居場所機能を持つ場所及び活動団体)へのつながりをつくる役割を持った人。

この度、2024年10月~2026年3月までの笑語ひろば参加者(678名)を対象に調査を行った結果、参加者の約8割が新たなつながりを実感していることが明らかになりました。また、定量的な変化だけでなく、広域避難者が自身の「得意」や「やってみたい」を起点に活動を立ち上げ、地域の中で役割を担うようになるなど、支援される側から「地域をともにつくる側」へと関係性が変化していくプロセスも見えてきました。

広域避難者の孤独・孤立の予防に向けたコミュニティづくり事業に取り組んだ背景

被災で失われるのは、住まいや仕事、生業だけではありません。これまで暮らしてきた地域を離れることは、家族や友人とのつながり、地域の中で担ってきた役割、そして日々の生活リズムまでも失うことを意味します。特に、地震によりこれまで暮らしてきた地域を離れて暮らすことを余儀なくされる広域避難においては、元の地域とのつながりを保つことも、新たな地域との関係を築くことも難しく、孤独感や先の見えない暮らしへの不安を抱える人も少なくありません。

生活再建や相談支援など、生活上の困り事への対応だけでなく、もう一度「誰かと語り、笑い合う」日常を取り戻し、自分らしく地域に関われる環境をつくる。そのためにクロスフィールズは、人と人との関係性を地域の中で編みなおし、新たなつながりや役割を育む取組を行っています。

本取組による広域避難者の孤独感の変容プロセスと変化の要因、実践モデルとしての意義を検証するため、笑語ひろばの参加者への調査を実施しました。

笑語ひろばの活動の様子

広域避難者が抱える孤独感の実態と、笑語ひろばの取組について

参加者の孤独感を調査したところ、寂しさを感じることが「常にある」と回答した人が全体の19%にのぼりました。内閣府の全国調査*における同年代(60代以上)の結果と比較すると、6倍以上となる水準です。今回の調査対象は、能登半島地震によって住み慣れた土地から離れて暮らす広域避難者であることから、被災に伴う生活環境の変化や、住み慣れた地域を離れたことによるつながりの変化、度重なる喪失体験などが孤独感の高さに影響している可能性が考えられます。また、男性、高齢、一人暮らしの人ほど、寂しさを感じる頻度が高い傾向も見られました。

*参考比較:内閣府「令和7年 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(人々のつながりに関する基礎調査)」において、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した60代以上の割合は3.2%。

広域避難者の孤独感に関する調査

「笑語ひろば」は2024年10月の立ち上げ以降、毎月開催しています。2025年12月には、広域避難者や市民リンクワーカー自身が企画・運営する「笑語ひろば やわやわ」も立ち上がりました。2026年3月までに「笑語ひろば」と「笑語ひろば やわやわ」を計41回開催し、のべ796名が参加。70代以上の高齢者が中心で、8割強が珠洲市・輪島市の出身者でした。

イベント参加者の属性

効果検証から見えた、広域避難者の新たなつながりの創出と「地域をともにつくる側」への変化

2024年10月~2026年3月までの笑語ひろば参加者(678名)を対象にした今回の調査を通し、本取組に対して以下のような効果があるという示唆が得られました。

 

(1)新たなつながりの創出価値

参加者の78%が本取組を通じて新たな知人・友人ができたと回答。「笑語ひろば」は、新たな人と出会う場であるだけでなく、安心して人と関われる居場所や、外出・交流を通じて日常のリズムを取り戻す機会としても機能していることが明らかになりました。

震災によって人間関係や日常を失った人にとって、「誰かと会う予定がある」「自分を知っている人がいる」という小さな接点が、新たな日常をつくる土台となっているといえます。

つながりの広がりに関する評価

(2)「支援される側」から「地域をともにつくる側」へ

 本取組を通じて特に象徴的だったのは、広域避難者自身が、自分の「得意」や「やってみたい」を起点に様々な活動を立ち上げたことです。市民リンクワーカーとの対話を重ねる中で、料理、手芸、茶話会などの活動が生まれ、広域避難者同士がそれぞれの経験や得意なことを持ち寄りながら、企画・運営を担う動きが生まれました。「支援される存在」から、「つながりの中で自分らしく関わり、力を発揮しながら地域をともにつくる存在」への変化が見られました。

広域避難者の活動の立ち上がり

こうした動きは地域の企業や事業者、団体にも広がりを見せています。「取り組みに参加したい」と声掛けをいただき、能登をテーマとした祭りの企画を通じた広域避難者の活躍の場づくりや、耕作放棄地を活用した地域参加の機会づくりなど、新たな協働のアイデアが生まれています。

「支援する・される」という関係を超え、それぞれの経験や強み、資源を持ち寄って地域をともにつくる。そんな関係性が少しずつ地域の中に生まれ始めています。

関わる方々を呼び込む循環を示した図

今後の取り組み:震災時に限らない「地域共生」モデルづくりへ

今回の実践から見えたのは、震災時に限らない「地域共生」のあり方です。

人は誰かと出会い、自分らしさを発揮し、地域の中で役割を持つことで、前向きに生きる力を培っていきます。これは、災害によってつながりや役割を失った人だけでなく、高齢者や単身世帯、子育て世帯、外国ルーツ住民、退職後のシニア世代などにも共通するテーマです。

だからこそ、災害時の支援と平時の暮らしを別々に考えるのではなく、「人と人との関係性を編みなおし、一人ひとりが自分らしく地域に関われる環境をどうつくるか」という共通の視点から捉えることが重要だと、私たちは考えています。

クロスフィールズでは今後、以下の2つの軸で取り組みを進め、人や地域とのつながりの中で、一人ひとりが安心して自分らしく力を発揮し、生き生きと暮らせる地域社会を目指してまいります。

 

(1) 金沢での取組を「地域自走型」へ

今後は、金沢市内の市民・地域主体のモデルとして、地域の中で人・想い・資源が循環する持続可能な仕組みづくりに挑戦します。また、今回の実践から得られた知見を体系化し、石川県外の他地域や、未来の災害における広域避難者支援や地域づくりに活かせる形で発信していきます。

(2)平時の地域共生モデルへ

今回見えてきた「出会い」「つながり」「自分らしさへの気づき」「役割をもつ」「ともに地域をつくる」というプロセスは、平時の地域づくりにも共通します。クロスフィールズでは、金沢での実践を一つのモデルとして、都市部を含む様々な地域において、人・想い・資源をつなぎながら、一人一人が自分らしく関われる「地域共生」のモデルづくりと社会実装を進めていきます。


NPO法人クロスフィールズ
Co-Create事業統括・推進マネージャー 
西川紗祐未 コメント

この1年半の実践を通じて、わたしが何より強く感じたのは、孤独感の解消そのもの以上に、一人ひとりが関係性の中で自分らしさや役割を取り戻していく、その過程こそが、被災後の暮らしを支えるレジリエンスになっていたということです。

人と人との関係性が編みなおされ、一人ひとりが地域の中で役割を見つけ、誰かとともに何かをつくっていく。能登の方々と金沢の市民・地域の方々が関わり合う中で、そうした関係性が育まれ、今では能登の方々自身が、金沢に暮らしながら能登の文化や記憶を語り、次へつないでいく担い手にもなっています。こうした変化を目の当たりにしたからこそ、この取組は震災支援にとどまらず、これからの地域づくりにもつながる意味を持つのだと確信しています。クロスフィールズは、能登で生まれたこうした関係性と知見を、未来の震災における広域避難者支援へ、そして平時の地域共生の実現へとつなげていきます。

公益財団法人ほくりくみらい基金
事務局 須田麻佑子氏 コメント

2024年からずっと活動を拝見してきました。石川で多くの市民活動が芽生え、被災者と支援者という属性を超えた、豊かであたたかい繋がりが生まれたプロセスは、まさに「より良い復興(Build Back Better)」の素晴らしい実践事例です。特に一人ひとりの「小さな願い事」や「得意」に着目した点は興味深く、好きなことを通じて世代を超えて繋がり直せる場の存在が、これからの地域社会にとっていかに重要か、本レポートより拝察できます。「孤立の解消」という測定が難しいテーマを指標化した今回の取り組みは、今後同様の課題に取り組む多くの団体にとっても、大いに参考になるはずです。

【NPO法人クロスフィールズ】

クロスフィールズは、国内外の社会課題の現場とビジネスパーソンをつなぐことで、社会課題解決とリーダー育成の両方を実現することを目指す非営利組織です。社会課題解決の現場に企業の社員が飛び込み、現地のNPOや社会的企業とともに課題解決に取り組む新興国「留職」プログラムのほか、国内外の社会課題の現場を「体感」する経営幹部・役職者向けのプログラム「社会課題体感フィールドスタディ」などの事業を展開しています。 (ウェブサイト:https://crossfields.jp/)

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会社概要

NPO法人クロスフィールズ

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URL
http://crossfields.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都品川区西五反田3-8-3 町原ビル4F
電話番号
03-6417-4804
代表者名
小沼大地
上場
未上場
資本金
-
設立
2011年05月