【調査リリース】ロキタンスキー症候群当事者らに対する「子宮移植に関するアン ケート2026」結果
回答者の半数が子宮移植へ関心を示すが、リスクを踏まえると手術に対して「希望する・希望しない・わからない」が約3割ずつに分散 当事者からは「情報と選択肢、相談できる場が必要」の声
不妊治療患者をはじめ、不妊・不育で悩む人をサポートするセルフサポートグループ「NPO法人Fine(ファイン、以下『当法人』)」は「子宮移植に関するアンケート2026」を実施しました。回答者のうち20名(83%)は、子宮や腟の上部が先天的に欠損または十分に発達しないロキタンスキー症候群(※)の当事者で、ほかに当事者の親2名、パートナー1名等から回答が寄せられました。
本調査では、診断時の気持ち、結婚・出産や家族形成に対する考え、子宮移植への関心とリスクの認知、情報収集や相談の状況などを明らかにすることを目的に尋ねました。回答数は24名と小規模であり、ロキタンスキー症候群当事者全体を代表する調査ではありませんが、当事者や家族が抱える思いと、求める支援を考えるための声が寄せられました。
この結果をぜひ貴媒体で取り上げていただき、広く社会への周知を図っていただけますようお願いいたします。
※ロキタンスキー症候群と子宮移植については、下記「ロキタンスキー症候群と子宮移植について」をご覧ください。

<調査結果のハイライト>
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回答者24名のうち、ロキタンスキー症候群の当事者は20名(83%)。
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回答者の平均年齢は36.7歳、診断時の平均年齢は16.7歳。
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子宮移植手術に「興味がある」と回答した人は50%。
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子宮移植に興味がある人の「手術の成功率(2026年現在)」と「手術後妊娠しなかった場合」の認知は、それぞれ50%が「わからない」と回答。
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リスクを踏まえても子宮移植を望むか尋ねたところ、「はい」「いいえ」「わからない」が各33%。
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病気の情報源は「インターネット検索」が79%で最多。
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相談相手は「実母」75%、「パートナー」63%、「医師」50%。
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自由記述では、診断時の絶望や孤独、結婚や家族形成への葛藤とともに、「情報」「選択肢」「相談できる場」を求める声が寄せられた。
※調査結果の詳細については、下記をご覧ください。
<ロキタンスキー症候群と子宮移植について>
ロキタンスキー症候群(MRKH症候群)とは
ロキタンスキー症候群(Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser syndrome:MRKH症候群)は、胎生期のミュラー管の発達に関連して、子宮や腟の上部が先天的に欠損または十分に発達しない状態です。卵巣は通常、構造・機能ともに保たれ、外見上の女性の二次性徴も一般的にみられます。このため、多くは思春期になっても月経が始まらない「原発性無月経」をきっかけに診断されます。発生頻度は女性4,500~5,000人に1人程度と報告されています。米国産婦人科学会(ACOG)は、診断時の心理的影響を軽視すべきではなく、心理社会的な支援やピアサポートにつながることが重要としています(※1)。
※1 American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). Committee Opinion No. 728: Müllerian Agenesis: Diagnosis, Management, and Treatment. Obstet Gynecol. 2018.
https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/committee-opinion/articles/2018/01/mullerian-agenesis-diagnosis-management-and-treatment
子宮移植について
子宮移植は、子宮がない、または子宮が機能しない「絶対的子宮性不妊(AUFI)」の人が、自ら妊娠・出産する可能性を得るために研究・臨床応用が進められている移植医療です。2014年9月、スウェーデンで移植子宮による世界初の生児出生が報告されました(※2)。2025年の総説では、世界で130例を超える子宮移植が行われ、70人を超える子どもが誕生したと報告されています(※3)。
※2 University of Gothenburg. World's first child born after uterus transplantation. Published October 3, 2014.
https://www.gu.se/en/news/worlds-first-child-born-after-uterus-transplantation
※3 Brännström M. A decade of human uterus transplantation. Acta Obstet Gynecol Scand. 2025;104(3):434-436. doi:10.1111/aogs.15080.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39968606/
<調査結果の詳細>
1. 回答者のプロフィールと診断時の状況
【設問】
Q1. あなたは、ロキタンスキー症候群の当事者ですか?
Q2. 現在の年齢をお聞かせください。
Q6. はじめてロキタンスキー症候群と診断を受けた時の年齢をお聞かせください。
【結果概要】
回答者はロキタンスキー症候群の「当事者」83%、「当事者の親」8%、「当事者のパートナー」4%、無回答4%でした(Q1)。回答者は14~61歳で、平均は36.7歳でした(Q2)。当事者がはじめてロキタンスキー症候群と診断を受けた時の年齢は7~20歳、平均は16.7歳でした(Q6)。<図1~図3>



思春期という多感な時期に診断を受けている人が多く、自由記述では、「昔から思い描いていた結婚して子どものいる、いわゆる普通の夢が叶わないという絶望を感じました」(診断を受けた時の年齢18歳、現在32歳)、「これからの長い人生をどうやって生きていけばいいのだろうと絶望感を感じました。将来への希望が見えず、自分の人生が突然止まってしまったような感覚でした」(診断を受けた時の年齢18歳、現在40歳)、「頭が真っ白になりました。人生の中で当たり前にできると思った妊娠が自分には無理なんだと思い、絶望してしばらく何もできなかったり、妊婦さんや子どもを見るたびに泣き崩れました」(診断を受けた時の年齢20歳、現在39歳)など、将来や結婚、子どもを持つことについて突然大きな不安を抱いた様子が記されていました。
2. 結婚・出産・子どもを持つことへの思い
【設問】
Q4. 今の状況をお聞かせください。
Q11. お子さんを望まれますか?
Q12. 下記の中から、望むものをお選びください。
【結果概要】
現在の状況は、「未婚」46%、「既婚だが、子どもはいない」29%、「既婚で、子どもがいる」17%などでした(Q4)。子どもを望むかについて尋ねたところ、「はい」28%、「いいえ」22%、「わからない」33%、「その他」17%でした(Q11)。「はい」と回答した人に、望む方法を複数回答で尋ねたところ、「代理出産」と「子宮移植」がそれぞれ60%、「養子縁組」「里親」がそれぞれ20%でした(Q12)。<図4~図6>



回答数が少ないため一般化はできませんが、家族形成について複数の選択肢を検討している様子がみられました。「いろんな選択肢を病気じゃない人と同じように持てたら、病気を知ったときの私も深く傷つかずにいられたのではないかと思います」(診断を受けた時の年齢14歳、現在29歳)、「これからのロキタンスキー症候群の女性に、私のような思いをさせないでください。情報と選択肢が必要です」(診断を受けた時の年齢17歳、現在57歳)などのコメントがありました。
3. 子宮移植への関心は50%。ただし、希望は一様ではない
【設問】
Q14. 子宮移植手術にご興味はありますか?
Q15. 子宮移植手術について、下記の項目については、どれぐらいご存知ですか?
Q16. 先の項目のようなリスクを踏まえても、手術を望まれますか?
【結果概要】
子宮移植手術への興味では、「はい」50%、「いいえ」21%、「その他」21%、無回答が8%でした。子宮移植に興味がある人に対し、手術や妊娠・出産に関する項目についてどの程度知っているかを尋ねました(Q15)。「わからない」の割合が最も高かったのは、「手術の成功率(2026年現在)」と「手術後妊娠しなかった場合のこと」で、ともに50%でした。「妊娠した場合、妊娠後期は管理入院になること」「子宮温存のための免疫抑制剤投与」についても、それぞれ42%が「わからない」と回答しました。さらに、リスクを踏まえても手術を望むか尋ねたところ、「はい」「いいえ」「わからない」がそれぞれ33%でした(Q16)。<図7~図9>



その理由や気持ちを自由記述で尋ねたところ、「子どもが欲しい。ただそれだけです」(診断を受けた時の年齢20歳、現在39歳)、「やっぱり自分の身体は大事にしたいのが一番にあります。またドナーへの負担を考えると、そこが一番心配です」(診断を受けた時の年齢17歳、現在29歳)、「20歳頃に子宮移植という選択肢があれば、私にとっては大きな希望だったと思います。今は自分なりに受け入れ、子宮移植を希望する気持ちはありません」(診断を受けた時の年齢18歳、現在40歳)などのコメントがありました。
4. 約10年前の調査との違い
当法人では2014年末~2015年初めにかけて、「ロキタンスキーの会」(当時)の協力を得て小規模なアンケート(n=11)を行ないました。当時は回答者の91%が子宮移植に「興味がある」と答え、リスクを踏まえても手術を望むかは、「希望する」(50%)、「わからない」(30%)、「希望しない」(20%)でした。今回の調査では関心や希望が多様に分かれています。ただし、対象者も人数も異なるため、両調査の数値を単純に比較することはできません。<図10>

2014年9月に世界初の子宮移植後の出産が報告された直後と、それから10年以上が経過した現在とでは、医療技術の進展だけでなく、回答者自身の年齢や人生の段階、家族形成に対する考えも変化しています。その中で一貫して見られるのは、「十分な情報を得たい」「自分に合う選択肢を持ちたい」という声です。
5. 情報源はインターネットが79%。それでも「正しい最新情報がわからない」
【設問】
Q18. 病気についての情報はどこで得ていますか?
【結果概要】
病気についての情報源を複数回答で尋ねたところ(Q18)、「インターネット検索」が79%と最も多く、「LINE」33%、「X」17%、「Instagram」8%と続きました。<図11>

「病気の認知度が低く、診断を受けた当時はどこから情報を得ればよいのか分からず、とても困りました」(診断を受けた時の年齢18歳、現在40歳)、「どこを見たら正しい最新の情報が見れるのかわからない」(診断を受けた時の年齢7歳、現在14歳)などの声がありました。
6. 相談相手は「実母」が75%。一方で「相談する人はいない」という声も
【設問】
Q20. これまでに病気について相談した人はどなたですか?
【結果概要】
これまでに病気について相談した人を複数回答で尋ねたところ(Q20)、「実母」75%が最も多く、次いで「パートナー」63%、「医師」50%、「きょうだい」25%でした。<図12>

「当事者でないと、気持ちがわからない、伝わらない」(診断を受けた時の年齢19歳、現在61歳)、「相談する人はいない。相手を困らせて気を遣わせてしまうだけなので」(診断を受けた時の年齢16歳、現在32歳)などの声がありました。
7. 社会に求めること―「理解」「情報」「選択肢」「相談できる場」
【設問】
Q22. 最後に、社会に対して伝えたいことや、法制度などについて言いたいことなどありましたら、なんでも自由にお聞かせください。
【結果概要】
社会や法制度への希望を尋ねたところ、ロキタンスキー症候群の認知向上、医療情報や相談窓口の充実、心理的支援、子宮移植・代理出産・養子縁組等を含む家族形成の選択肢、当事者の声を踏まえた制度づくりなど、多様な意見が寄せられました。<図13>

「子宮移植を希望する・しないに関わらず、一人ひとりが自分らしい選択を尊重される社会になってほしいです」(40歳)、「ちょうど思春期にわかる病気ですし、デリケートな問題なので相談できる窓口を増やしてほしいです」(44歳)、「私たちの気持ち、選択にご理解いただき、もっと子宮移植や代理母が広まりますように。同じ病気や状況で苦しんでいる人たちが一人でも多く精神的に楽に生きていけますように」(29歳)などのコメントがありました。
<当法人ファウンダー/理事 松本亜樹子のコメント>
当法人では、2014年末~2015年初めにもロキタンスキー症候群の当事者の皆さんにご協力いただき、子宮移植についてのアンケートを実施しました。当時は、世界で初めて子宮移植後の出産が実現した直後であり、「本当に自分で妊娠・出産できるかもしれない」という大きな期待とともに、リスクや費用、ドナー、将来のパートナーの理解など、さまざまな不安の声が寄せられていました。
今回10年以上を経て、新たに当事者の皆さんに声を伺うと、子宮移植への関心は50%で、リスクを踏まえても手術を望むかという問いには、「はい」「いいえ」「わからない」が同じ割合に分かれました。この数字はおそらく子宮移植への期待が薄れたという単純なことではなく、当事者の年代における人生観や家族観の変化や、なかなか進まない子宮移植の実現も踏まえた当事者の本音でもあると考えます。
一方で、今回の自由記述を読んで強く感じたのは、10年以上前から一貫して、「正しい情報がほしい」「選択肢がほしい」「安心して相談できる場所がほしい」という強い声があることです。ロキタンスキー症候群は、多くの場合、思春期に初めて知らされます。「自分は子宮(や膣)がなく、子どもも産めない」と突然告げられることが、どれほどの衝撃であることか。またその事実は、当事者のその後の結婚や家族形成、自己肯定感や人生の選択にまで影響していることが、今回のアンケートでも浮かび上がりました。
当法人は、子宮移植を受けることを勧める立場でも、否定する立場でもありません。大切なのは、希望する人もしない人も、十分な情報を得たうえで自分自身の人生について考え、自分に合った選択ができ、その選択が社会的に尊重されることだと考えています。これから診断を受ける若い人たちが、自分の将来を閉ざされたように感じることなく、「私には選べる未来がある」と思える社会になることを願っています。
<調査概要>
調査目的:ロキタンスキー症候群当事者等の生活上の思い、家族形成への考え、子宮移植への意識、情報・相談環境の現状を把握し、必要な支援や社会的課題を考えるため
調査期間:2026年7月9日~8月15日
調査方法:WEBアンケート。自由回答を含む全22問
対象者:ロキタンスキー症候群の当事者または近親者
回答数:24
設問:https://j-fine.jp/activity/enquate/shikyu-ishoku_anketo.pdf
※本調査結果を引用する場合、下記をご記載ください。
『NPO法人Fine「子宮移植に関するアンケート2026」より』
※本調査は任意回答による小規模調査です。回答者の属性にも偏りがあるため、結果はロキタンスキー症候群当事者全体の意識や実態を示すものではありません。
当法人 のこれまでのアンケート調査結果:https://j-fine.jp/activity/enquate/index.html
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