第61回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館、会期後半のプログラム詳細発表
隣接する韓国館との史上初の公式連携:両館を往復する参加型オペラなど
国際交流基金(JF)は、第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館(代表作家:荒川ナッシュ医、共同キュレーター:高橋瑞木、堀川理沙)において、会期後半に実施される関連プログラムの詳細を発表いたします。
このたび、日本館と韓国館とを往復・回遊する参加型ヴォーカル・パフォーマンス「オペラ『草の赤ちゃん、月の赤ちゃん』MORE THAN MUSICAL with 荒川ナッシュ医」の詳細が決定いたしました。
開幕後の反響及び、史上初の韓国館との公式連携の経緯も含めて、以下のとおりご案内します。

2026年5月9日に開幕した日本館展示「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」は、国内外の美術メディアや新聞において、今会期の注目すべきパビリオンとして紹介されています。
国内では、『Harper’s BAZAAR art』『ARTnews JAPAN』において展示に至る背景が詳しく紹介されたほか、『美術手帖』『Tokyo Art Beat』による開催直後の日本館を特集した詳細な現地レポートが掲載されました。海外では、『ArtAsiaPacific』『Artforum』『ARTnews』『ArtReview』『Flash Art』『Frieze』『The Art Newspaper』といった美術メディアで取り上げられたほか、『The New York Times』による「Top 7 Buzzing Pavilions」への選出をはじめ、『Corriere della Sera』『The Guardian』『South China Morning Post』など各国の新聞でも紹介されています。
本展は、2024年に双子の親となったクィア・アーティストの荒川ナッシュ医の育児体験から生まれた展示です。アメリカでアジア系ディアスポラとして生活する作家自身のアイデンティティや、母国の歴史への省察を起点に、来館者が未来の象徴である赤ちゃんを育成する「ケア」の営みを通じて、彼らが将来生きる世界のあり方を問いかける空間へと日本館を変容させています。
作品の出発点となる1階ピロティエリアで来館者に手渡される57体の赤ちゃん人形には、荒川ナッシュが自身の子供たちに伝えたい20世紀の歴史的な日付が「誕生日」として授けられています。本展には、分野や国境、さらには時代や世代を超えた様々な表現者が参加しており、来館者は赤ちゃん人形をケアしながらこれらの作品を巡り、最後におむつを替えることで、占星術師でライターの石井ゆかりが誕生日に合わせて執筆した「オムツの詩」を受け取ります。一連のケア行為を通じて、「私たちは過去とどのように向き合い、その先にある新しい命をどう祝福できるのか。」という、世代を超えて受け継がれる責任と希望の問いに直面することとなります。


この57の日付に込められた文脈は、隣接する韓国館(代表作家:チェ・ゴウン、ノ・ヘリ、キュレーター:チェ・ビンナ)にも接続されており、本展における重要な試みの一つである「日本館史上初となるパビリオン間の公式連携」へと繋がっています。この連携は、両館のアーティストやキュレーターが長年築いてきた親交と深い対話、信頼関係を背景に韓国文化芸術委員会(ARKO)との公式な連携のもと実現いたしました。
韓国館の屋根には、歴史の重要な契機となった日の誕生日をもつ赤ちゃん人形が、その背景に関連したポーズで設置されているほか、定期的に行われているノ・ヘリのパフォーマンス《Bearing》に日本館の赤ちゃん人形が参加しています。さらに、両パビリオンの境界に位置する生垣には、チェ・ゴウンによる銅パイプを用いた彫刻作品《Corea Pavilion-Bush-Giappone Pavilion》が敷地を貫通するかたちで設置されています。
また、5月6日に開催したオープニングレセプションでは、シンガー・ソングライターのイ・ランのリ
ードによる《Our ㅁ (mieum)》* の歌唱に合わせ、日本館チームおよび観客が韓国館前へと移動し、韓国館チームとの祝杯を交わしました。
*オープニングレセプションで歌われたイ・ランによる《Our ㅁ (mieum)》 については、韓国館の公式ウェブサイト内にある以下の特設ページにて、歌詞の閲覧および音源の試聴が可能です。(公式ウェブサイト:https://www.korean-pavilion.or.kr/reader/our-mieum/ )


こうしたパビリオン間の対話と協働の流れは、会期後半にはさらなる展開を見せます。その一環として開催される「オペラ『草の赤ちゃん、月の赤ちゃん』MORE THAN MUSICAL with 荒川ナッシュ医」の詳細につきましては、下記のとおりです。
■「オペラ『草の赤ちゃん、月の赤ちゃん』MORE THAN MUSICAL with 荒川ナッシュ医」詳細
伝統的なパビリオンの枠組みを越え、観客自身の「声」で世界を紡ぎ出す体験型ヴォーカルアート。日本館を起点に韓国館へと回遊する、これまでにない参加型ヴォーカル・パフォーマンスです。
タイトル:オペラ「月の赤ちゃん、草の赤ちゃん」MORE THAN MUSICAL with 荒川ナッシュ医
日時:8月30日(日) 11:30(1回目) / 16:00(2回目) / 17:00(3回目)
9月1日(火) 11:30(1回目) / 16:00(2回目) / 17:00(3回目)
9月2日(水) 11:30(1回目) / 16:00(2回目) / 17:00(3回目)
会場:第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館〜韓国館(回遊型)
出演:平野和(バス・バリトン)、アリエル・ユヒョン・ジョン(ソプラノ)
参加方法:申し込み不要(※ビエンナーレの入場券をお持ちの方は、別途チケットは必要ありません)
主催:第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館イベント実行委員会 [荒川ナッシュ医、高橋瑞木、堀川理沙、石井孝之、増山貴之]
共催:MORE THAN MUSICAL、タカ・イシイギャラリー、国際交流基金
概要:テーマは「人間が歌えるようになる過程=社会の生成」。観客は「声の起源」である日本館で赤ちゃんの原初的な音や呼吸を聴き、自らも意味のない声を発して応答します。続く「社会化」の空間である韓国館へ移動するなかで、観客同士の声は真似し合い、重なり、やがてプロのオペラ歌手がそれらを一切の楽器を使わずに一つの美しい音楽(社会の構造)へと昇華させていきます。見どころは、歴史あるビエンナーレの国家間 silo(分断)を融解させる「回遊」という演出、そして観客を受動的な鑑賞者から「共作者」へと転換させる MORE THAN MUSICAL ならではの圧倒的な没入(イマーシブ)体験です。演出に田尾下哲を迎え、他者の声に耳を傾け応答する「ケア」のプロセスを通じて、私たちがどのような未来(世界)を創るのかを、音と身体を通じて強く問いかけます。
なお、本企画は、日本館展示における初の試みとなるクラウドファンディング「日本館でパフォーマンスしよう」コースへのご支援により実現しました。
(クラウドファンディング特設サイト:https://congrant.com/project/artnest/19915)
■ MORE THAN MUSICAL とは
2016年に香港で創設、2025年より日本へも活動の拠点を拡張した先駆的なオペラ(ヴォーカルアート)カンパニー。伝統的なオペラの形式的境界を再考し、「音・身体・空間・観客・記憶」の相互関係を再編成する実践を続けています。
同カンパニーの核(コア)にあるのは、観客を受動的な鑑賞者から表現の「共作者(Co-creator)」へと転換するイマーシブ・オペラです。九段ハウスや京都・大原山荘といった歴史的建造物での『椿姫』、渋谷・金王八幡宮での『歌舞伎×パリアッチ』の交差から、さらには2025年ジーコオールスターゲーム「HIROSHIMA」や2026年Jリーグ開幕戦をはじめとする、従来の劇場の枠組みを超えた数万人規模のスタジアム公演まで、場所の持つ固有の記憶や公共性と深く結びついたサイト・スペシフィックな舞台を展開。数万人の観衆を巻き込み、オペラを集合的かつ現代的な体験として提示してきました。
オペラを固定された古典ジャンルではなく、絶えず変容し生成し続けるプロセスとして定義し直し、その規模(スケール)と観客との関係性を根本から刷新しながら、グローバルに発信しています。
(MORE THAN MUSICAL 公式Webサイト:www.mtmjapan.org / www.morethanmusical.org )
プロデューサー 長谷川留美子
演出 田尾下哲
1972年兵庫生まれ、横浜育ち。第20回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞。
ミヒャエル・ハンペに西洋演劇、演出を学び、オラディーポ・アグボルアジェに劇作の指導を受けている。
近年の演出作はMORE THAN MUSICAL『Kabuki x パリアッチ』大宮ソニック『平家物語』、日生劇場『ルチア』、LDH『インタビュー』、関テレ『ドロシー』、『ガリレオ』、歌舞伎『雪蛍恋乃滝』などがある。
今後もオペラ、ミュージカル、芝居の演出の他、海外での劇作が控えている。
プロジェクトマネージャー 深町達
出演者プロフィール
平野和(バス・バリトン)
日大芸術学部、ウィーン国立音大修士課程を首席修了。グラーツ歌劇場デビュー後、ウィーン・フォルクスオーパー専属歌手を14年間務める。ウィーン楽友協会、ベルリン・フィルハーモニー、ザルツブルグ音楽祭等へ出演。25/26シーズンはフォルクスオーパー『魔笛』、バッハ・コレギウム・ジャパン上海公演に出演の他、独・コトブス州立劇場『ナブッコ』ザッカリア役でロールデビューし高評された。Xアカウント @ YasushiHirano

アリエル・ユヒョン・ジョン(ソプラノ)
ウィーン国立音楽大学学士・修士課程を最優秀成績で修了。アン・デア・ウィーン劇場をはじめ各地の歌劇場で活躍し、《イドメネオ》イーリア、《ラ・ボエーム》ミミ、《魔笛》パミーナ、《ドン・ジョヴァンニ》ドンナ・エルヴィーラなどを演じる。ウィーン・コンツェルトハウスではソプラノ・ソリストとしてデビュー。マーラー《交響曲第8番》のマーテル・グロリオーサも務めた。シューベルト国際コンクール・グランプリほか受賞多数。

■ そのほか関連プログラム
11月20日(金)荒川ナッシュ医による子どもツアー2
ヴェネチア在住の子どもたちを対象に、未来の象徴である赤ちゃん人形をケアしながら会場を巡る、作家自身による特別なキッズツアー。
11月20日(金)夜のサウンドリスニングイベント「雲の赤ちゃん、夜の赤ちゃん」
サージ・チェレプニンによる本展のための8チャンネルサウンドアートを、日没後にリスニングするイベント。
11月22日(日)パフォーマンス:荒川ナッシュ医 + End of Fall
ACCJ(AIT)による今回の日本館のカーボンフットプリントのリサーチからインスピレーションされた荒川ナッシュによるクロージングパフォーマンス。
■ 第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館
会期:2026年5月9日(土)~11月22日(日)
会場:日本館(ビエンナーレ会場 ジャルディーニ地区内)
出品作家:荒川ナッシュ医
共同キュレーター:高橋瑞木(CHAT香港紡織文化芸術館、館長/チーフ・キュレーター)、堀川理沙(シンガポール国立美術館、シニア・キュレーター/キュレトリアル&コレクション部門部長)
主催/コミッショナー:国際交流基金
特別助成:公益財団法人石橋財団
以下の作家による作品や協力を含む:R・キクオ・ジョンソン(イラストレーター)、イサムノグチ、石井ゆかり(ライター)、伊住禮次朗(茶道家、茶釜歴史研究家)、韓国館2026(代表作家:チェ・ゴウン、ノ・ヘリ、キュレーター:チェ・ビンナ)、斎藤玲児、サージ・チェレプニン(作曲家)、崔在銀/チェ・ジェウン(アーティスト)、中村佑子(作家、映像作家)と佐伯英子(社会学者)、FAC XTRA RETREAT (荒川ナッシュ医、パティ・チャン、パール・C・シーウン、アマンダ・ロス=ホ、アナ・スー・ホイ、シャーリー・セ、エイミー・ヤオ)、MORE THAN MUSICAL
その他の協力およびパートナーシップ:荒川美和子と友人たちin福島(ベビー服縫製)、アート・クライメイト・コレクティヴ・ジャパン(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ)、カ・フォスカリ大学アジア・北アフリカ研究学科(DSAAM)、End of Summer、ペマーキ(建築設計事務所)、森大志郎(グラフィックデザイナー)と小池俊起(グラフィックデザイナー)、NUNO(テキスタイルデザインスタジオ)
※各人の略歴や展示詳細については、2026年3月19日のプレスリリースをご参照ください。
国際交流基金-【取材のお願い】第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館(2026)荒川ナッシュ医「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」ロゴ、展示詳細が決定
■ 帰国展について
会期:2027年6月19日(土)~9月20日(月祝)
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館、国際交流基金(JF)
アーティゾン美術館 http://www.artizon.museum
■ コミッショナーについて
独立行政法人国際交流基金(JF)は、世界の全地域において、総合的に国際文化交流事業を実施する日本で唯一の専門機関です。1972年に外務省所管の特殊法人として設立され、2003年10月1日に独立行政法人となりました。海外に25か国・26の拠点を持ち、「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ」をミッションに掲げ、世界の人々と日本の人々の間でお互いの理解を深めるため、さまざまな企画や情報提供を通じて人と人との交流をつくりだしています。1976年よりヴェネチア・ビエンナーレ日本館展示の主催者/コミッショナーを務めています。
■ ヴェネチア・ビエンナーレ(La Biennale di Venezia )について
ヴェネチア・ビエンナーレは、イタリアの島都市ヴェネチアの市内各所を会場とする芸術の祭典です。1895年に最初の美術展が開かれて以来、130年以上の歴史を刻んでいます。近年、世界各地で美術を中心に、国際的な芸術祭が開催されるようになってきていますが、ヴェネチア・ビエンナーレはそれらのモデル・ケースとなった最も著名な存在です。「ビエンナーレ」とは「2年に一度」意味するイタリア語で、同様な芸術祭の多くが「ビエンナーレ」や「トリエンナーレ」(3年に一度)と命名されているのは、ヴェネチア・ビエンナーレに範をとったものとされています。現在、美術展、建築展、音楽祭、映画祭、演劇祭などを独立部門として抱えるようになりましたが、なかでも美術展は、現代の美術の動向を俯瞰できる場として、また国別参加方式を採る数少ない国際展として世界の美術界の注目を集めています。日本は1952年に初めて公式参加を果たし、1956年に日本館の完成を経て、今日に至るまで毎回参加を継続しています。1976年からは JF が日本館展示を主催し、現在に至ります。日本館の過去の代表作家については日本館公式ウェブサイトをご覧ください。 https://venezia-biennale-japan.jpf.go.jp
参考資料
PRITMESの文字数制限のため、下記の情報については、お手数ですが、このページ下部に設置の[プレスリリース添付資料(会員限定).pdf]をご参照ください。
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荒川ナッシュ医の手書きメッセージ(日本館で来館者を迎える、日本館1階ピロティの壁面に掲示)
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共同キュレーターズ・ノート
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占星術師でライターの石井ゆかりが誕生日に合わせて執筆した「オムツの詩」の例
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メディア掲載例

第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館代表作家の荒川ナッシュ医と共同キュレーターの高橋瑞木、堀川理沙
撮影:丸尾隆一、提供:国際交流基金

【第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館に関するお問い合わせ】
国際美術展日本館 国内メディア広報担当:有田、津田( arita@earlypress.info )
海外メディア広報:press@jpf.go.jp / venezia_art@jpf.go.jp
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